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北米の事例に見るファンマーケティング② ファンを巻き込むサブカルチャー・エンタメの成功事例
今回の記事では、これからのエンタメ業界のマーケティングの可能性を、海外でのファンマーケティングの観点から考察していく。
前編に引き続き、btraxのマーケターのAyaka、ビジネスプロデューサーのManaの2人の対談形式でお届けする。(前編の記事はこちらから)
アメリカの最近の「ファンづくり」のトレンドに注目しながら、日本と北米のどちらの文化にも精通した、Dual CultureのbtraxビジネスプロデューサーのManaの解説と併せてご共有する。
マーケティングにおける「ファン」や「推し活」の可能性
MANA:
マーケティング施策ではよく「ファンづくり」のための施策が多いですが、また、「ファンであること」や「推し活」はそのファンベースが出来上がってからの次のアクションのことを指しています。
すでに出来上がっているファンコミュニティに対してプロモーションを行うことで新しいサービスを知ってもらい、そのサービスのユーザーになってもらう可能性があると思います。
AYAKA:
そうなんですよ。このように、人の「これが好き」という感情をうまくサービスやプロダクトのプロモーションに結びつけて、新たな顧客を開拓する事例がありますよね。
例えば最近、世界的に有名な高級ブランドのLOEWEがスタジオジブリのアニメとコラボしたり、BURBERRYが漫画の「ブルーピリオド」とコラボしています。
また、フードデリバリーサービスの出前館が、ゲームのFINAL FANTASY内で使えるアイテムを提供するなどと、ファンベースとサービスの意外な組み合わせを見かけます。
これは、日本にサブカルチャーやオタクのカルチャーが昔から根付いているからだと思うのですが、日本とカナダで生活されたことのあるManaさんから見て、北米の傾向を教えていただけますか?
北米でのサブカルチャーのトレンド動向
MANA:
そうですね。面白いことに、このエンタメやサブカルチャー領域でのファンとの新しいエンゲージメント方法は北米で特に最近強まっている傾向であると感じます。
少し北米での今までのファンエンゲージメントやファン活動は、大きく「スポーツ」と「エンタメ」という2つの業界で分かれていると考えています。
アメリカはスポーツ大国なので、スポーツファンに対するエンゲージメントのためには昔から大きな額が投資されてきていました。
例えばSuper Bowlなどの大きなスポーツイベントに向けてのキャンペーンやバーゲンだったり、豪華なパフォーマーによるハーフタイムショーなどが印象的です。
その反面、エンタメやサブカルチャーへの投資や盛り上がりは比較的少ない印象でした。
一昔前には、特にアジア人の印象が強い日本のアニメやアジア出身のボーイズバンドはマス向けのメディアに出演することはとても想像しにくい状況でした。
しかし、社会学のバックグランドを持つ私の個人的な視点からすると、昨今のダイバーシティの文脈で、エンタメやサブカルチャーへの注目が増しているのではないかと感じています。
データからもその実績が示されており、2020年から2021年の間ではアジア人のUSメディアへの露出が約2倍になっているというデータ(参考)もあります。
アメリカの人口の人種の多様性を鑑みて、アジア人をはじめとしたさまざまな国の人種や文化をモデルに起用することで、白人以外の消費者にもブランドへの親近感を感じてもらうことが狙いと言われています。
サブカルチャーのファンを取り込む、北米でのマーケティング・ブランディング事例
その社会的背景からか、最近はエンタメやサブカルチャーにフォーカスしたマーケティングやブランディング施策が目立つと感じています。
例えば、K-POPアーティストのBTSは、アメリカでの爆発的なK-POPの人気に伴って、様々な大企業や団体とのコラボが目立ちます。
企業の例だと、アメリカ発のファストフードチェーンであるMcDonald’sがパッケージや商品をBTSとのコラボを実施しました。
その時に、コラボ仕様になった、使用済みの紙のパッケージがeBayで売られたりしてSNS上でもとても話題になりました。
