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あなたの想いが世界中の人達に伝わるツールを【インタビュー】Prezi CEO & Founder – Peter Arvai
皆さんは”プレゼン”と聞いて何を連想するだろうか?プレゼンの神様 – Steve Jobs, TEDxでのスピーカー達による素晴らしいスピーチ、もしくは情報が詰め込まれたスライド資料、などなど。
こちらアメリカでは幼い頃から人前で話す機会がとても多くプレゼン上手である事は日々の生活においてとても重要な事柄になっている。
自分の考えている事を相手に伝え、周りの人達を巻き込んでいく。世の中で影響力が強ければ強い人ほどプレゼン上手である事はほぼ間違いないと言える。
日本ではあまりプレゼンを行う機会は多く無いかもしれないが、学校や仕事場で少なからず自分のアイディアを伝えなければならないシーンはあるはず。その際にどのようなツールを利用しているだろうか? 恐らく多くの人達はPowerPointを使ってプレゼン資料を作成しているだろう。最近はKeynoteを利用している人も増えてきてる。
一方で、最近はなぜかミョーにかっこ良い動きのするプレゼンを見た事は無いだろうか?特に海外のプレゼンを見てみるとスクリーンに映し出される画面が話しの内容に合わせて縦横無尽に動き、トピックごとにズームイン/アウトを行う。このようなとてもクールで先進的なプレゼンは、ほぼ確実にPreziというツールで作成されている。
このPreziというツール、サンフランシスコでは数年前からスタートアップ関係者を中心にじわじわと人気を集め、現在では世界中の多くの人々に利用されている。Preziを利用すると、画面全体に表示される画像や文字等の要素のそれぞれにズームインする事で詳細を説明したり、次の項目に進む際にもトランジションが入る事で、よりアイディアをスムーズかつクールに表現する事が出来る。既存のPowerPointやKeynoteのスライド式とは大きく異なる手法が使われている。
自分自身もPreziはリリース直後より注目していたのだが、実は、今年7月に開催したbtrax Japanオープニングパーティーにてbtrax社の歴史や今後の展望を説明する際に本格的に利用してみた。自分自身で言うのもおかしいが、上記プレゼン後に多くの方々から”ものすごくかっこ良かった”とのお褒めの言葉を頂いた。その後、社内外を含めほぼ全てのプレゼンにはPreziを利用している。
サンプル: Preziを利用して作成したプレゼン資料
実はアメリカ発ではないPrezi
サンフランシスコ地元のイベント、SFNewTechで2年以上前にとあるスタートップがピッチを行う際に使っていたのがPreziを初めて目にしたきっかけだった。その時は衝撃とともに、”さすがアメリカのスタートアップが作ったツールだな”と思ったのだが、実はPreziはアメリカ産ではない。元々はハンガリーのブタペストにて3人のファウンダーによって作られ、現在はサンフランシスコにもオフィスがあるが、そのスタッフの大部分、特にエンジニアたちは今でもブタペストの本社で働いている。
PreziのCEO, Peterに色々聞いてみた
現在Preziの日本市場担当として働いているスタッフの方は古くからの友人である。そしてつい最近業務拡大の為に、彼らのサンフランシスコオフィスが我々btrax社のすぐ近くに引っ越してきた。そんな縁もあり、今回はPrezi生みの親であるCEOのPeterになぜPreziなのか、今後のプレゼンはどのように進化していくのかなどを聞く為に早速インタビューをしてみた。
ゲストトーカー: Peter Arval – CEO & Founder, Prezi (Peter)
インタビュアー : Brandon K. Hill – CEO, btrax, Inc. (Brandon)
オーディエンスに衝撃を与えるツール: Prezi
Brandon: それではまずはPreziを作ったきっかけから教えて下さい。
Peter: そうだね。元々は僕たち3人のファウンダーの1人, Adamがビジュアルアーティストだった事がきっかけだね。彼は世界を旅しながら、多くの人達に自分の作品を見せていたんだ。それでその時に、現在のPreziに繋がるツールを自分自身の為に作って利用していた。
そうしているうちにそれを見た人達から、”これどうやったら作れるの!” と聞かれたんだけど、プログラミングと、デザインと、レンダリングと、等々説明して行くうちに、誰でもが利用出来るツールにしてリリースする事を決め、3人のファウンダーが集まったんだ。
スライド作成ツールはの起源は350年も前
実は現在のPowerPointやKeynoteで見られるようなスライド型プレゼン資料の作成は350年も前から行われているんだ。その頃のヨーロッパの人がガラス書いた画を壁に映し出したのが始まり。そのガラスを何枚も利用し、ストーリーを伝える事で、現在のスライド式プレゼンが生まれたんだ。
プレゼン資料に革命を起こすPrezi
でも僕たちは350年もの歴史のあるスライド式プレゼン方法を根本から変えていきたいと思っている。一番の理由はヒトが物事を考える際に間の脳の仕組みに対して、スライド式がふさわしく無いからだ。例えばじゃあ試しに今キッチンにどんなものがあるかを想像してみて下さい。
恐らく、まずはキッチン全体を思い浮かべますよね、そこから冷蔵庫や食器棚などの各エリアにズームインする、その後で冷蔵を空けてその中身を想像する。そしてまたズームアウトしてから食器棚に移動して、戸棚を開け中をみて食器がある事を思い出すだろう。
この実験からもわかるとおり、人間が何かを考えたり想像する際の思考回路はスライド式とは全く異なるんだ。人間の脳が何かを考えたりするときは、文字やリスト形式では行わないんだ。僕たちは脳科学や人間行動科学などの側面からより人々にとってナチュラルなコミニュケーションツールを作りたいと思っているんだ。
脳が情報処理を行う時に得意としているのは、1. ビジュアル処理能力と 2. 空間処理能力だ。Preziでは人々が得意としているその2つをメインの特徴として注目している。現在自分がいる位置、そしてそこで見える風景が脳にとっては一番得意な情報なんだよ。Preziはその二つのポイントを中心に開発がされている。
Preziは現代に必要な新しいプレゼンツール
Brandon: Preziは今後PowerPointにとってかわるツールだと思いますか?
