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アメリカと日本のVCの違い【インタビュー②】Draper Nexus 北村充崇
前回の「シリコンバレーのVCの仕事」では、シリコンバレーのVCの普段の仕事内容などについて紹介した。今回は日本とアメリカでVCの仕事内容がどれくらい異なるのかについて具体的に見ていきたい。
アメリカと日本のVCの競争率の違い
北村:VCの投資環境はアメリカと日本で大きく違いがあります。アメリカの場合には素晴らしく優秀なVCがそこらへんにすごいたくさんいるわけよ。だから本当にいいベンチャー企業っていうのはお金を集めようと思ったらいくらでも集められるわけ。
投資したいベンチャー企業がたくさんやって来て是非投資して下さいって頼まれる感じではなくて、我々からベンチャー企業の方へ行くことの方が多い
我々の状況って、投資したいベンチャー企業がたくさんやって来て是非投資して下さいって頼まれる感じではなくて、我々からベンチャー企業の方へ行くことの方が多い。
例えば僕らが以前投資したところもそうなんですけど、1回目のミーティングはDraper Nexusはこういった会社で、我々はあなたに対してこういうことができますということを説明しに行くだけのミーティング。だからベンチャー側のことは一言も聞かないのよ。
そこでよくあるのは、じゃあリファレンスをチェックさせてくれって言ってきて、逆にベンチャーのCEOが僕らが既に投資したポートフォリオ先のCEOに連絡して、僕らが投資先とどんな関係を築いているのかを聞かれるわけ。
そこで我々が既に投資した先のCEOの人からこのVCは信頼できてサポートしてくれるよと言われたら、じゃあ”苦しゅうない”って言ってベンチャー企業の説明をしてもらえる。そこからやっと我々が投資できるかどうかって話になることの方が多い。
今まで日本のVCはそこまで競争がなかったから、我々はこんなバリューのあるVCですってベンチャー企業に言いに行く必要が無かった
一方で、今まで日本のVCはそこまで競争がなかったから、我々はこんなバリューのあるVCですってベンチャー企業に言いに行く必要が無かったと思います。
ベンチャー企業側が投資してくださいって頼みに来ているような感じで、銀行の融資の延長線のような感じですかね。VC側からどうか投資させて下さいっていうのは少なかったと思うよ。
ブランドン (btrax, CEO):それを考えると、アメリカだとLPからファンドレイズするのもそうだし、ベンチャー企業へのアプローチもそうですけど、結構VCの人ってプレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルみたいな営業力が必要なんですね。
日本の銀行員がプレゼン上手ってイメージはないですけど、こっちのVCは多分そこがすごい上手なのかなって。
北村:こっちのVCの中にはコミュニケーション能力がめっちゃすごい人いるよね。たとえ1,000件の投資相談があっても99%は投資をせずに断るのね。
必然的にほとんどのケースは断わらざるおえないんだけど、その99%の990件を断るときに、相手のベンチャー企業に対して悪い気にさせないで、でもあの人たちっていい人たちだよね、ちゃんとコメントもくれたよねってポジティブな気持ちで終われるよな返答の仕方とかって重要だね。
ブランドン:これは以前、ガイ・カワサキっていう有名なVCの人が言っていたんだけど、VCから明らさまに断ったらイメージが悪くなるしダメ。
それにもし万が一そこがものすごい跳ねた時に、いやあ俺は投資しようと思っていたんだけど会社が駄目って言ったからっていう逃げ道が必要だって。俺はFacebookは行くと思っていたんだけど会社の判断でねって(笑)
あとは断るんじゃあなくて、今のところはノーアクションって言ったりするですよね。でも実際に、例えばユーザーがあと何万人集まったらそこで真剣に考えられるから戻って来なよってのは多いんじゃないんですか?
北村:あるある。実際タイミング的に合わないケースがほとんどだから。最初の段階で全くノーっていうわけではなくて、後で帰ってくるケースがほとんどだよね。
日米のVCの投資金額、バリュエーション(企業評価額)、シェア割合、EXITの違いについて
ブランドン:私の知り合いで日本のVCからシードの段階で投資を受けた人がいるんですよ。その投資の条件が$1M(1億円)でシェア20%だったんですよね。
20%のシェアを取るのは多すぎないって話をしてたら、いや日本だったらこんなもんなんですよって言っていて、そうなんだってすごいびっくりしました。実際ケースバイケースのところはあると思うんですけど、日本は投資家が取るシェア率が高いんですか?
総じて日本の方が投資家が取るシェア率は高い
北村:僕も総じて日本の方が投資家が取るシェア率は高いとは思うな。
ブランドン:アメリカは5%とか10%くらいにして、敢えてシェア率を高くしない方がセカンドラウンドとかがやりにくくならなくて良いって聞いたんですけど。
北村:そうそう。投資金額を見てみても1件あたりの平均投資金額は全然違う。アメリカの平均投資金額はユニコーン企業が出てきた影響もあるけど2013年に$7.4M(7億4千万円)だったのが、最近では$13.8M(13億8千万円)に上がっているのよ。
一方で日本は、2000年くらいからほとんど変わっていなくて平均投資金額は$1M(1億円)くらいしか集まってない。
投資金額を見てみても1件あたりの平均投資金額は全然違う
ブランドン:投資金額とシェアってバリュエーションに基づいて決まると思うんですけど、アメリカのVCの取るシェアが少なかったり、平均投資額が大きかったりするのは、バリュエーションの金額が大きいからなんですか?
