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未熟だった過去の自分へ〜サンフランシスコでのインターンを通して学んだこと〜
プログラマーやデザイナーでもない、何か特別なスキルもない、海外での生活経験も1ヶ月の語学留学程度。
そんな「普通の女子大生」な私が、サンフランシスコでbtraxというデザインコンサル会社で働く—そんな夢にも思っていなかったことが起きた。そして自分でも未だに実感が湧かないのだけれども、なんと今日がbtraxでの3ヶ月のインターン、その最後の日だ。
何故btraxで働くことになったのか、この3ヶ月のbtraxでの全ての活動、フィードバックから学んだこと、気付いたことをここに書き出していこうと思う。
始まりは唐突に
11月も終わりにさしかかったある日、いつも通り何気なくfacebookをチェックしているときに目に飛び込んできたのは友人がshareしていた「[求人告知] サンフランシスコで働いてみませんか?」という記事。そこから吸い込まれるようにbtraxのwebサイトとblog記事のほぼ全てに目を通し、気付いたらカバーレター、CV、履歴書を送っている自分がいた。
何故そんなに惹かれたのかという理由は3つある。1つ目は、何よりもbtraxのビジョン—”Connecting the Creative with Business”にとても共感したということ。2つ目、実際の業務内容である日本からアメリカ、もしくはその逆に進出したいというサービスのローカライズやそれに当たってのコンサルタントという業務内容も面白そうだと感じた。
3つ目、大学ではマーケティング、広告を学んでいたので実際のビジネスの場では一体どのようにマーケティングプロセスが進んでいくのかということにも興味があった。
※btraxの目指すビジョンとは? btrax CEO Brandonによると、
僕はデザインとビジネスをもっと密接に関わらせて行きたい。資本主義の国の場合、どんなにきれいなデザインのモノでもビジネスの要素がなければ死んでしまう。例えば、もしどんなに良いデザインのwebサービスがあっても、ビジネスとして成り立たなかったらcloseしちゃうでしょ。世の中にインパクトを与えるためには、この要素が無いと人の心もお金も社会も動かせない。ビジネスとデザインをもっと密接に関わらせることによって、すごく良いデザインがビジネスに影響していくかなって。そんなよいデザインを普及させて行きたい。デザインとビジネスを融合させれば社会に対する影響力も大きいと考えてる。
「デザイナーを目指す前に知っておいてほしいこと: 【対談】上杉周作 x Brandon K. Hill – デザインの裏側」より
「スタートアップ」という言葉との出会い
インターン応募のメールを送った数日後か、Brandonから返事が来る。「来週東京に出張で行くのでそこで一度お話を聞きましょう。」という。
12月の中旬、渋谷のスターバックスで面接は行われた。
その面接後、スタートアップ関連の人たちが集まる会合へ行くというので連れて行っていただき、そこで出会ったある3名に圧倒される。そのうちの一人、Kさんは私を見るなり「・・・てことはスタートアップ興味あるんですか?」スタートアップとは一体なんのことだかさっぱり検討もつかなかった当時の私だが、帰る頃には「自分のこのサービス、プロダクトでもっと世界を良くしたいんだ」と思う若い人がこんなにたくさんいるのか。みんな自分とは数歳しか違わない、一体自分は何をしてるんだろう—そんな焦りとワクワクで胸がいっぱいになった。そしてその後btraxに正式に採用が決まったあと、私はスタートアップ関連のイベントを担当していくことになる。
3ヶ月のスタート
CEO Assistantという職種で採用されたものの、オフィス初出勤日にちょうどBrandonが日本に出張に行っており、特に指示も無かったので前述の通り興味があったスタートアップのイベント企画運営チームに関与していくこととなった。
働き始めて1ヶ月後のmid-term reviewでメンターと自分がやってみたい仕事の確認をし、その後はイベント企画運営以外にも違う仕事を任されるようになった。
では一体、この3ヶ月私がbtraxでやっていたことは何かというと、
- Event Organizer / スタートアップ関連のイベント企画運営
- Business Development / btraxの新規顧客となり得る企業のリサーチ、営業
- CEO Assistant / CEOアシスタント
大きくこの3つに分類される。
仕事を通して気付いたことが2つあった。
1. 自分にしかできないすごい仕事なんて無い
アメリカに来る前は、「自分にしかできない、面白くてすごい仕事をしたい」なんて漠然と心のうちで思っていた。だけど実際、どんな仕事も基本辛くて、地味で、あんまりすごくない。デザイナーのような一見華やかに見える仕事も、経営者の仕事も、地味で辛い作業の積み重ねだ。私は「仕事」というものの表層しか見えていなかった。
