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VCの仕事はCEOのお悩み相談【インタビュー③】Draper Nexus 北村充崇
「シリコンバレーのVCの仕事」「アメリカと日本のVCの違い」と紹介してきたDraper Nexusの北村氏のインタビュー記事も今回で最後となる。第三部目となる今回はVCとCEOの関係などについて紹介したい。
資金提供以外にVCがサポートすることは
北村:VCに求められていることは一言でいうとベンチャー企業のバリューをどれだけ高められるかってところ。そしてベンチャー企業のバリューを高めるためには、ベンチャー企業のビジネスを増やしてあげないといけない。
具体的には僕らの場合だと、LPで日本の事業会社がいるから、日本とのビジネスを作っていきたいベンチャー企業の売上や利益拡大に貢献できる。
僕らみたいなVCもサポートしていて良い会社ですよっていうことをちゃんと伝えて、人を集める手伝いをするということがVCとしてできること
もう1つはいい人材を集めるのを助けてあげること。ベンチャー企業って人が集まってなんぼの話だから、いい人材を集めないといけない。特に若いアーリーステージにあるベンチャーほどこの先どうなるか分からない状態だから、なかなかいいエンジニアとか人が集まりにくい。
だから、僕らみたいなVCもサポートしていて良い会社ですよっていうことをちゃんと伝えて、人を集める手伝いをするということがVCとしてできることの1つです。
の中で何でベンチャー企業が例えばSEQUOIAとかKleiner PerkinsとかAndreessen Horowitzとか有名なVCからお金が欲しいかっていうと、例えばAndreessen Horowitzが出資したというプレスリリースが出た瞬間に優秀なエンジニアの人たちが、まだどうなるか分からないけどもしかしたらこの会社いいんじゃないかなって思うわけ。
だからベンチャー企業はいい人材を採用するために、Andreessen Horowitzからお金をもらいましたというスタンプを欲しがる。そういうブランド力を持っているVCって、それでベンチャー企業の人を集める支援ができるから強いよね。
参https://blog.btrax.com/jp/sf-sv/
いい経営者ってどんな人なのか?
北村:いい経営者って二重人格みたいなところがあるんだよね。すごい大きなビジョンがあって、俺はこのサービスで世界を変えるんだみたいなことを言うわけ。でも一方で、ビジョンに行くまでの階段のステップが頭の中に全部あってすごい緻密な計画を立ててるんだよね。
大きいビジョンを言って旗を振るのはいいんだけど、そこまでの計画がしっかりと立てられてない経営者は多いけど、両方できる人は少ない。でも計画を立てている人は、今はSeedのこの段階なんだけど、これとこれは達成できているからステップ2まで来ていていますと。
次の段階に進むためにこれをやっていきます。将来的にはこんなことをして世界を変ええますと計画がしっかりしているんだよね。だから大きいビジョンを持っていて、それを達成するための細かいステップを頭に描いていて実行に移している人ってやっぱりすごい。
いい経営者は大きなビジョンと緻密な計画を合わせ持った人
ブランドン (btrax CEO):だけどそれって口で言うのは簡単ですけど、基本的には共存しませんよね。
北村:その通り。だから二重人格みたいなのが必要になってきて、普通の人ではできないなと思う。イーロンマスクもそうだし、スティーブジョブスもそうだし、本当にすごい人ってそれができてるんだね。
ブランドン:ビジョンはでかいんだけど、マネジメントはすごい細かい。ドカンとでかいのを立てて、その後のマイルストーンやマネジメントがすごい細かい。
北村:そんな人ほとんどいないよね(笑)
だからそこに向かって行く途中でこっちではCEOがコロコロ変わっていっていくんだよね。まずは0から1を作るのが得意な人が会社を作って、次は1から10に拡大するのが得意な人にCEOが変わる。
VCの判断でCEOがクビになる事はあるのか?
ブランドン:こっちのVCのパワーでCEOがクビになることってあるんですか?
北村:それはよくあるよ。
ブランドン:スタートアップでCEOが変わる時って、お互いのために表向きはクビになりましたって言わないじゃやないですか。
北村:自分から俺CEO向いてないんで辞めますっていうケースは少ないと思う。基本的にはCEOも肩たたきにあって押し出される。
ブランドン:それって、CEOもシェアを持っていて主要株主であることが多いから「いや別に俺辞めねえし」ってなってならないんですか?それともそれは本当に多数決って感じで、投資家のシェアを合わせてこっちの方が多いから辞任の意見が通るって感じなんですか?
