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メルカリの共同創業者に聞くグローバル戦略強化に向けた米国拠点の役割【石塚 亮氏インタビュー#2】
サンフランシスコからパロ・アルトへUSオフィスの移転を行ったメルカリ。移転前である4月下旬に実施したインタビューをお届けする。
記事前半ではオフィスの設備や運用でどのように日米スタッフの交流を行い、文化醸成を実現しているかをお届けした。後半では移転の目的や今後のビジネスについて、新しいオフィスの様子とともにお送りしたい。
新しいオフィスへの移転目的とは
前半で、メルカリがいかに組織へカルチャーの浸透を大切にしているかをお伝えしたが、それでも国ごとの文化的背景の違いによって困惑することもあるという。「例えば3つのバリューの一つである『Be Professional』について言うと、『そんなの当たり前でしょ』というのが米国の根本的な考え方で、当たり前のことをわざわざなぜ?と感じる人が多い」とメルカリ共同創業者であり、USオフィスで米国での展開を手がける石塚氏は話す。
このような経験がグローバルで仕事をする醍醐味といえば聞こえはいいが、苦労の一つであるのも間違いない。しかしそれでも「最終的には現地スタッフのみで運営していくのが理想」と熱意を見せる。今回の移転もまさにそれを加速させるのが目的だろう。
パロ・アルトに位置するメルカリの新USオフィス。写真提供:株式会社メルカリ
4月下旬時点移転前のサンフランシスコオフィスでは、エンジニア・デザイナー・プロダクト・マーケティング・PR・コンプライアンス・カスタマーサポート・バックオフィスと、ビジネスに必要な機能が全て網羅されており、70〜80名程のスタッフが働いている。
石塚氏は次のオフィスへの移転理由について「以前は現地メンバーの採用もはじめたばかりだったので小規模体制でしたが、現在はローカル採用が軌道にのってきたこともありオフィスの人数も増えてきました。このタイミングで南に移り、採用をさらに強化していきたいと考えています。」と語る。
近年の傾向として、若者の採用のためにシリコンバレーよりサンフランシスコでオフィスを構える企業が多くなるなかで、あえてサンフランシスコから車で約1時間20分・電車でも50分ほどの距離にあるパロ・アルトにオフィスを移すのは、どういった訳なのだろうか?
続いてこう述べる「エンジニアやデザイナーも増え、幹部クラスの人たちも多くなりましたが、幹部クラスの人達は結構南に住んでいる割合が多いんですよね。そうなると今後さらに採用を強化していくためには、南にオフィスがある方が効率がいいんです。」幹部として働いている人材は元々GoogleやFacebook、Paypalなどに勤めていた人が多いという。
またサンフランシスコには若者が集まる一方でその家賃は高騰しており、家族を持ちながら余裕を持った生活をしたい人は、自然環境的にもサンフランシスコ市内でなく郊外にある住居を選択するケースが一般的だ。つまりは今後、幹部のコネクションを活かして経験豊富な人材を確保していくためには、オフィスのロケーションを最適な場所に移した方が良いという判断である。
US版メルカリでは2018年3月にリブランディングを行なっており、ロゴも日本版で目にする「赤い箱」のモチーフから、信頼性と公平さを想起させる青のブランドカラーに刷新されている
リブランディングに伴い、新オフィスも新しいブランドを反映させたデザインに
アプリUIと同じ配色の会議室
都市部と郊外の関係性から観るメルカリのビジネスの面白さ
移転理由となる採用戦略上の話の流れで、都市部と郊外に住む人材の違いについて取り上げたが、実はこの「都市部と郊外」という2つの住居環境の関係性が、今後のメルカリのビジネスの可能性を大きく握っている。
Amazonなどリーズナブルな新品が手に入れられるサービスの普及が進み、中古市場への影響が大きくなるなか、メルカリの提供価値について「いらないものを売って現金化するわけですが、メルカリはその利益を最大化するということより、手軽にサクッと売れるというところにフォーカスした方が良いと考えています。」と石塚氏は答える。確かに断捨離感覚で気軽に利用できるのがメルカリのいいところだろう。
続いてこのように話す「大まかにいうと都心部の人が売って、郊外の人が買うという図式は日本でも米国でも共通でありますね。都市部の人は物が置けないし、そもそも所有に固執しないという価値観への変化もある。その2つのトレンドがメルカリの追い風になっています。」今後世界中の都市部にどんどん若者が集まることで、同じように都市部と郊外の関係性が築かれていくと予想される。
そうなるとメルカリのビジネスの広がりも自ずと見えてくる。「多くのIT企業がここから始まり、世界に展開できているということは、米国で通用する=世界で通用するということですからね。米国でシェアを増やしそのラーニングをイギリスをはじめ色々な国に展開していく。それが米国市場でビジネスをやる意義であり、次のステップと考えています。」と石塚氏は意気込みを語った。
US版メルカリのアプリUI
創業時から変わらないワークスタイル
最後にメルカリのワークスタイルについて伺った。石塚氏は当時を思い返す「日本での創業時から、シリコンバレーのようにエンジニアはじめ、プロフェッショナルなスタッフがリスペクトされるようにと考えていましたね。スタートアップだからといって安い給料を提示したり、長時間の拘束もせず、個人裁量に任せるようにしていました。」メルカリでは創業当時から毎日10時間働くというようなスタイルはなかったそうだ。
またオフィスで使う備品も自由に購入を許し、PCについても全員が一律同じ機種ではなく個人ごとに機種とスペックを選択できるという。基本的には生産性が一番高くなるものを使ってくださいと伝えているそうだ。ビジネスも違うし企業文化もそれぞれなので、どの企業でも同じ事を実践出来るわけだはないが、これまでにない価値のあるビジネスモデルを作り上げ、一人一人が高い意識で成果に責任を持って取り組んでいるからこそ、できることだろう。
新USオフィスの様子
最後に
前後半におよんで、オフィスを中心に米国におけるメルカリの様子をお伝えしてきた。現在米国では認知度がまだまだ低いため、メルカリをもっと浸透させていきたいと、目の前にある米国のビジネスにしっかり目を向けつつ「みんなの経済的なメリットもあるし、地球にやさしい。
それがシェアリングエコノミーであり、私たちはこれからもそういった役割を担っていきたいと思っています。」と石塚氏はインタビューの最後を締めくくった。
こちらは移転前、サンフランシスコオフィスの一画に並んでいた歴代のメルカリTシャツ。これからもメルカリの進化とともに新しいTシャツが加わっていくことだろう
*本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。
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