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  • Masato Miura

    Masato Brian Miura is a native-born Japanese citizen who is strongly interested in the union of design, business, and technology. He loves to read a variety of design and business books. He is always eager to sharpen his mind and adapt to new technology.

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米国のデザイン教育から学んだこと

はじめに

教授からのWhy? Why? Why?と立て続けに押し寄せる「どういったロジックを元に〜をデザインしたのか?」という質問の嵐に対して、学生達がBecause, Because, Becauseと素早く理論を構成して「何故なら〜だからです」というロジックを組み立て続ける。そんな米国大学で展開されるデザイン講義を目の辺りにしてきた僕は、「デザインとはこんなにも理論的なプロセスだったのか」という率直な実感を持っています。

デザインと聞くと、生まれ持った才能を存分に発揮して、クリエイティブに様々なものを生み出していくというイメージをお持ちの方も多いかも知れませんが、これは全くの誤解であると言えます。本来、デザインプロセスとは問題解決を前提としているため、地味な作業の連続であり、非常に理論的なプロセスで構成されています。

僕は日本で5年間、米国で3年間デザインの教育を受けましたが、実感として米国におけるデザイン教育の方が理論的な傾向は強いと感じています。そこで今回は、僕が一体どんなデザイン教育を米国大学で受け、何を感じてきたのかということをお伝えさせて頂きたいと思います。

1. デザインとアートの違い

“What is the difference between art and design?”(デザインとアートの違いとは何か?)この質問は、米国で初級デザインクラスを受ける学生達が、教授達から頻繁に投げかけられる問いの1つです。何故この質問がよく使わるのかというと、デザインを習い始めた学生の多くは、デザインとアートを混同しているためです。デザインとアートの間には、決定的な違いあります。それこそ”Design solves a problem, art is expression”(デザインとは問題解決であり、アートとは自己表現である。)というものです。

ここから言えることは、Why?をBecauseで説明出来なければ、それは明らかにデザインではないということなのです。何となく、個人的に好きだから、感覚で、といった理由を述べた時点でそれはアート(自己表現)であり、デザイン(問題解決)ではありません。それは言い換えると、問題と向き合い、それを解決する中で生まれたモノのみがデザインであるということでもあります。では一体どういった要素や原則を元に、デザイナー達はロジックを組み立てるのでしょうか。

2. デザインの基本要素と基本原則

僕が教わったデザインの教授は、7つのwhyに答えられない者はグラフィックデザイナーではないと常々口にしていました。何故ならデザインの基本要素は7つ存在していて、そのそれぞれに対してBecauseを考えるのは基本中の基本であるとされているからです。

下記が、デザインにおける7つのBasic Elements(基本要素)です:

  1. Line(線)
  2. Color (色)
  3. Shape (形)
  4. Space (空間)
  5. Form(フォーム)
  6. Value (明度)
  7. Texture(質感)

 

デザイナー達は何かを作る際にはこれらのデザインを構成する全ての要素に対してBecauseを考えていきます。また、デザインにおける6つのBasic Principal(基本原則)というものがあり、要素を組み合わせて全体構成を考える際に適応されます。

  1. Balance(バランス)
  2. Gradation(グラデーション)
  3. Repetition(反復)
  4. Contrast(コントラスト)
  5. Harmony(調和)
  6. Dominance(割合)

 

初級デザインのクラスでは、優れたデザイナーがデザインしたものを上記の要素にそれぞれ分解•分析して、なぜそれが優れたデザインなのかということを知り、説明出来るようになることから始まります。

ちなみにもう少し上のクラスになると、Why?→Becauseという1つの階層で終わるのではなく、Why?→Because→Why?→Because→Why?→Because→…をどんどん繰り返すようになります。これは一つの側面からWhyを問い続けることで、問題の本質まで思考を巡らせるためです。これを様々な側面から行うことで、理論をより強固なものにしていきます。

ここまで読むと、Whyに対するBecauseさえしっかりしていれば見た目はどうでもいいのか?という疑問が浮かんでくるかも知れませんが、実はデザインにおける「問題解決」と「見た目」は密接に関わっています。

4. 機能と形態は表裏一体

デザインは美的造形性に加えて、優れた機能性も同時に兼ね備えていることが必須です。ここで言う美的造形性とは見た目の美しさであり、機能性とは本来そのデザインが担う問題解決の手段を指します。