北村:日本とアメリカのバリュエーションは違うよね。だってEXITの種類が違うから。アメリカの場合はナスダックとか上場すれば何千億円は軽く超えるし、Googleとかが買収した場合は500億円とかいく。
一方で日本の場合は事業会社がベンチャー企業を買収するとかほとんどないからマザーズ上場しか選択肢がない。マザーズ上場の金額も多分良くてもで200〜300億円くらい。そうすると投資家はマザーズの市場だけ見て投資判断を行うようになる。
日本とアメリカはベンチャー企業のEXITが違うから、それに伴ってバリュエーションも変わるんだと思うよ。実際アメリカの場合は9割くらいのEXITが、GoogleだとかFacebookだとかそういった事業会社がベンチャーを買収するEXITでなわけ。
買収する企業はGoogleが多い年があればFacebookが多い年があればっていうのはあるんだけど、基本的にここ10年くらいは300社/年くらいコンスタントに買収を続けいている。
日本とアメリカはベンチャー企業のEXITが違うから、それに伴ってバリュエーションも変わる
この事業会社からの買収というのがアメリカのVCが活動しやすい理由の1つで、彼らから買ってもらえるようなベンチャー企業ってどういうところだろうとか、彼らが500億円で買収した時にいくらくらいのリターンが出るんろうって逆算をしてから、VCはベンチャー企業に投資をするっていうのはあるかもね。
日本の事業会社がベンチャー企業を買収するっていうのはほとんどないけど、最近DeNAやKDDIが少しやっているけどそれも数件ですよね。Acqui-hireっていわれるAcquisition(買収)してhire(採用)する。
要するにそこで働いている人材が欲しいから買収するという人替えの買収も日本で今までほとんどなかったけど、最近少しずつそういうのでてきたね。
ブランドン:日本はミニチュアな感じですね。箱庭みたいな。
北村:そうそう、でもしょうがないよね。日本はEXITが限られていて小さいからそれに合わせて逆算して、縮小させて行かざる終えないよね。
日米VCの種類株、投資取締役会参加、Convertible Debt(転換社債)の違いについて
北村:株の種類については日本も大きく変わってきたね。昔は普通株しかなかったけど今は優先株が出てきている。
取締役会については、もしかしたら最近は変わってきているのかもしれないけど、日本は過半数の株とか取締役会の過半数のメンバーは創業者とか経営者が押さえておきたいという気持ちが強くあって、そういう取締役会体制に固執しているところはあるとは思う。
株式を過半数を持ち続けるというのはほとんどありえなくて6割くらいはVCが押さえてるってケースは当たり前
アメリカの場合にはSeries BやSeries Cになってくると株式を過半数を持ち続けるというのはほとんどありえなくて6割くらいはVCが押さえてるってケースは当たり前にあるよね。
CEOも仮に株主にダメだって言われて首切られたらそこで終わりだよねって覚悟はあるし、別に自分がCEOじゃなくてもちゃんと株を持っていてその会社が大きくなれば儲かるって考えもあるしね。そういう意味ではVCや投資家が取締役として入っているケースは日本よりアメリカの方が多いだろうね。
Convertible Debtは、日本では使いにくいと聞く。Convertible Debtって未来のSeries Aの株で社債を株式にConvertしましょうって話があるじゃないですか。
日本だと未来の金額が付くか分からない金額でConvertするっていうのは難しく、書き方とかを工夫が必要で簡単ではないと聞きます。
だから日本では数は少ないんじゃないかな。アメリカの場合にはSeedのベンチャー企業に投資する際にはほぼConvertible Debtだけど。
ブランドン:ゲスな話なんですけど、Convertible Debtで取りっぱぐれた時にそれを追いかけるかどうかっていう話を聞いたことがあって、日本は追いかけるけど、アメリカは追いかけないって聞いたことがあるんですけど。
北村:グッドクエスチョンだねー(笑)
そうなんですよ。だからY CombinatorのConvertible Equityみたいなのが出てくるんだよね。シリコンバレーでは追いかけないです。理論的にはDebtだから追いかけてもいいんだけど、もし追いかけちゃったらあいつら追いかけるVCだから、あいつらからは出資はもらうなみたいな噂が流れますね。
ブランドン:それはそれでモラルはどうなのかって話ですよね。すごい不思議ですよね。
北村:うん。それはそれでおかしい感じはする。
* Draper Nexusは、現在btraxが運営を行なっている福岡市主催のグローバル起業家育成プログラム、『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』への現地での協力も頂いています。
- Part 1: シリコンバレーのVCの仕事【インタビュー①】Draper Nexus 北村充崇
- Part 3: VCの仕事はCEOのお悩み相談【インタビュー③】Draper Nexus 北村充崇 に続く
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