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【日本発スタートアップ】ChatWorkがシリコンバレーで頑張る5つの理由
現在多くのスタートアップ企業がサンフランシスコおよびシリコンバレーから日本に進出している。例えばスマートフォンアプリでハイヤーを配車できるUber、宿泊者向けP2Pオンラインプラットフォームを提供するAirbnb、そして先日、日本語バージョンをリリースばかりのレビューサイトであるYelpなどのスタートアップの進出がめざましい。そんな中、果敢にも日本からシリコンバレーに進出している企業も幾つかある。
シリコンバレーといえば一流の技術が集まるITの最先端技術の発信地といって過言ではない土地である。それと同時に厳しい競争でも知られる。日本発のスタートアップ企業がシリコンバレーに進出しようとするときに必ず直面するのが日米の異文化の壁と同時に企業同士による人材獲得競争である。そしてここ数年のシリコンバレーでは日々スタートアップ企業が互いに切磋琢磨し、競争率は高くなるばかりである。
そんな競争率が激しいシリコンバレーに乗り込んできた「日本発のスタートアップ」の代表格といえるのがChatWork。
ChatWorkは個人向けチャットツールの問題点を解決し、ビジネス利用向けに最適化したクラウド型ビジネスチャットツールである。最近では日本国内での法人ユーザー数が4万2千社を越えている事に加え、前身のECスタジオ社は「2年連続日本一社員満足度が高い会社」に認定されるなど、オフィス面でもツールのクオリティでも人気が高い企業。
実は同社は以前にbtrax主催のJapan Nightへ出場、その後CEOの山本敏行氏はbtraxのサンフランシスコオフィスでインターンもしていた事もあり縁も深い。
山本氏がシリコンバレーに乗り込んできたのが2012年9月。競争率が激しいシリコンバレーにあえて乗り込んできた彼の意欲、熱意を語っていただいた。これからシリコンバレー進出を考えてる方には必読の内容。
それでは山本敏行氏とbtrax CEO、Brandon K Hillの両者の対談をご紹介しよう。
シリコンバレーにいる利点
日本発ビジネス向けチャットとして2012年9月から本格的にシリコンバレーで事業を始めたChatWork。シリコンバレーというIT企業が集中している土地で感じるアドバンテージとは?
優れた情報とネットワークが集まる
Brandon K Hill (以下BH) シリコンバレーにいてここがアドバンテージだなと思うところはありますか?
山本敏行氏 (以下TY) やはり日本にいるより、シリコンバレーにいるとネット上には出ていない生の情報と人的ネットワークが集まってくると思います。人同士のコネクションではものすごい経歴を持った人たちがChatWorkに興味を持ってくれて、アドバイスをくれたり、一緒に活動してくれるみたいなことが多々あります。
それとシリコンバレーにいると、いろんな分野のものを開発している人々がいるので、パートナーシップ等を通して、すぐにその機能を取り入れられたりできるところもアドバンテージだと思いますね。全部自前で作っていたら結構時間かかりますが、プレイヤーが多いだけあってパートナーを組める相手が充実していますね。
シリコンバレーのスピード
TY) もう一つがやはりスピードの違いですね。こっちは決断スピードが速いですね。ビジネス展開をする上で決断が早いと時間短縮にもなりますし、得られる結果も全然違います。日本で時間をかけてやってきたような調整が、すぐに決まってしまうのを経験するとやはりビジネスにおけるスピードが速いなと実感しますね。
BH) 一説によるとシリコンバレーは日本のそれの100倍早いといわれてますね。
シリコンバレーというブランド力
シリコンバレーで世界に向けて勝負していると日本国内でも優秀な人材が集まってくる
TY) あと思う事はシリコンバレーというブランド力ですね。今ChatWorkをヨーロッパにも子会社を作って展開しはじめているんですけど、それを日本人に伝えても反応が薄いんですよね(笑)アメリカ人にはヨーロッパで展開しているというと驚かれるんですけど、やっぱり日本人にはシリコンバレーで展開しているっていうとブラインドイメージは高くなりますね。
BH) それはおもしろいですね。シリコンバレーで仕事をしているといったほうが反応が違いますか?
TY) 全然違います。(笑)「シリコンバレーでやってらっしゃるんですか!?」みたいになります。そしてその効果もあってか?日本のChatWork社には”まさかこんな優秀な人材が!” と思うような人達が次々に応募してきてくれます。現在は開発やデザインは全て日本オフィスで行っていまして、僕自身がこちらで今後のプランニングや仕様、パートナーシップ等の役割を行っています。
そういった意味では日本で技術開発などは全然できますが、ビジネス経営的なことはこっちでやる方が良いと思っています。
攻めの姿勢
どこにいても仕事ができるツールを自らが実践
BH) 日本で収益が上がっているという事ですが、それをふまえてコスト面的に日本をメインでやっていこうと思ったりしていますか?