上杉周作氏とのインタビューで彼が言ったこの言葉は特に私の心にずっしりと残っている。
完全に自分に正直になって「まだだめだ」って自分に言えること。そして同時に、「もうだめだ」って思わないように心をコントロールしなきゃいけなくて、それが難しいですね。自分に嘘つかない人にならなきゃだめなのかなって。
「デザイナーを目指す前に知っておいてほしいこと: 【対談】上杉周作 x Brandon K. Hill – デザインの裏側」より
2. 英語を使えないと話にならない
営業のネットワークづくりのためにとあるイベントに参加した際のこと。ネットワーキングの時間にほとんど誰とも話すことができなかった。ビジネスのことや自社のサービスのことを説明するにあたり、自分の英語では自信が無く、誰かに声をかけることができなかったのである。
それまで日常会話はなんとかなる、と思っていた自分の英語力だったが、こういう場で自らをどんどんアピールしていけること、英語でネイティブスピーカーとやりとり出来るレベルでないと自分の仕事は務まらないのだと実感した。
フィードバックから学んだこと
日々の業務を通じて、仕事に対する姿勢から大人、プロフェッショナルとして生きることなど様々な角度からフィードバックをもらった。
「スピードを意識する」
アウトプットが出て初めて世界に何かしらのインパクトを与えることができる。たくさんの時間をかけたのに、すこしのアウトプットではほぼ無意味。そのためスピードを意識することが重要。
1.タスクにプライオリティをつける。
プライオリティをつけるにあたり、2つのマトリックスを場合によって使い分けるのが良い。
ⅰ)インパクト x かかる時間
短時間で達成可能でインパクトが大きいものから処理をしていく
ⅱ)締め切り x プライオリティー
1.今すぐやらなくても良いが、プライオリティーが高いものもの
2.今すぐやらなければ行けない事で、プライオリティーが高いもの
3.今すぐやらなければ行けない事で、プライオリティーが低いもの
4.今すぐやらなくてもよくて、プライオリティーが低いもの
2.考えすぎる前に動き出す。
(自分のような)学生は特に、動き出さずにずっとああでもないこうでもないと考えている。そんなこと考えている間にまず動き出すべき。「多くの学生と社会人の違いはいかにスピードを意識してアウトプットを出せるか否かだ」
3.集中、フォーカスすること。
プライオリティをつけたら、あとはとにかく集中、フォーカスすること。
btrax blog「優れた起業家に必要な10の基本資質」より
「『◯◯したいです、けどまだ何も出来てないんですけど・・・』は禁止」
本当にそれがやりたいことならそんなこと言う前に何かしら動き始めてる。もし動き始めてないなら、それは本当にやりたいことじゃないんじゃないの?
—この◯◯に当てはまることはたくさんある。
「英語勉強したいです、けど・・・」
「プログラミングしたいです、けど・・・」
「デザイナーになりたいです、けど・・・」
「起業したいです、けど・・・」などなど。
そのフィードバックを受けてから「◯◯したい」と興味を持ったらまず調べてみる、アクションを起こしてみる、できることなら実際に手を動かしてみる、と自分ルールを作った。
「理想主義を捨てること、ON / OFFをしっかり作ること」
いきなり「世界をもっと良くしたい!」なんてどんなことが今の自分にはできるのか?そんなことはたかがしれている。
まずは理想主義であることを捨て、一度結果主義になってみる。とことん結果を追求して、成功して余裕が出たらそこから理想を取り入れていけば良い。また、ONにOFFでの感情を持ち込んでは行けない。
なんて、頭では分かっていたけど全く実践できていないのが他でもない自分だった。
というのも、「誰からも嫌われないように」と常に行動していたから。
「『誰からも嫌われないように』なんて理想、感情論を言ってるのは本当に甘い。まずアウトプットを出してから言え。」
「世の中に何かを与えようと思ったら必ず反動が出る。どんなに自分が良いと思ってしたことでも、判断するのは自分ではなく相手だから、必ずしも相手も良いと受け取るとは限らない。そんなことうじうじ考えていてもしょうがない。」
はっとするような言葉に目が覚めた。まずは自分がやることやってから、周りの人に与える立場になることを目指そう、と心に決めた瞬間だった。
また ON / OFFを分けろというのは人格を変えろという意味ではない。仕事に関してフィードバックを受けたときに「そのやり方」に対してフィードバックを受けているのであり、「自分自身」を否定されている訳ではないと心得る事である。
「結論を急ぐな」
「わたしプログラミング向いてないんです・・・」と言うと、「なんでそんなすぐ決めちゃうの?」と。
「◯◯はできない」「◯◯には向いてない」そう自分の中で結論を出した瞬間、成長する可能性も無くなってしまう。
「中身も外身に追いつけるように努力する」