Peter: PowerPointの最初の企画資料を研究した事があるんだ。25年以上も前に作られたものだった。そこにはその当時の資料作成に対してどのような内容が求められるかが詳細に説明されている。その頃は例えば投資家が起業家のプランに対して投資検討する際にも、詳細な資料とデータを要求し、意思決定に至るまでにはかなりの時間を費やしていた事が分かる。その昔は情報量が少なかったから、より多くの情報を提示するのが良いと思われていたんだ。
その一方で情報過多で決断スピードが速い今の時代にそんな事をしたとしよう。恐らくほとんどの投資家達には忙しすぎて,そんなもの読んでいる時間は無い。と言われるだろうね。現在はより効率的に要点をまとめ、簡潔により分かりやすく情報を伝え、相手の心を動かす必要があるんだ。従って、今後はPowerPointのようなツールよりもPreziを使った方が想いが伝わりやすくなるし、多くの人々から注目をされると思っているよ。
そしてこれはとても重要な事なのだが、プレゼンを行う際に何が一番大切なのかを考えてほしい。最終的に最も重要になってくるのは、あなたのアイディアがどれだけの人達の記憶に残り、どれだけの人達に広がるか、そして彼らにアクションを起こさせる事が出来るかと言う事だ。それ以外の事柄、例えば資料の質であるとか、データの量であるとかは最も重要なポイントではないんだよ。
僕たちはその点を忘れてはならない。ミーティングをする目的は、ミーティングをする事ではないんだよ。
これからの時代に求められるのはクリエイティブなエクスペリエンス
Brandon: 僕がPreziを利用して最も良いと思うのは、作り手として資料作成をしている時に思考が整理しやすい所です。そして、元々デザイナーだったので、クリエイティブなアプローチを取れるのもとても嬉しいです。
Peter: 先ほどの人間の脳の仕組みかを考えると、資料作成の際もとてもスムーズな情報整理が出来ると思う。そして、プレゼン作成そのもののエクスペリエンスがとてもクリエイティブなものである事は間違いないだろうね。
これからの時代はそのようなエクスペリエンスをユーザーに提供出来る企業が生き残っていいくと考えているんだ。例えばこの前、何十年の歴史がある大企業のKodakが破産申請をしたよね。そのいっぽうでは、たった13人の若者で構成されるチームのスタートアップ、Instagram社がFacebook社に10億ドルもの価格でエクジットに成功した。この例からも分かる通り、現在のユーザーが求めているのはより分かりやすく、使いやすいクリエイティブなエクスペリエンスに他ならない。
アメリカのビジネスシーンでも広く受け入れ始めているPrezi
Brandon: スタートアップ界隈ではかなり受け入れられているPreziですが、我が社でも実はクライアント向けコンペの際に利用してみたんですよ。つい先日も、Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシーが率いるSquare社スタッフの前でプレゼンをした際にもPreziを使ってみました。特に彼らはシンプルである事、分かりやすい事、クールである事を重要視する会社だという事を知ってましたので、Preziで行うのが最適かなと思いました。
Peter: で、結果はどうだった?
