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【日本とアメリカでのデザイナーの違い】文化を超えたクロスカルチャーデザインの秘訣
今年の1月30日(月)に、ユーザーリサーチを手がけるEcho Userが運営するイベント“panel discussion on cross-cultural design (US-Japan)”に弊社CEOのBrandonもパネラーとして参加。イベントのテーマは、母国とは異なる環境下でデザインの仕事をする”クロスカルチャーデザイン”。今回は、グローバルに活躍するデザイナー3名によるディスカッション内容を紹介させて頂きたい。
日本企業との仕事をするデザイナー達によるパネルディスカッションイベント
イベント会場では、パネリストの距離が近いことから参加者からの質問にパネリストたちが答えていくインタラクティブな形式で、終始和気あいあいとした雰囲気だった。また、サンフランシスコでデザイナーとして働く人が数多く参加し、率直で興味深い質問が繰り広げられた。今回のパネルディスカッションのスピーカーは以下の3名である。
- Brandon K. Hill: Founder and CEO, btrax
- Roxy Chaney: シニアUXデザイナー, SONY Network Entertainment Int’l
- Stacey Baradit: UXデザイナー, Apple
Q:日米で異なる業務上でのコミュニケーションとは?
Brandon: 日米を比較すると、ステークホルダーの関係性からいって、アメリカの方が断然コミュニケーションがとりやすいです。アメリカは責任を持つ部分が個々に分散されているので、話をつけやすい。日本だと、契約の話でかなりいいところまで進んでいたのに突然、「申し訳ございません。上司から承認を得ることができませんでした。」と今まで進めてきた話が簡単に消えてしまうことなんて、良くあることですね。
Roxy: 日本は何事においても丁寧に準備をしていますよね。ダブルチェックなんて、ぬかりないほど。ただその一方で、その場で用意した質問を受け入れてもらえないこともあったのは事実。先に話してもらわないとそのような質問には答えられない、という印象を受けました。
Stacy: そうですね。日本で仕事をした時は、仕事上のパートナーとの会食など含めスケジュールがとても過密だったのを良く覚えています。アメリカではUXデザイナーによる意思決定の過程が非常に重要になるため、普段から上司との信頼関係を構築しています。その点では似ているかもしれませんね。
Q:異文化環境に身を置くからこそ、気づかされることは?
Brandon: 日本人デザイナーたちの仕事ぶりには、いつも職人魂を感じます。日本人は職人肌で、完璧で洗練された仕事をするデザイナーが多いです。その一方でUXまで考えることができるデザイナーは少ないのかもしれません。そういう方はビジュアルデザインのフィールドに偏りがちで、テクノロジーやビジネス的な視点を必要とするプロジェクトには参加できないんです。それに比べると、アメリカのデザイナーの方が、幅広い知識を持って、より細かなところに気がついているように見えますね。
Stacy: UXデザインはとても良いものですし、アメリカ全土もそうですが特にサンフランシスコ・ベイエリアではよく利用される手法だと認識しています。ですが、中国でのプロジェクトで、このように指摘を受けてことがあります。“これでは、アメリカのプロダクトになってしまいますよ!”と。仕事をする環境に合わせたデザインを提供することの重要性を再度考えさせられました。
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Q:デザインの仕事をする上で、ユーザーから的確なフィードバックを受けるためのコツは?
Roxy: 難しい問題ですね。フィードバックは製品やサービスの改善にはとても必要なので、どんな意見でもいいので正直なコメントをくださいと頼むことはありますよ。そのためにも、ネガティブな意見を言っても大丈夫なんだと、相手に安心感を持ってコメントしてもらえるような雰囲気作りはとても重要になります。あとは、フィードバックを出してもらうための記入表を作り、ネガティブな意見を書くセクションをあえて設けることもします。
Stacy: 私の場合は、まずポストイットにフィードバックを書き出してもらい壁に貼ります。その中で一つでもネガティブな意見が見つかったら、それをあとで全体の話題として話し合うことで深堀りすることができます。
Brandon: 日本人の評価は案外厳しいですよ。食べログなど飲食店のレビューサービスでは、星3~4はかなり良いレストランになりますが、Yelpでの星3.5あたりだと、わざわざ行くことはないでしょう。オフライン上では、食べたものが美味しくなくても「美味しい」とコメントする人もいます。その点では、一緒にお酒を飲んで打ち解けた後、ようやく正直な意見を言ってくれる文化はまだ残っています。
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Q:日本企業と働く際に心掛けていることは?
