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効率を上げるシリコンバレー流ワーキングカルチャーとは?【対談】
日本の平均寿命は世界1位。殺人発生率の低さ世界1位。名目GDP世界3位。これだけ国として豊かであるという指標があるのにもかかわらず、世界幸福度ランキング世界53位、一人当たりのGDPは26位である。この幸福度の低さ、効率性の悪さは日本人の働き方が起因していると考えられ、今日本では働き方改革が行われ始めている。
その一方でシリコンバレーでの働き方や仕事における効率は日本に比べると格段に高い。
今回紹介するのはbtraxサンフランシスコオフィスで開催されたパネルイベント。下記の4名に加えてbtrax CEOであるBrandonのモデレーションにより行われた約2時間程の対談である。今回のパネルディスカッション参加メンバーは:
- Zak Murase: Silicon Valley Office Representative, Global Brain
- Aki Koto: Partner, WiL
- Ken Miura: Founder, DouZen
- Mai Chloe Takahashi: Founder, Cosme Hunt+Space Lab
モデレーター
Brandon K. Hill, CEO, btrax
上記4名がシリコンバレーで生き残るためのワーキングカルチャーを日本企業と比較しながら対談を行う。彼らの話を参考にすることは日本働き方改革へとつながるだろう。
Q. 日本企業のダメなこと・変えた方がいいところは?
議事録はボスがとるべき
Aki:色々ありますが、日本企業って会議・メール・イントラどれを考えてみても10年以上前の同じもの永久に使ってる。僕が前職デジタルガレージに入ってアメリカに赴任した後に真っ先に社内に提言したのが社内システムの変更なんですよね。当時使っていたシステムを全てGoogle系のサービスに変更してもらいました。
Gmail, Google Doc, Google Calender, Google Hangout使うようになって物事が進みやすくなりました。こんな便利な道具があるのに日本企業は全然使ってません。なぜなら日本企業は情報がGoogleに行くのが怖いとか言うんですよね。
そのせいで日本企業はイノベーションのスピードが落ちてます。本業でないところで日常業務のスピードが落ちててもったいないです。会議のやり方も全然変わってなくて、偉い人だけがしゃべるとか10人以上の会議とか昔から全然変わっていない。
僕がtwitterにいた時に学んでお勧めしたいのが、会議内の一番偉い人が議事録をとりながらプロジェクターにリアルタイムで写す、っていうやり方ですね。そうすることで、参加者が会話の流れを把握しやすくなり、会議の中での曖昧さが減りました。日本企業は会議の議事録は若手がとるじゃないですか。
だから、議事録にはみんな集中しないし、会議が終わってから清書して添付ファイルで送るから時間がめちゃめちゃかかります。添付ファイルではなくメール本文内に書けば、読む側も添付ファイルを開く時間が省略できます。
よく分厚いパワポがメールに添付されることがありますが、要点だけをメール本文内に画像として埋め込んでhtmlメールで送った方が読みやすいのに、日本人はあまりやりません。テクノロジーは進化してるのに全く使ってないところが多いのが残念です。未だにhtmlメールは送らないように、と通達する企業もあると聞きます。
会社に従わないのであれば辞めてください
Ken:日本と連絡とるときに、謎のコミュニケーションツールをダウンロードさせられることがあります。その割にskypeがダメとかになってるんですよね。ファイル送るのとかも大変で、意味ないのにパスワードをかけてるとか。日本って絶対間違えないようにやるっていうプロセスが多い気がします。
また何でもかんでも時間をかけてやるっていうのが多いです。だから、だらだらとやって判断するまでにかかる機会損失っていうのが非常に多い。
Aki:日本は自分の業務フローにシステムを合わせなきゃいけない。なぜなら日本は業務フローヘの変化に対して社員から反発が起こるのを恐れているんですよね。でもアメリカは業務フローがしょっちゅう変わるから慣れている。特にスタートアップでは日常茶飯事。
Twitterにいたときに起こったのが、今までは言語としてRuby on Railsを使っていました。でもある日から「これじゃあキャパシティ的に厳しい」ってなって急にプログラミング言語を完全に変更した。普通だったら躊躇するじゃないですか。
でもシリコンバレーでは全く躊躇なく、「明日から全員新しい言語を学んでください」ってなった。「もしそれに従いたくないんだったら、やめてください」っていう感じにしている。これはかなり違うと思います。