この文脈で、有名な建築家ルイス・サリヴァンが残した”form follows function”という考え方は現代に受け継がれ、芸術やデザインの分野に多大な影響を与えました。これは機能(問題解決)を追求することで形態(見た目)が自然に定まるとする考え方です。

現在プロダクトデザインで世界的な地位を築いたAppleの創設者であるスティーブ•ジョブズが残した下記の言葉もまた、そうした考え方を深く反映するものであったように感じています。

“デザインとは「どう見えるか(how it looks)」ではなく、「どう機能するか(how it works)」の問題である” — スティーブ・ジョブズ

ただしこれを機能が最も重要という意味で捉えてしまうと本来の意味を見失ってしまうかも知れません。機能と見た目は表裏一体。だからこそwhyを問うことが重要であり、それに答えることは見た目の美しさを洗練する行為でもあるのです。

5. デザインプロセス

ではもう少し広義でのデザインを考えた時、全体的にどういったプロセスで構成されているのかということをご紹介したいと思います。デザイン分野によって細かなステップは違うものの、僕の通っている大学では大まかに以下の5段階がデザインの基本フェーズとして教えられています。

a. Understand the problem(問題の理解)
b. Gather Information(情報収集)
c. Think by sketching and choose one (アイデアの拡散と収束)
d. Production(アイデアの具現化)
e. Refine (改良)

 

a. Understand the problem(問題の理解)

最初の段階では、まずクライアントが抱えている問題を洗い出します。多くの場合はヒアリングをすることから始め、デザインによって解決するべき問題が何になるのかを特定していきます。

この段階で、そのデザインが達成するべきゴールは何で、最終的に見たり使ったりするのは誰で、競合にはどんな相手が居て、デザインが最終的に置かれる環境設定は具体的にどんな具合で、伝えるべきメッセージは何で、どういったイメージを利用者に抱かせるべきで、どんな反応を得たいのかといったことを突き詰めて行きます。

 

b. Gather Information(情報収集)

問題を特定したら、次にその問題を解決するために必要な情報を収集するべくリサーチをしていきます。オンラインではWebサイトやデータベースを見ながらファクトを集めたり、オフラインでは必要とあればインタビューを設定して問題解決のキーとなる情報を持つ方へ直接話しを伺いに行ったりもします。また、何かを作る場合にはどんなリソースが利用可能で、どういった素材を使うことが出来るのかといったことも考えていきます。

 

c. Think by sketching and choose one (アイデアの拡散と収束)

「合計が10となる数式を求めなさい」という問題には、1+9、2+8、3+7…というように多くの求め方が存在するように、現実の世界でも1つの問題を解決するための道筋は数多く存在しています。

そこで、問題を特定し考えるために必要な情報が揃った後は、徹底的に解決方法の数を出すというプロセスを踏みます。このフェーズにおいて、IDEOという世界的に有名なデザインコンサルティング会社が行うブレインストーミングのフレームワークは非常に有名です。

1.Defer Judgement (批判を延長する)
2.Encourage Wild Ideas (突飛なアイデアを奨励)
3.Build on the Ideas of Others (他人のアイデアを再利用する)
4.Stay Focused on Topic (テーマにだけ集中する)
5.One Conversation at a Time (1度に1つの会話)
6.Be Visual (ビジュアル化する)
7.Go for Quantity (量を追求する)

彼等はこのフレームワークを元にブレストを行い、数多くの案を次々と出して行きます。最終的には壁一面がイラストや言葉で表現されたアイデアを書いたポストイットで埋め尽くされます。

こうしたブレインストーミングに限らず、様々な切り口を拡散する思考方法をラテラル思考(水平思考)と呼び、ロジカルな思考だけでは辿り着きづらいクリエイティブな解決案にまで思考幅を拡大させることを主な目的として利用されます。

また、僕の通っている大学では「考え尽くしたら思考をオフにしてリラックスする」という方法も推奨されています。人間の脳は、まったく関係のないことをしている時に特定の答えを閃きやすいという性質を利用したアイデア発想法とされています。

こうして拡散された数多くの案は、合評やフィードバックを経て収束され、選んだ案を元にデザインを作る段階へと入って行きます。

 

d. Production (アイデアの具現化)

「作りながら考えろ」というのはデザインを学ぶと必ず教わるやり方です。何かを作る時、頭や紙の上だけで考えてしまうとどうしても机上論になりがちなので、実際に作りながら進めるのが一番効果的であるということを伝えています。

