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Slack成長物語 〜世界のユーザーに愛されるプロダクト舞台裏〜
Slackの成長が世間を賑わせている。2014年2月にリリースされたSlackは既に毎日のアクティブユーザーが500,000名を超え推定評価額はリリース後一年たたずにして10億ドルにも達した。
ここまで急成長した秘訣にはいくつかの要因が考えられるが、その中でもリーンスタートアップ的なプロダクト開発を行ったことが挙げられる。リーンスタートアップとは最低限のコストと短いサイクルで仮説の構築と検証を繰り返しながら市場やユーザーのニーズを探り当てていく方法論。S
Slackはリリース後、常にユーザーからのフィードバックを中心に置いてサービスを改良しつづけサービスが提供する真の価値を見極めて特定の機能のみにフォーカスして実装していくことで加速度的にユーザー数を増やしていった。
本記事ではSlackの誕生、プレビュー版公開、一般公開の3つのフェーズに分けて、Slackがどのような施策を行いユーザー数を急成長していったのか秘密を探る。
チーム内コミュニケーションツールSlack
Slackは社内外問わずチームで使えるコミュニケーションツール。チャットのような形でチーム間で連絡を取り合い、ファイルの共有、過去メッセージの検索などが行える。
無料でも利用できるが、有料版ではGoogle DocやSubversionといった外部サービスと連携できる。メッセージ内で自分のIDがメンションされるとメールで通知が届くなど、SNSで使い慣れた機能も取り込まれている。
リリース後一年で急速に成長を遂げたのは目覚ましい。現在Slackでは103名が開発やサポートに取り組んでおり、今までにSlack上で3億ものメッセージが送受信された。135,000以上のアカウントが有償で使用されており年間購読料は1200万ドルに相当する。
注目すべき点はこれらの数字とともに、世界中のビジネスパーソンや企業が熱心にSlackを受け入れて愛し始めているということだ。Slackはどのようにして急速に成長し、また愛されるサービスになりつつあるのか。
1. 単なる社内ツールとしてのSlackの誕生
SlackのファウンダーであるStewart Butterfieldは10年以上前に当時の妻とオンラインゲームを作ろうとした。結果としてゲーム自体は物にならなかったが、片手間に作っていたFlickrがヒットした。歴史は繰り返しButterfieldは再びオンラインゲームを作ろうとし、結果としてSlackが生まれた。
最初のユーザーは自分自身
実はSlackはButterfield達がオンラインゲームを開発する際の内部コミュニケーションツールとして開発された。そして翌年2013年3月にはButterfield達が必要とする機能を揃えるようになっていた。
身近な人からフィードバック得て反映する
その後、2013年5月頃からButterfield達(以降Slackチーム)は友人の会社に声をかけサービスを試してもらった。10社ほどからのフィードバックを確認し、社内でSlackを使用する人数が増えるにつれて必要とされる機能が大きく変わることを学んだ。
Slackチームはフィードバックから得られた改善点をサービスにすぐに反映した。この確認・修正プロセスを何度も繰り返し、2013年夏にはSlackの機能はどんどん磨き上げられていく。
2. “ベータ版”ではなく”プレビュー版”を公開
招待制によるリリース
2013年8月にSlackチームは招待制プレビュー版をリリースした。機能が不完全である印象を与えてしまうため”ベータ版”とは呼ばなかった。初日に8,000の招待リクエストを得て、その数は2週間で15,000まで膨れ上がった。
メディア・インフルエンサーを活用
プレビュー版のリリースではSlackチームは数ヶ月前からPR会社と密接に準備し、ユーザーに対する切り口を探した。リリース記事が公開された後は、友人や関連のあるネットワークに繰り返しシェアをして、記事に息を吹き込んだ。特に影響力の高い人やフォロー者が多い方と積極的に関わり、リーチを広げて行った。
ユーザー観察×サービス改善の繰り返し
プレビュー版をリリースした後、Slackチームは6ヶ月をかけて、Slackの対象ユーザーが必要とする機能をサービスに実装していった。プレビュー版に登録したユーザーを順次サービスに招待し、行動を観察してサービスを改善した。それを何度も繰り返した。
導入コストを最小限に
Slackにとって一番の課題は、ビジネスや企業がSlackのような新しいツールを導入する際の障害を減らすことだった。特に企業ではグループ内の一人がツールに対して否定的な意見を持つと導入に至らないケースが多い。また、企業全体ではなく部署やグループ毎にSlackを導入できる仕組みが必要だった。Slackチームはプレビュー期間に6ヶ月を費やし、この課題の解決に徹底的に取り組んだ。
サービスの分野を明確に
