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【オープンイノベーション】 大企業がスタートアップとの協業を成功させる為の3つの方法
近年、大企業とスタートアップの協業への関心が高まっている。日本では「オープンイノベーション」とも呼ばれているこのトレンドの目的として、両者の強み・ニーズに基づいた従来と異なる領域における新規事業展開、急速に変化を遂げる今日の産業界に対応し長ら事業の継続的な成長(=イノベーションを起こす)といったものが多い。
このトレンドに合わせて、両者のマッチングを専門とする企業も続々と増えてきているようだ。
では、大企業がスタートアップと競業することで、双方にとって具体的にどのようなメリットが考えられるのであろうか? 恐らく大きく分けるとそれぞれ下記の3つであろう:
オープンイノベーションにおける大企業のメリット
- 企業文化の活性化
- プロダクト開発のスピードアップ
- 人材リソースの獲得
オープンイノベーションにおけるスタートアップのメリット
- 著名ブランドネームの活用
- 資金の獲得
- 市場/顧客の拡大
これを見る限り大企業にとってスタートアップと競業する事のメリットは非常に大きい。しかしながら、歴史ある企業風土を持つ大企業の中には、スタートアップとの協業は真新しいものであるがゆえ、なかなかコラボレーションが上手くいかないケースが多い。
特にスタートアップ的考え方や仕事の仕方、そしてリスクの取り方は、リスクを計算して着実に事業を進めて行く大企業的カルチャーで長年企業経営を進めてきた役員層などにはなかなか理解してもらいにくいようである。
スタートアップの定義
そもそも「スタートアップ」とはどのような企業なのであろうか? 世界のスタートアップの中心地でもあり、Twitter, Uber, Airbnb, Pinterest, DropBoxはどの多くの著名スタートアップ企業がひしめくサンフランシスコに本社を置くbtrax社CEOのBrandonの定義は、
新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体
である。
これは、日本で言うところのいわゆる”ベンチャー企業”とは趣が多少異なる。日本のcベンチャー企業の中には、市場においてある程度受け入れられると確信が得られたビジネスモデルを適用して事業展開を行う事で、日々の安定した収益と長期成長を目指す会社もあるが、海外で使われるスタートアップという言葉の裏にはその急激な成長性が示されている。
また、組織形態一つ見てみても、上記の記事の通り、スタートアップ企業は
“彼らの中には既存の企業で必要とされる、いわゆる”組織”やシステム、そしてプロセスは存在しない。チーム全体が一丸となって急激なスピードで物事を進めるため、全員が攻めに徹する“完全ぶっこみ型カミカゼチーム”が構成される。
– 中略 –
メンバーの多くが未熟な若者だけで構成される為、勢いはあるが、長期戦に耐えられないケースが多い。そして、おおよそ彼らは社内教育制度の全く無い、能力勝負に偏った”即席”チームであり、短時間のうちのその形態が大きく変化する事も少なく無い。”
となっている。この事からも、不完全なスタートアップにとって、完全で安定した組織である大企業と組む事でのメリットは非常に大きいと考えられる。
スタートアップとうまく協力する3つのステップ
では大企業はスタートアップとどのような目的で、どのように協業していけばいいのか?その方法を考えてみる。
1. 目的とゴールを明確にする
大企業が「何か新しいことがやりたい」と闇雲にスタートアップにコンタクトしたところ、互いに目標の共有がなされていない状態で交渉をしていて先に進めない、ということはよくある話だ。
もちろんスタートアップと協業する利点はたくさんある。まず大企業のチーム内に起業家的な企業風土を生み出す点だ。具体的には社員が最短の方法を考え、そして斬新なアイデアを出しやすいような、活気のあるチームを作り出すことができるのだ。また今後の動向や新たな技術の可能性への意識を向けやすくなることも協業する利点と言える。
このように、スタートアップとの協業は大企業の組織内部のみの思考を変革することはもちろん、顧客・パートナー・そして今後参加する新社員といった外部へのブランディングにも大いに役立つと言える。以下、組織外にもたらすスタートアップとの協業の利点をご説明する。
主な目的: ブランド変革・問題解決・市場拡大
企業がスタートアップとの協業で得られる利点は組織内変革だけではない。例えば、大企業が組織内のみで新たな革新的サービス・商品を開発するよりかは、スタートアップと取り組むことで、より早く、そして中核事業にも影響を及ぼさず、より低いリスクで開発できる。
なぜならスタートアップ特有の機敏さで新たな技術・ビジネスモデル・そしてその分野専門とする有能な人材を連れて来てくれるからだ。
また、スタートアップの存在は、新しい市場への事業拡大には必要不可欠となってきている。近年のスタートアップの傾向の一つに、新たに台頭した産業で競合するだけの能力と敏捷性を兼ね備えている点があげられる。スタートアップと協業すれば、確かな戦略に基づきトレンド最前線の破壊的イノベーションを持って、新市場に事業を拡大できることが期待出来る。
2. 大企業がスタートアップと協業するための具体的方法
ではどのような協業方法があって、どう違うのか? 方法としては大きく分けて、下記の4つが挙げられる:
以下の図は4つの主な目的と、それらを達成するための一般的な協業方法を列挙している。色の濃淡は両者の組み合わせの目的を達成する適性の度合いを表していて、星の部分が目的と協業方法の最適な組み合わせである。これらの星のうち2つの例を取り上げる。