1-3の段階で大まかなパズルのピースは出揃い、それらをどのようにはめ込み、組み立てるかといった一連の仮説やストーリーは出来ています。しかし、実際に作ってみないと分からない部分というのがどうしてもあるため、アイデアを具現化させながらさらに作りこんでいく必要があります。

この段階で、デザイナーはモックアップやプロトタイプと呼ばれる完成一歩手前となるダミーに落とし込んでいくのですが、設計図で見るデザインと、形になったデザインを見るのとでは感じ方に天と地ほどの差があります。

また人間の認知能力というのは非常に優れていて、僕たちはデザインを見た瞬間、無意識のうちに様々な情報を認識•識別しています。こうした認知のおかげで僕たちは「あっ、このデザイン何となく好きだな」と一瞬にして感じることが出来てしまいます。

“God is in the details.”(神は細部に宿る)という言葉がありますが、無意識の認知は細部にまで及び、例え1mmの違いですら時にデザイン全体へ大きな影響を及ぼすことすらあります。だからこそデザイナー達は1mm単位までしっかりディテールを追求し、細部が全体に及ぼす感覚までデザインするように心がけています。

こうして具現化され、ディテールまで作り込まれたデザインですが、デザインプロセスがここで終わることはありません。

 

e. Refine (改良)

完成されたように見えるデザインも、デザイナーやクライアントではなく、実際の利用者からは思いもしなかったようなフィードバックが返ってくることがあります。これは想定したデザインの機能と、実際に作用している機能との間にギャップがあるためです。

そうしたギャップを埋めより現実的で効果的なデザインにするために、様々なユーザーテストを行っていきます。こうして集計したフィードバックを元にして、余計な機能を削いだり、足りていない機能を加えたりして、バランスを改良していきます。

上記5段階をプロセスを経て、ようやくデザインは市場へと出ます。もちろんこのプロセスは単なる基本形であり、業種によって違いますし、プロジェクトによって変形したり、新しいプロセスを加えたりするので、デザインの大まかな流れとして認識して頂ければと思います。

7. Typography(タイポグラフィ)講義

タイポグラフィとは、活字を適切に配列することで、文字の体裁を整える技術です。例えば読者の方が今ご覧になっているこの文章も、一つ一つの文字が横や縦にスペースを保ちながら並べられることで読むことが出来ます。

文字と文字との間隔、センテンスごとの間隔、センテンス上下一行づつの間隔、これら全てには名前があり、グラフィックデザイナーはこれら全てのスペースを調節します。

一行に何文字を入れて、文字間隔はどれくらいに設定するべきなのかといった作業も、実は感覚ではなくて視認性を高めるために定められたルールが数多くあります。グラフィックデザイナーはこれらのルールを適応しながら、理論的に文字情報を配置していきます。

またタイポグラフィ講義では、デザインで使用してもOKなフォーマルなフォントリストが生徒に配布され、基本的にそれ意外のフォントを授業で利用することは推奨されません。理由はシンプルで、デザインに利用出来るような美しいフォントというのは実際には非常に限られていて、無料で配布されているようなフォントは視認性や実用性が非常に低いためです。

また、それぞれのフォントの組み合わせにも相性があり、どのフォントがどのフォントとマッチするのかという相性なども学びます。こうして学生達は様々なフォーマルなフォントと慣れ親しみ、どのようにデザインへと適応させるのかを具体的に学んでいきます。

ちなみに僕の大学のデザイン学生は、タイポグラフィのクラスをA, B, Cと3つ取らなければ卒業出来ません。これは視覚デザインにおいて文字情報が占める割合は非常に重く、タイポグラフィが出来ることはグラフィックデザイナー/Webデザイナーにとっては必須であるためです。

8. 中国系移民の教授から学んだ移民の可能性

僕は米国のデザイン講義を担当する教授から、デザインだけではなく英語を第二言語とする移民が秘める可能性についても学びました。

今でも思い出しますが、僕は留学当初、明らかに中国なまりで英語も不完全な中国系移民の教授が、数多くの人気デザインクラスを担当しているという事実に驚きを隠せませんでした。彼は中国から米国大学へ留学し、その後デザイナーとして働いた後に、米国の大学でデザイン教授として働き始めたのだそうです。

アジアからの大学留学生が、後に海外就職を果たし、米国で人気デザイン講義を掛け持って教えるまでになるという彼のストーリーは、留学生の僕にとっては感動的ですらありました。

