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チャットボット (ChatBot) が得意なこと不得意なこと
一昔前までは機械が人を超えるようになるということは映画の中でしか起こり得ないことだと考えていた。しかし現在ではそれは夢のような話ではなく、現実的な話となってきはじめている。
人工知能や機械学習などのテクノロジーを活用することで、今まで手動で行っていた事の自動化がどんどん進んでいる。その具体的なサービスの一つがチャットボットであろう。実際シリコンバレーの開発者も良いチャットボットを作ろうと力を注いでおり、毎週のように関連のピッチイベントも行われている。
現在btrax社ではとあるチャットボットの開発プロジェクトに対してUXコンサルティングを提供している。その経験を元にチャットボットに関するノウハウを定期的にポストする。前回の”チャットボット (ChatBot) におけるUXデザインのポイント”に引き続き、今回はチャットボットがその特性上、得意なタイプのサービスと苦手な分野をまとめてみた。
チャットボット開発におけるUXデザインプロセスの様子
チャットボットってなに?
そもそも日本ではまだあまり聞きなれない”チャットボット”とは何か?Botと聞くと何かしらシステムが関係していて、もしかしたらAIを活用した複雑なシステムのような響きもある。しかし、実は現時点でのチャットボットはかなり単純&開発も比較的シンプルなケースがほとんどである。
チャットボットとは主にモバイルデバイス上で、メッセンジャーやチャットを元にしたインターフェース – 例) LINE, Facebook Messanger, SnapChat, Slack等, を活用して提供されるサービスである。ユーザーはまるで生身の人間と”会話するような感覚”で情報収集を行うことができる。通常は機械のアルゴリズムを利用されるが、場合によってはAIによる高度な会話の実現も可能です。
チャットボットの画面例
これからはチャットボットの時代?
アメリカを中心に海外ではすでにこれからはサイトやアプリではなく、チャットボットの主流となってくると考えている人も少なくない。その理由は主に2つ。
一つ目は、コミニュケーションプラットフォームとして、チャットというのは”文字”を活用しているため、表情・声のトーンや、なまり、イントネーションを必要としない方法である点。つまり生身の人間が返信していようが、AIがレスポンスしていようが、内容さえ正しければ見分けがつかない。
二つ目としては、人々は全く目新しいものよりも普段から使い慣れたサービスを使う傾向にある。そのため現在既に浸透しているチャットというプラットフォームを活用することで、ユーザーにとって違和感のない体験のサービスを提供することができる。
これをふまえ、今回はそのシステム的な性質から、チャットボットは何が得意か不得意であるかを検証していく。
チャットボットが得意なこと
- 目的は一つだが選択肢がたくさんあるケース
- データを集めることは簡単だが分析・使用が難しいケース
- ユーザーと信頼ある関係を築くこと
チャットボットが不得意なこと
- 今すぐに情報が必要なケース
- 難しい言語の理解が必要なケース
- ユーザーがブラウジングを楽しんでいるケース
チャットボットが得意なこと
まずは、チャットボットが何が得意なのか、どのようなサービスに活用かのかを検証してみよう。
1. 目的は一つだが選択肢がたくさんあるケース
現在ウェブサイト上には情報が溢れすぎている。事実、Caratというメディア代理店によると41%の人々がウェブサイトでの選択肢の多さに圧倒されると感じている、とのデータがある。つまり既存のウェブサイトから得られるエクスペリエンスは人々の意思決定を難しくさせてしまいやすい。
例えば飛行機を予約するとき、顧客は「◆月◇日に〇から△へ行きたい」という一つの目的しか持っていない。しかしながら顧客は予約のためにまずウェブサイトへ行く、飛行機を探す、ほかのウェブサイトへ行く、価格を比べるということを繰り返さなければならない。
これは顧客にとってめんどくさく時間を無駄にしているように感じる。旅行代理店が予約を行ってくれる場合もあるが、ネットの発達した現在では顧客自身が行う機会が増えている。
旅行代理店を使うのをやめた時、人々は無意識にサービスより安い価格を重視するようになる。なぜならサービスの詳細を確認するのは時間がかかるからである。しかし、選択肢が多すぎるため、実際に何が一番良い選択であるのかがわからず、大きなストレスとなる。
そんな時は、旅行予約用のチャットボットを使うことにより、価格・サービスのどちらも妥協せず最適な内容での航空券予約が可能となる。
例えば「Pana」を使うと「9時から17時まで渋谷でミーティングがあるので、大阪出発で最も安いチケットを予約してください。」とチャット画面に打ち込むと、チャットボットが素早く最適な候補の2・3個を挙げてくれるのである。
このように顧客が多数の選択肢から消去法で意思決定をしなければならないというような状況はたくさんある。このような場合にはチャットボットが効果的である。理由として、チャットボットはその特性上、膨大なな情報を収集し分析し、その中で最も良い結果のみを選んでユーザーに届ける事が出来るからである。
将来的には同じような手段でさらに複雑な仕事も対応可能になると考えられている。例えばサイトの閲覧数を増やすためのマーケティング施策として、ユーザーごとのデータを元に最適なクーポンをプッシュ通知で配布といったようなこともできる。