Q. ワークライフバランスはありますか?
起業にワークライフバランスは禁句
Ken:起業するのにワークライフバランスっていうのは禁句かな。でもあまりにも家庭を適当にしすぎると離婚されちゃうし、日本と比べると仕事だけするという人は少ない。でも家に帰っても真夜中まで仕事したりも普通にある。
Zak:日本だとワークがやらされているものっていう概念だからワークライフバランスっていう言葉が出てくる。でもスタートアップやってたらワークがやりたいものなので、やらされている何かがあってのライフワークバランスっていうのが概念としてはおかしいんですよね。
Brandon:最近はライフワークインテグレーションって言葉が出てきている。「生活しているように働く、働いているように生活する」っていうように隔たりがなくなってきている。Zapposはそれで有名になった会社。GoogleとかAppleとかでも挑戦しだしていて、生活しているのと働いているのを隔たりがないようにしようとしている。
こうしたら働いていてもストレスがたまらないし、夜とか週末でもオンラインサービスを使えばぱぱっと仕事ができちゃう。日本の方がライフとワークを分けたがりますよね。矛盾が多いような気がするかな。ライフとワーク分けてるのに長時間残業するし。
しかも日本ってどんどん祝日増えてない?社員が休まないから休ませようとして、国として祝日作ってると思うんだけどこっちからすると困りますね。だって日本国中の大部分が一斉に休むっていう日が増えれば増えるほど連絡が取るのが難しくなりますもん。正月とか「どんだけ休んでんだよ?」って感じですよね。
Q. ビジョンを達成するためにまずは技術者を雇う発想は?
ビジョンは自分が一番わかってる
Mai:まず初めにアーリー段階で人を雇うっていうのは非常に難しいです。予算的にも環境的にもなかなか大変です。しかも自分の作りたいビジョンとかプロダクトっていうのは自分が一番わかっています。
なので現在はバックエンドを頑張って勉強しながらプロダクトづくりを進行させています。本当に一人でできないってなったときは、パートタイムでバックエンドのエンジニアを雇っていますね。
Ken:よくその話聞かれるんですけれど、ある程度技術のことがわかっていないと初めから相手にされないんですよね。それでゼロから始めるときにbootcampとかに行って自分である程度できるっていうようにするということが多い。
もし本当に強いビジョンがある・元々有名起業家・お金持ちとかなら技術者を雇えるけどやっぱりアーリーだとなかなか集まらず全部自分でやらざるを得ない。
Q. 最近のシリコンバレーでのIoTトレンドは?
IoTで安定したお金を稼ぐのは至難の技
Zak:IoTが始まった当時はスマホ向けとか割とわかりやすい消費者系が三年前くらいにはやっていました。今はその時に比べるとIoTはインダストリー系に進化しています。例えばGEみたいな会社がエンジンをIoT化して、エンジンからのこのデータがこういう価値があるみたいな。
エンジンそのものを売って稼ぐのではなく、IoTを使ってわかるエンドンの稼働時間に対して課金するみたいな使い方のイメージができると思います。投資家も消費者系よりもインダストリー向けにより多く投資するようになってきています。
Ken:IoTのピークの時代はもう終わっています。実際にIoTはそこまで上手くいっていなくて、IoTに対して月々お金を支払うっていう人がどんどんいなくなっている。ではその中でどこにお金毎月払い続けるかというとセキュリティIoTだけで他にはお金を払わなくなっている。
もう消費者系のIoTは出し切った感があって下火です。投資家に話したら100人中100人ダメって言うんじゃないかな。日本も少し似たような感じになってきてます。インダストリー向けのセンサーを使っての業務効率化とかのほうが重要。なのでわたくしのやっていることは世の中と逆行してますね。(笑)
Q. IoTとかVRとかの次に伸びるなという分野があれば教えてください
コラボレーションが生み出す業界を超えたイノベーション
Zak:これは日本でも盛り上がっていますけど、バイオテックがいいですね。バイオテックは一回15年前に盛り上がって下火になったんですが、最近はゲノム解析の費用が数千分の一くらいにコストが下がったのでまた盛り上がっている。