TY) いやアメリカでやっていこうと思っています。日本での展開は優秀な日本のマーケティングチームに任せて、CEO自ら世界を切り開くという意味では攻めているつもりです。
BH) 日本企業をみているとたまに感じる事があるのですが、例えば日本企業の人が市場調査などでこっちにきていると最初は最低でも1年はいるって言っていても3ヶ月で帰られたりする事がありますよね。例えば市場調査と銘打って遊んでいるのではないか?と疑われたりとか、日本で問題が起こった場合とか、日本の職場とつながりを安定して保つ事って大変ですよね。
TY) 今のところ自分の職場ではそのような問題はおこってないですね。やはりCEOが海外にいるといったような状況になったときに、遠隔での組織のあり方を確固たるものにしてからくるべきだと思いますね。ChatWorkというツール自体が”どこにいても仕事ができる”を実現する事をビジョンとしていますので、自分自身がそれを実践している感覚です。ちなみに僕は定期的なビデオ会議、チャットによるコミュニケーションで情報交換を適時しています。
シリコンバレーでのチャレンジ
ここまでシリコンバレーにいるアドバンテージについて語っていただいたが、同時に日本発のスタートアップ企業としての数知れない障害もあるはず。続いてシリコンバレー特有のチャレンジや、日本企業ゆえの大変さなどついて聞いてみた。
英語がやっぱりきついですね
BH) 今までシリコンバレーにいて感じるアドバンテージを聞いてきたのですが、逆に大変な事はありますか?
TY) やはり英語ですね。社内でもみんながみんな英語を話せる訳ではないので、英語で交渉する準備をするときなど時間をとられますね。
英語、日本語の特性
BH) 最近自分が気づいた事で、交渉などメールで日本企業とやり取りしたりするときに英語を使う方がスムーズにいくんですよね。日本語は敬語とかにも気を配らないといけないですし、英語の方が短くすむので早くまとまりますよね。
TY) やっぱり日本人からすると英語アレルギーみたいな所もありますよね。
”アメリカではこうなので”っていわれると、簡単に受け入れてしまうみたいな所はありますよね。逆に言うと日本人がアメリカにわたって事業を展開する事よりも、アメリカ人が日本に渡って同じ事をやる方が難しいだろうなとも思います。文化的に日本の方が気づかいや礼儀が求められたりするので、その文化の中に溶け込むのは難しいだろうなと感じます。
あえてシリコンバレーでやらないこと
シリコンバレーでも攻めの姿勢を見せてくれるChatWorkだが、あえてシリコンバレーではやらないと決めている事があるという。
向こうから買収したいといわせるくらいまで成長したい
BH) 以前山本さんと話した時に、シリコンバレーでやらない事のひとつにシリコンバレーではエンジニアを雇わないといっていましたよね?他にもあえてやらないことなどありますか?
TY) そうですね、強いていえば投資は受けないとかですかね。
BH) それシリコンバレーだとかなり珍しいケースですよね(笑)ちなみにbtraxも投資は受けていないんですけど、どうしてそう思ったんですか?
TY) ChatWorkは前身のECスタジオ時代を含めると14年やってきてまして、これまで蓄積してきた資金を全てChatWorkの事業につぎ込んでいます。やはり自己資金でやれるうちは出資を受けるよりもまずはユーザーを獲得したいと考えています。とりあえずこっちでユーザーベースを築きたいですし、その後会社の魅力が向上して、相手の方から買いたいといってもらえるくらいまで成長したいですね。
BH) エンジニアを始めとした人件費は日本と比べてシリコンバレーの方が倍以上コストが高いわけですから、ChatWork社の様に日本国内で優秀なチームをガッチリの形成して世界に挑むのは、こちらのスタートアップに対してもかなりの武器になりそうですね。
TY) はい。うちの会社としては揺るぎないチームワークが一つの武器になると考えています。
ビジネスチャットに狙いを定めた理由
現在多くのメッセージングツールがある中、ChatWorkはあえて「ビジネス向け」チャットにフォーカスして展開している。ChatWorkがあえて「ビジネス向け」に特化したその理由とは?
ビジネス向けのチャット
BH) ところで、そもそもどうしてビジネス向けのチャットに目を付けたんですか?
TY) 一昔前にGoogleがその頃運営してたGoogle Waveというビジネス系チャットをあきらめたんですよね。そうすると順当に考えてfacebookは個人向け、Skypeはクライアント向け、そしてGoogleはもう参入しないとわかっていたので、ビジネス向けのチャット枠が空いたなと思ったんです。それまで10年以上チャットを使った働き方をしていたという意味でも自信はありますし、やっぱりその狙いはあたったなと今確信しています。
Facebook、Lineだと仕事では使いにくいけど、ChatWorkなら仕事に使えるねみたいな安心感を提供できたらいいなと思います。
メッセージングツールの可能性、価値
現在シリコンバレーで奮闘しているChatWorkが切り開くメッセージングツールの可能性について聞いてみた。
WhatsAppのおかげでメッセージングツールの価値が上がったなと思いますね
BH) メッセージ系ツールという話しで話題になっている企業といえばfacebookによるWhatsAppの大型買収ですよね。このことに関してはどう感じていますか?
