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2023年最新 世界の投資家が注目するアメリカ発クライメートテックスタートアップ5選
CO2排出量の削減や地球温暖化への対策など、気候変動対策に焦点を当てた技術やビジネスを指す、クライメートテックがアメリカを中心に今盛り上がっている。
2023年はマクロ環境の盛り下がりによりスタートアップへの投資額が減少しているものの、2021~2022年にかけて多額の資金調達がされている。
クライメートテック領域が盛り上がっている背景には、脱炭素に向けた政府の規制改革・クライメートテック企業に対する優遇策を含む政策が挙げられる。
先進国主要各国は、2050年までの目標として「カーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)」を宣言した。
アメリカでは200兆円、中国は170兆円、ヨーロッパも130兆円のクライメート領域への投資を発表。日本も、前述した諸国よりは少額となるが、2兆円のグリーンイノベーション基金を発表した。各国政府による規制改革・クライメートテック企業に対する優遇策が急速に進んだといえよう。
世界最大の資産運用会社BlackRockのラリー・フィンクCEOは、今後1000社のユニコーンがクライメートテック領域から登場するだろうと述べた。(参照)
アメリカにおけるクライメートテックの市場規模は、2020年時点で168億ドル(1兆8480億円)。これが2025年には低めに予想して207億ドル(2兆2770億円)、標準的な予想で242億ドル(2兆6620億円)、最大に拡大した場合、301億ドル(3兆3110億円)になるとしている。
今回はそんなアメリカ発クライメートテック領域のスタートアップを見ていく。その中でもソフトウェアサービスを展開してGHG(温室効果ガス)排出量の削減に取り組む企業を5つピックアップした。
アメリカのスタートアップ事情について知りたい方や新たなサービスアイディアを求める方の参考になれば幸いだ。
アメリカ発クライメートテックスタートアップ5選
- Persefoni : GHG排出量の算定・可視化・分析プラットフォーム
- One concern : 災害のリスク可視化プラットフォーム
- Wren : 個人で始められるカーボンオフセットプラットフォーム
- Pachama : 植林カーボンオフセットプラットフォーム
- Blocpower : 建物の脱炭素プラットフォーム
1. Persefoni
2020年に設立されたスタートアップPersefoni社はGHG(温室効果ガス)排出量の算定・可視化・分析のSaaSプラットフォームを手掛ける。
4期目を迎える現在、アメリカ本社の他、日本、イギリス、ドイツ、カナダ、シンガポールに支社があり、4つの大陸に跨って脱炭素社会を後押ししている。
CEOが日系アメリカ人ということもあり、日本への思い入れは強い。Persefoni社は日本にも支社を構え、日本企業の脱炭素社会に向けた挑戦をバックアップしている。
炭素会計分野でのスタートアップは多数あり競争が激化しているが、その中でも炭素会計の分野で一番重要な排出係数を約15万点装備するなど、同社は頭ひとつ抜けている。1億ドルを調達し、より精緻な炭素数値を算出するべくR&Dに取り組んでいる。
炭素会計は財務会計と同じく信頼性が必須だ。
正しい数字をはじき出せない財務会計ソフトウェアは誰も使わない。それと同様、炭素会計も今後、監査や保証が必要になってくるので、同社は信頼できるソフトウェアを開発することを最優先しているのだ。
2. One concern
2015年に設立されたスタートアップ、One Concern社は、災害科学とAIや機械学習を融合することで意思決定を改善するRaaS(Resilience-as-a-Service: サービスとしてのレジリエンス) ソリューションを提供している。
アメリカと日本で事業を展開し、「あらゆる災害による被害を最小化すること」をミッションとしている。大規模災害などによる被害からのレジリエンス(対応力)を定量化することで、自治体や企業がリスクを評価、軽減、または収益化することを支援する。
地球温暖化による気候変動リスク適応の必要性が高まっていく中で、One concern社の災害予測サービスはますます必要性が高まるであろう。
3. Wren
日常生活や経済活動を通して排出されてしまう温室効果ガス。
カーボンオフセットは、個々の排出量削減努力では補いきれない温室効果ガスの排出量について、排出量削減活動への投資などを行うことで、排出超過分の埋め合わせをするアプローチだ。
日本でも企業や団体間で取り組みが広がりつつある一方で、個人レベルでは何から始めたらよいか悩む人もいるだろう。
2019年に設立されたスタートアップ、Wren社が運営するのは、個人レベルで参加可能なカーボンオフセットのプラットフォームだ。
日常生活に関する質問事項に答えると、自分が1年間に排出するだろう二酸化炭素量が計算される。
そして、オフセットをするための投資先プロジェクトをリストアップしてくれるのだ。熱帯雨林の保護プロジェクト、植林プロジェクト、山火事を防ぐプロジェクトなど様々あり、月額のサブスクリプションプランもある。
直近半年間の同社の活動を通して84,490トンの二酸化炭素削減・排出抑止につながったそうだ。ニュースレターの購読者数も倍増し、世界で約10,000人が定期購読している。(参照)
4. Pachama
世界の森林の復元と保全は、大気中の温室効果ガスを減らす最も簡単でコストも安く、シンプルな方法の1つだ。そんな課題を解決するスタートアップがある。
2018年に設立されたスタートアップ、Pachama社は森林由来のカーボンオフセットのマーケットプレイスを運営する。
Microsoft創業者ビル・ゲイツが設立したファンド”Breakthrough Energy Ventures”やAmazon創業者ジェフ・ベゾスが設立したファンド”Climate Pledge Fund”など、著名経営者を含む複数の投資家から総額で1,500万ドルを調達するなど高い評価を受けるスタートアップだ。(参照)
同社はマーケットプレイスの運営だけではなく、衛生画像やドローンで3次元データを独自の機械学習で解析し、カーボンクレジットの対象となる森林で実際にどれだけのCo2が回収されたかを算出及び検証するソリューションも提供するテクノロジー企業だ。
5. BlocPower
2014年に設立されたスタートアップ、BlocPower社は旧式の建物で利用されている古い暖房・冷房システムを高効率・低コストの新システムに入れ替えるリースサービスを展開する。
旧式の建物では、化石燃料をベースとする古い暖房・冷房システムが使われている。これらの古いシステムは、燃料効率が悪く、温室効果ガスの排出や空気汚染を引き起こす。
同社によると、新システムに入れ替えることで、旧式の建物であってもエネルギーコストを30~50%削減、また温室効果ガス排出を40~70%削減できるという。
同社はまた、銀行によって「融資不履行のリスクが高い」と認識されることが多い低所得の借り手が利用できる資金調達オプションの不足にも対処している。
返済不能のリスクを最適に測定する方法の独自の洞察をもとに、ゴールドマン・サックスと提携して、借り手の支払い履歴に基づき、グリーン住宅を購入しやすくする金融商品を開発した。
「グリーン住宅ローン」に例えられるこの商品は、債務不履行のリスクを複数の借り手に分散し、建物の所有者が、同社が推奨する改修を実施できるようにする。そうすることで借り手はグリーン住宅を購入しやすくなり、同社は収益機会が拡大するメリットがある。
まとめ
今回はクライメートテックにまつわる5つのスタートアップをご紹介した。
中でもハードウェアが必要となることが多いクライメートテック領域で、ソフトウェアを強みにサービス展開を行うスタートアップを取り上げた。
2050年までのGHG排出量ネットゼロ目標を達成するべく、さまざまな技術革新が必要となる。中長期的に引き続き盛り上がっていく領域であろう。
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Written by Takaaki Sako
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