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新幹線を通り越した超高速移動手段「ハイパーループ」とは?
日本のインフラが優れているのは皆さんもご存知のことでしょう。電車が時刻通りに来るのは当たり前、ラッシュ時には5分以内に電車は来るし、新幹線は他のどこの国にも負けないくらい快適で早いしとても便利です。そんな環境で育った日本人が海外へ旅行へ行った際、日本のインフラの良さを再確認する人も少なくないでしょう。日本と同率にそれともそれ以上に電車のクオリティーが高いのが韓国です。
韓国人の “せっかちな国民性” ということもあって時刻通りに来るのは当たり前、外国人観光客でも比較的利用しやすいと評判です。そんな中、新幹線を通り越してここサンフランシスコではロサンゼルスまでの約600キロという長距離をなんと約30分で結ぶ「ハイパーループ」という高速移動手段の計画が進められており、世間を賑わせています。
まさに未来の乗り物!
この30分という時間には驚きを隠せないでしょう。というのも、サンフランシスコからロサンゼルスというのは距離にして600キロ(東京〜兵庫間ほど)車では約7時間、飛行時間は約1時間かかる距離です。そんな飛行機よりも早い移動手段が存在する、又は存在し得るというのは本当に驚きです。
具体的にどのような仕組みかは今年8月に発表されたPDF (Hyperloop Alpha) に細かく描写されています。簡単に説明すると、地上に並んだ鉄塔の上に据え付けられたチューブ管のような丸い管をガイドとして、その中を乗り物が空中浮上して前へ進みます。車体には電気自動車に使うようなモーターを稼動させて車体を動かします。磁気か何かで浮上するのかと思いきや、車両全面のファンで空気を避けて抵抗を下げ、下に回った空気がクッションの役割を果たす仕組みだといいます。電力はチューブ管の上に取り付けたソーラーパネルによる太陽光発電でまなかうことが出来るため、電力はさほどかからないようです。
新幹線の頭のような形を持った1台の車体には28人が乗れる予定で加速度0.5G程度で加速し、最高速度は時速1220キロになるといいます。さらに30秒から2分おきに1つの車体が発車することが可能なため、たとえ1回に28人でも、年間にして片道740万人の輸送を可能にします。建設費用は乗客用の2つのチューブ管と40つのカプセル車体をあわせて60億円以下だそうです。乗客だけでなく車を丸々運んで移動するという案もあります。
第一人者はアメリカの実業家
そもそもこの高速移動手段はアメリカの実業家、イーロン・マスクによって発表された次世代交通システムです。イーロン・マスクは2つの企業のCEO (宇宙開発企業のSpace X, 電気自動車メーカーのTesla Morters)、そしてソーラーパネル等を扱うSolar Cityの会長でもあり、世界で最も成功している実業家の1人として注目されています。
別のサンフランシスコ・ロサンゼルスを結ぶカルフォルニア高速鉄道の計画を知ったマスク氏がその計画は高すぎで、その割にはLAまでの所要時間も長く、実用性がないと判断し、自身が経営するSpaceXとTesla Morter社の社員からアイディアを募ったのがハイパループ計画誕生のきっかけです。そのため、上記で説明したように電気自動車のモーターや太陽光発電といった要素が取り組まれているのです。これに対し、彼自身が提唱するハイパーループはカリフォルニア高速鉄道の10分の1以下のコストで建設でき、時間も短縮できるため世間からは大注目という訳です。
ではこの夢のような乗り物「ハイパーループ」の実現化はどれほど現実的なのでしょう?先ほど紹介した詳細のPDFを見て頂ければ分かるように、マスク氏の計画はかなり実現可能を匂わせるものです。具体的な仕組みからコストまで事細やかに書かれています。ただ、今はテスラやスペースXなどメイン事業が忙しいのは明らかです。8月の記者会見では「せめてデモ用の試作機くらいは自分の手で作りたい。
他の会社で忙しいから3.4年かかるかもしれない。」と話したマスク氏ですが、今年11月に入りインキュベーターであるJumpStartFundによってマスク氏の意思を受け継ぐべく、Hyperloop Transportation Technologiesという新たな会社が誕生しました。これにより、より具体的なタイムラインが設定され2015年始めまでにプロトタイプを完成させる予定だといいます。多くの人が注目する中、このプロトタイプの完成が本当に予定通りに進むのか少し疑問は残りますが是非とも完成したのが見たいものです。
意外にも不便な米国の公共手段
アメリカの公共交通機関は日本や韓国と比べると明らかに劣っています。電車の車体も古ければ乗り心地も日本や韓国の地下鉄と比べるとスムーズではないし、改札機のテクノロジーも遅れている気がします。日本でカード読み取り改札機が導入されてから暫くして、アメリカでもそのシステムを導入する都市が出てきたものの、タッチしてから改札が開くまでの反応が日本に比べて悪いように感じます。
また、驚くことに未だにアメリカ最大都市であるニューヨークの地下鉄は紙の切符しかなく、紙切符をスライドさせて改札を出入りします。また、アメリカで一番早く電車を導入したとされるボストン市内の地下鉄(上記写真)では、一部で未だに1897年の開業時と同じ線路と車体を使っているため速度も遅ければ、曲がる際には騒音といっても過言ではないほどの音がホーム中に鳴り響きます。
最新のテクノロジーが生まれるここシリコンバレーでも市内の地下鉄であるBartは歴史が古いこともあり線路や車両はかなり年期が入っています。
アメリカの公共手段がこれだけ悪い理由の1つにアメリカは車社会であることが一番に挙げられます。特に田舎に住んでいる子供たちは16歳になると大人付きで車の運転をし始めることができ、18歳になると完全に運転免許が取れます。もちろん大都市には電車や地下鉄が通っていますが本当に日本のように短い間隔で電車が通っているのは中心街だけで、その中心街を外れると大きな都市をつなぐAmtrakのような鉄道しか通っていません。
つまり、郊外に住んでいるほとんどの人は車移動で生活をしているため電車の発達も遅れているのだと考えられます。確かに同じ状況が日本の郊外にも見受けられると思いますが、アメリカは国土が広い上に大都市はほんの一部に地域に限られるため、このような電車や地下鉄の発達の遅れが目立つのです。
プロトタイプ完成なるか?
最新のテクノロジーと勢いのあるスタートアップが立ち並ぶここシリコンバレーで誕生したハイパーループという新しい形の交通システムの計画。シリコンバレーという土地だからこそ、このように様々なテクノロジーが融合した超高速移動手段の完成に一番近づける可能性を持っているのでしょう。
こちらに住んでみて、サンフランシスコ〜ロサンゼルス間を移動するのに新幹線があったらどんなに便利だろうにと何度か思いましたが、新幹線を通り越した「ハイパーループ」という次世代交通システムが出来る日が本当に来るのかもしれません。2015年までに果たしてプロットタイプが出来上がるのかどうか楽しみであります。
写真: Hyperloop Alpha, Robert Goodwin
参照記事:
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■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
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- Email(英語):sf@btrax.com
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