Roxy: 言語の差には気をつけています。例えば”crafty”という単語ですが、辞書での説明がなんとも曖昧なんですね。アメリカの市場では、“いじわるな”“いたずらな”といったネガティブなイメージが含まれる。でも日本では、そういったことは知られていなくて、クリエイティビティといった意味を連想させるようなんです。そういうときは、Google Image Searchでイメージ画を見てみて!とお願いするのです。
例えば、この場合なら”crafty image” とか”crafty fox”とか。そうすると、アメリカの市場で使われている表現を超えた意味を持つ画像が出てくるときがあるんです。その単語について大衆がどんなイメージを持っているか、言葉では表すことのできないところですよね。
Stacy: たしかに言葉の壁を感じることはあります。私が気をつけていることの中の1つに、会話を通して得た自分の認識を提示して、間違っている部分を直してもらうことです。「あなたが言おうとしていることはこういうことですか?」とお互いの理解度を確認して必要があればオープン・エンド・クエスチョン(相手に自由な回答権を与えること)を続けて、より多く情報を得られるように努めています。
Q:日米で異なるデザインそのものをどう捉える?
Stacy: 文化的にアメリカは、9:1くらいの割合で、外側より中身を大切にしてるように思えます。それがパッケージデザインにも表れているのでは?
Brandon: 日本は何事もコンセンサスベース。誰にフォーカスするのかあまり考えていないのではないかと思います。できるだけ問題にならないよう、多様のバリエーションを揃えてより多くの人に向けて作っているから、複雑化するのかもしれません。対してGoogleのサーチボックスはとてもシンプルです。このように、ひとつの要素だけでサービスを提供することは十分に可能ですが、日本で行うのはまだまだ難しいです。
Roxy: 以前アメリカ、日本、ドイツの3カ国に向けた商品製作に関わったことがあります。各国、各店によってフィーチャーしたい内容やその量というのは異なるので、私たちデザイナーは、ブランドとそのスタイルガイドにのみ焦点を絞りました。あとのプレゼンの仕方は、各国に任せてしまうんです。
Q:グローバル化が進む中、デザインに文化的背景を感じることは多い?例えば、アジアでよく目にする可愛い動物のデザインをどう感じる?
Brandon: 中国だと動物の持つ意味に気を使わなくてはいけない面が多そうですが、日本はあまりないのではと感じています。それよりも、可愛いことが重要なのかもしれませんね。
Stacy: アメリカでは銀行や不動産のような業界では、まず動物のデザインは選びません。子供に向けたものではないと考えるから。一方でアジアの国々では、可愛らしい動物のモチーフを使っていたりしますよね。シリアスなところでも、遊びが効くところが文化として違うのかなと思いました。
Brandon: Afracの保険会社が起用しているアヒルなんていい例ですよね。日本ではあのアヒルが大人気になりました。
Roxy: 私はちょっとわからないですね。これまでに、アイコンやイラストレーションの仕事もしてきましたが、動物がもつ意味がどうとかで問題になったことはありませんでした。
Q:日本でのデザイナーの立ち位置とは?
Brandon: 残念なことに、日本のデザイナーはエンジニア以下の扱いになっているのが現状です。1日12時間労働は珍しくないのに、賃金は決して高くない。多くのデザイナーたちは、みな同じような仕事を求められるので、代わりがいくらでもいるというような扱いを受けています。でも、IDEOのような海外のデザイン会社に対しては大金を費やすことを厭わない。なぜなら、日本の会社は海外のデザインにユニークさや価値を感じているからだと思います。
Roxy: 会社によってデザイナー立ち位置や働き方が変わるのではないでしょうか?東京でデザイナーをしている私の友人は、仕事をとてもエンジョイしているみたい。長時間労働は確かに日本の典型的な問題のようですが、流動性が高まってきていて、転職したり、独立したりする話も聞いています。彼らの仕事ぶりを聞けるのは刺激になっています。少しづつでも文化は変わってきているのではと感じています。
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