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ニューノーマルで注目度アップ! アメリカの非接触サービス12事例
- 接触をいかに減らすか?ニューノーマル時代、Contactless (非接触) サービスに注目
- 小売: 「目新しい」から一転 Amazon Goのようなレジレスサービスが大きく普及
- 宅配: ロボットにドローンまで!無人宅配サービスの実用化が進行
- 医療: 感染リスク軽減 アプリやロボットで医療にも「非接触」というアップデートを
残念なことだが、コロナウイルスの流行は収まる気配が見えない。そんな中で「After コロナ」でなく「With コロナ」として、コロナウイルスと付き合いながらニューノーマル (新しい生活様式)のライフスタイルが提唱されている。
ニューノーマルを実現するために重要になってくるのがContactless(非接触)サービスだ。ニューノーマル時代では、日常生活で他人との接触をいかに減らすかが感染リスクを減らすポイントになる。そのため非接触を保ちながら、今まで通りの生活を行えるサービスは重要になる。
コロナ対策で躍進する非接触購買サービス
今、Contactless(非接触)が注目されており、続々と新しいサービスが登場している。非接触はニューノーマル時代のスタンダードになっていくだろう。そこで今回は、生活していく上で重要な購買に関する小売、宅配、医療での非接触を実現するサービスを紹介する。
非接触決済サービス市場の拡大
普段の買い物で注意が必要なのは、店員との最大の接触点となるレジでの支払いだ。
アメリカではコロナ以前からモバイルアプリなどによるスマートペイメントは普及し始めていたが、そのシェアは大きくなかった。モバイルペイメントアプリの中でも1番よく使われているApple Payですら使用率は10%以下だった(参考:CNBC)。
コロナ以前の支払い方法別の使用率。CNBC記事より抜粋
しかし、コロナウイルスの流行により、この導入に拍車がかかることが予想されている。多くの人が手に取る現金は、以前から不衛生であると指摘されており、ニューノーマル時代では、現金を扱う店員やレジとの直接接触を避けたいという感覚は一般的になるだろう。また、クレジットカードもサインを書くなど、支払いの際に不衛生な接触の可能性がある。
そのため、非接触対応のクレジットカードやモバイル決算アプリといった非接触支払いサービスが注目されている。これらの支払いサービスはレジ端末にカードやスマホをかざすだけでよく、非接触を保つことができる。
また、導入のハードルが低くなってきていることも拡大に貢献している。後述するレジレス型の店舗のような大規模なシステムの導入が難しい小店舗でも、モバイルアプリやクレジットカードを利用した非接触型の支払いシステムの導入は可能だ。
実際に、非接触決済サービスを利用する消費者も増えてきており、非接触決済サービスの市場は今後5年間で大きく成長するとみられている。
Visaの調査によると、全米での同社の非接触決済サービスの利用者数は、2019年11月の月間利用者が2,500万人だったが、コロナ流行の影響のため2020年3月には3,100万人にまで増加している。そして、2019年3月から2020年3月の1年間で150%増加している。
生活に浸透してゆくレジレス型小売店
また、Amazon Goのようなレジ無しコンビニでは、レジでの支払いというアクション自体が不要だ。ご存知の方も多いだろうがAmazon Goは、Amazonが運営するレジレスコンビである。店内のカメラなどによるセンサーが、顧客の購入したものを認識し、自動精算されるため、レジでの店員との接触はゼロだ。
関連記事:Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた
Amazonは、食料品スーパー版のAmazon Goとなる『Amazon Go Grocery』の展開も進めている。先日2号店がオープンし、そのサービスを拡大している。
こういったレジでの支払いを無くそうという試みは増えてきており、ウォルマートやアメリカのセブンイレブンでもセルフレジを発展させた非接触の支払いシステムの導入を検討しているという。
Amazon Go Groceryの様子
このように、コロナウイルスの影響により、世界中で、こういった非接触決済サービスの導入は世界中で進んでおり、そのマーケット規模は大きな成長が見込まれる。非接触決済サービスの進化は感染リスクの低減だけでなく、利用者の利便性向上も期待できる。
店内の感染リスクを減らすロボット従業員
