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僕が失敗から学んだ7つの教訓【インタビュー】シリアルアントレプレナー: デイブ・シフリー
いきなりだが、皆さんはテクノラティ (Technorati) をご存知だろうか?恐らくほとんどの人が知らない、もしくは「なんかそんなサービスあったなー」というぐらいの反応だと思う。
その昔、2005年頃 (そんな昔ではないが) にブログ1.0と呼ばれる時代があった。
ブログが一般的に普及しはじめた頃の事を言う。その当時は現在の様にTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアがあまり普及しておらず、ゆえにブログがネットを介しての自己表現や情報収集に際して唯一無二の存在であった。
その一方で、急激に増加するコンテンツの中から自分が読みたい記事を見つけるのは難しかった。現在でこそ、まとめサイトやソーシャルブックマーキング等を利用してブログ記事のカテゴリーごとの整理や検索が容易である、
しかし、その当時はブログに対する検索エンジンの精度も低く、ユーザーにとっては日々新しく公開されるコンテンツを見つけ出す事は非常に困難であった。
そのニーズに応えるべくして作られたのが、Technorati(テクノラティ)である。総合ブログコンテンツ検索サービスであるテクノラティは上記のニーズにマッチしたサービス。リリース直後から世の中の多くのユーザーが利用し始め2006年頃には人気サービスとなった。
その後、デジタルガレージとのジョイントベンチャーでテクノラティジャパンとして日本に進出も果たした。しかし、2009年にはソーシャルメディアやその他のブログ検索サービスの台頭と収益化の難しさが理由で2009年に日本市場からは撤退をしている。ちなみに、その当時彼らのサンフランシスコ本社オフィスはbtraxのオフィスと同じビルに入っていた。
連続起業家: デイブ・シフリー
そんなテクノラティのファウンダーがDave Sifry (デイブ・シフリー)である. 元々リナックスやデータベース系の会社を幾つか経営していた彼は、自分のブログを誰がどのように検索して読んでいるかを知りたいと思い、趣味の延長線上で同サービスを自宅のガレージで作った。
彼はそれまでにも4つのビジネスを立ち上げた経験を持つ。なんと最初のビジネスは16歳の時である。実は大学卒業直後は三菱に務め、東京に住んだ事もあるらしい。
そんな彼に出会ったのは2009年、SF New Techでの事。複数のスタートアップが5分間のピッチを行うこのイベントにてその日最後のプレゼンターがデイブだった。
彼は新しく作ったOffBeat Guidesのサービスをピッチ。その卓越したプレゼン力と話術、カリスマ性で、5分を過ぎた後もオーディエンスのリクエストによりプレゼンを続行。強烈なインパクトを与えた。それまでに複数の会社を立ち上げた経験のある彼は、シリコンバレー界隈では著名な経営者の1人であり、いわゆる生粋の”シリアルアントレプレナー”である。
後日、経営者として大先輩の彼が豊富な経験から学んだビジネスにおけるポイントを教えてもらう為に、ユニオンスクエアにある彼のオフィスを尋ねてみた。コミカルな雰囲気の中にも、経営者としての鋭い目を持つ彼が教えてくれた、数々の失敗から学んだ7つの教訓を紹介したい。
数々の失敗から学んだ教訓
僕はね、今までのビジネスで数えきれないほどの失敗をし、学んできた。
あらゆる事を始めはことごとく間違った方法でやってきたからこそ、最終的には最も正しいやり方にたどり着いたと言っても良いと思うんだ。 – Dave Sifry
1. チームは小さければ小さい方が良い
プロダクトを速いスピードでリリースしなければいけないスタートアップの場合、そのチームは出来るだけ小さい方が良いんだ。沢山の人を投入すれば速く進むわけではない。むしろその逆だよ。僕が思うに、プロジェクトに関わる人数とスピードは反比例する。
人数が少ない方が意思決定が速いし、小さいチームの方がクリエイティブな仕事ができるしね。だから、極力チーム編成は最小限の人数にとどめる事をすすめるよ。
ちなみに技術者とビジネス担当の割合は3:1が良いバランスだね。例えば3人のエンジニアに対して、ビジネスマンが1人だ。ビジネス担当が多すぎると物事が前に進みにくくなるし、良い事が無い。
2. 中長期のビジネスプランはほぼ意味が無い
