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ブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界
日本でも注目を集めている「仮想通貨」は、代表的なものに「ビットコイン」がある。これらは「ブロックチェーン技術」の仕組みを応用したサービスであり、ブロックチェーン技術による様々なサービスのスマート化の始まりにすぎない。
ブロックチェーンはまだ活用されはじめた段階で課題もあるが、得られるメリットが大きいために今後に期待が集まる技術である。
ブロックチェーン技術の仕組みとは?
ブロックチェーン技術とは、データ管理システムにおけるネットワーク形態の一種である。従来のデータ管理システムは中央集権型システムと呼ばれ、ユーザーの取引データのすべてを管理者であるサーバーが管理している。しかし、ブロックチェーンシステムでは、管理者が存在せず、取引データをユーザー同士が管理している。
つまり、従来のように取引データを一つに集めるより、複製を分散させ、お互いを監視させることでデータの整合性を保つ仕組みの方がデータをオープンにでき、安全なのだ。
そのため、
- 維持費が低コスト
- 取引データを持つユーザー全てを攻撃することは事実上不可能なのでセキュリティ面でリスクが低い
- 取引データをオープンにできる
などのメリットがある。
これらのメリットを活かせる領域は数多くあるが、その中でも現段階で注目されており、今後この技術の普及が近いであろう領域を紹介する。
銀行
経済社会を血液のようにめぐるお金を管理する銀行は、人・企業・国などにお金という血液を送り込む心臓の役割を果たすが、ブロックチェーン技術を活用することで、業務の迅速化、効率化、安全化が期待できる。これは銀行自体に問題を抱えている国にとって、大きな可能性を秘めている。
すでに、スイスのUBS銀行や英国のBarclaysは、バックオフィスの機能と決済を迅速化する方法としてブロックチェーン技術の導入実験を行っており、コストの削減が期待されている。ブロックチェーン技術の活用はこれら一部銀行に限らず、IBMは2017年末までに銀行の15%がブロックチェーンを使用すると予測している。
決済と送金
決済・送金フローは銀行などの中央機関に依存している。しかし、ブロックチェーン技術によって、中央機関の仲介を必要とせず、低手数料で、時間に制限がなく国内、または国境を越え支払人と受取人をつなぎ、より直接的な支払いフローが可能になる。
実際にブロックチェーン技術を使った金融系スタートアップの成長も著しい。例えばcoinbaseは仮想通貨のデジタルプラットフォームとしてウォレット、換金、決済代行サービスなど900万人以上の顧客にサービスを提供しているが、彼らは2017年8月に仮想通貨を扱う企業として初のユニコーン企業となっている。
チャリティー
慈善団体への一般的な苦情には、慈善活動の非効率性や寄付金の行方の不透明性に関するものが多い。しかし、ブロックチェーン技術を使って寄付を追跡することで、寄付金の用途を透明化し、効率化が可能になる。
実際にビットコインをベースにした慈善団体のBitGive財団は、ブロックチェーン技術を活用し、寄付金の行方を援助者に見せている。これによって、寄付金の不正利用がないことを証明し、援助者の信頼度を高めている。また、仮想通貨による寄付は、送金手数料がないため、支援したい金額を全額送ることができる点から注目を浴びている。これまで開発途上国や後進国の子どもたちを救うため、様々なプロジェクトに貢献してきた。
保険
保険市場は信託管理に基づいている。ブロックチェーン技術は、信頼を管理するのに適しており、今まで紙ベースであった作業を大幅に削減できる。また、被保険者の身元確認、保険市場のリスク記録能力、透明性および正確性、手続き速度の向上も期待できる。
すでに国内外で多くの保険会社がブロックチェーン技術を活用しており、保険大手AIGが、ブロックチェーン技術を使った世界初の保険証券(ポリシー)を、英スタンダードチャータード銀行に交付したと発表した。AIGによると、何ヶ月もかかっていた業務が数日に短縮されたという。
ヘルスケア
医療業界では、医療機関が持つ各プラットフォーム間でデータを安全に共有できないという問題がある。それをブロックチェーン技術を使用することで、国、病院、医療関係者がデータのセキュリティと整合性を損なうことなくネットワークにアクセスできるようになる。
医療機関のデータ連携の改善は、正確な診断、効果的な治療法の提案、費用対効果の高い医療を提供をするなど医療システム全体の能力の向上に繋がる。
カーシェアリング・配車アプリ
自動車の使用を共有するというシェアリングシステムは、自動車業界にとっては新しいことではないが、ブロックチェーン技術を活用することは、車両の所有権、使用を記録し、保険コストやその他のコストを配分するのに役立つ。また、スマートフォンアプリを使用し、高層ビルの入居者が必要に応じて、同じ建物内に駐車してある車両を簡単に共有利用できるようになれば、急速にカーシェアリングが普及する可能性がある。
また、Uberのような配車アプリでもブロックチェーン技術の活用が期待される。現状は、基本的に利用ユーザーにドライバーを割り当て、アルゴリズムを使用してドライバーの車両を制御し、料金を請求しているため、サービスの価格管理が中央集権にて行われている状態である。ブロックチェーンシステムを通じて取引すれば、ドライバーとユーザーを直接繋ぐため、ユーザーとドライバー間で料金設定をすることが可能になり、ドライバーは独立したサービス提供者になるため、個々の判断でより良いサービスを提供することができる。
IoT
IoTとブロックチェーン技術は親和性が高い。ブロックチェーン技術を用いてデバイス同士が互いに識別するための中央制御システムを持たないことが可能になれば、デバイスは自律的に通信してソフトウェア更新、バグ、またはエネルギー消費状況などを管理することが可能になる。また自律的になることで、個々によってデバイスを使用しているユーザーを特定できるため、公共のコンセントを許可された特定のユーザーだけが使えるようになるなど、個人に合わせた対応も可能になる。
