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上司が若手を育むための5つのマインドセット
有望な若手にデザイン思考を学ばせたは良いがイマイチ結果に繋がらない。「新しいことや面白いことをやってみろ」と伝えているのだが一向に斬新なサービスが出てこない。これは、多くのマネージャーや経営層から聞こえてくる嘆きである。実際、同様の悩みを相談してくるクライアント企業は多い。
しかしその一方で、現場の多くの方々は「やりたいことがあるんですけど、現在の環境だとそれがなかなか進められないんですよね?」との悩みを吐露する。このギャップは何なのか? なかなかイノベーションが生み出されないのは、もしかしたらそれはマネージメント側の問題なのかもしれない。
なぜ社内にイノベーティブな文化が根付かないのか? おそらくは経営側に正しいマインドセットが醸成されておらず、それが故に企業カルチャーも硬直してしまっている可能性が高いと思われる。お互いがもどかしい思いをしながら、一向に結果につながらず、ストレスだけが蓄積される。
今回は、先日開催されたイベント、DESIGN for Innovationのキーノートより、その原因と課題解決のための5つのポイントを紹介する。
イノベーション: その全ては人から始まる
まず理解するべきは、商品もサービスも全ては”人”が作り出しているということ。”イノベーション”という響きが、なんだかふんわりしていて、マジックのようにどこからともなく突然変異的に現れ、いきなり革新的なビジネスモデルが生み出されると思いがちである。
現実は、生身の人間が正しいマインドセットを持ち、その集合体としてのカルチャーの醸成しその集大成がクリエイティブな結果に繋がる。ついつい結果として、新たなビジネスモデルを急ぎがちであるが、適切なマインドセットと企業カルチャー無しには、いつまで経っても求める結果は得ることは難しい。
言い換えると、デザイン思考やUXデザイン、リーンスタートアップなどを「学ぶだけ」ではイノベーションは生み出されない。我々btraxとしても、まずは人、そしてカルチャー、最後にアウトプットとしてのビジネス的結果の順番でクライアントとの仕事に取り組んでいる。
管理職に求められるデザインリーダーシップ5つのポイント
そんな中で、現在多くの企業に求められているのが、デザインリーダーシップである。デザインを経営に導入しようと多くの経営者や管理職の方が日々取り組んでいる。同時に、皮肉にも、現場スタッフの多くが、既存のマネージメントスタイルや考え方が原因で、イノベーションを生み出しにくいと感じているの事実。
そのギャップを埋めるために、リーダーが持つべき5つのマインドセットを紹介する。
- Yes, &
- Less is More
- Let Them Fail (small)
- Be Patient
- Be Playful
1. Yes, &
まずは、アメリカ西海岸的カルチャーの代名詞とも言えるこのフレーズ。”Yes, &”とは、部下や同僚、チームメンバーなどが出してきたアイディアに賛同し、それを後押しする姿勢。まずは”Yes”と言い、無条件に肯定する。そして、それに対して自分として、できる限りのポジティブなアドバイスを付け加える。それが “& (アンド)”の部分。
そうすることで、最初に出て来たアイディアに対して、より良いアイディアが加わり、その実現性が高まる。その相乗効果で、新しいことを生み出すのが、シリコンバレー的カルチャーの1つになっている。
これが、多くの日本企業内では、出て来たアイディアやプロトタイプに対して、「面白いアイディアだね。でも予算がないからなー」「良いと思うよ。でも今はできないなー」「なるほどねー。でも規制がなー」など、Yesは言ったものの、その直後にButをつける、”Yes, but”が横行してしまっている。これだとせっかくの良いアイディアを持ったスタッフのモチベーションを下げることになってしまう。
そして、ひどい時には頭から「却下」「今回は見送る」「無理でしょ」などの”No”で門前払いしてしまうケースも少なくはない。新しいことをやってみろ、とは言うものの、出て来たアイディアに対して”Yes, &”でサポートしない限りは、物事は前に進まない。
2. Less is More
最近流行っているサービスや商品に共通していることは何だろうか?おそらく競合のものよりも、よりシンプルで使いやすいのではないだろう。
そう、現代においては、機能や仕様をできるだけ削ることで、ユーザーの時間を節約してあげることが大きな価値になってきている。これはAppleの躍進や、インスタなどのシングルファンクションのアプリなどに人気が集まっていることからも理解できる。
以前には、カタログスペックが自慢のてんこ盛りプロダクトが注目された時代もあったが、それはずいぶんと昔の話。これからの時代は、ユーザーのストレスと費やす時間をより減らすために、使いやすくてシンプルな商品が求められる。なお、実はシンプルにデザインする方が難しい。より洗練させるには、無駄を削り、より直感的に使える設計にする必要があるからだ。
その一方で、頑張って削った内容に対して、上司からの「なんか物足りないね。念のためあの機能も付けといてよ。」の一言がつまらないプロダクトを作ってしまう1つの大きな原因となっている。
シンプルにするには勇気がいるし、不安な気持ちから、どうしても足したくなってしまう。しかし、「機能の多さ = カバーできるユーザーの規模」ではない。むしろ、機能が少なく、使いやすい方が、より広い市場を掴めることも少なくはない。従って、無闇に足すよりもシンプルを優先すること。時に少ないこと (Less) は、より多く (More) の結果を生み出す。
