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GoPro&Teslaの事例から学ぶ次世代デジタルマーケティング
デジタルマーケティングと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?PPCやディスプレイ、アフィリエイトなどのオンライン広告であったりソーシャルメディアを利用したキャンペーン等がイメージしやすいかと思います。恐らく多くの方々はいまだにオンライン”広告”としての認識が強いはずです。
従って重要なのは多くのユーザーの目にとまり、高いクリック率でトラフィックを獲得する事だと考えるのが一般的で、デジタルマーケティングの常識としては、広告費用に対するROI, いわゆる直接的効果が最重要視されがちです。
しかしながら、米国でのデジタルマーケティングにおいて意外と重要とされているのは、仮にそれが広告であったとしてもユーザーの注目を集めるコンテンツと話題性、そして他のユーザーにも知らせたくなるレベルのユニークさです。
加えて、多くの人々からの共感を集め、ファンにし、コミュニティー形成まで辿り着く事が出来たとしたら、単なる広告の枠を超え、ブランド構築のレベルまで達成することが可能になるでしょう。
ちなみに、SASによるとデジタルマーケーティングとは “デジタルメディアを通じた製品やブランドのプロモーション” と定義されています。
現在、様々なデジタルマーケーティング施策が行われる中、アメリカのいくつかの企業が上記の目的を達成させる、独自の手法を使って大成功を遂げています。その代表的な企業がGoProとTeslaです。
GoProはYouTubeをジャックするプロモーションを展開し、1つの動画で4億人ものビューアーを集めました。またTeslaはたった7人の小さなマーケーティングチームによって作られたウェブサイトで多くの顧客を集めています。彼らはマーケーティング手法を独自に確立し、多くのファンとユーザーを獲得しているのです。
YouTubeを“世界の窓”として活用するGoPro
誰でも簡単に小型カメラをヘルメット、自転車やサーフボードに装着する事で臨場感ある動画を撮る事を可能にするGoProは、ユーザーが撮った動画をYouTubeにUPする事で、実に多くの人々にその存在感をアピールする事に成功しました。
デバイス自体は数十年前からあるCCDカメラ (芸能人がジェットコースターに乗っている動画を撮る為に利用される小型カメラ) と大きな違いはないのですが、現在のインターネットと動画技術の進化を活用し、独自のブランドポジショニングを確立したのです。
GoProは単なるスノーボードやサーフィンの映像を撮るのではなく、海や山・空を駆け抜けるシーンを撮影するというコンセプトにフォーカスをしています。それ故に他のカメラと比べ”冒険・アドベンチャーを届けるプロダクト”とし、ユーザーから圧倒的なブランドと信頼を得ています。
そのGoProのYouTubeチャンネルには世界中で約190万人の購読者がいます。その中には、スポーツファンや単にスリルを求める人、はたまた写真家までもがいます。その人達に動画をシェアをしてもらうことがGoPro社のデジタルマーケーティングにおける最大のミッションなのです。
結果、GoProは現在までで計300億のビューと27,000以上のコメントを集めることに成功しました。これらの数字は彼らのデジタルマーケティングの成果を図る指標として非常に重要な役目になります。GoProは同社製品で撮影したエキサイティングな動画を定期的に投稿することで、購読者を増やし、ブランド価値を高めているのです。
そこには巨大な広告費は存在せず、ユーザーが真に喜ぶコンテンツをひたすら提供する事で、多くの人々の間で話題を呼び、彼らのブランドを広め、最終的な目的である商品のプロモーションに繋げているのです。
さらに、GoProはYouTube上のビューワーからのコメントを体系的に把握し、製品に関するどんな質問・コメントにも回答をしています。つまり、彼らはユーザーの考えや期待を早期に把握するツールとしてもYouTubeを活用しているのです。
そして、GoProチャンネルにUPされている動画は全て最後まで見てくれるレベルのクオリティを保持ことで、余計な広告コンテンツを表示する事を必要としません。彼らは動画の最後にさりげなく“購読(Subscribe)”ボタンを表示するだけで、とてもスムーズにユーザーをファンに変換させているのです。
GoProチャンネルに投稿された動画一例:
プロモーションにもイノベーションを – Tesla
