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人工知能 (AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル
毎年沖縄で開催されている地元の学生による起業コンテストイベント、Ryukyufrogs Leap Dayに今回もゲストスピーカーとして参加させて頂いた(2018年)。このイベントに登壇するのは去年、一昨年に続きこれで三度目になる。毎回、将来世界で活躍する若者に向けてのメッセージを何にするかで悩む。
一回目は”ゼロのつよさ ~選択肢が無い可能性~”を、二回目は”なぜ多くのイノベーションがサンフランシスコ/シリコンバレー周辺で生み出されているのか?“について話した。今回は”今後ロボットや人工知能 (AI)といったテクノロジーが発展していく中で、人間にはどのようなスキルが求められるか“についてプレゼンしてみることにした。
20年後にあなたの職業が存在している可能性
人工知能 (AI), ディープラーニング、ロボティックス、自動化などのテクノロジーが今後速いスピードで発達して行く中でアメリカの調査期間が、既存の職業の20年後における生存率を割り出した調査データがある。その結果による職業と20年後のに機械に奪われる可能性に関する調査結果を幾つか紹介する。
現在の職業が20年後に機械に奪われる可能性:
- プログラマー: 48.1%
- ソフトウェアエンジニア: 4.2%
- 家政婦: 68.8%
- ウェイター/ウェイトレス: 93.7%
- バーテン: 76.8%
- 調理師: 96.3%
- シェフ: 10.1%
- 経理: 97.6%
- 経理部長: 6.9%
これをみてもわかる通り、その仕事内容によって20年後もその職業が存在するかどうかが大きく異なる。例えば、機械化率96.3%の調理師と93.7%のウェイターが示すのは、20年後の世の中の多くのレストランが全自動になっていると言う事である。その一方で、メニューを考案したり、調理方法を決めるシェフは自動化される可能性が低い。
同じく単純作業が仕事の経理の仕事は97.6%の確率で機械に奪われると予想されているのに対し、経理部長という人とのコミュニケーションを必要とされるマネージャー職を機械が行える可能性は7%も無い。これは、人間だからこそ出来るタイプの仕事だからであろう。
ユーザーの立場に立って設計や仕様決めを行うソフトウェアエンジニアの仕事はほぼ機械に奪われる可能性が無い (4.2%)に対して,ある程度単純作業となるプログラマーの仕事は50%弱の可能性で今後自動化が進む。
自動化に関するテクノロジーが進む事で無くなる仕事があると同時に、新しい仕事も生み出されると予測される。
マッキンゼーの調査によると、新たに創出される仕事の7割は「人間的な仕事」が占めている。直感的な意思決定、創造的な成果、芸術的なデザイン、顧客や取引先との複雑な交渉。企業にとって多くの価値創造は人間にしかできない仕事によって支えられている。
機械や人工知能にも奪われない3つのスキル
では、どのようなスキルを身につければこれからも人工知能等の機械に仕事を奪われないのであろうか。現在の企業内での仕事内容は、管理された組織の中で正しい答えに辿り着く為の正確な単純作業や、精密な作業が求められて来たタスクが多く存在する。
しかし、そのような仕事は上記のデータを見ても分かる通り、近い将来ほぼ確実に賃金の安い地域にアウトソースされるか、機械にとってかわられることで消滅してしまう可能性が非常に高い。
その一方で、これから紹介する3つのスキルはどれだけテクノロジーが進化しても人間にしか出来ない内容であると思う。
1. クリエイティブ
0から1を作り出すこと。これは機械には出来ない。AIは過去のデータを元に未来を予測することは出来るが、全く新しいものを作り出すのは人間にしか出来ない。デザイナーやエンジニア等のクリエイティブな仕事はこれからもどんどん必要とされていく一方であろう。
2. リーダーシップ
優れたビジョンを掲げ、卓越したコミニュケーション能力で人々を導いて行く存在。人間との心の通じたやりとりができるそのスキルは自動化が進む現代こそ一層求められている。人間がロボットのリーダーに従って心が一つになる時代は恐らくしばらくは来ないだろう。
3. 起業家
