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デザイン思考の4つの基本的な考え方 – デザイン思考を学ぶ Part 1
“デザイン思考” という用語が2014年頃から日本でも注目を浴び、ソニーやヤフー、日立製作所など国内の大手企業が注目していると話題になっている。またリコーはデザイン思考を利用して一度シャッターを切るだけで撮影者を取り囲む全天球イメージを撮影することができるRICHO THETAという独創的な商品を発売した。
しかし、デザイン思考の具体的なプロセスや、実際にどのように仕事に活かせるのかを疑問に思う方も多いのではないだろうか。
マーケターだけでなく、営業・企画・戦略・技術部門の方まで幅広く使用できる”デザイン思考” 。今回は「デザイン思考講座 Part 1 -入門編-」として、デザイン思考の基本的な考え方、プロセス、実際に成功したサービス例について記載していく。
デザイン思考の定義
「デザイン(動詞)」という言葉を考えてみよう。「新しい機会を見つけるための問題解決に関するプロセス」ーこれがデザインの定義である。これを基に考えると、デザイン思考とは以下のように定義される。
デザイン的プロセスを利用し、クリエイティブなアプローチから、様々なビジネスの問題を解決する方法
「でも、デザイナー向けでしょ?」と考える方へ
「デザイン」というワードが含まれているからか”デザイン思考”について、デザイナーのための考え方だと混合している人がいる。しかし、デザイン思考は絵を描く、レイアウトをする、フォトショップでデザインすることとは全く異なり、デザイン的考え方をビジネスに役立てるというものだ。さらに言うとデザイナーでなくても使えるし、むしろそうでない人のほうが使える。
デザイン思考が活用できる企業
ではどのような企業でデザイン思考が活用できるのだろうか。以下の5つの中で1つでも該当する項目があったとしたら、デザイン思考を活用できるだろう。
- 新規商品サービスのプロットタイプ(試作品)を作りたい
- 潜在的ビジネスチャンスを開拓したい
- 外部からアイディアが欲しい
- 意思決定のスピードが遅い、組織構造が縦割りである等、企業のカルチャーや組織構造を変えたい
- イノベーション創出のきっかけが欲しい
デザイン思考の4つの基本的な考え方
ここからは、デザイン思考の主要な考え方について軸となる4つの要素を紹介していく。
1. ユーザー中心
当たり前のように聞こえるが、この考え方が出来ていない企業は多い。例えば「ある技術を活かしたいから商品をつくる」また「この市場は儲かっていそうだから参入したい」という視点からビジネスを創出する会社も多いのではないだろうか。
しかし、プロダクトの価値はあくまでユーザーが決定するものである。技術や市場を基に考えてた場合、すぐに最新の技術や競合が現れてしまう等、壁にぶつかってしまうことが多いのだ。
上記の図は、世界的に有名なデザインコンサルティング会社IDEO社が提供しているデザイン思考の図だ。一般的に、イノベーションを創出するためには①ビジネス的に価値があるか ②技術的に実現可能か ③ユーザーにとって価値があるかどうか、の重なった部分を割り出す必要がある(図の中央の黒い部分)。
その3つの要素の中で、デザイン思考ではテクノロジーや市場よりも、特にユーザーの部分(図の赤い矢印の流れ)にフォーカスしている。
ではユーザーを中心に置いてビジネスを考えるにはどうすればいいのだろうか。次の要素で詳しく言及するが「開発段階から顧客へのヒアリングやアンケートを徹底的に何度も行うこと」が重要となる。
2. 対話を重要視したプロセスの実現
次に重要なのは、開発のプロセスにおいて、チームメンバー及びユーザーとの対話を重要視しながら商品サービスを制作するプロセスを実現することだ。
まずチームメンバーとのやりとりについて。チームメンバーとのコミュニケーションをデザイン思考では重要視している。その一番の理由は「スピード」だ。蜜にコミュニケーションをとることで、仮説・プロットタイピング・検証・改善を、かなり早いスピードで行うことが可能となる。