Brandon: 見事に仕事が取れましたよ!Preziを使うとやはりオーディエンスの集中力をキープしやすいですし、余計な文章やコンテンツが無いので、プレゼンする側としてもかなりやりやすかったです。ただ、プレゼンターのスキルはかなり重要になる事は間違いないとは思いますが。それ以来、Airbnb社やPinterest社などをはじめとして、対クライアント向けのプレゼンを行う際にはPreziを利用しています。これはまるで数年前にExpedia社にMacを使ってプレゼンした際に、先方のスタッフがExposéに感動していたのと同じ効果だと思います。その当時彼らは全員Windowsを使っていましたから。
日本ではまだまだ受け入れられにくい…かも。
Brandon: 上記をとってみてもアメリカでは既に”プレゼン資料”を印刷して渡す文化が無くなりつつあると思います。皆時間がないですからね。皆プレゼン一発をみて、最も印象に残ったものに対し、より素早く正しい判断を行いたいと思っています。でも実は日本でのプレゼンは、まだまだ”資料の発表”の域を超えていません。
Peter: そうなんですよね。僕も日本にで働いていた事があるのでよくわかりますよ。日本だとPowerPointを使わないとまだまだ不謹慎だと思われるかもしれないですね。とても残念な事です。残業が無くならない大きな理由の一つかもしれませんね。
ハンガリーに本社を置くPrezi社
Brandon: Prezi社に関して少し教えて下さい。元々ハンガリー発で、現在もスタッフの多くはハンガリーにいると聞いています。
Peter: はい。エンジニアリングチームを始めとして、プロダクトチームは全て現在でもハンガリーにいます。アメリカにオフィスを開いた理由としては、グローバル企業に育てたかったからです。会社を立ち上げた一年目から世界市場、とくに最も大きなアメリカ市場を狙っていました。ここサンフランシスコオフィスの役割はユーザー開拓やビジネス開発になります。
グローバル企業を作るには起業家を育てる仕組みが必要
これはハンガリーの起業家、そして日本の起業家にも共通して言える事ですが、素晴らしいプロダクトは自国でも十分に作る事が出来るという事。そしてグローバルな企業を作るのにはそこまで時間がかからないとと言う事です。
実は最新の調査によると、Googleは世界の優良グローバル企業の中でも創業年数は平均なんですよ。言い換えると創業してから18年しか経っていなくても、素晴らしいグローバル企業になれるし、Googleは既に老舗に近づいているんですよ。そして、グローバル企業はアメリカだけじゃなくて日本からもどんどん出てくると思いますよ。
そこで重要になってくるのは、国がクリエイティブな考えが出来る人達をどれだけ育てる事が出来るかという事でしょう。ビジネスの世界で最もクリエイティブな人達は起業家ですよ。これから起業家を育てるシステムが必要なんです。
シリコンバレーはエンジニアの聖地なのか?
Brandon: 多くの人々がシリコンバレーで起業する理由の一つに優れたエンジニアの獲得を上げていますが、どう考えていますか?
Peter: 恐らくシリコンバレーには優秀なエンジニアが沢山いる事は間違いないだろうね。そして彼らのネットワークや共有される情報のクオリティーも高い。しかし、世界を見渡してみると、ヨーロッパだって、アジアだって、素晴らしいエンジニアは多く存在する。
確かにシリコンバレーの方が情報は多いかもしれない。でも考えてみてほしいんだ。今なら世界中どこにいたって、YouTubeやTechCrunchなどで情報が得られる時代だ。15年前のシリコンバレーよりも、現在の東京の方がよっぽどエンジニアにとっては恵まれた環境だと思うんだ。
確かにサンフランシスコは起業家にとっては素晴らしい街だ。ネットワークが作りやすいからね。日本の人たちも是非来てもらいたいね。特にビジネス担当の人達は市場開拓や投資家に会う為にもこの街は良いと思うよ。サンフランシスコと日本の良い所を合わせるのがよいだろう。
良いアイディアが世界中にシェアされれば、世の中はもっと良くなるはず
Brandon: Preziが今後世の中に与える影響とはどのようなものでしょうか?
Peter: 例えば医学の専門家が癌治療の為の新しい発見をしたとするよね、その際には医学の専門的な事を知らない人にもより分かりやすく伝える事ができれば、より多くの人がその発見を知る事が出来るはずだ。同じ様に学校の先生だってより生徒に分かりやすく歴史を教える事が出来ると良いよね。
Preziはより効果的にアイディアを世の中の多くの人々に伝えるベターなツールだと考えているんだ。そんな観点から考えるとプレゼンツールではあるけれども、実はTwitterやFacebookと同じく”シェア”する事に重きを置いている。でも重要なのはPreziが担うのは”今どこで何をしている”的なステータスアップデートだけではないという事だ。我々のプロダクトはより多くの人に素晴らしいアイディアを共有する為に存在するんだ。
そして素晴らしいアイディアがもっともっと多くの人達にシェアされ、あいてに伝わる事ができれば、医療だって、教育だって改善されるし、異なる思想を持った人達による争いだって少なくなるだろう。Preziを通して、世の中はもっと良くなるはずだと僕は信じているんだ。
インタビューを終えてみて:
往年のスティーブ・ジョブスを思い起こさせる出で立ちのPeterは、ゆっくりと自身のプロダクトに対しての深い哲学を語ってくれた。スウェーデン生まれの彼は、2人のハンガリー人共同創業者と共にPreziを経営している。そもそも、”Prezi”とはハンガリー語でプレゼンを意味する単語。
本社がハンガリーにあるPrezi社はアメリカからしてみると海外の企業。でも彼らが考えているのは、まさに他のサンフランシスコ/シリコンバレーの起業家と同じ、世の中をよりよくする事。インタビューを通してそのミッションがひしひしと伝わって来た。自分の想いを世界中の人達に伝える、そこに国境は無いという事も。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
photo by Fumiyasu Kagami
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