北村:基本的にはそうだよね。ロジカルに投票して決定する。まあ実際は投票の前にCEOも計算していて、このままじゃ勝てないってのわかるから前の段階で片付いちゃうけどね。
ブランドン:そういった意味では、BOXのアーロンなんかは自分のシェアをすごい下げてやってたから、そのリスクを背負いながら経営してたんですね。
北村:そうだね、あれはすごいよね。実際に途中で売り抜けて自分でキャッシュ化してたしね。
ブランドン:EverNoteとかはCEO変わったりしていますしね。
北村:そうだね、これからが大きな勝負だよね。
参https://blog.btrax.com/jp/drivemode-interview/
ベンチャー企業はVCから集めた多額の資金を何に使っているのか
北村:ベンチャー企業が大きく資金を集める時はマーケットを支配する目的で使っていることが多いです。例えばUberとかは毎月50億とか100億とかリベートでお金を払っていると聞く。
それにドライバー集めるためにマーケティング費用としてお金を払っていたりする。Uberの場合には競合にLyftがいてすごい血みどろな争いを今まさにしている。
でもこれでもしLyftが弱くなったり潰れたりしたらUberがマーケットを支配することができる。そうなったら、多少値段を上げたとしてもみんなUberを使わざる負えないから、Uberはすごい儲けるし取得できるデータの量も増える。
だから今は少しでもマーケティング費用を使ってユーザーを獲得して、この血みどろな争いに勝とうとしている。そこまでの間はチキンレースみたいなもんだよね。
ブランドン:ドライバー獲得するにも、ユーザー獲得するにもUberは全部赤字らしいですね。1人のユーザーがUberに乗ったらUberは逆にいくらか失うみたいな。
北村:確かにあれは全部赤字だと思うよ。それがいいのかどうかはわからないけど、いつの時代もそういうことは繰り返し起こっている。インターネットバブルが最初に始まった頃もEコマースのウェブバンってところがあって、あそこも同じようなことをやってたわけ。
今は少しでもマーケティング費用を使ってユーザーを獲得して、この血みどろな争いに勝とうとしている
例えばAmazonもずっと赤字を垂れ流し続けながらも上場もして、いつまでも赤字でこの会社いつ潰れるんだって10年前くらいには言われてたんだけど、気がついたらマーケットを相当抑えちゃってて支配されている。
だから多少は何があっても金儲けできる形になっている。このモデルをみんな期待していて、今のVCからの多額の投資はそのためのマーケティングの捨て金だよね。
市場を支配したらベンチャー企業の時価総額は上がるから株主はハッピーだよね。特にサンフランシスコのベイエリアって、そういった形のエコシステムになっているんだよね。多分VCがいなくなったら経済が回らないし、このチキンレースを最後までやり続けるんだと思うよこの町は。
CEOは人格や人間性が重要
ブランドン:資本主義の一番の中心ですからね。いい悪いは別にしてこの町にはある意味で道徳的に欠如している何かがありますね。投資する時にレイアーが2つ、3つって上がっていけば元手の人は何に投資しているのかすらコントロールできなくなる。
そして、とりあえずリターンが出やすいものだけにお金が流れるようになっていると、それが人にとっていいものか社会にとっていいものかとは関係なくなっちゃいますよね。
北村:それはある。
ブランドン:ミューチュアルファンドとか投資信託とか、いっぱいレイヤーを超えていったらわからないですもんね。
北村:それはその通り。あまりにもそれが露骨に目立つと内部告発みたいなのがあって、どこかで失敗するんだろうけどね。
ブランドン:そうなってくるとCEOの人格とか人間性って重要ですね。
北村:すっごい重要。でもまたそれも難しいところで、株主がいっぱいいて、お前金を儲けろって言われ続けていつ自分が首を切られるかわからない中で、どれだけ自分で確たる倫理を持ちながらやっていけるかってすごいバランスが必要だよね。
ブランドン:短期的な利益を追求するのかビジョンを追求するのか。
北村:でもビジョンばっかり言ってたらクビにされるかもしれないし。
株主がいっぱいいて、お前金を儲けろって言われ続けていつ自分が首を切られるかわからない中で、どれだけ自分で確たる倫理を持ちながらやっていけるかってすごいバランスが必要
ブランドン:ヘルスケアのセラノスなんかはすごいイケイケで話題になっていて、でも中身を開けたらプロダクトが無かったんですよね。
北村:パロアルト(シリコンバレーの中心地)にでっかいオフィスも構えてて。
ブランドン:ヘルスケアだとプロダクトがあまりにも難しいからVCの人もなかなか判断が難しいんですかね。
北村:でもVCの中には、僕らはこの企業を見て投資しなかったというのをいろいろと問題になってから発表している人はいた。
ブランドン:後出しじゃんけんで、ほら見たことかって(笑)
北村:うちのティム・ドレイパーは今でも信じてるけどね。
ブランドン:それこそイーロンマスクも5〜6年前まではシリコンバレーやサンフランシスコでクレイジーなバンクラプト(頭のいかれた破産家)って言われてましたしね。ほらだけ吹いて、金だけ入れて、破産するぞって。
北村:あれはもう投資家を脅してたね。何百億円ってお金を既に入れてる中で、もう潰れる状況だからもっと金を出せって言ってるんだから。だからある意味では本当に立ちの悪い経営者だよね(笑)
テスラもほぼ潰れかけたのが2、3回はあったはずだよ。
ブランドン:そう考えると本当に紙一重ですね。
* Draper Nexustは、現在btraxが運営を行なっている福岡市主催のグローバル起業家育成プログラム、『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』へのシリコンバレー地域での協力も頂いています。
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