買い物の際に感染リスクがあるのは、支払いだけではない。店内のフロアや商品が清潔か気になる人も多いだろう。当然、商品の陳列や商品棚の空きの確認は人が行わなければならない。来客が商品を手にとって戻す事も日常茶飯事。これは従業員の感染リスクも高めている。
しかし、これらの作業もロボットが代行することで、感染リスクを低くすることができるようになる。例えば、陳列棚の商品確認をロボットが代行すれば清潔な環境を保つことができ、商品を手に取るのも安心だ。
サンフランシスコのロボット企業Bossa Novaの店内巡回ロボットは店内を見回り、陳列棚の空きを確認してくれる。元々は人間の手間を軽減し、商品管理の効率化のためにスーパーマーケット等で導入が進められていたが、コロナ禍の中で従業員の感染リスクを減らす手段として注目されている。
例えば、スーパーマーケット大手のウォルマートは、現在、350店舗でBossa Novaのロボットを使用しているが、将来的に1,000店舗にまで導入を拡大する計画を発表している。
Bossa Novaの店内巡回ロボット
Bossa Novaと同じくサンフランシスコに拠点を置くSimbe Roboticsも小売店向けの在庫管理ロボットを開発している。Simbe RoboticsのロボットTalyはウォルマートなどで導入が進められており、ここサンフランシスコではスポーツ用品店のDecathlonでもその働きぶりを見ることができる。
ウォルマートの店内を巡回するTallyの様子
コロナウイルス除去に貢献する清掃ロボット
店内の清掃業務は感染リスクの高い作業の1つだ。この清掃業務を非接触で行う方法として清掃ロボットが注目されている。ロボットが作業を代行する事で従業員の感染リスクを抑えて、清潔な環境を維持できるのだ。また、コロナ対策に特化した殺菌ロボットも開発が進められている。
また、清掃ロボットは清掃ルートを設定しておけば、人間のいない深夜や閉店後などに自動で作業をしてくれるため、作業効率の向上にも貢献し、人間の負担を減らしてくれる。
カリフォルニア州サンディエゴのBrainCorpは、自律型の清掃ロボット用のOSを開発している企業だ。BrainCorpはソフトバンクロボティクスとも提携しており、彼らのOSを搭載したロボットは日本でも導入されている。
コロナ以前から、清掃業の人手不足解消などのためにスーパーマーケットなどで導入が進められて来ていたが、コロナ流行後に普及率が急激に上昇している。BrainCorp社製のOSを搭載した清掃ロボットの使用率は、2020年3月に前年の同月と比べ13.6%も増加している。
こういった従来の掃除ロボットのマーケットが拡大する一方、コロナの対策として新しいタイプのロボットも登場した。マサチューセッツ工科大学は、UV-C(C領域紫外線)ライトを用いた殺菌ロボットを開発した。
新型コロナウイルスは紫外線に弱いという研究結果があるため、MITはそれを受けて4月初旬からコロナ対策のために、このロボットの開発を開始したという。
このロボットは、4000平方フィートの倉庫全体を30分で殺菌できるそうだ。将来的にはレストランやスーパーマーケットなど各所に導入されることが期待されている。
MITの殺菌ロボット
フードロボットも生活の一部に
アメリカではスーパーマーケット等で、好きな野菜を選べる量り売りのサラダバーが一般的だ。このサラダバーは人気があったが、コロナの影響でサービス中止を余儀なくされている。
しかし、昨今のヘルシー志向もあり、その需要は高い。この問題を解決してくれるのが、ロボットによる非接触のサラダ提供サービスだ。他の利用客が触れる心配もなくなり、安心して商品を食べることができる。
そんな中、特に注目されているのがChowboticsのサラダ提供ロボット『Sally』だ。Chowboticsはベイエリアに拠点を構えるスタートアップ企業で、彼らのSallyはスーパーや病院内の食堂にあるサラダバーの代替手段として、注目を集め、既に160箇所以上で導入されている。
サラダ調理ロボットSally
今後は、人件費や効率化と言う理由よりも、非接触という観点から、様々なジャンルの料理に対応したフードロボットが登場すると予想されている。
ちなみに、ロボットが調理するフードサービスは既にいくつか存在する。ボストンのSpyceやサンフランシスコのハンバーガー店、Creatorだ。これまでは、ロボットが調理するという目新しさが先行し、一部の人たちはロボットの料理に懐疑的だったが、ニューノーマルが定着するにつれてこういったロボットがレストランが受け入れられて一般化していくのではないだろうか。
Spyceのロボットキッチン
非接触宅配サービスが一般化する
宅配ロボットサービスの実現は遠い未来では無い
