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【ボノボス】アメリカ発 オンライン・メンズアパレルブランド Bonobos 成功物語
それは2007年の中頃、2人のスタンフォードMBA卒の若者がbtrax社のオフィスにやってきた。ハンサムでセンスの良い彼らは、おおよそMBAとは思えないいで立ちで会議室に入るや否や、「お前の会社の”B”のロゴが気に入った、1週間以内に僕たちの新規ビジネスのロゴと全体のブランドススキームを考えてくれ。」と言った。
詳しい話しを聞くと、どうやら彼らは今までに無い形の男性向けアパレルビジネスを始めるのだという。それも商品ラインは最初はパンツのみで、販売チャンネルもオンライン限定。
通常、新規ビジネスからの案件を受けるときは予算的な制限や展開のリスクの高さが理由で、かなり慎重に審査を行っている。今回もいささか難易度の高いビジネスモデルだと思い一瞬受ける事をためらったが、彼らから発せられるセンスの良さとロジカルなやりとりを行っていくうちに何となくこのビジネスは成功するのではないかと思った。
この直感は正しく、現在ではZapposに続くオンラインアパレルビジネスの成功ケースとして多くのメディアにも取り上げらている。
Bonobosは、Andy DunnとBrian Spalyが立ち上げたオンラインメンズアパレルブランド。彼らの狙いは、ジーンズに物足りなさを感じている男性消費者のために、豊富なスタイルやカラーのオシャレパンツをネット上のみで販売すること。アメリカではメンズパンツと言えば、ジーンズが主流でそれ以外はあか抜けないチノパンぐらいしか選択肢は無い。
それに不満を感じていたスタンフォードのオシャレ好き学生AndyとBrianは、自分達が欲しいカスタムフィットのメンズパンツを中心とした商品ラインをネット上で販売する事を考えた。マーケティング方法も、ソーシャルメディアを活用したバイラルマーケティングをメインにした。
MBAに通いながらアパレルのデザイン/製作を趣味で行っていたBrianとオシャレ好きなのにショッピングが大嫌いなAndyが出会い、Bonobosのビジネスモデルを発案した。Brianは肌に優しく着心地の良いオーガニック素材にカラフルな染めを施したメンズ向けパンツをデザイン。
Andyは自分を含め、世の中の多くの男性は実店舗での買い物が苦手で、オンラインで買い物をする方が嬉しいのではないかと思った。元々ネット系ビジネスの仕組みに詳しかった彼は、販売、マーケティング、プロモーション、流通、サポート、ブランディング等の全てのプロセスをWebを活用して行う事を考えた。
その中でも、店舗を持たずにどのようにしてアパレルの肝であるブランドを構築するかに心血を注いだ。彼らが販売するパンツの値段は一本につき平均$95。サイト公開後半年で約$40,000を売り上げた。
資金面としては、スタンフォード大学の教授で、JetBlue社の会長Joel Petersonと元Benchmark CapitalのパートナーのAndy Rachleffが彼らのビジネスに対して、それぞれ$100,000を出資。Bonobosに出資した2人の投資家は、アパレルビジネスは全くの専門外だったが、とにかくAndyとBrianが気に入ったので、出資を決めたという。
そして、Bonobsに対して創業直後よりアイデンティティデザインとブランディングを担当したのがbtraxである。彼らは、限られた予算と時間の中で最大限の結果を求めた。そして、タイトなスケジュールとその当時の社内リソースの関係から、僕自身がクリエイティブディレクターとして直接プロジェクトに関わった。彼らが求めたのは、とにかくスピード。通常最低1ヶ月は掛かるブランディングデザインを1週間で要求。
他クライアントの為の出張中も夜中にホテルから作業をしたのを覚えている。そんなこともあり、数あるプロジェクトの中でもひときわ思い入れが深い。ブランドデザインは素早いサイクルで構築され、最終的にカラースキームにメインカラーを紺、アクセントカラーをピンクとし、全体の雰囲気もイタリアの雰囲気を活用した。サイトのUIデザインも出来るだけ商品の魅力を引き出す事を最大のゴールとした。最終的に出来上がったロゴは商品のタグ、ボタン、パッケージ等にも活用された。
プロダクト、サイト、ブランディングの準備が整ったBonobosは拠点をNYに移し営業を開始。直後より都会に住むメンズユーザーの心をとらえ、大ヒット。その後、独自のブランド力を活かし、シャツやジャケット、シューズ、スーツ等を商品ラインに追加。創業後より年商は毎年倍々、わずか三年で年商約15億円のビジネスにまで発展させた。Andyは自身のビジネスをPolo+Zapposと説明する。
コンセプトはオンラインの使い易さと実店舗の存在感。Webストアの利点を生かしコストを下げ、優れたサイトのUIとユーザーが商品をオーダーしてから受け取るまでのエクスペリエンスや、ソーシャルメディア上でのストーリー展開を活用してブランドを構築した。事実、現在でもBonobosは自社ブランド商品だけの販売ではあるが、Zappposのライバル的存在となりつつあり、数名のスタッフは元Zappos社員である。
彼らとは現在も頻繁に交流がある。先日当時を振り返り、BonobosはスタンフォードのMBAがやりそうも無いビジネスだと思ったと言ったら、「学生時代、教授から他の生徒が卒業後絶対にやらなさそうな事をやれ、と言われたのがきっかけだよ。」との事。
現在の勢いから推測すると、Bonobosは今後デパートや専門店等の実店舗を脅かす存在になると考えられている。アパレルビジネスの世界でもWebの重要性、ソーシャルメディアを使ったマーケティング、少数精鋭、低コスト、スピード命等に代表されるリーンスタートアップ的コンセプトの波が来ていると思われる。最後にbtrax社としても、彼らの成功に多少なりとも貢献出来た事を大変嬉しく思う。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
関連動画1: Bonobosのビジネスをジョークを交えて楽しげに説明するAndy Dunn
関連動画2: New style of clothes, Bonobos (アメリカのニュース番組による取材)
関連動画3: Bonobos seeks to be the Zappos of pants
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