Startup Europe Partnershipが公開している『大企業とスタートアップがうまく協力するためのガイドライン(原題:WINNING TOGETHER A Guide to Successful Corporate-startup Collaborations)』に基づき作成
例えば急速に人気を集めている1度きりのイベントであるハッカソンは、チームまたは個人のコーダーやクリエイティブな人材が特定の技術的な課題解決のために競う短期集中型のイベントだ。
ビジネスの取引の面からリターンが少ないことやスタートアップのニーズを十分に汲み取る必要性があることを除けば、スタートアップの起業家的思考を社員に身につけさせるきっかけになり企業文化の変革につながるとして、ノキアやユニリーバといった多くの企業がスポンサーとなりイベントを支持している。
次に買収。大企業が新規市場へ参入する上で、スタートアップを取り込んでプラスαとなる技術・経営力を手にするには買収は迅速で影響力の高い方法である。具体的な買収による協業方法として「アクハイヤー(Acqui-hiring)」を挙げる。
これは買収による人材の獲得のことで、すでに4年前に出されたこの記事「2013年に注目すべきサービスはこれだ—インキュベータ編」のように、国内スタートアップ界でも長く注目されてきた戦略の一つである。
フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグ氏はスタートアップを買収する最も重要な戦略的目的としてアクハイヤーを挙げた上で、「フェイスブックはただ会社そのものを手に入れるために買収するのではない、有能な人材を手に入れるために買収している」と述べている。
アクハイヤーは特に人材確保争いが激しくコーディング技術が変化しやすいデジタル産業のビジネスにおいて広く行われている。有能な人材と市場傾向を意識して得た技術力により、新たな市場への事業拡大はもちろん、従来持ち合わせている経営課題の解決にも踏み切ることが大いに期待できる。
3. 潜在的に持っている互いの強みを組み合わせる
どんな企業でも、それぞれ規模に問わず資源としての独自の強みを持っているはずだ。ここでいう資源とは、イベントを開催したり投資を行うための現金、メンタリングや製品フィードバック、イベント出席を行うための社員としての時間、技術・サービス、そして市場参入能力や顧客ネットワークといった無形資産を想定している。
パートナーシップはたいていかなりの事前の投資と、スタートアップの能力を存分に利用しなければいけない、といったリスクとコストの課題を伴う。そこで図2「大企業とスタートアップによる資源投入必要度」に、スタートアップにとって大企業と協業する時に資源投入のコミットメントの面でリスクを減らすための、スマートな解決策の区域を表した。
縦軸はスタートアップのコミットメントの度合い・横軸は大企業によるコミットメントの度合いを表している。
スタートアップと実際に協業するための3のステップと10のプロセス
結論にかえて、先に述べたスタートアップとうまく協力する3つのステップをより細かく10のプロセスとして順序付けてみていく。
Step 1 事業をデザインする
① スタートアップと事業に従事するためには目的をよく考える
自社に重要な利益を与える事業を行うこと。スタートアップは企業の社会的責任ではなく日常のニーズに基づいていることを念頭に置く。
② 目的に最も沿った事業を選択する
③ 基盤となるスポンサーを確保する
スポンサーからの支援は事業をうまくスタートさせるために重要で、社員にスタートアップと新たなコラボをしようとする時にリスクを負う勇気を与えてくれる。
Step 2: 事業を分析する
④ 主要業績評価指標を伸ばす
長期の事業進捗度合いを測る尺度を入れる。事業に関連する重要経営指標の社員間での共有は、組織内での効率的な事業実行を確かなものにするだろう。
⑤ データ収集を行い、繰り返しフィードバックを行う
初期段階で何がうまくいくのか試してみて、改善に向けスケールを大きくしていくことが重要である。
Step 3: 事業を実行する
⑥ 起業家精神を持ってスタートアップ事業を実行する
スタートアップ事業のマネジャーは、スタートアップ業界を理解し仲介や社員としてではなく、パートナーとして接しないといけない。
⑦ 互いの経営状況に配慮したコミュニケーションをする
先延ばしにするような曖昧な返事をするよりも、きっぱりNOと言ってしまった方が、スタートアップ・大企業両方にとって時間の節約になる。大企業側にとっては1プロジェクトに過ぎないものでも、スタートアップ側にとっては社運を賭けるほどの交渉かもしれないからだ。
⑧「スタートアップ・フレンドリー」なチームを作る
スタートアップにとって、相手先企業のどこにコンタクトをしたらいいのか、アプローチ方法に途方にくれることがある。スタートアップからのアプローチを受け付ける窓口を設け、オープンなチームとすることで両者にとってスムーズに交渉が進めやすくなるだろう。
⑨ 最高のスタートアップと技術を惹きつけるためには、国内外で人材を発掘する
現地パートナーのネットワーク、あるいはご自身の代表として人材発掘ができる組織を持ったパートナーを検討することをお勧めする。有能な人材が同じ都市や国にいるとは限らないからだ。
⑩ スタートアップにとって働きやすい場を作る
パートナーのスタートアップの経営事情に合わせて、支払いを調整するといったことが含まれる。
今日からできる3つのステップ
1. スタートアップですでに働く人と話す
2. スタートアップと働くための目的を定義する。
3. 小規模事業から試してみる
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