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海外のオープンイノベーション成功事例3選: LEGO, GE, Samsung
社内外のリソースを柔軟に絡める事で、新しい商品やサービスを作り出す”オープンイノベーション”が、これからの企業の取り組みとして注目されている。具体的には、企業間の垣根を超えたコラボレーションや企業と個人の協業、社員以外でも自由に参加出来るアイディアコンテスト等、複数のスタイルが存在する。
先日、開催されたCEATEC会場におけるNRI社主催のハッカソンもその一つであり、異なるバックグラウンドの人々が参加する事により、今までに無いアイディアが生み出された。実は当社、btraxのデザイナーもメンバーとして参加させてもらい、見事優勝する事が出来た。
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しかし、上記のような取り組みは日本企業ではまだまだ珍しくオープンイノベーションを通じた成功例は多くは無い。そもそもそのコンセプト自体がまだまだ曖昧で定着していない。
その一方で、海外では、すでに具体的な事業展開としてオープンイノベーションを活用したケースがある。これらは、”外”の力を借り一緒に作り出す事で、社内リソースだけでは実現不可能だったアウトプットが得られる事がある。柔軟な姿勢で、リスクを恐れずに未来を作り出した、代表的な3つの成功事例を紹介する。
LEGO
世界中の企業の中でも、イノベーションを通じて新たなビジネスモデルを作り出した企業の代表例がLEGO社である。創業100年近いデンマークの老舗玩具ブランドであるLEGOは、その地位に甘んじる事無く改革を続け、2013年12月期には、売上高営業利益率32%を記録し、2014年上期の業績では世界一の玩具メーカーとなった。その後も引き続き快進撃を続けている秘密の一つが、オープンイノベーションに対する取り組みである。
同社は専属のオープンイノベーション部署を設立し、1985年より勤務のエリック・ハンセン氏をシニアディレクターに任命。LEGO社がイノベーションを創出する為に必要とされる社内の組織形態、求められるカルチャー、得られるメリット、必要なコストを算出した上で、具体的なプランを作成した。それを元に、まずは下記の3つの施策を行った:
- オープンイノベーションを実践している12の企業にインタビューを行う
- LEGOグループ全体での30の異なる事業部署を分析
- 4つのテストプロジェクトを通じて、イノベーションに対する自社の持つ能力、カルチャー、モチベーションレベルを調査
テストプロジェクトを行った際には、あえて不可能だと思われるような問題を提起し、オープンイノベーションを実現する為にLEGOに必要とされる、エクスペリエンスと人事・組織構造の改善点を洗い出した。そして、エリック・ハンセンによると、オープンイノベーションに関する下記の確証を得たという。
- LEGOに貢献するには必ずしも社員である必要は無い
- 最近の消費者は頭が良く、クリエイティブであり、企業にアイディアを提供したいと思っている
- イノベーション創出を妨げているのは、それを本気で必要としていない企業内の風潮である
- イノベーションに繋がるぶっ飛んだアイディアを出してくるのは、実はその会社や部署外の人々である
LEGOはこの取り組みを通じ、社外の人々からアイディアを募集するサイト、LEGO Ideas siteを開設し、新規サービスのきっかけ作りに繋げている。
GE
アメリカにおいて、スタートアップやVCなどとの協業を最も積極的に行っている大企業は家電大手のGEであろう。130年の歴史を誇る老舗ブランドのGEは、”Ecoimagination challenges”と呼ばれるコンセプトのプロジェクトを通じ、社会貢献、問題解決、そしてオープンイノベーションの創出をゴールに掲げている。
その中でも、社外の人々と共創を元に、次世代の家電製品のアイディア、デザイン、エンジニアリング、製作、そして販売までをFirstBuildと呼ばれるコミュニティープラットフォームを通じて行っている。このサイトは、世界中からアイディアを募集し製作プロセスも地域ローカルの製作所に発注する事で、素早いスピードでのイノベーション創出を可能にしている。
そしてGEは、GE open innovationと呼ばれる専用ページを設置し、更なるイノベーションを作り出そうとしている。このページにはこれからのGEが目指す根本的な改革、イノベーションを生み出す為には社内だけでの取り組みでは限界がある事、そして世界各地での問題解決には社外の企業や起業家とのコラボレーションが絶対条件である事が語られている。
これまでのGEのあり方を根底から覆す覚悟の同社は、イノベーションに対して下記のビジョンを掲げている。
- 顧客が求める商品を作り出す為に想像力、勇気、専門性、クリアなアイディアを元にコラボレーションを行う
- 一般公募で勝ち抜いたアイディアの提出主に対し、公共の場でそれを発表し、祝福する
- 協業する相手に対しては、その方法、ルール、報酬、知的所有権などの条件はプロジェクト開始時に公開する
- 良いアイディアには報酬を払い、その額はアイディアの市場に対するインパクト、努力レベル、商品化の可能性、そして知的所有権などのファクターを加味して決定する
- より良い結果を生み出す為に、所有する知的財産をアイディア提供者からアクセス可能にする
- 常に実験を続け、コラボレーションと学習する事を停めず、常に進化を続ける
Samsung
競合ブランドのAppleと比べても、Samsungは他社との協業を通じたオープンイノベーションに対してかなり積極的に行っている。同社がシリコンバレーに開設した、Open Innovation Center主任のマークシェドロフ氏によると、Samsungのモットーはスタートアップの様にイノベーションを生み出す事だという。
このモットーを実現する為に、同社は他社とのパートナーシップ、スタートアップへの投資、スタートアップ企業のM&A, そして、シリコンバレーとニューヨークに設置したSumsung アクセレレーターを4本の柱として、オープンイノベーションを遂行している。
実際に、社内スタッフと社外の人々で構成される5-6人で一つのチームを編成しスタートアップ的なスピード、自由な発想でのプロダクト開発、そしてチームワークを実現。
同時に、大企業のメリットである金銭的なサポート、顧客ベース、販売チャンネル、その他のリソースの提供を行っている。この仕組みを通じ、プロダクトを繋げる革新的なソフトウェアを生み出そうと考えている。
なぜ企業にとってオープンイノベーションが必要なのか
発表前のプロダクトに関する機密保持や、グループ会社での仕事の受発注が一般的とされている日本企業では、まだまだオープンイノベーションが実現している例が少ない。
むしろ、”これからはオープンイノベーションだ”とは言ってみたものの、なぜ重要なのかという本当の理由を理解していないケースも多々ある。これからの時代にオープンイノベーションが重要な6つの理由を挙げて見る。
- Speed: スピード – 社外の企業や個人からアイディアを募集すれば速いスピードでの商品企画が可能になる
- Diversity: 多様性 – 全く異なるバックグラウンドの個人や企業から、社内だけではこれまでに考えつかなかったような、とっぴなアイディアがあつまる
- Knowledge: 知識 – これまでの社内プロセスでは考えられなかった制作方法を集める事が出来る
- Experimentation: 実験 – 本事業部での承認プロセスを通すと絶対に無理だった実験的なプロジェクトが可能になる
- Marketing: 拡散 – 共創プロジェクトを通じて、世界中の人々から注目を得る事で大きなマーケティング効果が見込める
- Cost Savings: コスト削減 – これまでは、リサーチ、企画、検証、プランニングなど、膨大な予算とリソースを費やしていたのに対し、小さなコストとリソースでプロジェクトを進める事で、たとえ失敗したとしても、うまくいかない理由とデータの収集ができる
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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