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2021~2022年スタートアップトレンド徹底解剖!【対談】Skylight America 大山哲生氏×btrax Brandon K. Hill
世界的パンデミックの影響で、社会、政治、経済に急激な変化があったことは言うまでもない。そんな時代の動きをいち早く反映するのがスタートアップトレンドだろう。変化は世界有数のスタートアップの祭典、TC DISRUPTのピッチでも顕著に見られた。
TC DISRUPTは、これまでにも数多くの著名人や起業家が出演している世界最大規模のスタートアップイベントだ。今年は新型コロナウイルスの影響で完全オンラインで開催された。
通常オンラインイベントの場合は、感覚的に得られる情報量が少ないため、オフラインのイベントと比べて記憶に残りにくい。しかし今年はそんなハンデを覆すほどに素晴らしい内容だったという。
本記事では、Skylight America CEO 大山哲生氏と、btrax CEO Brandon K. Hillが登壇したbtrax主催イベント『シリコンバレー発最新スタートアップトレンド 〜世界のスタートアップの今とこれから〜』の内容を基に、最新のスタートアップトレンドや今後の動向を見ていきたい。
シリコンバレー・ベイエリアのCEOたちが語る、TC DISRUPT 2021の感想
“Deep fake technologyの到来”
大山氏
今年のTC DISRUPTのピッチでは、D-ID社のサービスが印象に残っている。静止画で写真を何枚か撮り、それをSaaSのサービスにインプットさせると、AIでその人のリアルな表情を作り出し、話したりできるようにしてしまうというもの。
Brandon
これは、Deep fake technologyと呼ばれるもの。顔写真を取り込むと、AIが生身の人間のように写真の表情を動かすサービスだ。この領域では”MyHeritage”というサービスが人気だ。既に亡くなった方の写真をサービスに取り込むと、故人が生きていた時のようにコミュニケーションが取れるサービスだ。しかし、今回の紹介のされ方はそれとは一味違った。登壇者が写真の中の過去の登壇者と話す様子が映し出されるなど、ユニークなサービスが目立った。
大山氏
このサービスの使い道を疑う鋭い声もあったが、1つはハリウッド映画のティザーなどのプロモーションに利用できるということだそう。Deep fake technologyのサービスがキャッチーに紹介されていたのが印象的だった。
これまで、専門的と捉えられることが多かった分野のテクノロジーも、より一般向けに開かれた形でサービス内に組み込まれるようになったことは、一つの傾向と言えるかもしれない。
Brandon
また、イベント全体を通して、女性の登壇者が多かったことも感想の一つ。
メインMCも審査員も女性が多かったことが印象的だった。スタートアップ界隈は95%が男性というほど男性社会と言われている。しかし今回の参加者は39%が女性。ピッチでも、1位、2位を獲得したのは女性がファウンダーの会社だった。ジェンダーバランスが取れ始めていることはとてもポジティブな傾向だと思う。
大山氏
今回、タイトルを中心に見て興味深いと感じたことは、去年、一昨年は「AI」というワードがトレンドの一つとしてタイトルに出ていたが、今年は「AI」がタイトルに入らなくなったこと。
また、セッションの中では「マシンラーニング」、「ディープラーニング」という言葉は当たり前のように出ているが、それもやはりタイトルには入れていない。AIは、ある種のトレンド的な扱いだったが、アメリカではもはやAIを使うことはあまりにも当たり前で、大々的に打ち出すことがむしろ「遅れている」「恥ずかしい」といった印象になっているのかもしれない。
Brandon
一昔前はAIという言葉を入れると価値が高くなる傾向にあった。ゆえにサービスにはとりあえず「AI〇〇」や「AI driven」といった言葉をつける動きが横行してしまった。
しかし「実際にどこがAIなの?」と聞いても、意外に答えられない人は多い。AIの範囲がどこからどこまでなのかを明確に理解している人は少ない。こういったこともあり、投資家からしてもAIという言葉がついているものが「逆ブランド」としてネガティブに捉えられるケースもある。