一部のスタートアップは、ブロックチェーン技術をIoTプラットフォームに組み込むことも検討している。たとえばFilamentは、IoTセンサが互いに通信するための分散型ネットワークを提供しており、これによってあらゆるデバイスの接続、通信を可能にしている。
Eコマース
オンラインショッピングサイトで何よりも大切なのは消費者に信頼感や安心感を与えることだ。例えばAmazonで出品する理由は、Amazonの高い信用度を通して消費者に安心して商品を買ってもらうことできるからである。しかしブロックチェーン技術は、購入記録を分散して記録することを可能にするため、ショッピングサイト自体よりも信用を高めることができる。
実際にOpenBazaarのようなスタートアップは、ブロックチェーン技術を活用し、仲介業者や関連費用なしに、バイヤーと売り手を結ぶことを実現している。つまり、Amazonなどのマーケットプレイスやプラットフォームの信用度に依存することなく、個人や企業が個人に安全に手数料なしで売ることが可能になる。
サプライチェーンマネジメント
ブロックチェーン技術を活用すると、製品の製造から販売までサプライチェーン全体を透明化できるため、時間遅延や無駄なコスト、人的ミスを大幅に削減することができる。さらには、廃棄物や排出量を監視するためにも使用できるため、環境への影響を可視化することができる。
例えばロンドンに拠点を置くProvenanceは、ブロックチェーン技術を活用し、原材料から消費者に届くまでの信頼性の高いリアルタイムデータを提供することで、消費者からの信頼を得ることに成功している。
不動産
不動産取引は未だ主に紙ベースで行われているため、取引中および取引後の透明性の欠如、大量の書類作成、詐欺の可能性、公的記録作成時のミスの可能性など、問題が多く存在している。ブロックチェーン技術を使って取引データを電子上で管理することで、それら問題点を改善し、利害関係者が効率性を向上させ、取引のあらゆる面でコストを削減することができる。
Ubitquityはブロックチェーンで保護された不動産記録保管用のプラットフォームを提供している。同社は、ブラジルの不動産登録局と提携し、ブロックチェーン技術を導入し、当地の公式土地記録文書を初めて作成した。個人が保持するもっとも重要な文書のひとつである財産記録をブロックチェーンで管理することで、あらゆる不正を排除することが可能になった。
政府と公的記録
政府のシステムは、紙ベースで、時間がかかり、不透明な傾向があり、時として腐敗に繋がりかねない。ブロックチェーン技術を導入することで、紙ベースのプロセスを軽減し、不正行為を最小限に抑え、効率性、透明性を高めることができる。
ドバイ政府は2020年までにすべての文書をブロックチェーンに置くことを目指している。また、エストニアはすでにブロックチェーン技術を導入しており、行政サービスのうち99%がオンラインで完結している。これにより電子上の居住者となることで、ビジネスの面で場所に制限されることがなくなり、国外からオンラインでエストニアの銀行口座を開いたり、起業することが可能になっている。
選挙・投票
選挙では、投票者の身元確認、票を追跡するための記録など当選者を決定するために信頼できる集計方法が用いられなければならい。ブロックチェーン技術を用いると、有権者の登録、身元確認、および正当な投票のみがカウントされ、投票が変更されたり削除されたりしないようにすることができる。
Democracy EarthとFollow My Voteの2つのスタートアップは、政府のためにブロックチェーンベースのオンライン投票システムを構築することによって、投票の透明化を目指している。
教育と学術
教育分野も同様に、紙ベースで無駄が多い。ブロックチェーン技術を活用すれば、成績証明書などの登録・参照を容易にでき、改ざんのリスクを少なくすることができる。また、権限を付与した第三者に信頼性の高い情報を安全にすぐ開示できるようになる。
ソニーとソニー・グローバルエデュケーションは複数の教育機関のデータを一元的に管理し、信頼性のある学習データやデジタル成績証明書などの登録・参照を可能にするシステムを開発している。これらのデータを活用し、教育機関の授業計画・運営の見直しが行われれば、教育レベルの向上も可能となる。
音楽・エンターテインメントの著作権
音楽や画像などのコンテンツは、転用が多く、それらコンテンツを生み出すクリエイターに本来の収益が還元されていない。クリエイターにとってコンテンツをより公平に共有するために、ブロックチェーンに目が向けられている。
弊社のBrandon K. Hillはブロックチェーン技術で著作権を管理するスタートアップのBlockai CEOのNathan Lands氏にインタビューしているので、下記参考記事をぜひ参照されたい。
クラウドファンディング
従来のクラウドファンディングでは独自のプラットフォーム上で資金調達が行われるため、高い手数料が請求される。しかし、ブロックチェーンベースのクラウドファンディングでは、ブロックチェーンのトークンを発行し、上場企業が株式を売るのと同じ方法で資金調達を行うことで仲介業者への手数料が不要になる仕組みを実現している。
多くのブロックチェーンの新興企業は、このようなトークンの販売を通じて数百万ドルの調達を行っている。これらの方法はICO(Initial Coin Offering)と呼ばれ、資金調達の低コスト化を実現したことに加え、世界中の投資家からの資金調達を可能にしたため、数日で100億円を調達したという事例もある。
まとめ
現在、あなたが関わっている業界で取り扱われているデータは、ほとんどが中央集権型システムで管理されているだろう。それはすなわち、今後ブロックチェーン技術によって何か変化が起きる分野と言える。ブロックチェーン技術はビットコインなど特定のものに限らず、あらゆる領域に影響を及ぼしうるものである。今後自身の関わる業界にどのような影響があるのか、これを機に注目してみていただきたい。
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