そんな中国人教授が使う英語はシンプルにして明快であり、授業内容も中国と米国のデザイン事情を交えながら教えるという移民ならではの独自スタイルを確立しています。

特にカルフォルニアでは様々な文化背景をもった教授や生徒達が同じ教室で学びあうので、講義内容だけではなく彼等の文化や考え方を知り、自分のデザイン的な視野を広げることが出来ることも一つの魅力かも知れません。

9. 必修科目としての企業インターンシップ

僕は現在、大学のクラスとしてbtraxへインターンシップをさせて頂いています。多くのデザイン系学生にとってこの企業インターンシップは必修であり、取らないと卒業することが出来ません。

デザインのアカデミックインターンシップは様々ですが、実はその7-8割以上が無給であるとも言われています。こう書くと学生達を無給で働かせるのはひどいという声が聞こえてきそうですが、実はその逆であったりします。

米国のデザイン学生達は、むしろ無給でインターンシップ出来る企業を探します。それはネームバリューのある会社は無給、ネームバリューの無い会社は有給という常識が定着しているからです。

学生達は卒業後に就職する際、ネームバリューのある会社でのインターン経験をresumeに書く事で自らを売り込むことが出来ます。多くの学生にとってはインターンで報酬を得るよりも、卒業後に希望の会社へ就職することの方が重要であるため、無給インターンであっても経験を稼ぐためにどんどん応募します。また無給インターンで働いた後に、その会社から正社員としてのオファーが来ることも少なくありません。

また、企業もこの事を熟知しているため、ネームバリューのあるデザイン会社の多くはインターンを無給とします。それとは反対に、ネームバリューだけでは学生をインターンとして呼び込むことの出来ない企業は、その対価としてインターン生にお金を払うのです。

10. MBA & Designという新領域

ビジネスとデザイン。この二つにそれぞれ全く違ったイメージをお持ちの方も多いかも知れませんが、この記事を読んで、少しデザインに対する捉え方が変わったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はデザインコンサルティングとビジネスコンサルティングは密接に関連していて、切っても切れない関係にあります。

また、様々なビジネス分野におけるデザインの重要性が高まってきている近年、デザインとビジネスの両軸を行うことの出来る人材需要も比例して高まってきています。

こうした背景も手伝い、最近はMBAとデザインを融合したコースを提供する海外大学院が徐々に増え始めています。そうした大学では、デザインプロセスからビジネス理論までを幅広く学び、最新の市場ニーズにあう知識や技術が習得できるように講義が設計されています。

僕はこうしたコースを提供する大学院に強い興味を持っているんですが、現在幸いにもこれらを実践的に学ぶ機会を得ています。というのも、btrax社はビジネスとデザインの融合を掲げているため、業務内容が非常に理論的かつクリエイティブです。もしbtrax社でのインターン内容も「米国のデザイン教育から学んだこと」に含めるとするのであれば、僕は今まさに「デザイン×ビジネス」を米国で直に学ぶ機会に恵まれていると言えます。

11. 終わりに

僕は日本と米国でデザイン観がどうしてこうも違うのだろうと留学して以来ずっと考えてきましたが、どうもお互いの国が持っている根深い文化背景に由来するところが大きいという結論で間違いないと考えています。

例えば言語一つとってみても、日本語は円を書くようなメッセージの伝え方をしますが、英語は直線的に物事を伝えます。文章の構成方法も違えば、コミニケーションの要所も全く違います。

こうした文化背景は、その土地に住む人々の思考方法に多大な影響を与えています。異なる考え方は、異なるモノを生み出します。インプットが違えばアウトプットが異なるのは必然であり、その結果として出来上がるデザインも全く違うものになっていきます。

今回は「米国のデザイン教育から学んだこと」という題で書かせて頂きましたが、僕は日本のデザイン教育から学んだことも沢山あります。どちらが良いというわけではなく、どちらにも長所と短所があり、それらをうまくバランスさせることが重要なのではないかと思うのです。

まだまだ実践していかなければいけないことが数多くありますが、日米それぞれから素晴らしい要素を学び、グローバルにデザインを展開させる上で何が重要なのかということを意識しながら、これからも真摯にデザインと向き合っていきたいと思う次第です。
togetterにも今回の記事内容をまとめました。多くの方から反響を頂いておりますので、こちらも同時にご覧になって頂ければ幸いです。

 

筆者: Masato Brian Miura @rami2929

 

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