例えば、スタートアップの立上げ段階ではデザイナー・エンジニア・ビジネス担当の最小チームで構成されることが多いのだが、彼らは1つの部屋で頻繁にコミュニケーションをとりながらサービスを制作する。蜜にコミュニケーションをとりながらプロセスを実行することで、急激なスピードで商品サービスを立上げることが出来るのだ。
そして制作プロセスの中に、ユーザーを巻き込んで対話しながら商品サービスを制作していく。上記の図のように、上から①問題を定義し ②ニーズを把握した上で仮説をたて、その上で ③ブレインストーミングを行い ④プロットタイプを作成、そして⑤テストを行う、そしてテストのフィードバックを基にまた問題を定義していく。
各プロセスの中で出来るだけユーザーの声を聞き、全体のサイクル化を行い、何度も繰り返しこのプロセスを行うことで、ユーザーのニーズに合った商品サービスが制作されていくのだ。スタートアップが密集しているサンフランシスコでは、みなカフェ等でフレンドリーにインタビューに答えてくれることもあり、この手法がよく使用されている。
3. プロトタイプ>テスト>改善を繰り返す
2つ目の要素の延長となるが、上記で説明した一連のプロセスを何度も繰り返すことをデザイン思考では重要視している。日本の会社でよくあるのは「完璧な状態でのローンチを目指して商品をつくるため、市場に出すまでにかなりの時間がかかってしまう」という状況だ。
しかしサンフランシスコでは、「試作品」という位置づけでとりあえず市場に出してみて、ユーザーのフィードバックを得ながら、改善をしていくのが一般的だ。その結果、ユーザビリティが高い世界で通用する商品サービスが実現するのだ。
4. 多様な問題解決とゴールを可能とする
最後の要素は「できるだけ多くのアイディアとアウトプットを出す」「問題解決方法は1つでなくてもいい」という考え方だ。上記の図の左が一般的なビジネスの考え方である。色々な問題を1つのソリューションで解決してビジネスにするというものだ。一方、右がデザイン思考で推奨している考え方だ。
可能な限り多くのアイディアを出してそれを問題および解決に結びつけていくのだ。最終的に問題解決が複数でてきても問題ない、むしろ評価される。なぜなら、デザイン思考では、「質より、量とスピード」を重要視しているからだ。そのためデザイン思考では、量を重視したアウトプット重視のスケジュールが採用される。
デザイン思考を使用した商品サービスの具体例
では、上記の考え方をふまえた上で、実際にデザイン思考を活用した例を考えてみる。
1. TVのリモコン
左は従来のTVのリモコンである。ボタンがたくさんあり、このリモコン一つで多様な機能を操作することができる。しかし、頻繁に使うボタンもほとんど使わないボタンも同じサイズで配置されてるが故に、どのボタンを押せばいいのか迷ってしまった経験はないだろうか。
この問題をデザイン思考で解決したのがApple RemoteーApple TVに付属されているリモコンだ。
上記右の写真を見てわかる通り、ボタンの数がかなり少ない。よく使う機能のボタン以外は、画面の中で解決するよう、その機能をソフトウェアになげている。物理的なボタンを減らし、最小限にすることでユーザーが一番使いやすい方法にしているのだ。
2. モバイルアプリ
上記は、Burbnというサンフランシスコで数年前に開発されたモバイルSNSアプリだ。このアプリをユーザーがどのように使うか、ニーズを掘る起こすということを調査、ユーザーが最も頻繁に使う機能だけをを絞り出した結果のフォトアプリがインスタグラムだ。
もともと写真だけではなく、チェックイン機能やその場所の写真、さらにはコメント機能などを搭載していたサービスだった。しかし、調査の結果から写真を使用するユーザーが多く、逆にそれ以外はあまり使われていないということがわかった。思い切って写真を投稿する以外の機能を削ぎ落した結果、世界中にユーザーを持つ大ヒットサービスとなったのだ。
今回は、デザイン思考の定義、活用できる企業、基本的な考え方4つと具体例を説明した。次回以降は、さらに踏み込んで5つのプロセスのより詳細を説明していく。
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