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世界4大IT企業“GAFA”に学ぶ次世代の働き方 (後編) -現代版コーポレートキャンパスにおける4つの特徴
前編で紹介しているコーポレートキャンパスだが、後編となる本記事では世界の4大テクノロジー企業であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonのキャンパス事情を見ていく。彼らのキャンパスは世界的に見ても最新で独自性に富むものだが、それに留まることなく、さらに新たなキャンパスの建設が始まっている。
Amazonはシアトルの街の中心で建設中だった球体型の新オフィス、Amazon Spheresを先月29日についにオープン。同じくシアトルにある本社から歩いていける距離に建設し、本社機能の拡張を図った。Appleでは「宇宙船」とも呼ばれている、カリフォルニア州クパチーノにある新本社Apple Parkが完成間近。完成前にまた新たなコーポレートキャンパスの建設を発表しており、キャンパス拠点を増やしていく予定だ。
Googleもマウンテンビューにあるグローバル本社とは別にロンドンでの巨大本社建設に向けて準備中。Facebook本社も2015年に建てられた自然豊かなコーポレートキャンパスが有名だが、さらに巨大な「コーポレートシティ」なるものの建設計画を進めていると言われている。
ここでそんなGAFAの動向を中心に、現代のコーポレートキャンパスに見られる特徴を抽出してみた。
1. 郊外型vs都市型
今日のコーポレートキャンパスを語る上でまず挙げられる議論が郊外に置くか、それとも都市部に置くか、という点だ。
郊外型
先に述べたように、大きな敷地を確保できる郊外にコーポレートキャンパスを建てることは今も変わらず主流で、実際にGAFAのうちGoogle、Apple、Facebookの3社はそれぞれ広大な敷地の上にキャンパスを展開している。
大きな敷地が人気である理由は想像しやすいが、まず挙げられるのは多くの施設とサービスを社員に提供できることだろう。自然豊かな庭や運動場といった大きな施設を作る際にも無理に詰め込むこともなく、さらに土地代も都市部より安い。
また社員が集まって実際に作業するオフィススペースも上に積み上げるのではなく、横に広く保つことで1つのフロアにより多くの社員を配置することができ、社員同士の交流が生まれやすい環境を作っている。多くの社員を抱える大企業ほどコラボレーションの価値は大きい。
郊外へのアクセスについては、Googleのように都心部等遠くに住む社員専用のバスを手配して彼らの通勤をサポートする必要もあるが、日本に比べて車通勤が当たり前のアメリカだからこそ実現できているとも言える。居住地をオフィス近くで見つける社員もおり、都市部よりも低価格で購入・契約することが可能だ。(※ただしGoogleや他の巨大テクノロジー企業が長期間ベースとしてきた今のマウンテンビューは価格が高騰している)
都市型
従来のコーポレートキャンパスとは逆に、今増えつつあるのが都市部に建設されるキャンパスだ。GAFAでは、Amazonが該当する。シアトル本社から徒歩約10分のところに完成したばかりの、室内植物ガーデン施設のAmazon Spheresは、ふんだんに取り入れられた植物の中で社員がミーティングや個人作業を行うという、彼らの「独創性」をサポートする新オフィス。近くにある本社ビルと合わせて都市型キャンパスを作り出している。
Amazonはシリコンバレーの多くの企業に見られるような無料ランチやクリーニング、クリニック通院等の福利厚生を持たないことで知られておりコーポレートキャンパスとしての物理的機能は他社に比べ少ないが、その分立地の良い場所にキャンパスを構えた。
「立地の良い場所に拠点を置くことは優秀な人材獲得に必要だ」という考えが今アメリカ企業の多くに広がっており、実際にミレニアル世代にとっていかに通勤時間を短くできるかは就職・転職先選びの重要項目の1つとなっている。実際にAmazonのCEO、Jeff Bezos氏も「社員をシアトルの街から離さないようにした」と都市部にキャンパスを置くことにこだわりを見せている。
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この都市型コーポレートキャンパスはGAFA以外でもトレンドだ。中国にある世界的なインターネット企業、Tencentが中国・深センに建てたオフィスは「空を舞うように高いが繋がっている」オフィスビルでキャンパス化を実現させている。デザインは先に挙げたAmazon Spheresの他に数々のテクノロジー企業の巨大オフィスを担当したNBBJによるものだ。
また昨年11月にサンフランシスコで完成したばかりのSalesforceの新本社も都市部に高層ビルを建てたのみならず、もともとあった地域の交通ターミナルを本社と繋ぐSalesforce Transit Centerを整備中だ。さらにその屋上にはSalesforce Parkといった市民も利用できる公園を作る等、土地を活用しながらキャンパス化を図っている。
Tencentの深セン本社(写真はNBBJより)
上記以外のポイントも含めると、コーポレートキャンパスを建てるのに都市か郊外かを決めるときの軸は次の4つになるだろう。
1. 人材獲得と保持
キャンパスのロケーションは社員にとってどのくらい通勤しやすい場所か、社員が通勤にかかるコストを抑えられるか
2. セキュリティ
キャンパスは建物内部と公園等の外部を含めてどの程度まで公共にオープンにするか
3. 敷地面積
コラボレーション重視で広く柔軟性のあるフロアプランを求めるか、それとも部署ごとにフロアや職場を分ける方が機能的か
4. 成長とエグジット戦略
企業の成長や売却の計画に合わせてどの程度の柔軟性が必要か
2. 緑の植物を多用