この前見た会社では牛のDNAを3Dプリンターでプリントして酵母に注入すると勝手に牛乳ができちゃう。つまり牛がいらない牛乳ができる。この近くでできたハンバーガー屋は、人工の肉みたいな人に作られた肉がでてきだしている。だから消費者系でもバイオテクが流行ってきている。
Aki:他のバイオテックの話でいうと、実験を手でやるとオペミスがあるから思ったほど正確な実験結果が出ていない、という指摘があります。そこで、実験を機械とディープラーニングで実現することで実験スピードと精度を上げ、Amazon AWS的にバイオテックの実験を請け負うスタートアップが出てきた。
これって結構イノベーションかなと思っています。バイオテックの分野なんだけど実際にやってるところはディープラーニングとかオートメーションとかなんですよね。こういったソフトウェアイノベーションが他の産業に波及していくっていうのがすごいホット。
今はだんだんソフトウェアオンリーでできるイノベーションが減ってきている。Google, Apple, Amazonとかがものすごい勢いで新しい分野に手を付けている現状があるのでソフトウェア産業が成熟してきた節がある。だから何か新しいことをやるといったときに自分達だけでやるより違う分野の人たちとコラボレーションする方が面白いかなと思う。
Q. 文系で全くテクノロジーの知識がない人はどういう風に知識をつければいいか?
文系・理系ブルシット
Zak:昔に比べるとテクノロジーのハードルが下がっていて、僕が大学時代に教わったときは難しかったんですけど今はかなり簡単なんですね。今ではAIが勝手にある程度プログラミングまでできちゃうような時代になっている。
どっちかっていうとプログラミングできるかはそこまで今は問題ではない。能力としては問題発見できる能力。そして解決するときの手段を論理的に道筋立てて考えられる力の方が重要である。なので情報トレンドを追い、どう使えるかを分かっていれば、ビジョンに合わせてビジョンを達成できる人を集めるだけで十分。
Brandon:日本の学生とかでこういう質問があるんですけど「僕文系なんですけどエンジニアとか目指せないですか」みたいな質問が多いです。でもアメリカでは文系・理系はクロスオーバーしまくっていて境目がない。
この前の大前健一さんが来た時のディスカッションであったのが、日本の教育で2つ問題として「偏差値市場教育・文系・理系の分離」ということが挙げてくれた。確かに今の起業家って文系でも理系でもない人が多いんですよね。だから文系だから理系だからっていうのは関係ないよね。
Aki:”文系・理系ブルシット”ですね。これに関連して企業でいうと、「僕マーケティングだからセールスやりません」みたいな人が多い。日本だと自分がこの職種なんで他はできませんみたいな人多いんですけど、もし両方ともできるのであればそれはアセットになります。
でもそういうことができる人もいないからだれも目指そうとしないし、誰も道を開いてロールモデルになろうとする気概もない。
Ken:Akiさんと言ってたのと同じ印象でシリコンバレーはマルチな人が多い。Ph.D. 物理を持っててビジネスの経験もあるとか、実はオリンピック出てたとかスーパーマンもいますね。そこまでいかなくても「ゼロから新しい価値を作る」みたいな人が多いからこそ今までのことにとらわれない人が多い。
逆に新しいこと身につけないといけないということを常に考えている人が多い。日本ではキャリアの仕組みが発展しちゃってるから、逆に枠組みにとらわれている人が多い。以前老舗のカメラ系のメーカーの人としゃべってて、あるあるだなと思ったのが「若い人は新しいことをやりたい。でも上にかけると通らない」みたいなことですね。
そこで理由を聞いてみると上の人は「強みを生かさないとだめだ」と言って若い人の意見をはねのけたらしいんですよね。日本は強みを生かすという発想が凄く多いです。でも日本でもゼロから作っていくっていう文化を作っていかないとレベルが上がらない。
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