3. Let Them Fail (small)
上司がついつい口出ししたがるのは、スタッフに成功してほしいから。その動機は至極真っ当であり、当然の考え方だろう。しかし、ことイノベーションに関しては、それが大きな弊害となる。
どんな時でも、新しいことにチャレンジしようと思えば、失敗はつきものである。それをわかっているはずなのに、挑戦はさせてくれるが、失敗は許容されないことが多い。
実際のところ、スタートアップや社内起業家の成功率は極めて低い。何度もチャレンジし、ピボットし、失敗し、そこからなんとかヒット商品のヒントを見つけている。シリコンバレーでは、なるべく多くの失敗から学ぶために、より小さいスケールで多く失敗することが推奨されている。俗に言う”Fail fast. Fail often”である。
デザイン思考やリーンスタートアップのプロセスにおいても、速いスピードで小さな失敗を多く繰り返し、そこから気づきや学びを得ることで、成功へのステップに繋げている。
例えば、このカルチャーを具現化する方法として、Googleの新規事業を生み出すチーム、Google Xを挙げる。ここでは、1つの成功よりも、多くの失敗を経験したスタッフの方が評価が高くなる人事制度を導入している。そうすることで、心置きなくチャレンジし、失敗から何かしらの学びを得ることに成功している。
安心して失敗できる環境。そして、そこから学び、次のアイディアに生かせるような仕組み作りが、これからの経営陣には求められている。
4. Be Patient
初めは長期的なビジョンを描いていても、いつの間にか短期的な結果をどうしても求めてししまいがち。次年度の予算の獲得や、周りからの評価も気になり、スタッフに対して目下の売り上げや利益など、近視眼的な数字を要求し、それが達成できないとプロジェクト自体が頓挫することも少なくはない。
場合によっては、ユーザー数が伸びていたり、ユーザーからのポジティブなフィードバックが得られたりしているにも関わらず、サービスが終了してしまう背景には、組織的な判断が働いているケースがある。
そんな時にマネージャーとしては、できるだけ辛抱強く、チームを信じて長期的な視点で見守る姿勢が必要だ。
そもそも、世の中を変革させるようなスタートアップのその多くが、実は利益が出ていないことは珍しくない。まずはニッチなマーケットを狙い、コアユーザーの課題に着目するため、どうしても初期のうちは数字的な結果が出にくい。
あのAirbnbだって、初期の頃は著名な投資家をはじめとして、多くの人たちに批判させ続けていた。
しかし、熱狂するわずかなユーザーがきっかけとなり、じわりじわりと認知度を上げ、最終的には多くの人々に愛されるプロダクトに成長することもある。そこまでたどり着くには、それなりの時間がかかる。
イノベーションは一朝一夕では起きないことを理解し、辛抱強い (Patient) 姿勢で取り組んでいく必要がある。
5. Be Playful
クリエイティブな企業カルチャーの背景には、チーム内に遊び心があふれている。シリコンバレーのスタートアップのオフィスには、卓球台をはじめとして、様々なゲームが置かれている。
これは、楽しむことで、気持ちをリラックスさせ、面白い発想を促す効果を狙っているのだ。また、チームメンバー同士の心理的安全性を高める効果も期待できる。
我々、btraxでも、定期的にチームビルディングを行い、発想力と結束力を高めている。毎年開催されているハロウィーン仮装コンテストや、クリスマスのプレゼント交換会もそれ。実にくだらなく、仕事場で行うべきではないと考える人もいるかもしれないが、スタッフの満足度は意外と高い。
この遊び心 (Be Playful) の精神が、クリエイティブを育む大きな要因となる。そのためには、上司自らが率先して楽しむこと。それも、どんな若手にも負けないくらいに真剣に取り組むこと。
真面目一徹が評価された時代は終わりを告げ、これからは、どれだけ楽しんで、面白いアウトプットが出せるチームを育てるかが求められる。
まとめ: これから求められるのは、マネージメントのマインドセット構築
以前に若手とマネージメントの方々混合で、デザインワークショップを開催したことがある。その際に、なぜか、マネージメントの方々からはアイディアがあまり出てこずに、若手のアイディア批判に終始していた。
どうやら、手を動かすのは若手の仕事で、自分たちはそれに対してのフィードバックや、承認を出すのが仕事だと考えているらしい。
この例のように、日本企業にはどうしても評論家になっている上司が多く、自由闊達な企業風土の妨げになっている場合も少なくない。そうなると、若手がどれだけ頑張ってアウトプットしようとしても、頭打ちになってしまう。
スタッフに新しいチャレンジをしてもらいたいと考えている企業は、経営陣や管理職の方々に正しい考え方をインストールする必要がある。そのためにも、ぜひマネージメント層に対する正しいマインドセット構築から始めるのが良い。
btraxでも、東京とサンフランシスコにてマネージメント層に対するプログラムを提供している。ご興味のある方は、ぜひ公式サイトのお問い合わせページからご連絡ください。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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