企業の他、国際機関も、このファンの原動力を活用しながら、組織の目的を達成しようとしています。その事例として、BTSが国連でSDGsについて若者に呼びかけを行いましたことは記憶に新しいですよね。
国境を渡った、カナダでもとても似たような事例で、カナダでの国民的に愛されている、有名ドーナッツチェーン店Tim Hortonsと、アーティストのJustin Bieberがコラボし、話題を呼びました。
BTSやJustin Bieberの事例から、これだけ、このファン層の投資による経済効果や発信力が期待されているということだと思います。
BTSの事例は特に、幼少期に北米で過ごした私からすると、北米の価値観の大きな変化を感じています。
アジア人が行っている活動に対して、これだけのマーケティング予算がつくのは、20年前だと想像もつかないことでしたので、世の中がかなり変化したと感じています。
AYAKA:
確かにそうですね!また、これだけの拡散がされていることも今までの歴史的にも珍しいですよね。
MANA:
少し話題が変わってきてしまいますが、最近このファン文化を活用したサービスで「なるほど!」と思わされた事例を、もう1つ事例紹介していいですか?
私は動画配信サービスNetflixの「ストレンジャー・シングス」というドラマの大ファンなのですが、先日サンフランシスコに出張に行った際に、なんとストレンジャーシングズの世界観を体験できる期間限定のアトラクション(参考)を体験することができました。
ネタバレになるので、具体的な内容は共有できないのですが、最後には写真撮影とグッズが購入できるものすごく充実したエリアが用意されていました。
また、90年代に流行った「フレンズ」というドラマの体験アトラクション(参考)も発表されました。
現在流行っているからではなく、昔からのファンへのアプローチと考えると、これもまた、ファンの熱量を活用して、サービス化に成功した事例として考えられるのではないでしょうか。
サブカルチャーをマーケティングに活用する相乗効果とは
AYAKA:
コラボのキャンペーンをすることで、ブランド側とアーティスト側双方にメリットがあることも注目すべきポイントですよね。
MANA:
確かにそうですね。詳しく教えてもらってもいいですか?
AYAKA:
まずブランド側のメリットは、やはり新規顧客拡大が大きいと思います。
宣伝する商品が、目新しいものやまだ使ったことのないものだったとしても、「好きなアーティストとコラボしているから」という理由で商品を手に取ってもらえたり、ブランド名を覚えてもらえたりすることが起こるからです。
また、有名人が起用されているキャンペーン自体は話題性もありますので、消費者間での口コミやSNSなどでの拡散も期待できると思います。
MANA:
確かに、そうですね!また違う側面でいうと、消費者に親近感を感じてもらうことにより、距離を縮める、または共感してもらえることを期待できますよね。
例えば、今回注目しているアニメやK-POPの話は、アメリカでは特にサブカルチャー扱いとされ、マスメディアに蔑ろにされてきましたが、有名なブランドがその文化を取り上げることは、文化を受容することと同義だと思います。
その文化が好きな人からすると、そのブランドがさらに「センスがあるブランド」という印象を持つことにつながります。
また、ブランドのメッセージや起用するアニメやインフルエンサーに親近感や共感できることは、近年の消費者にとってとても重要な価値となっているので、ここを押さえることができるブランドは利益拡大も見込めそうですね。
まとめ
前編・後編に渡り、世の中の「ファン」たちに秘められた、マーケティングとブランディングにおける可能性をお伝えしてきた。その中で今回は特に北米圏でのファンマーケティングのトレンドや活用事例をご紹介した。
btraxは日米にオフィスを構え、アメリカ市場への展開を目指す日本の企業さまに対し、北米ターゲットへのユーザーインタビューや市場調査を行い、今後のビジネスへ活用していたくためのマーケティングやブランドストラテジー立案をサポートさせていただいている。
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