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ブランドをビジネス価値に変換させる5つの構成要素【ブランディング入門#1】
※この記事は2023年5月に最新の状態に変更されています。
“ブランド”という言葉を聞いて真っ先に思いつくのがロゴやデザイン等、視覚的な要素である。
しかし、そのブランドを創り上げる“ブランディング”というプロセスの中では視覚的デザインは最終アウトプットではあるにせよ全体のごく一部でしかない。
むしろそのプロセスの中で最終的に抽出されたエキスの結晶を落とし込んだのが視覚的なアイデンティティであり、そのブランドを取り巻くビジュアル要素になる。
これは、人間が本来視覚的動物であるため最もイメージを与えやすい要素であることが起因する。
一方で、“ブランドイメージ”という言葉の裏には実はビジュアルでは表現することの出来ない“雰囲気”的部分が大きな役割を果たす。
例えばAppleは革新的である。Nikeは躍動感がある、エルメスは高級感など。
実はこれらのイメージは必ずしも企業や商品に限った事ではない。
ステーブ・ジョブスやマイケル・ジョーダンなどの“人”がブランドになる事があれば、“シリコンバレー”や“代官山”などの地域がブランド性を持つこともある。
そんな“ブランド”に共通する5つの構成要素がある。人の心に残る世界の全てのブランドは下記の要素を必ず兼ね備えており、弊社btraxでもブランディング戦略サービスを提供する際にも、まず始めに行うプロセスにもなっている。
正しいブランディングは、イメージを構築する以上にブランドに価値を与える。それには洗練されたなメッセージの裏に隠された緻密な戦略が存在する。
- ブランドポジショニング (位置)
- ブランドパーソナリティ(属性)
- ブランドアソシエーション (連想)
- ブランドストーリー (物語)
- ブランドプロミス (約束)
ブランドポジショニング (位置)
ブランドが何を目的に誰のために存在するかという存在意義を定める。全ての人々に魅力的なブランドは存在しない。正しいブランディングは、ターゲットを定め、ブランドとしてのポジショニングを決定することから始まる。そして、そのターゲットに対してどのな役割を果たすかも明確にする。
例えば、スターバックスの場合、コーヒーを飲む為だけではなく、人々が集まるコミュニティーとしての存在を地域に提供し、カジュアルさとリラックスさのバランスを顧客に届ける事を同ブランドのポジショニングとしている。
ブランドパーソナリティ(属性)
たとえそれが企業やプロダクトであったとしても、優れたブランドには個性がある。この個性を作り出すことこそ、ブランド・パーソナリティの役割である。現代では多くのプロダクトが機械的な行程で作り出され、類似品との違いを生み出すのは容易なことではない。
そこに生身の人間的なニュアンスを加え、消費者に親近感を与えることで、差別化を計る。場合によっては無味乾燥になりがちちなプロダクトに対して、その属性を定め、人間的なタッチを加えることで人々の心に残るブランドとなる。
ブランドを定義するブランドガイドラインには、そのブランドがもし人間だったらと仮定し、属性を説明する文章が含まれていることが多い。
例えば、以前に日本市場向けのプロジェクトの仕事をさせて頂いた、米国大手オンライン旅行予約サービスのExpediaのガイドラインには、“ユーザーにとってはいつでも頼れる友達であるが、馴れ合いの親友ではない” と明記されていた。
このような最終的なパーソナリティを定義する文章に落とし込む前に、下記のような表を元に、異なる項目そのブランドの性格を設定し、属性を決めていく。
ブランドアソシエーション (連想)
そのブランドが理想とするイメージと同じ、もしくは近い事柄と関連させることで、人々にそのブランドが届けたい“雰囲気”を伝え、ブランド名を聞いた時に消費者が連想するイメージを定義するのがブランド・アソシエーションの役割である。
例を挙げると、Apple社がジョブス復帰直後の90年代にThink Differentキャンペーンを通じて行ったイメージ改善施策。アインシュタインやガンジー、ジョン・レノン等人々の映像を利用することで、Apple本来の“既存の常識にとらわれないノベーション”というブランドイメージを、時代の異端児とされる著名人を通じて消費者に届けた。
