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協働ロボットの導入メリットと製造業事例3選
製造業におけるロボットの進化は目覚ましく、ロボットの導入が広がりつつある。製造業で活用されているロボットは産業ロボットの中でも今、人と協力して働く協働ロボットに注目が集まっているようだ。
協働ロボットを導入するメリットは、人がロボットに任せた作業の時間を、創造的な仕事や、人ならではの価値が作れる仕事に充てることができる点だといえるだろう。
そこで本記事では、製造業における協働ロボットがもたらす体験に注目し、Carbon RoboticsとSeriforge、Creatorの協働ロボット3社について詳しく紹介していきたい。
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そもそも協働ロボットとは?
協働ロボットの世界市場規模は急速な拡大が見込まれており、2018年の推計7億1000万ドルから、2025年には123億ドル市場に達すると予測されている。
協働ロボットとは産業ロボットの一種で、人と接触しても危険が無い、人と一緒に作業ができるロボットのことを指す。
一般的な産業ロボットはロボットそのものが大きく、人に危険が生じるため、人と同じ場所で協働するというのは難しいと言われてきた。
一方で、協働ロボットの可搬重量は最小0.5kg。最大でも35kgのものが一般的であり、人と同じ作業場で働くことが可能な大きさ、重さなのである。
同じ作業を繰り返し継続して行うといったような単純作業を協働ロボットが分担し、接客といったような人ならではの強みを活かせる業務に専念することを助ける。
例えば飲食店では、食品製造の部分をロボットが行い、出来上がった食品を受け取ってお客さまへの提供は人が行えるようになるのだ。このようにして同じ場所で、ロボットと人が協働することが可能になるのである。
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また、協働ロボットは価格面、導入の容易さでも注目されています。従来、製造業に関わる産業ロボットは高い初期投資と工場の大型ライン、セットアップに高度な技術を必要としたため、中小規模の企業で取り入れるのは費用面・技術面の両面から難しいものであった。
一方協働ロボットは価格も比較的安価で、セットアップも容易かつ短期間で導入可能。企業の規模に関わらず、導入できる改善施策として採用されるケースが増えてきているようだ。
それでは、実際に製造業における協働ロボット3社を紹介していこう。
1.Carbon Robotics:低コスト・高性能なロボットアームが人の仕事を助ける。
Carbon Roboticsは2014年に設立されたサンフランシスコに拠点を置くスタートアップ。Carbon Roboticsの目標は、人間が人間の仕事をし、ロボットがロボットの仕事をする世界を創造することだ。
Carbon Roboticsの主力商品であるKATIAは中小企業でも取り入れやすい協働ロボットだ。小さい腕のようなロボットで、価格を抑えるかつプログラミングが容易でトレーニングがしやすく、高度な作業を自動化することができるため中小企業でも取り入れやすいのが特徴。
KATIAは他社のアーム型協働ロボットに比べ導入コストを10分の1まで削減可能にし、ロボットの専門家で無くても数時間で設定することができる。
例えば、ケーキのデコレーション作業をKATIAに指示する場合、タブレットにデコレーションの絵を書くことでKATIAにプログラミングすることが可能。そしてその絵をKATIAが実際にデコレーションしてくれるのだ。
デコレーションのデザインといった創造性が必要な作業は人が、そのデコレーションを施すのはロボットが行うといった協働作業が可能になる。
もちろんカスタマイズも可能で、ロボットアームの先端部分を交換するだけで3Dスキャンや3Dプリントなどさまざまな作業を行うことができる。
2.Seriforge:高性能材料の生産も協働ロボット導入でコスト減を実現
Seriforgeは2014年設立のサンフランシスコを拠点にするスタートアップで、炭素繊維を自動で大量生産することを可能にした。
炭素繊維の部品の市場は年間13%成長していて、2020年には年間35億ドルに達する予想されており、生産の拡大が必要になっているのだ。
炭素繊維は鋼やアルミなど従来の構造材料に比べて軽量かつ強い材料だ。安全性と性能を落とすこと無く軽量化が可能なため、電気自動車や航空宇宙分野、スポーツ用品分野などでニーズがあるのだ。