機械は基本的には起業しない。むしろ絶対にしないだろう。交渉力、ビジネスセンス、問題解決能力が求められるのが起業的スキルである。その点においてはテクノロジーがどんなに進化しても、新しいプロダクトやビジネスを通じ社会を変えて行く起業家は世の中にとって今後もより一層必要とされるだろう。
日本の教育システムとのギャップ
上記の3つのスキルを身につける事が今後より一層重要になってくると考えられるが、残念ながら現在の日本国内においてそれらを教えている教育機関は極めて少ない。そしてそれらを入試に科している学校は皆無に近いだろう。
この50年の間に、単純作業は機械やコンピュータがこなすようになり、人間は機械のできない「人間的な仕事」を担当するようになった。しかし、日本の教育システムは50年前とほぼ代わらないといっても良い。
学校によっては多少の改善はされているものの、政府が定めるカリキュラムはまだまだ時代遅れの感が否めない。
日本の学校で教えているのは、暗記、計算、正確な綴りなど、機械が最も得意とする事柄ばかりで、頑張って高得点を稼ぐ優等生は、暗記、計算、単純作業などの機械っぽいスキルが身に付いているだけである。
しかし、現在の実社会では答えが無い事の方が多い。むしろ、ほとんどの場合、答えは自分で作り出さなければならない。
自分自身も高校まで日本の公立校に行っていたから分かるが、学校では基本的に既に答えがある事しか教えない。唯一クリエイティブなのは、音楽や美術、図画工作などの副教科、そして夏休みの自由研究ぐらいなものだ。
実際自分もそれらが大好きで成績も良かったが、大学受験の採点対象になっていないが故に受験はことごとく失敗した。しかし、それが理由でアメリカの大学に入学し、今ではそれらのスキルが仕事に最も役立っているのも皮肉である。
そもそも本来は、機械が得意な事は機械に任せて、人間でしか出来ない能力を身につけなければならない時代になっている。しかし、日本の教育システムではクリエイティブな答えは求められていない。
そもそもマークシート方式でクリエイティブな答えなど出しようがない。逆に、上記の3つのスキルだけを持っていても、恐らく学校からはほとんど評価はされずに、劣等生としての認識をされるであろう。
クリエイティブ、リーダーシップ、起業家マインドを評価基準としていない現在の日本の教育システムでは、優秀とされている生徒や高学歴の学生が身につけているであろう能力は、残念ながらこれから時間が経てば経つ程機械に取って代わられる可能性が非常に高い。
おのずと、それらの能力が求められる仕事も無くなるだろう。それに対し、教育や受験に関するシステムが十分に追いつく可能性はまだまだ低い。
先日、センター試験でカンニング等の不正で無効処分になった学生がいたというニュースがあったが、実社会ではカンニングをしたり、裏技を活用出来るぐらいのセンスの人の方がむしろ重要である。
個人的にも、暗記学習中心のくだらない受験勉強の為に貴重な10代の時間を費やすぐらいなら、ズルをしてでも点数を稼ぐ知恵を持った人材の方が興味がある。
実際にアメリカの試験では電卓やパソコン、最近ではスマホを活用して答えを導きだす事も許されている。要するに使えるものは使って自分としての答えを導き出すことが期待されている。
それも、答えは1つだけではない事も多い。クリエイティブな発想を求め、10人の生徒がそれぞれ別々の答えで、全てが正解とされる事もある。
今後、テクノロジーの進化が進めば進む程、クリエイティブな能力、リーダーシップのスキル、そして起業家の精神の3つがより一層重要になってくるのは間違いない。
今後は日本国内からも世界に通用するようなクリエイターやリーダー、起業家を生み出す仕組みを作らなければ、機械がどんどん仕事を奪い始めるであろう。
btraxでもこれらの課題に対し、日本企業向けに新しいイノベーションの創造と、クリエイティブ、リーダーシップ、起業家精神を身につけた次世代のグローバルリーダーの育成を行っている。
現在頑張って勉強していること、会得したスキル、今後のキャリア等、世の中から優秀だと評価されていることを今一度冷静に見直してみるのが良い時代になって来たのかもしれない。僕たちの未来は既存の仕組みの中からは絶対に生み出される事は無い。自分で創り出すしか生き残る方法は無いだろう。
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筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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