NikeのCMで商品よりもアスリートがフォーカスされているのも同じような理由である。
このように、ブランドイメージ構築の際には、直接的な説明よりも、すでにそのイメージを持ち合わせている人であったり、街であったり、文化的な事柄に“関連”付けることにより、消費者に連想させるのがブランド・アソシエーションである。
企業がイベントの協賛を行ったり、CMに芸能人を利用するのも、消費者にそれらに感じている雰囲気と関連させたいからである。
ブランドストーリー (物語)
ブランドに関して消費者の心に一番響くのが裏に隠されたストーリーであろう。
創業者の会社設立時の熱い思いであったり、商品が生まれた偶然のきっかけ、最初の顧客とのやり取り、成長時の大きな失敗談とそれをどのように巻き返したかなどのストーリーなどがこれにあたる。
こういった要素は。ブランドを作り上げる上でとても重要な要素の一つとなる。このような物語は、ブランドと消費者の距離を縮め、ファンを増やす。
最近は、このようなストーリーはブログやオンライン動画などでも展開可能であり、ブランディング施策の大きな役割を担っている。
ユーザーは完全に出来かがったブランドよりもそれが出来るまでの改訂や失敗談などにも大きな興味がある。下記はJohny Walker社のストーリーをスタイリッシュに表現した動画である。
ブランドプロミス (約束)
消費者にとって最も重要なのが、そのブランドが自分に何をしてくれるかということ。
どんなに素晴らしいCMや素敵なデザインのロゴがあっても、消費者にたいして安定した価値を継続的に提供出来なければ、ブランドとしての価値を作り上げることは難しい。
ブランドプロミスを通じ、顧客への目に見えない“約束”を届けることがブランド構築の上で最も効果的だ。そして、多くの企業はキャッチコピーに自社のブランドプロミスを盛り込むことが多い。
ファーストフードのマクドナルドが世界中にここまで展開出来たのは、黄色い“m”のロゴのお店に行けば、必ずしも最高ではないが、安定したメニューとサービスをいつでも確実に受けられるという安心感をそのブランドが消費者に “約束” として提供しているからである。
これは簡単なようでいて、意外と難しい。この点をブランディング施策を行う際にしっかりと定義していない場合は、時間が経つにつれ、少しずつずれが生じ、消費者に不安を与える結果となる。
ブランドプロミス例:
- Coca-Cola: 楽しく愉快な瞬間を喚起します
- Apple: 最もクールで使いやすく先進的なプロダクトを提供します
- Fedex: ご安心下さい。お預かりした荷物は責任を持ってお届けします。
- McDonald’s: 安定したスピードとサービスを提供します。
- McKinsey & Company: 最高レベルの経営コンサルタント集団です。
拡大するブランディングの重要性
活躍している企業やプロダクトは共通してブランディングを重要視している。
現代では企業のあらゆる側面においてブランド力の重要性が今までになく高まっていてブランド力は財務表には載らない大きな財産となり長期的に大きなビジネスの価値を生み出す。
逆に、ブランディングを軽視し短期的な成長だけを考えてしまうと企業としての価値が積み上がらず成長が頭打ちになる。
最終的なアウトプットはシンプルでも、それに辿り着く為のブランディングプロセスは非常に複雑で、ややこしい。
しかし一度方向性が決まれば、企業や商品/サービスの位置づけや方向性が定まる。
そして、そのブランドが定義する属性を基に他の事柄との関連性を加味したストーリーを作り出し、顧客へのメッセージングを届けることが出来る。
優れたブランドを作り上げるには、ロジカルな要素と感覚的な要素をうまく織り込む必要があり、容易なことではない。ブランディング施策として、今回紹介したプロセスはグローバルブランドを構築する第一歩であり、最も重要な行程でもある。
優れたブランドの裏には必ず顧客への確固なる誓約が隠されている – When you look at a strong brand, you see a promise.
btraxは、グローバル展開を視野に入れたブランドのサポートとして、ローンチからグロースまで、一気通貫のサポート体制を整えている。ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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