「外身の印象が良くて、中身がそれにおいついてないと思うなら 中身もそれに追いつくように努力すればいい。初対面の印象を下げようとするな。」
というのは「初対面のときに『なんでも器用にこなせそう』と思われるけど、実際そんなに器用になんでもこなせる訳でもないのでガッカリさせたくない。だから初対面でハードルを下げようと努力してるんです。」なんて自分がBrandonに相談したときにもらったフィードバック。
「どんなに良いことが結末に書いてあっても、最後まで読んでもらえないなら意味が無い」
これまでにblogやイベントのチケット購入ページの紹介文など書く機会が多々あり、その際に文章を書く時に注意すべき3つのポイントも学んだ。
①タイトルと最初の2,3行でまず掴むこと ②コンテンツの山場を作ること ③緩急をつけること
これは私がNEW PEOPLE, Inc.の堀淵清治氏へのインタビュー記事を書いた際にボツになった原稿である。
数年前から「クールジャパン」という用語とともに、日本のポップカルチャーにはまる海外の若者の姿を各メディアでよく見かけるようになった。日本を代表するイメージの1つがアニメやマンガといったポップカルチャーであることは言うまでもない。
しかし、「マンガ」が「スシ」や「サムライ」と並ぶ日本文化の1つの象徴としてすんなり受け入れられた訳ではなかった。1980年代、コミック市場も日本に比べるとまだまだ小さかったアメリカで、日本のポップカルチャーを0から広めたその立役者がサンフランシスコにいる—NEW PEOPLE, Inc. CEO、堀淵清治氏である。
一起業家としての堀淵氏に、これまで、そして今後のビジョンについてお話を伺った。
このボツ記事から採用記事に書き換える際の一番のポイントは頭に「迷ったら逃げろ。」というフレーズを持ってきたこと。実はこのフレーズはインタビューの最後に出てきた言葉。「もっと読みたい」と思ってもらうには何よりもこの言葉が読み手にそう思わせるのではないか、と思い記事の構成を大幅に変えた。
私が採用された理由?
実は上杉周作氏とのインタビューの際に上杉氏から、なぜbtraxは私を採用したのか?と言う質問があった。
SU 僕から1つ質問があるんですけど。なんですみれさんを採用したんですか?
BH 彼女って、今までうちに応募してきた人たちと違ってて、バックグラウンドが全然ないんですよ。何か特別な技術がある訳 ではないし、ポートフォリオを持っているわけでもないし、 twitterやfacebookのヘビーユーザーでもないし、すごく普通な人 だったの。けど、会ったときに彼女は3つすごく良いポイントがあって。
1つは話すときにすごい素直だったの。てことは何かを始めたときに吸収する量が多いだろう、と。
2つめはすごくセンスがよかったこと。服装、持ち物、姿勢、ネ イル、カフェでのオーダー、その全てのインタラクションが綺麗に、全部心地よかった。
3つめは、ポジティブなオーラがあったから。ポジティブなオー ラがある人は会社に来ると会社が明るくなる。それは会社の明るくほんわかしたカルチャーにしたいっていうのにすごく合うと思 うな、って。
◯◯のエキスパート、っていう訳じゃない。だけどすみれの場合 は、まっさらだけど根本的な素質を兼ね備えてた。だから採用しました。
SU なるほど。
『1.素直であること 2.センスがよいこと 3.ポジティブであること』・・・
この3つの理由を聞いたとき、私はとても恥ずかしかった。何故なら採用してみたら全然違うのでガッカリした、と思われていたらどうしようと思ったからだ。
けれども、そう思うことを止めた。採用したbtraxと自分自身、自分に仕事を振ってくれる上司や同僚を信じ、その期待に応えられるようにもっと頑張ればいいだけだ、と思うようにした。
最後に
振り返ってみるとびっくりするくらい3ヶ月前の自分より心も体も軽くなった自分がいる。認めるのはなんだか照れくさい、だけれども確実に自分は前に進んでいると思っている。
正直に言うと、この80日間、楽しいことと同じくらい、悩んで辛かった時も多かった。自分の力不足、未熟さをこれほどまでに実感したことはない。どんなに出来なくて辛くても「ここには勉強するために来たのだ」と自分自身を説得する日々に何度心が折れそうになったか。
けれども、怠け者の自分だから、ただ楽しいだけだったらきっと成長はしてなかっただろう。btraxのco-workerのみんながいなかったら、いつも厳しくフィードバックをくれるが出来たときには笑顔でほめてくれる上司やBrandonがいなかったら、日本から励ましてくれる友達や親がいなかったら、きっとここまではこれなかっただろう。
全ての人に感謝をしています。本当にありがとうございました。私はやっぱり、btraxというこの会社が大好きです。
とはいってもまだまだ未熟な部分もたくさんあり、この3ヶ月で学んできたことを活かして更に頑張っていきたいと思う。
日比谷すみれ
2012.06.22 in San Francisco
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。