技術自体は目的ではなく、あくまでも手段だ。どんな課題をどのようなビジョンを掲げて解決していくのかにやはり焦点が当てられるべきなのだろう。
“アメリカのスタートアップの特徴は「社会問題にアプローチするサービス」であること”
大山氏
TC DISRUPTの特徴は、企業ドリブンではないシリコンバレーのイベントであることだ。企業ドリブンでないからこそ扱われていないテーマも意外とある。テクノロジーを中心にテーマ設定されるTC DISRUPTに対して、環境問題はテクノロジーでの解決以上に社会・政治的枠組みの整備による解決が重要なため、TC DISRUPTとしてはややスコープが異なる。そのためコンテンツの中心にはなりにくいのではないか。
Brandon
それでも、全体的に見たときに、PC、スマホなどのデバイスだけで完結するケースは減少していると感じる。今回は社会問題にアプローチするスタートアップのピッチを多く聞いた印象だ。
大山氏
スタートアップの特徴として社会問題を解決するサービスであることはアメリカ発のスタートアップの共通項と言えるだろう。
コロナ禍で注目を集めたスタートアップとは?
Brandon
ヘルスケアや医療系は医療のDX、遠隔医療、 細胞培養など含め非常に増えたと感じる。コロナ自体が医療機関に影響を与えたこともあり、この領域のイノベーションは進んだのではないだろうか。
大山氏
まさにそう感じる。これは、金融で起きてきた動きに似ている。つまり、金融業界には、集権的に重要な情報やものを管理することから分散している動きがあるが、これに近いことが医療でも起きているということだ。
今までは、病院に行けなくなったら、先生の元へ出向き、カルテに情報を記録してもらうことが当たり前だった。しかし、遠隔医療で病院に行かなくなった現在では、医者の管理する情報の質の変化が起きている。ワクチンの証明書を民間に委託するなど、病院のあり方そのものの変化が起きていると言えるのではないだろうか。
コロナ禍を経て、サービスレベルに止まらず、その業界に関わる人々の振る舞いや責任範囲、さらにパラダイムまでも変わったケースは珍しくないはずだ。今後は、この構造的な変化に対応し、その上でユーザーのニーズに焦点を当てたスタートアップやサービスが求められてくるだろう。
来年のスタートアップの動きを予測
“SNSの限界”、”「分散」の動き”
Brandon
SNSの限界が来ている感じがする。
Faceboookを皮切りに、ずっとSNSの時代が10年くらい続いたが、バーチャル世界やdeep fakeが出てきているところで、SNSへの姿勢や扱いが変わっており、限界が来ているのではと考えている。Facebookが”Meta”に改名したこともここに理由があるのでは。ソーシャルメディア離れが起きると同時に、リアルとバーチャルの融合が重要視されていく中で、現実世界にポジティブな影響を与えるバーチャルサービスが求められると考えている。
大山
「分散」の動きがあるのではないかと考えている。
例えば、今までTVで放送するコンテンツを作っていた人が、プラットフォームからお金をもらって個々で作り始めたりするようになるのではないか。
また、EdTechの観点では、UdemyというアメリカNo.1の教育プラットフォームでは、誰でも教育コンテンツをアップできるため、従来先生と呼ばれる人が教えていたことでも、一般人が教鞭を取れるようになっている。今までのサービスとユーザーの主従関係は完全に崩壊するのではないか。
おわりに
時代の大きな変革期であった2021年。今回のイベントでも、登壇者より最新のトレンドから今後の予想まで多くの示唆に富んだ話を聞くことができた。2021年に引き続き、2022年も社会や経済に大きな変化があることは間違いないだろう。
今後もbtraxはスタートアップに限らず、ブランディング、UXデザイン、マーケティングなど、幅広いテーマでイベントを開催する予定だ。ご興味のある方はbtraxのPeatixページ より、随時最新情報をご覧いただけたら幸いだ。
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