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アメリカ西海岸のCEO達に学ぶ4つのワークスタイル
社内コミュニケーションツールやタスク管理ツール等テクノロジーの発達で「いつでも、どこでも、誰とでも働ける時代」になっている。一方、今まで以上に仕事とうまく向き合わないと四六時中仕事のプレッシャーやストレスに晒されてしまう時代でもある。自己管理をどのように行うか、その能力は今まで以上に求められていると言えるだろう。
今回はそんなテクノロジー化が進む社会の中で、自分流で仕事と向き合う方法を紹介する。アメリカ西海岸のCEO達の事例を中心に彼らがどのようなルールを持って自身の仕事と私生活を保っているか見ていく。
1. ワーク・ライフ・バランス vs. ワーク・ライフ・ハーモニー
ワーク・ライフ・バランスという言葉が広く使われるようになって久しいが、それに加え数年前からワーク・ライフ・ハーモニーという考え方も広まっている。この2つの考え方のどちらを支持するかはアメリカ国内でも人によって大きく分かれている。
ワーク・ライフ・バランスを実践するYouTube CEO兼5児の母 スーザン・ウォシッキー
説明不要だと思うが、ワーク・ライフ・バランスは仕事と私生活の線引きを明確にし、人生におけるこの2つの側面両方の充実を狙っていこうとするもの。YouTubeのCEOで、Forbesによる最も影響力のある女性リーダーの1人に選ばれたことがあるスーザン・ウォシッキー(Susan Wojcicki)氏は5人の子を持つ母としても有名で、ワーク・ライフ・バランスの重要性を語る人物の1人。
Susan Wojcicki
彼女は2016年7月のWall Street Journalのインタビューにおいて、夫と5人の子供達と一緒に夕食をとるために6時頃にはオフィスを出ると語っている。自宅にいる際は家族との時間を優先するために、午後6時から9時までの3時間は一切メールを確認しないというルールを設けているという。スマートフォンでメールが確認できる現代において自ら意図的に「ディスコネクト(一時的に仕事関係の連絡を断ち、リフレッシュを行う)」することで、自分の時間確保に努めているようだ。
ウォシッキー氏曰く、このディスコネクトは家族との時間を楽しむためだけでなく、高いクリエイティビティや生産性を維持することにも効果的であるとのこと。「成功は働いた時間で決まるものではない」「24時間365日働いて、面白いと思えるアイディアは浮かんでこない」5児の母親業もこなし、仕事の影響を子育てに持ち込まない姿勢こそ彼女が仕事との両立に成功している秘訣なのだろう。
ワーク・ライフ・ハーモニーを提唱するジェフ・ベゾス
一方ワーク・ライフ・ハーモニーはハーモニー(調和)という言葉が含まれているように、仕事と私生活の時間をトレードオフの存在として考えずに、2つが互いに影響する「1つの環」であるという考え方。近年AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏がBusiness Insiderで語った「家庭で幸せな時間が過ごせていれば、エネルギーに満ちた状態でオフィスに来ることができる」という言葉を聞くとわかりやすい。ポジティブな面もネガティブな面も仕事と私生活で影響し合うからこそ、自分の中で1つのものとしてうまくやっていくことが重要ということだ。
Jeff Bezos
ベゾス氏以外にも、今話題のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は週に80〜100時間働き、Teslaの生産ラインの隣に自らが寝る用のソファーを用意し、寝るとき以外は仕事という起業家もいる。彼の場合、以前の恋人にはオフィスに一緒にいてもらっていたという話もあり、このように私生活と仕事を1つに考える見方もまた多くの支持を得ている。
この2つの考えの中でどちらを選ぶかは、自分が求める働き方が何なのかを見直すのにいい基準であるように思う。仕事と私生活を分けるワーク・ライフ・バランスが今の日本に浸透しつつある中で、「労働時間の規制にかかわらずもっと仕事をしたい」という声も同時に上がるのは、きっとワーク・ライフ・ハーモニーを重視して仕事で私生活の充実を図りたいと願う人がいるからではないだろうか。