次にご紹介するのが、Teslaの事例です。宇宙船事業も手掛けるイーロン・マスクによって設立された同社は、スタイリッシュなEV車を通してユーザーに対して新しいエクスペリエンスを届ける事で、自動車に対しての既存の概念を根本的に覆しました。そして彼らは、その商品自体だけではなく、プロモーション方法やその販売方法に至るまで一貫したイノベーションを生み出しています。
これまでの例で考えると、自動車業界は巨大な向上への大規模投資を行い、プロモーション方法としてテレビコマーシャルなどのマスメディアを活用した大々的なキャンペーン、そして販売はローカルディーラーで行う事が一般的でした。
アメリカを代表するようなデトロイト系自動車メーカー、例えばシボレー等も最新テクノロジーを活用したEVを販売していますが、その展開方法は上記のようなトラディショナルな展開方法を行っています。
その一方で、シリコンバレーに本社を置くTeslaは、あらゆる仕組みを根本から見直し、全く新しいタイプのプロモーションと販売方法を展開しているのです。
長い歴史を誇るデトロイト勢とは異なり、自動車業界に新規参入したばかりのTeslaには全米に広がるディーラーネットワークがありません。彼らが保有するのは限られた数のショールームだけです。
そしてTeslaは巨大な広告予算をマスメディア向けに投入する事も行いません。そして驚く事に、同社にはアメリカでは一般的であるマーケティング主任 (CMO)職は存在せず、ごく限られた人数のマーケティングチームだけでプロモーション展開を行っているのです。
ちなみに、現在のところTeslaの車両の直接的な販売を禁じられているテキサスやバージニア等の州でも、ストリートには多くのTesla車が走っています。いったい彼らのやり方のどこにユーザーを惹き付ける魅力があるのでしょうか?
2014年現在Teslaはアメリカ、アジア、そしてヨーロッパの地域に合計で35のショールームを保有しています。そして、実はそれぞれのショールームが彼らにとっては非常に重要な”広告”的役割を果たしているのです。
シャレたインテリアと車両のスケルトンを展示し、まるでApple Storeの様な高級感を醸し出すTeslaのショールームは、来客者に限らず近くを通った人々までもが、その様子をスマホで写真に撮り、ソーシャルメディア等を通じてシャアするのです。これにより実に”無料”でソーシャル広告の配信を実現します。まさに彼らのブランドのなせる技です。
そして、Teslaにはもう一つ重要な”広告”戦略があります。ジャーナリストの存在です。同社のプロダクトやイノベーションに多大なる興味を持つ彼らは、実に多くのメディアチャンネルにTeslaに関するストーリーを提供しているのです。
どんなに素晴らしいアイディアと予算を利用しても決して得る事の出来ないコンテンツをジャーナリスト達は”無料で”展開してくれるのです。Teslaがイノベーションを生み出し続ける事が出来れば、恐らく彼らはほぼ永久的にこの無料広告枠を維持する事が出来るでしょう。
そんな大きな話題性のあるTeslaでも、現在までに販売した車両数は1万台程度。やっと最近黒字化に繋げました。しかし、彼らは売り上げの数字を何倍も上回る程の話題性で次世代のデジタルマーケティング方法を生み出しました。
Teslaショールームの様子:
まとめ:効果的なデジタルマーケティングを展開する為の7つのポイント
商品だけではなく、プロモーション方法にも新しい手表を取り入れている両社は共に、ユーザーの心を揺さぶる卓越したプロダクトを作っている点、マス広告に費用をかけず、デジタルマーケーティングにフォーカスしている点、そして、ユーザーをエキサイトさせ、思わず引き込まれてしまう常識に捕われない魅力的なストーリーを持っている点等が共通しています。そして、彼らが展開するコンテンツには必ず下記の7つのポイントが含まれています:
- コンテンツに魅力的なストーリーがある事
- 話題性を生み出す事
- ユーザー視点で展開されている事
- バイラル性が高い事
- 臨場感がある事
- リアルタイム性が高い事
- 非広告的内容である事
今後はこれまで見られてきた、企業が一方的に配信する”広告”の概念がどんどん崩れ、特にデジタルマーケティングにおいては、新しいアイディアを盛り込んだ、”魅せる” & “見られる”広告手法が成功のカギとなるでしょう。広告以上の効果を広告以下のコストで達成させる。それこそが次世代デジタルマーケティングの醍醐味です。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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