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デザインは文系なのか?理系なのか?【学術的に解説】
著者はサンフランシスコにある大学に通うデザイン科の学生だ。
現在Senior Projectと呼ばれる、いわゆる卒業制作の授業を取っているのだが、そこで初心に戻ってデザインの定義について考え直すレクチャーを受けた。今回は、その授業での学びをまとめてみたい。
アメリカの学士号システムについて
まず、アメリカの大学の学士号 (Bachelor’s Degree) は、日本と同様に理系と文系に分けられる。
理系は Bachelor of Science (B.S.) で、文系はBachelor of Arts (B.A.)だ。
Bachelor of Scienceの専攻は、Biology (生物学)、Chemistry (化学)、Mathematics (数学)、Computer Science (計算機科学)、Neuroscience (神経科学)、Nursing (看護学)、Astronomy (天文学)、Information Technology (情報技術)などが挙げられる。
一方、Bachelor of Artsの専攻は、Business (経営学)、English (英語学)、History (歴史学)、Philosophy (哲学)、Sociology (社会学)、Art History (美術史学)、Cinema (映画学)、Economics (経済学)などがある。
筆者の専攻はVisual Communication Designで、グラフィックデザイン、フロントエンドコーディング、UI/UXデザインなど幅広くデザインについて学んでいる。
また、この専攻は理学号として扱われているため、正式名称は B.S. in Visual Communication Design になる。
日本の大学でデザインを学ぶとなると美術大学へ進学する場合が多いため、デザイン科が理学士であることを意外に思う方もいるかもしれない。
しかし、学士号の文理で分けるならデザインは理系だが、かといって筆者の専攻はSTEMの対象でもない。STEMは、科学 (Science)、技術 (Technology)、工学 (Engineering)、数学 (Mathematics) の頭文字をとったもので、これら4つの教育領域の総称だ。
現代のIT社会において最も重要視されている教育分野でもある。
以上からまとめると、紙面上の筆者の専攻「Visual Communication Design」は、文系寄りの理系、といったところだろうか。
デザインは文系?理系?
さて、タイトルで問いかけている疑問に戻る。結局デザインは学問として文系に分類されるのか、理系に分類されるのか?
筆者の教授の答えは、「どちらでもない」だった。
もう少し詳しく表現すると、デザインは科学 (Science)、技術 (Technology)、人文 (Humanities)、アート (Arts) の間に位置しているとのことだ。
デザインのWhat、Why、How
ここで、デザインを構成する領域の中から、科学と人文を主な例とし上記の4つの要素についても触れながら、デザインの特徴を以下の3つの観点から比較してみる。
What: 何を理解する?研究対象は?
How: どのように?どんな手段で?
Why:何のために?
このように表に書き出してみると、いかにデザインが、科学と人文どちらの要素も持っていて、逆にどちらでもないかが見えてくるのではないだろうか。
科学の分野の研究内容として生物学を例に挙げてご説明しよう。生物学では新しい植物を発見したとき、研究者は器具や薬品などを駆使して観察し、分析し、記録する。それが何科なのか、食べられるのか食べられないのか、どういった経緯で誕生したのか、といった「事実」を知るためだ。
技術 (テクノロジー) は、リサーチを通して得た科学的知識を実用する手段であり、科学の延長線上に位置する。そのため、テクノロジーも広い観点から見ると科学と同様の目的を持つ。
また、人文の分野の研究内容として、社会学を例に挙げてご説明する。社会学は、社会がどのように影響し合い、変化しているのかに関して理解を深めることを目的としている。
研究対象は図にもある通り、ヒューマン・エクスペリエンスだ。人文学でいうヒューマン・エクスペリエンスとは、感情、思考、価値観、信念、行動などの人間的な経験全般のことを指す。
社会学では、社会全体に影響を与えている人々の経験や行動から影響を受けている社会現象のデータを収集、分析し、社会現象の仕組みを明らかにする。そしてその調査結果をもとに、社会問題の解決策や方針を提案する。
人間や社会を研究対象としているため、科学のように単一の「事実」を追求することは不可能だが、私たちの思う常識とは何かをデータの傾向から解釈することは可能だ。
アートとデザインでもまた少し異なる
また、アートは人それぞれの好みや感性 (すなわち主観的要素) で評価されることが多く、明確な正解不正解はない。そのため、真実を求める科学ではなく、人文の分野としてここでは考えている。
そして最後にデザインでは、製品、サービス、空間などといった人口世界や人工物を研究対象としている。
色彩などの美的要素は客観的に測定できるものではなく主観的に判断するものであるため、人文学が近いような気もするが、使いやすさや、ユーザビリティーについては科学的な分析を行う必要がある。
表のWhyのセクションに「何が適切かを追求」することがデザインの目的とあるが、この「適切さ」は先ほど述べた「人文学的な感性」と「科学的な分析結果や知識」から求めることができる。
まとめ
今回は、デザインが科学、人文、技術、アートすべての要素を併せ持つ分野であることをご説明した。
ゆえに、デザイナーは時には科学的な視点で、時には人文学的な視点で物事を見て、目的に応じたものを作り出すことが求められている。
デザインはさまざまな要素が入り混じっている上、異なる視点から見て考える必要があるため、とても難しい。しかし、それこそデザインの面白さであり奥深さでもあると筆者は考えている。
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