先述のような非接触サービスによる買い物ができるとしても、外出自体を避けたいという声もある。そういった場合は、宅配サービスを利用することで、外出を避けられるが、さらにその上をいく、非接触の宅配が広まりつつある。
これを可能にするのが、ロボットやドローンによる配送だ。コロナウイルスの流行以前から、eコマース需要の増加や宅配業の人手不足解消のため、配送ロボットやドローンの開発や実証実験は進められていたが、コロナウイルスの流行に伴い、非接触の宅配サービスとしても大きく注目されている。そのマーケットの年平均成長率は19%以上と言われ、大きく成長すると見込まれている。
代表的な宅配ロボットは、配送サービス大手のFedExのSameDay Bot、AmazonのScoutやベイエリア発のロボット企業であるKiwibotやStarship Technologies<が挙げられ、コロナ以前から実証実験や特定の地域でのサービスが展開されていた。
関連記事:シリコンバレー発、人の課題を解決する未来のロボットたち
Starship Technologiesの宅配ロボット
こういった宅配ロボットサービスの基本的な内容は、モバイルアプリを通じて、サービス加盟店の商品を注文し、宅配ロボットが利用客の元へ商品を直接届けるというもの。
必然的に、対応エリアはロボットの動ける範囲内限られてしまうが、注文してすぐに商品が届くため、フードデリバリーサービスやドラッグストアから医薬品を届けるような宅配ロボットが多く開発されてきた。
無人型の自動運転の実現!宅配ロボットNuro
違ったアプローチの宅配ロボットとして、自動運転車をベースにした配達ロボットも注目されている。このタイプのロボットは、車道を走行できるため、大量の荷物を遠くまで配達でき、各家庭などの届け先に配送して回ることができる。
また、基本的にはドライバーがいない完全無人のため、一般の自動車の自動運転よりも技術的なハードルや法的な規制が少なく開発しやすいだろうと言われている。
その代表例の1つが、シリコンバレーのロボット企業『Nuro<』の自動運転ロボットだ。Nuroは2019年にはソフトバンク等の企業からおおよそ10億ドルの出資を受けており、自動運転ロボットによる宅配サービスの実現が期待されていた。
また、ウォルマートや大手ドラッグストアチェーンのCVS Pharmacyなどの企業と提携しており、こういった食料品や医薬品などの無人宅配の試験運用が始まっている。Nuroの自動運転ロボット『R2』はドライバーも搭乗者もおらず、荷物だけを運ぶデザインとなっている。
そのため、車体にはサイドミラーなどのドライバーのための装備がない、無人宅配特化型のデザインになっている。ドライバーとの接触が無い非接触の宅配サービスだ。
Nuroは完全自動運転のためサイドミラーの無いデザインになっている
ドローンによる宅配サービスはすでに開始されている
ドローンによる宅配サービスも未来の話ではない。Amazon の『Prime Air』やアメリカの宅配業大手のUPS、Uber Eatsなど多くの企業が参入し、その開発レースは激化している。宅配ドローンサービスも実証実験や特定地域でサービスが開始しているものもあり、コロナウイルス流行で人手による配送が難しくなる中、そのサービス拡大が期待されている。
例えば、サンフランシスコに拠点を構える『Zipline』は、米連邦航空局(FAA)から最大30マイル(約48km)の長距離配送の承認を得て、ドローン配送サービスを開始した。ドローンによる輸送は感染リスクの軽減や運送時間の短縮などのメリットがある。また、Ziplineはルワンダ等のアフリカ諸国で輸血用血液や医薬品のドローン配送を行ってきた実績があり、その成果が期待できる。
特に注目すべきがGoogleの親会社アルファベット傘下の企業Wingだ。Wingのドローンも、2019年にFAAの認可を受けており、既にバージニア州で日用品や医薬品の配送サービスを提供している。
Wing社によると、コロナウイルスの流行に伴いその利用は激増しているという。また、自宅待機となっている子供等のために、図書館から本を配送するサービスも開始しており、全米規模でサービスが展開される日もそう遠くなさそうだ。
さらにアメリカ以外でも、オーストラリアとフィンランドでもWingのドローン配送サービス提供が開始されている。このように海外進出も積極的なため、日本でもWingのドローンが見られるかもしれない。
Wingによる宅配ドローンサービス
宅配サービスの未来はSF映画の世界の実現
現在のロボットとドローンによる宅配系サービスを紹介したが、もしかすると読者の中には、「とはいえ若干の接触や煩わしさは残るのでは」と思っている人がいるかもしれない。最終的には利用者が荷物を受け取るために何かしら行動する必要がある。
