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日本食革命:ローカライゼーションがアメリカ市場を席巻する理由
近年、北米における日本食の存在感は急速に高まっています。
新しい抹茶ドリンクや、行列が絶えないそば専門店、仕事帰りの人々で賑わう寿司バーのハッピーアワー、そして「手頃なオマカセ」といった新業態まで、SNS上には日々日本食関連の投稿があふれています。

アメリカに広がる “Omakase” の寿司
さらに「何が本当に本格的なのか」という議論が繰り返されている点も興味深い現象です。
しかし2000年代のカナダや米国では事情が異なりました。
当時、日本食といえば「カリフォルニアロール」に代表される創作寿司、アボカドとカニカマを巻いた寿司ロール、牛照り焼き弁当とオレンジのスライス、そして形ばかりの豆腐が浮かぶ味噌汁といった「ホワイトウォッシュ」されたメニューが主流でした。
現在のように本格的なそば文化やオマカセ文化が一般的に受け入れられる状況は想像できなかったと言えます。こうした変化は単なる外食シーンの変容にとどまらず、食品・飲料業界全体に大きなビジネスチャンスをもたらしています。
日本の食文化を海外に展開する際、単純に現地に輸入するだけでは十分ではありません。重要なのは、日本的な魂を維持しながらも、アメリカの消費者の嗜好やライフスタイルに適応させる「ローカライゼーション戦略」です。
本稿では、森永製菓、Chargel、そしてBaachan’sという3つの事例を通じて、日本ブランドがいかに米国市場で成功しているのかを分析し、その共通点から学べるポイントを考察します。
森永製菓:緻密なローカライゼーション戦略
ハイチュウ:粘り強い市場浸透
森永製菓の「ハイチュウ」は、長期的に取り組んだローカライゼーションの成果が結実した代表例です。
過去7年間、米国のノンチョコレート菓子カテゴリーにおいて年間20%の成長を継続しており、現在ではWalmart、Target、7-Eleven、Staples、Walgreens、Dick’s Sporting Goods、Five Belowといった主要小売チェーンで幅広く展開されています。
ただし、この成功は短期間で実現されたものではありません。米国参入直後から、同社は消費者調査を徹底的に行いました。味の好みや受容性、商品コンセプトに至るまで入念に調査し、アメリカの消費者が求める味覚やポーションサイズを理解しました。
その上で、フルーツ感を強調したパッケージや「Sensationally Chewy Fruit Candy」というキャッチコピーを導入し、ブランドのメッセージをわかりやすく訴求しました。
また、現地生産体制の強化も重要な一手でした。森永は2022年にノースカロライナ州に第2工場を建設すると発表し、既存のイリノイ州工場と合わせて米国市場での供給体制を拡充しています。総額1億3,600万ドル規模の投資は、米国市場での長期的な成長を視野に入れたものです。
2023年度の売上は約190億円(1億2,540万ドル)に達しており、単なる一時的ブームではなく、継続的な市場浸透を実現していることを示しています。
Chargel:新市場の創出
「Chargel(チャージェル)」は、森永が菓子メーカーとしての強みを活かしつつ、ウェルネス領域に進出するために立ち上げた新ブランドです。
2022年に米国でローンチされ、「半分スナック、半分ドリンク」というユニークなポジショニングを採用しました。携帯に便利なパウチ容器、ゼリー状のテクスチャー、そして内蔵ストローによる飲みやすさが特徴です。
従来のエナジードリンクやサプリメントが高カフェインや人工甘味料に依存しているのに対し、Chargelはカフェインを一切使用せず、炭水化物と5種類の必須ビタミンで瞬時のエネルギー補給を可能にしました。
2023年にはサンフランシスコ・ハーフマラソンなどのスポーツイベントでのサンプリング施策を展開し、消費者に直接体験してもらう形でブランド認知を広げました。
このように、現地の生活スタイルや健康志向に寄り添った商品設計とブランド体験は、単なる「日本製品の輸出」を超えた新しい市場の創出につながっています。
Baachan’s:ストーリーテリングが生むブランド力
「Baachan’s Sauce(バアチャンズソース)」は、ストーリーテリングを巧みに活用することで急成長を遂げたブランドです。
このソースは、創業者の祖母の家庭レシピに基づいた「日本式バーベキューソース」として開発されました。
ブランド名「Baachan(ばあちゃん)」が示すとおり、親しみやすさと本物感を同時に伝えることに成功しました。アメリカの消費者にとっては「家族の物語」を感じられるブランドネーミングが、購買動機の一つになっています。
同社はまた、「小ロットのコールドフィル製法」「Non-GMO認証」といった製造工程や品質面でのこだわりを前面に押し出し、健康志向やサステナビリティを重視する層にも訴求しました。
その結果、アメリカのBBQソース市場において競合と正面から戦うのではなく、「日本式BBQソース」という独自カテゴリーを確立することに成功しました。
創業から数年で年間売上1億ドル規模へと成長し、調味料業界における大きな存在感を示しています。
btraxの提供できる価値
リブランディングを成功させ、グローバル市場で成長を続けるブランドには、戦略的なマーケティング活動と現地文化への理解が不可欠です。
btraxは、日米の文化・マーケットの橋渡しをするプロフェッショナルとして、以下のような価値を提供します。
ローカライズ戦略:
ブランドの独自性を保ちながら、ターゲット市場に最適化されたアプローチを提供します。現地文化や消費者の価値観に基づいた戦略的マーケティングを実施します。
ブランド戦略の強化:
ブランドの認知度を向上させ、グローバル市場における競争力を高めるための戦略を構築します。
現地でのイベントとプロモーション活動:
ローカルイベントやプロモーションを通じて、消費者との直接的な接点を作り、ブランド体験を提供します。
btraxは、企業がグローバル市場での成功を達成するために、これらの価値を提供し、共に未来を切り拓いていくお手伝いをしています。
ぜひbtraxにぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
アメリカにおける日本食ブームは拡大を続けていますが、真に成功するブランドは「優れた商品を持つ」だけではなく、「その価値をいかに伝えるか」を理解している企業です。
- ハイチュウは、継続的な調査と現地生産体制の整備により、新しい食感文化を定着させました。
- Chargelは、アメリカの健康志向やライフスタイルに合わせた商品開発によって、新しい市場を切り拓きました。
- Baachan’sは、家族の物語を核に据え、ストーリーテリングを通じて消費者との深い共感を築きました。
いずれの事例も「本物らしさ」を保ちながら、現地消費者に理解されやすい形で表現することに成功しています。今後、日本ブランドが海外市場に挑戦する上で問われるのは「良い商品を持っているか」ではなく、「その価値をどう物語り、どのように届けるか」です。
日本食ブームに乗るだけではなく、新しい食文化の波を自らつくり出すことができるかどうか。それこそが次世代の成功を決める分岐点となるでしょう。