市場の変化が激しい今の時代、中長期を見据えたビジネスプランなんて無意味だよ。特にネット系のビジネスの場合は、6ヶ月より先のプランは単なる希望的憶測でしかないね。1年後のプランを作るなんて時間の無駄だと思うね。
そりゃ僕だって投資家向けに詳細な5カ年プランを作ったりするけど、そんなの投資を受ける為の形だけのハッタリだよ。
常に変わり続ける環境にフレキシブルに対応したいと思うのであれば、プランの目安は3ヶ月ぐらいだろうね。そして状況の変化に応じてそのプランを常に変え続ける事だ。
3. 個人的な感情では無くロジカルなトラッキングが重要
テクノラティを展開した際の一番大きなミスは、詳細なアクセス解析やA/Bテストをしなかった事だ。そもそも個人的な理由で始めたサービスだったから、始めのうちはしばらくユーザーの動きを客観的に分析する事をしなかった。
例えばサイトのデザインを変更するときだって、無意識のうちにデータよりも自分の直感を優先してしまい、多くの場合 “社長の一存” で内容が決まった。
もしくは、他のスタッフが “この機能を追加したらクールだと思う” との理由だけで機能変更をしたりしてたんだ。本来は緻密なトラッキングデータ解析を行い、客観的な事実に基づき、何が正しいかをスタッフに任せるべきだったね。
結局、分析ツールを作成し、しっかりとしたトラッキングが出来るまで3年かかったよ。Webサービスを運営するのであれば、自分達が “どう思うか” よりも “データがどうなっているか” を優先した方が良い。僕たちの場合だって実際のところ、ユーザーは予想と全く違う動きをしていたんだ。
4. スタートアップが豊富なリソースを確保するのは間違い
これは意外だと思うかもしれないが、スタートアップにとってヒト、カネ、時間のリソースは少ない方が良い。制限がある方がフォーカスして優れたものが作れると思うんだ。
逆に豊富なリソースを投入しても完璧を求め始めてしまって、いつまでたってもプロダクトがリリース出来なくなるよ。人間も会社も追い込まれた時の方が良い仕事をするだろ?リソースの確保はビジネスがある程度軌道に乗ってからで良いよ。
5. バージョン1はこれ以上ないぐらいに内容を削りさっさとリリース
もし君が最初のバージョンのリリースを考えているとしたら、絶対にこれ以上無いぐらいの最低機能のものをリリースした方が良い。それでもまだ削れるところがあると僕は断言するね。
だって、リリースできること自体が一つの機能だぜ。そもそもネット系のサービスを作る時に、ヒットするかも分からないのに、将来の事やユーザーが多くなったときの事を考えて作るのは間違っているよ。
いつも心に”とりあえず”の精神を忘れずに、最低限バージョンをさっさとリリースする事。そして僕が言いたいのは、”どんどん失敗をしまくって、修正をしまくれ”って事だ。
6. 会社はカルチャーが大切
僕は以前に3人で始めた会社を18ヶ月で480人まで拡大した事がある。その急激な成長が原因で会社のカルチャーがおかしくなったんだ。ビジネスを上手く行かせたいのであれば、正しい企業カルチャーを育成する事。
経営者として会社を正しいカルチャーに導く事が成功の近道となる。そして、会社の急激な成長はカルチャーを崩す可能性があると言う事を理解してほしい。
もし君が自分が望むカルチャーの会社にしたければ、規模が小さいうちに冷静に考えるべきだ。大きな投資を受けたりして急激に規模を拡大する前に十分な時間を取って、本当に会社がやるべき事、誰と本当に仕事をしたいかをじっくり考えて見てほしい。
進むべき方向が決まったのであれば、カルチャー形成の為にトップが率先して行動で示す事。そして、従業員を雇うときは、面接の段階から会社の方向性と存在価値を全ての候補者に説明し、少しでも共鳴しなさそうであればどんなに優秀でも採用しない事。
また、採用した後も、働き始めた直後の従業員の動きに気をつけた方が良いだろう。経営者として会社のカルチャー形成及び維持は最も重要な仕事の一つになる。
7. 自分の好きな事をやれ
最後に起業家としてうまく行く秘訣が一つだけあるとしたら、自分の好きな事をすること。それ以外無い。
本当に好きな事じゃない場合は途中で諦めてしまうだろう。情熱を傾けられるものをとことんやれ。たとえ失敗しても、それまでの時間は素晴らしい経験になるはずだ。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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