例えば、届け先がマンションであれば、住人はわざわざ荷物を取りに建物の外に出ないといけない。エレベーターの利用などマンション内を移動する際に、感染リスクは残ることになる。
しかし、将来的にはその問題も解消されると予測されている。Agility Roboticsの人型宅配ロボット『Digit』は、二足歩行によりデコボコな地面や階段も気にせず荷物を自宅前まで届けてくれるのだ。
SF映画のワンシーンのようだが、いずれこれは現実になり配達業務は完全に人の手から離れることになるだろう。
二足歩行ロボットDigitが荷物を届ける
遠隔医療サービスで患者・医師双方の健康を守る
病院に行かずに診療が受けられる
ニューノーマル時代では、コロナ感染を気にしながら生活しなければならない。中でも病院は、検査や診療などで必要性が高いから利用する一方で、院内感染や病院までの移動感染のリスクが高い。こういった状況で、どう診療を受けるかが課題となる。
そこで、注目されているのが遠隔医療サービスだ。既に様々な遠隔医療サービスが開始されており、ベイエリアでは『PlushCare』が注目株だろう。PlushCareはサンフランシスコの企業で、病院と提携しながら、モバイルアプリによるオンライン診療サービスを提供している。
PlushCareは、すでにその導入実績と急成長っぷりがみられる。もちろん特に重宝されたのがコロナウイルス拡大時だ。カリフォルニア大学サンフランシスコ(UCSF)のメディカルセンターでは、コロナウイルス流行前には1日150人ほどの患者がPlushCareの遠隔医療サービスを利用していたが、コロナ後では1日平均600人を超えるようになったのだ。
さらにUCSFでは、この遠隔医療サービスの利用者数が来院患者数を上回っているという。こういった経緯もあり、まだまだPlushCareの需要は大きく伸びているのだ。また、PlushCareは全米でオンラインによるコロナウイルスの抗体検査を実施すると発表している。
医療従事者の安全も確保
医師をサポートする非接触の遠隔診断サービスも登場してきている。医療ロボットを通じて遠隔地から患者と対面し、感染リスクを軽減できるというものだ。
特にユニークなのが、Boston Dynamicsの4足歩行ロボット『Spot』だ。日本でも、ソフトバンクホークスの応援ダンスなどで知名度が上がってきている。
Spotは医療ロボットではないが、様々な機器を搭載できる拡張性の高さを活かし、コロナウィルスと戦う医療従事者を支援している。例えばiPadを搭載しリモートのミーティングをサポートしたり、食品や医薬品を感染リスクの高いエリアに運搬するなどだ。高度な4足歩行機能によって、他の車輪型のロボットでは走行できない段差や階段なども歩行できるのは大きなメリットだ。
今後は、体温や呼吸数などを検知できる医療用のセンサーの搭載も検討していると言う。近い未来、こういったロボットが病院内を歩き回るのが当たり前になるかもしれない。
ダンスパフォーマンスから医療のサポートまでこなすSpotはその奇妙な外観からは想像できないほど、大きな可能性を秘めている。
医療従事者を支援するBoston DynamicsのSpot
最後に
Amazon Goや宅配ロボット、清掃ロボットなど、元々は作業効率・利便性向上や人手不足解消を目的としたサービスだった。しかしコロナ後に「非接触」という新しい価値観が生まれ、それに合わせてサービスの質が変化しつつある。こうした変化に順応できる企業・サービスがニューノーマル時代を生き残っていくのだろう。
また、これまでは、人間によって行われていたサービスをロボット等のテクノロジーが代替することを快く思っていない人達も多かった。
一部の人々は、AIやロボットに仕事を奪われることに繋がるとサービスが普及することを危惧し、ロボットレストランは人間味がないと敬遠すらしていた。
しかし、コロナウイルスの流行に伴いその意識が変わってきているようだ。非接触サービスの普及は、安全性の確保だけでなく、日々の業務から人間の介在を減らし、より業務効率の向上にも貢献してくれるだろう。
ビートラックスは、時代の変化や最新トレンドを分析し、そのニーズにあったUXを提供するサービス開発やその支援を多く手がけてきた。ユーザーを理解し、彼らの課題を中心としたサービス開発にご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考記事:
Visa reports on impact of Covid-19 on contactless payment adoption
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