TY) 特にそれに関しては大きくは驚いてはいないんですよ。むしろ素直に、「そのくらいの価値はあると思っていたし、メッセージ市場の付加価値をあげてくれてありがとう」くらいに思っています。今まではメッセージングツールの価値ってわかってもらえてない感じがあったんですけど、WhatsAppのおかげでメッセージングツールの価値が一気に上がったなと思いますね。ChatWorkはあくまでビジネス向けなので、ビジネスにおいてもメッセージングツールによるコミュニケーションは重要だというところをしっかりおさえていきたいですね。
日米の品質とセキュリティに関する感覚の違い
例えどれほど製品のクオリティが高かったとしても、日本発の企業がアメリカに進出するときに必ず衝突する壁が日米の文化的な違いであろう。その中でも、IT企業ならではの日米の文化的違いについて語っていただいた。
セキュリティに関する見解
BH) 山本さんが感じるアメリカと日本の違いってどんなところですかね?
TY) 一つ目にあげられる事はセキュリティに関する見解ですかね。アメリカだと比較的にスピード重視といったところがあって、セキュリティは後回しというか。でも日本だと設計段階からきちんとセキュリティが組み込まれていて、しっかりやっているという印象を受けます。
もちろんChatWorkもセキュリティに関しては第三者機関の監査も入れてきちんとやっています。日本だとセキュリティ的な問題が発覚すると会社の存続も危ぶまれる程の問題になりますが、それがアメリカだと随分と違うなと思います。例えばある企業がハッキングされると、その反応は「狙われるくらい成長したかー!」みたいな感じなので、そういう反応を耳にするとやっぱり日本とアメリカには感覚の違いがあるなと思いますね(笑)
あとは日本で少しでも不具合なんかがあると「やっぱりスタートアップはだめだな。。。」みたいな固定観念もが強いと思いますし、品質面ではかなり気をつけなければいけないところですよね。その分、厳しい土壌で品質の高いものが作れますし、世界的にもハイクオリティなサービスが提供出来ると考えています。
UX面の違い
TY) 二つ目にあげられる事が日米のユーザーエクスペリエンス(UX)に対する感覚の違いですね。マーケティング活動は日本と同じような活動をするつもりなので、そこに関しては切り分けはするつもりはないんですけど、UXに関しては違うと思っています。なので日本向け、アメリカ向けにサイトのデザインをかえたり、そういう取り組みをしています。
BH) そうですね。アメリカのスタートアップが提供するサービスはUX面でもかなり作り込んでいますよね。あとは個人的に思う事がやはり日本人は海外ブランドに弱いなと思いますね。多くの海外のオンライン系ツールが日本で受け入れられている要因だと思います。
TY) でも受け付けないものは受け付けないみたいな部分も持っていますよね。
今後の方向性
最後にこれからChatWorkが進む方向について山本氏が語ってくれた
BH) そういえば以前に中国でChatWorkそっくりなサービスが出てきてましたよね?
TY) WorkingImですね。
BH) そうそう。ロゴはLinkedinっぽいですけど、中身は完全にChartWorkですよね。(笑)逆に言えば注目を浴びているとも捉える事ができます。注目度が集まってきている中で、今後の方向性などはありますか?
TY) 最初みたときはここまで全く同じものを作れる開発力があるなら、丸コピーせずに普通に作ればいいのにと思いました(笑)。中国のコピーはおいておいて、やっぱり最近感じる事はシリコンバレーにいる事自体にメリットを感じています。日本のビジネスにおいては東京が重要なように、世界展開においてはシリコンバレーは世界の東京のような場所で決して外すことのできない場所だなと。
そして、全く環境が違うアメリカで一から会社を作るのは大変ですが、その分とてもやりがいを感じています。ビジネス向けメッセージングツールの標準として、そして日本発のITサービスが世界のプラットフォームになる可能性を切り開いていきたいと思っています。
まとめ
日本で作り上げたプロダクトを世界のITの中心であるシリコンバレーで展開する。まるで夢のような話しであるが、実現するには想像を絶するチャレンジがあるだろう。そんな中で、世界に対してビジネス向けメッセージングツールの可能性を切り開いているChatWork. 今回の対談で山本さんが語る通りシリコンバレー進出には以下の5つのメリットがあると考えられる:
- ビジネスにおけるスピードの速さ
- 圧倒的な情報と人的ネットワーク量
- 日本でのブランド力アップ
- 世界的なレベルでのユーザー獲得
- 無限大に広がる成功への可能性
是非勇気がある皆さんは山本さんに続いてチャレンジしてみたらいかがでしょうか?
Written/Edit by: Ayano Nakaine & Brandon Hill
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