オフィスに緑を取り入れることは近年注目のオフィストレンドの1つである。緑という色そのものや植物の存在が社員にもたらすリラックス効果や集中力向上といった影響は数々の研究レポートでも述べられている。
実際にGAFAすべてのオフィスに取り入れられている植物はその効果を期待されて導入されている。先述したAmazonの新オフィスは3つの球体型の建物内が植物用の温室となっており、早速シアトルのシンボル的建造物になりつつあるほどだ。
東洋経済ONLINEの記事によると、Amazon Spheresの主任建築士を務めたDale Alberda氏はその象徴的な球体のスペースにグリーンのスペースを作ることで社員にひらめきが生まれるきっかけとなることを期待しており、彼らのクリエイティブな側面を引き出す効果を狙っている。
Amazon Spheresの内部。形式ばったデスクはなく、すべてフリーアドレス制で社員は自由に場所を選んで働くことができる
2015年にカリフォルニア州メンローパークにできたFacebook本社も植物環境を整えている。広々とした敷地を利用とした巨大オフィスの屋上は一面に社員がくつろげる公園が広がり、400本の木に10万以上の自然植物が植えられている。「社員がアイディアに行き詰まった時に息抜きできる場所になれば」と同社のチーフ・ピープル・オフィサーのLori Goler氏は語る。
完成間近のApple Parkも同様で、9000本以上の木を植えた上で「自然と共に透明性を表現するデザインを意識した」と同社CEOのTim Cook氏はインタビューに答えている。緑や植物の力はイノベーティブなキャンパス作りには欠かせない要素のようだ。
Facebook Campus(左・JeffHallPhotos)とApple Park(右・App Namaより)
3. 本社機能の分散:第2、第3コーポレートキャンパスの建設
コーポレートキャンパスは本社となる1つのオフィスの周辺に構築していくものと思われがちだが、GAFAをはじめとした企業は世界中に2つ目、3つ目となるコーポレートキャンパスを建設していく予定だ。自然災害やテロの脅威を懸念して、複数のコーポレートキャンパスを作り今まで1つの本社に集約していた機能をいくつかの地域に分散させることが狙いだ。
Appleでは、カリフォルニア州クパチーノに建設中の新本社、Apple Parkがもうすぐ完成予定であるが、完成前にこれとは別のオフィスをアメリカ国内で建設すると先月17日に発表。次の5年間でおよそ2万人を雇用するという同社の計画に合わせたもののようだ。場所は年内に発表するという。
Amazonもシアトルにある本社から近い場所に建てたばかりのAmazon Sphereとはまた別に第2本社を建設することをすでに発表している。「第2本社はシアトルの本社と全く同等の機能をもつ」とCEOのJeff Bezos氏は語る。彼らも今後の事業拡大に合わせ新たな労働力を蓄積する場所として第2の都市型キャンパスを作っていくという。すでに次のキャンパス建設先候補となる20都市のリストアップは終えている。
Googleも同じくロンドンに本社を建設。場所の選定も終わり、具体的なデザイン案も決まりつつある段階にある。資金力のある巨大テクノロジー企業はこうして世界中にキャンパスオフィスを展開し、グローバル企業として新たなワークプレイスを広めている。
ロンドンに建設予定のGoogle新本社(写真はHayesDavidson)
4. キャンパスから飛躍し、「学生街」ならぬ「社員街」へ
上に挙げたGoogle, Apple, Amazonの次のコーポレートキャンパス建設よりも衝撃的なのが、Facebookが計画中のWillow Campusだ。既存の同社キャンパスは2015年に完成したばかりであるが、その裏にある敷地を使って拡大するとのこと。
すでにある巨大社屋や公園だけに留まらず、1500の住宅建物に食料品店、ホテルに並木道、ショッピング街も抱え、主に社員とその家族で形成される「コーポレート・ビレッジ」が2021年に完成予定だという。もはやキャンパスという概念を超えた「社員街」もしくは「社員村」ができようとしている。
このキャンパス拡大計画を通じて、Facebookは地域コミュニティとの関係性構築を強調している。計画予定の施設は周りのコミュニティにもオープンにすることをすでに明言し、その地域の労働者の雇用を増やすことにも貢献しようとしている。CEOのMark Zuckerberg氏は、同社のミッションステートメントは「人を繋げることであり、ネットワークという言葉はバーチャルなものであるがまた同時に物理的なものでもある」として、このWillow Campusの建設に積極的な姿勢を見せているという。
生活と仕事の一体化、ワークライフインテグレーションの実現はこのレベルにまで進んでいる。今後GAFAの4社がどんなコーポレートキャンパスを増やしていくのか必見だ。
Willow Campus完成予想図(写真はFacebookの企業ブログより)
まとめ
コーポレートキャンパスはまだ日本で広く知られていない、新しいタイプのワークプレイスであると思うが、世界的な目線で見ると労働環境の改善は今や別次元に達している。
「オフィスには何がふさわしいか」この考え方はもはや存在せず企業が求めているもの以外に社員が何を求めているのかに注目し、彼らのライフスタイルと一体化してワークスタイルを設計していくことが今のオフィス設計あるいはキャンパス設計の基本となっているようだ。
ちょうど今がオフィスの変革期であるように、この後もとてもオフィスとは思えない施設がキャンパスに導入されていくことだろう。そんなトレンドをこれからも本ブログで追っていきたい。
*本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。
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