2. 心理的にくつろぐ時間を作るために「心のドア」を閉める
上記のウォシッキー氏のように家族の時間を持ちたい、またリフレッシュする時間を持ちたいと考える人は積極的なディスコネクトを通じて仕事との距離を取り、心理的な休息を取っている。
この「心のドア」という言葉がここで使われているのも、近年のオフィストレンドが背景にあるだろう。「オープンプランオフィス」と呼ばれる仕切りのないオフィスが増えたことで社内のコミュニーションの活性化が行われてきた。しかし、仕切りとなるドアがなくなったことで、常に誰かに話しかけられるかもしれないという不安がある、仕事を中断せざるを得ない場面が増える、周りの騒音で気が散り仕事に集中できない、といった問題が従業員の間で生まれているのも事実だ。
同僚に話しかけられることで作業に中断が入ると、そこで話す時間だけでなく、自分がやってきた作業に戻るときのリカバリー時間が必要になる。このような意識のスイッチングで起こる「コスト」に懸念を感じたのが、タスク管理ツール開発を行うTrelloの前CEOで現ヘッド・オブ・プロダクトのマイケル・プライアー(Michael Pryor)氏だ。彼はSlackやメールの通知をオフにしたり、「Heads Down(今日はもう休み)」という付箋を同僚に見えるようにデスクに貼ったりしてバーチャルドアを閉めるよう社員に促している。
「限られている大事な時間を自分が終わらせなければいけない仕事にのみ制限して使うことこそ、生産性の秘訣であり、一番実行が難しい部分でもある」と、Timeでのインタビューで彼は語る。これは読者の方の多くに共通する問題でもあるだろう。オフィスにいても自宅にいても仕事ができるなら、ディスコネクトする時間をいつでもどこでも自ら作りにいくこともまた大切だ。
3. 「メールボックス 0」に努める
仕事に関するメールやSlackでの連絡がいつでも見られるようになった今だからこそ、自分の生活の中でメールをどのように処理するかは避けられないトピックの1つだろう。もはやストレスの種といっても過言でもないメールだが、ファイナンシャルアドバイザリーサービスを提供するHighTower AdvisorsのCEO、エリオット・ワイスブルース(Elliot Weissbluth)氏は毎晩メールボックスを空にするという。
彼はLinkedInでの投稿で「メールは一方向なもの、誰もがいつでも簡単に許可や招待、また気遣いもなく私のメールボックスに入れるようになっている」と語る。それを受けて彼が毎日メールボックスを空にするために従うルールが3つ存在する。以下のその3つだ。
・ニュースレターを”Unsubscribe(定期購読の停止)”する
単純に来たニュースレターを削除するよりも少し時間の掛かる行動だが、年間で見た場合その都度メールを削除するよりも何時間もの節約になるとのこと。
・徹底的に削除する
「迷ったら削除する。もし本当に重要なメールだったなら、誰かがフォローアップしてくれる。」アシスタントがいるCEOや重役だからこその意見ではあるが、自分ができることがあるなら返事をし、不明な点や不安要素が残るメールであれば消して構わないという徹底的な姿勢が不要なストレスを避ける秘訣なのかもしれない。
・ツールを活用する
最近は高性能なサーチングツールがフォルダーのスキャンを行ったり、返信が必要なメールのリマインダーを送ってくれたりするものがある。それを活用して確認するメールを減らすのも工夫の1つ。
この3つのルールを守るだけでメールボックスは一気に軽くなり、残ったメールはそのままTo-Doリストになるという。ワイスブルース氏はこのリストを2〜5程度に短くし、その日終わらせたい仕事のみに絞るようにすべきと続ける。
そうすることで余計な作業を減らし、重要な仕事の達成率を上げることで、ストレスの少ない「メール数ゼロ」を達成できるようになる。実践の難しい人もいるかもしれないが、ストレスの源となるメールをできる限り減らすという考え方は重要だ。
ニュースレターの管理・停止をしてくれるunroll.me
メールでリマインドの設定ができるFollowUpThen
4. 無駄なミーティングを排除 – 「コアタイムだからミーティング」はなし