しかしながら従来の炭素繊維の成形型は、炭素繊維織物のロールから裁断し、金型に合わせていたため、時間とコストがかかってしまっていた。
一方、Seriforgeは3D印刷のように炭素繊維部品を大量生産することができ、独自の炭素繊維3D製織プロセスを使用して複雑な炭素繊維の生産を可能にしている。これにより、製造コストを最大90%削減することに成功したのだ。
同社は生産ラインの増設を続けていて、現在3番目の生産ラインを追加予定だ。CEOのJon Hollander氏のインタビューによると、すでに労働者を増員している。
工場内でロボットと人が協働して働くことで、ロボットに移行可能な作業と人が必要な作業が効率的に分担され、大量生産を可能にし、生産性を高めている。
3.Creator:世界初!ロボットがハンバーガーシェフに
世界で初めてロボットが調理するハンバーガー店がサンフランシスコにオープンしました。Creatorのハンバーガーは20のコンピューターと350のセンサー、50のアクチュエーター(電気・油圧・空圧などのエネルギーを、回転運動・直進運動などのシンプルな機械的動きに変換するための機械的な要素のこと)を搭載したロボットによって調理される。
Creatorのロボットはパンをスライスし、トーストすることから完成まで、全ての工程を約5分で行う。ちなみに肉は注文を受けてから挽かれるそうだ。
一般的なハンバーガーショップでの注文から受け取りまでの流れは、まず注文のためにレジに並び、レジにて注文を行い、決済。その後注文した商品ができあがるまでレジ付近で待って、商品の受け取りをするといった順序だった。
しかしCreatorでは来店してから列で並んでいる際に決済機能つきのスマートフォンを持った店員が注文を取りに来るので、そこでクレジットカードによる決済を行うことが可能だ。
通常のハンバーガーショップのレジにあたるカウンターでは、商品の受け渡しのみを行い、レジ待ちの時間にあたる時間に商品をオーダーすることができるため、効率的に時間を過ごすことができる。
(ハンバーガーの具はオーダーを受けて自動でスライスされ、調理されていく。画像はこちらより転載)
また、ハンバーガーの製造工程はガラス張りで、購入者から見えるようになっている。受け渡しカウンターの隣に設置されているので、待ち時間にハンバーガーができるまでの工程をつい見入ってしまいそうになる。
まるで映画の世界に入ったような感覚で、購入者にとってロボットが作る工程を見ること自体がエンターテーメントのようだ。
Creatorのハンバーガーは6ドルで、食材はオーガニックであり、出店しているサンフランシスコの人件費、土地代を考えると比較的安価だ。
ロボットの活用による人件費や賃料の節約することによってこの値段での提供が実現できている。そして通常のファストフード店の厨房より少ないスペースで調理が可能なのも大きな特徴だ。
Creatorはロボット導入はしているが、注文受付やテーブルの掃除などの作業は人が行っている。
従業員によると、ロボットによる効率化はされているが、人による接客も行っているため、働いている人が「ロボットに仕事を取られている」のではなく「ロボットとコラボして働いている」というポジティブな感情になるとのこと。ロボットと人のバランスを意識した活用が施されているように感じた。
ちなみに実際食べてみると素材が新鮮でとても美味しく、店内も賑わっていた様子だったのが印象的だった。
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協働ロボットで変わる製造業の今後
今回はサンフランシスコ・シリコンバレーの製造業におけ協働ロボット3社をご紹介させて頂いた。
協働ロボットを導入した事例で共通していることは、ロボットは人の仕事を奪うのでは無くロボットが人の仕事を助けることで、人は人の強みが活かせる仕事により専念することができるということなのだろう。
少子高齢化により労働人口が減少する日本の製造業の課題を、協働ロボットが解決してくれることが当たり前になる日がそこまで来ているのかもしれない。
戸崎 いずみ -Guest Writer- Consultant / 信託銀行で個人投資家向けに資産運用・継承相談を経験後、大手広告会社でハウスメーカーと住宅購入者のマッチングを行うカウンターサービスのチーフを務める。その後、投資家向け経済情報サイトで記事企画・執筆を経験。現在は金融・住宅を専門分野とし執筆を中心に活動。 |
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