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セルフパブリッシングと日本の英語事情【インタビュー③】 ガイ・カワサキ氏
「アップルを動かしているのは、いまでもジョブズだ」「Twitter、Facebook、google+…3つのソーシャルメディアの違いとは?」と紹介してきたガイ・カワサキ氏のインタビュー記事も今回で最後となる。第三部目となる今回は電子書籍と、そして英語についての話が中心となった。楽天Koboの発売に続き、日本でもKindleが発売されることが決まったりと、今後大きな動きがあるであろう電子書籍について、ガイ・カワサキ氏の見解を紹介したい。
電子書籍の便利さは分かっているが動けない日本
ガイ・カワサキ氏(以下GK): 今回、セルフパブリッシングでも本(What the plus)を出したわけなんだけど、日本だと電子書籍をセルフパブリッシングするのは一般的なの?
ブランドン・ヒル氏(以下BH): 日本では、出版社が権利や市場を守ろうとしており、一般の人がセルフパブリッシングをするのはそんなに簡単なことではないですね。
GK: 具体的にはどういうこと?なんで難しいのかな?
BH: ビジネスの構造上の問題ですね。もし出版社が電子化を進めたとすると、取次業者の仕事がなくなるので、彼らがその出版社の本を取り扱ってくれなくなる可能性があります。そうすると出版社は既存の売上を失ってしまうので、それを恐れてなかなか電子書籍化に踏みきれません。
GK: もし僕が日本人のビジネスマン、例えば孫正義で、ビジネス書を書いたとすると…その本、例えば「The Son Way」は、紙の本と電子書籍で出版するよね?
BH: 紙の本オンリーが一般的ですね。
GK: 本当に!?その点に関しては、日本はアメリカより遅れているみたいだね。
BH: そうですね…遅れているというより、「閉じている」んですよね。日本はテクノロジーは進んでいるんですが、閉じているんです。例えば音楽業界では、ソニーは最近までiTunesで音楽を売ろうとしていませんでした。最近、ついに諦めたんですが(笑)
GK: 日本は家が小さいから、大きな本棚に何千冊っていう本を持つよりiPadを持ってそこに電子書籍を入れたほうがいいよね、明らかに。
BH: 本当にそうですね。日本人も電子書籍の便利さを理解しているんですが、できないんです。今の業態から利益を得ている人たちからの抵抗があるので…。
アメリカでは本屋が少なくなりましたが、日本ではまだたくさん本屋がたくさんありますよ。日本では本屋はまだ出版社にとって重要なんです。
電子書籍を出す人は人気がない人?
BH: ガイさんが今回、紙の本の他にセルフパブリッシングで本を出したのは自主的に、ですか?
GK: そうだね。
BH: 日本でセルフパブリッシングをすると…「彼はもう人気がないんだな」と思われる場合があります。扱ってくれる出版社が見つからなかったんだな、と。インディーズバンドみたいな感じですね。メジャーレーベルとの契約ができなかったから自分でCDを出しているという。ブランディング的によくないですね。
GK: そうなんだね!でもアメリカでも同じような傾向はあるよ。僕はいま、セルフパブリッシングについての本を書いているところなんだ。今回の「What the plus!」の件でいろいろ分かったことがあるからね。もしクオリティのいい電子書籍を出したいなら、5000ドルくらいかかる。カバーデザイン、コピー、編集…こだわらないなら1000ドルくらいでもできるけどね。でも出版で一番難しいのは書くところや本を作るところじゃなくて、マーケティング。さっき言った5000ドルにはマーケティング費用は含んでいない。出版社の価値は、プラットフォームを持っているところにもあるんだよ。でも僕のように自分のプラットフォームを持っているなら、出版社は必要ない。僕は自分の「国」を持っているんだ。
BH: セルフパブリッシングのみだったら、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーに選ばれたりすることってあるんでしょうか。そういった既存のランキングで選ばれることは可能でしょうか。
GK: 今はAmazonがあるからね。電子書籍のニューヨーク・タイムズ・ベストセラーがあるのかどうかは知らないけど…「古い世界」ではどこの出版社かということや、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーに選ばれたかどうかという点が本のクオリティを知る際に重要だった。でも「新しい世界」では、Amazonでの星の数、読者レビュー、友達の評判が重要なんだ。
BH: 自分に合った音楽を知りたい時に、もうみんなビルボードランキングを見なくなったのと同じですね。
6年間英語を勉強してもバイリンガルがほとんどいない日本に驚き
GK: 今の時代、16歳から18歳くらいの日本の若者はバイリンガルなんでしょ?
BH: いえ、ビジネスレベルの英語を話せる人はまだ多くは無いと思います。
GK: え、本当?まだ日本語だけなの?