以前リリースした『海外から見た日本式ミーティングの謎』でも紹介したが、ミーティングをいかに効率良く行うかということに神経を尖らすCEOは多い。特に先述のイーロン・マスク氏やマーク・キューバン(Mark Cuban)氏は「ミーティングは時間の無駄」と徹底的に自らが入るミーティングを減らすことを複数メディアで語っている。組織マネジメントの専門家でBain & Companyのパートナーを務めるマイケル・マンキンス(Michael Mankins)氏も自身の著書『Time, Talent, Energy: Overcome Organizational Drag and Unleash Your Team’s Productive Power』にて、「仕事が終わらないという文句を生み出す原因の1つはたいてい終わりの見えないミーティングである」と語っている。
ルールを設ける各CEO
キューバン氏は2014年のInc.のインタビューに対し、自身をミーティングに参加させる唯一の方法は小切手を受け取る時だけだと語った。その意見は2年後も変わらず、2016年のThrive GlobalのQ&Aインタビューでも小切手を受け取る目的以外にミーティングや電話会議はありえないと答えている。時間節約のために何よりもメールでの会話を希望すると強調していた。
マスク氏に関しても、今年4月の従業員に対して送った、生産性を上げるためのアドバイスを含めたメールはBusiness Insiderを始めとした様々なメディアで取り上げられた。そのメールには「大規模なミーティングは多くの人の時間を無駄にする」「緊急の問題でない限り頻繁にミーティングを開かない」「自分のいる必要がない、自分の価値を提供できないと感じたら退席する」といったようにミーティングに関するものが多く含まれている。
ジェフ・ベゾス氏も早朝のミーティング会議を避け、投資家との会合も年間で6時間以内に収めている。また、彼独自の「2枚のピザルール(2 Pizza Rule)」も興味深い。「2枚のピザで参加者を満足させられないほどの人数のミーティングは設定しないし、参加もしない。」つまり、ミーティング参加者を厳選し人数を極力減らすようにする、ということ。
ミーティングを開くことによって取られる時間やコストを最小限にしようとする考えはマスク氏と共通する心構えだ。他にも彼が役員とミーティングを行うときは、開始前に6ページに及ぶメモをまず読ませ、良いディスカッションが何たるかをまず説明するという。
学術的観点から見る「非効率なミーティング」の条件
最近では「非効率なミーティングが与える悪影響」におけるリサーチも増えている。実際に2017年のHarvard Business Review記事では、Harvard Business SchoolとBoston Universityが共同で行った182人のシニアマネージャーに対するサーベイで、回答者の65%がミーティングが業務完了の妨げになると感じ、71%が彼らが参加するミーティングは生産的でもなければ効率が良くないという結果が得られたと言及している。記事内では、非効率なミーティングの特徴が以下のように挙げられている。
グループの時間を奪う要因
アジェンダの設定や時間の管理ができていない。
個人の時間を奪う要因
アジェンダ通りの進行やタイムマネージメントがしっかりと行われスムーズに進行されているが、開催頻度が多い。
グループ・個人両方の時間を奪う要因
アジェンダの設定や時間の管理ができていないミーティングが頻繁に開催される。
これを見るとベゾス氏やマスク氏のルールと共通する点がここでも挙げられていることがわかる。興味深い点は、このような今勢いのあるイノベーティブな企業はやたらとミーティングを開催してコラボレーションを生み出そうとしている訳ではないところ。「ワーキングアワーだからとりあえず会ってプロジェクトメンバー皆と話し合う時間を作る」というのは必ずしも合理的な働き方ではないのである。
ミーティングを開く際は細心の注意を払い、自分を含めたメンバーの生産性を下げない工夫をする。そうすることで自身の仕事のマネージメントはより行いやすくなり、結果として公私のバランスをうまく取れるようになるのだろう。ミーティングのマネジメントも仕事と私生活の組み立てに重要なスキルの1つになりそうだ。
*本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。
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