これから提供しようとするサービスが新たな市場を創り上げようとしている時こそ、そのサービスが属する分野を明確にすることが大切だという。導入を促すためには機能や利点の一覧表は効果的ではなく、Slackが既存のサービス分野において優れた解決策を提供することを示すことが有効であったという。
ユーザーエクスペリエンスを洗練
2013年8月から2014年2月まで、プレビュー版に登録した15,000ユーザーに対して観察を行い、当面の課題をすべて解決したと感じるまでユーザー体験を次々と改善していった。
3. 一般公開
コアなユーザーの問題を即座に解決
Butterfieldと共同創業者はユーザーのフィードバックを理解することに貪欲で、その能力こそがSlackがユーザーを惹き付けた要因と言える。また、彼らはSlackのコアとなるユーザー層を明確に設定し、そのユーザー層からのフィードバックに最も注力して問題を解決していった。
フィードバックに敬意を
Slackチームではフィードバックをなるべく多く得られるようにサービスを設計している。結果として毎月Zendeskを通じて8000個、Twitterを通じて10,000個ものフィードバックが寄せられており、Slackチームはそれらすべてに返信している。
顧客サポートと開発チームを直結
現在Slackチームでは18名が顧客サポートを担当し、そのうちの6名はTwitterからの問い合わせに対応している。ユーザーからのフィードバックを定量と定性の両方の観点から分析をし、良いアイディアや簡単に修正できる問題はSlackの専用チャネルに投稿されチーム内で話し合われる(Slackチームでも社内の連絡にSlackを使っている)。その投稿数は一日に50件にもなるという。また、顧客サポートチームは開発チームと直接連絡をとれるようになっている。
マジックナンバーを知る
Slackチームでは「ユーザーがSlackを通じて2000個のメッセージをやり取りしたかどうか」が、ユーザーがSlackを使い続けるか辞めてしまうかの分岐点、つまりマジックナンバーになることを把握している。これにより、ユーザーに使い続けてもらうための施策やタイミングを見極めることができている。
最も重要な3つの機能に集中
Slackチームでは、Gmail開発者の一人であるPaul Buchheitのメッセージ「少しのことを上手にやれば他のことはそれほど重要でない」を胸に刻んでいる。サービスのビジョンを明確にし、そのために最も重要な機能に集中している。Slackにとっては、1. 送受信したメッセージの検索機能、2. 異なるデバイス間でのリアルタイム同期、3. 簡単なファイル共有の3点だ。
そのサービスが最も集中するべき機能を決めることは大きな課題であると同時に、大きな成果をもたらす工程である。ユーザーに真のインパクトを与えるいくつかの事で秀でることで、市場で優位になれる。
ユーザーとのすべての関わりがマーケティングの機会
本記事ではSlackの誕生から今までの過程を見てきたが、いかがだっただろうか。次の2点がSlackが急成長しユーザーに愛され始めるようになったポイントであると見受けられる。
- ユーザーからのフィードバックを中心に置いてサービスを改良しつづけたこと
- サービスが提供する真の価値を見極めて機能として実装したこと
これらは当たり前に思われるが、自分が取り組む仕事において見失っていないか、今一度確認したい。
弊社btraxでもリーンスタートアップを製品開発プロセスの一部に取り入れ、また日本企業のクライアントと協同してサービス・プロダクトをサンフランシスコで創りだすプログラム、イノベーションプログラムを実施中。
詳細はこちら「〜日本の企業に世界トップレベルのイノベーションメソッドを〜 btrax(ビートラックス)が体験型イノベーションプログラムを提供」から。
ユーザーとのすべての関わりがマーケティングの機会だ。もしカスタマーサポートの範囲を超えて応える事ができたなら、人々はあなたのサービスを薦めてくれるだろう。(Every customer interaction is a marketing opportunity. If you go above and beyond on the customer service side, people are much more likely to recommend you.)”
– Stewart Butterfield
参考URL:
http://thenextweb.com/opinion/2015/02/13/wow-slack-got-big/
http://firstround.com/article/From-0-to-1B-Slacks-Founder-Shares-Their-Epic-Launch-Strategy
http://www.fastcompany.com/3039579/most-innovative-companies-2015/slack
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