BH: 日常会話は問題無く話せる人はかなりいるとは思いますが、ハイレベルな英語を話せるのは、おそらく日本人全体の2%くらいではないでしょうか。
GK: それだけ?驚いたな。
BH: 中学生から英語を勉強して、だいたい6年間くらい勉強するんですが…
GK: 必修科目なんでしょ?だったらみんなバイリンガルだよね。
BH: そうなんですが、教師がバイリンガルではない事が多いと思います。そこが問題ですね。英語が話せない英語教師もけっこういるんです。
GK: 英語を教えているのに?じゃあ、英語を話せる日本人はどうやって話せるようになったの?
BH: 留学とか、学校を卒業してから自主的に勉強しているんじゃないでしょうか。最近は英語を勉強する人が増えてきているようです。楽天のように英語公用化に踏み切った会社もあります。
GK: 楽天は日本のAmazonになろうとしている会社でしょ?Koboを売っているんだよね。社長のMr. 三木谷はどんな人?なんか魚に関係する仕事をしていたんだっけ?魚を売っていたような気が…
BH: いえ、銀行の出身です(笑)。社長の三木谷さんにはお会いしたことはありませんが、とてもユニークな方です。決断力があり、敏腕ビジネスマン。会社はトップダウンで、スティーブ・ジョブズみたいですね。でもデザインについてはそこまで気にしていないようですが。
GK: それはスティーブ・ジョブズとの大きな違いだね!(笑)
ガイ・カワサキ氏が提唱するプレゼンの極意「10-20-30の法則」
BH:日本で講演をする時は、「10−20−30の法則」の話をするんです。これがガイ・カワサキの法則だって。
※10−20−30の法則とは?
ガイ・カワサキ氏が提唱するプレゼンを成功させるための法則。
「あなたのプレゼンはパワポ10枚であるべきだ
それら10枚のスライドは20分で説明すべきだ
そして使用すべき最小フォントサイズは30ポイントだ」詳しくはこちらの映像をご覧ください。
GK:他の数字でもいいんだけど、10、20、30だと覚えやすいからね!
BH:でも僕はよくこの法則に反してスライドが12枚くらいになってしまうんですが(笑)。いつも10−20−30の法則は講演ではとても好評ですよ。
GK:僕は、実はまだ日本で講演したことがないんだよね。日本は大好きで、何回か行ったことがあるんだけど。
BH:本当ですか!?ガイさんの日本での講演、実現したいですね。ぜひ今度招待させてください。今日はありがとうございました。
ガイ・カワサキさんのサイン。”Change the world”のメッセージが添えられている。
◆話者プロフィール◆
ゲストトーカー:Guy Kawasaki (ガイ・カワサキ)
Guy Kawasaki
起業家、ベンチャーキャピタリスト。Alltop共同創業者、Garage Technology Ventures共同設立者。アップルでエバンジェリストとして活躍し、その後の起業した経験を元に「人を魅了する」「起業成功マニュアル」などの本を執筆。人気ブロガーとしてWEBでの影響力も大きい。カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA。ハワイ生まれの日系アメリカ人。
(ガイ・カワサキ氏に関するNAVERまとめは、こちら。)
インタビュアー:Brandon K. HIll (ブランドン・片山・ヒル )
btrax, Inc. CEO @BrandonKHill
サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。北海道札幌市出身の日米ハーフ。高校卒業時までほぼ日本で育ち、1997年アメリカサンフランシスコに移住。現在は サンフランシスコに本社のあるグローバル市場向けBranding / Marketing 会社btrax, Inc. CEO。今後の目標は日本の若い起業家、起業家志望者に向け、より多くの成功事例を見せる事により、世界進出の夢を与えること。
編集後記
電子書籍に関する本を書かれているとのことで、インタビューではセルフパブリッシングに関して興味深いお話を伺えました。日本でも、ガイさんのように「プラットフォーム」を持っている人がどんどんセルフパブリッシングをしていくようになるといいですね。
今回のお話では、ガイさんが「今の若い日本人は英語を話せる」と思われていたところが印象的でした。確かに各国の10〜20代の層は英語を話せる人が増えてきているし、様々な面で発展していて経済規模もまだまだ大きい日本では英語を話せる人がたくさんいると思われていても不思議はないです。そのイメージに追いつけるようにがんばらねば…と感じました。
ガイ・カワサキさんのインタビューシリーズは今回で最後になります。今までお読みいただきありがとうございました。
ガイ・カワサキ氏の過去2回のインタビューはこちら。
インタビュー①
アップルを動かしているのは、いまでもジョブズだ
インタビュー②
Twitter、Facebook、google+…3つのソーシャルメディアの違いとは?
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文責:佐藤茜 (@AkaneSato)
写真:Greg C. Viloria(@socialgreg)
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