2.データを集めることは簡単だが分析・使用が難しいケース
チャットボットはめんどくさい分析を任せるときに非常な便利な手段となり得る。「Vida」では食事がアレルギー等に反応し危険であるか、また副作用を引き起こすか等の診断に役に立つ。食事前に食事の写真を撮りそれに対しアドバイスをくれるというボットである。
過去にユーザーが食べた食事・感じ方ことを比較することにより、何が原因で副作用等が起こったのかを見つけ出してくれる。そしてもし問題があればユーザーに事前に知らせてくれる。こういった分析はユーザーにとっては難しい・めんどくさい作業となるが、チャットボットにとっては得意分野である。
またチャットボットは多数の情報アクセスが可能な時に力を発揮する。データ解析をするのはユーザーにとっては複雑な作業であるが、企業・ボットにとってはそれらのデータは非常に有用なのである。なぜなら集めたデータを今後活用することができるからだ。
例えば上記の「Pana」で旅行の予約をするとする。その場合ボットは過去のデータからユーザーに最適な航空券を選び出してくれる。もし「Pana」がユーザーのスケジュールにアクセスが可能である場合は航空券だけでなく、空港からミーティングの場所までの車等も手配が可能になるかもしれない。
最終的にはボットはここまで進化するだろう。「ユナイテッド航空で2つのお勧めフライトがあります。どちらのフライトもあなたのミーティングまでに十分な余裕を持った飛行機となっています。どちらを予約しましょうか?」といったような具合である。
チャットボットは人に合わせて最適化が行われ、大量のデータを最新のツールを用いて迅速に収集・分析が可能であるという優れものである。加えてアップデートがある際にも自動的に更新されるので、ダウンロードの必要性が無く、ネイティブアプリよりお手軽である。
3.ユーザーと信頼ある関係を築くこと
新しいアプリをダウンロードするとアプリによって使い方が違うためにアプリ毎に使い方を学ぶ必要がある。しかしながらチャットボットと会話を行うことは、友達とLINEやMessangerで会話をしているのとほとんど変わらない。つまりそのお馴染みの体験が提供できるため、ユーザーから信用を獲得しやすいの。一度信用されると繰り返し使うようになるので関係性の構築が行いやすい。
加えて親近感が湧くチャットボットの特徴としては、一定のペースでの交流が可能であるということが挙げられる。私たちが友達とチャットをする際、返信が来るまで少し待たなければならない。同様にチャットボットも少し時間が必要な時がある。なぜなら膨大な選択肢からテスト・分析を行いお勧めを出す必要があるからだ。この待たなければならない時間もまた機械っぽさをなくし馴染みやすさを生み出す。
一方でもしチャットボットがお金儲けのためなどを理由に、お勧めに偏りが出たりすると問題である。例えば「Pana」が特定のホテルだけを手数料獲得のために表示し始めると一瞬でユーザーの信頼を失うことになるだろう。
チャットボットが不得意なこと
では、逆にどのような事柄がチャットボットにとって苦手なのであろうか。
1. 今すぐに情報が必要なケース
チャットボットはSiriとは異なり、今すぐ情報がほしいという状況の時には向いていない。なぜならデータの収集・解析・提案のステップを踏まなければならないためである。場合によっては、生身の人間の補助が介在する場合もあるために、即時情報がほしいという際には向かない場合がある。
2. 難しい言語の理解が必要なケース
あくまでチャットボットの基本は機械であり人間ほどの高度な言語が理解できるレベルにはまだ達していない。そのために難しい言語を打ち込んだり、連続性のある会話を行うとした場合に理解してくれないことがある。
これは天気予報ボットの「Poncho」での例。
自分「ジャケットは必要?」
Poncho「サンフランシスコでは今コートは必要ないよ」
自分「サングラスは?」
Poncho「んーーー、サングラスはサンフランシスコで持って行った方がいいよ」
自分「傘はどう?」
Poncho「傘はサンフランシスコで必要ないよ」
自分「じゃあニューヨークではどう??」
Poncho「ニューヨークは今晴れで10.5℃だよ」
自分「傘のこと聞いてるんだけど」
Poncho「傘はニューヨークでは必要ないよ」
自分「最近のカリフォルニアはじめじめした天気になるかな?」
Poncho「カリフォルニア?アメリカ?僕は都市のことはあんまり知らないな天気のことを聞いてほしい」
以上のように会話の流れから答えを推測するということは未だにチャットボットは苦手としている分野である。
3.ユーザーがブラウジングを楽しんでいるケース
チャットボットの利用する最大の理由は、到達したい目的に向かってできる限り無駄を省き、効率的に目的達成を行いたいというときである。もしユーザーがショッピングサイト等で具体的な目的を決めずに気軽にブランジングを楽しんでいる場合にチャットボットを利用してしまうと”遊び”の部分がなくなり、選択肢を狭めるということにつながリかねない。結果として、ユーザーの楽しみを奪う可能性がある。
その点を考慮して上手にエクスペリエンスを届けているのがメルカリなどのアプリであろう。ランダムなお気軽ブラウジングと目的ベースの効率的操作には全く異なるエクスペリエンスが必要とされる。
まとめ
チャットボット活用の利点
チャットボットは難しいタスクを自然な会話を通してユーザーに最適な選択肢を提供する
一般的なチャットのように見えるのでユーザーにとって非常に馴染みのあるものとなる
チャットボットの成功がさらなるユーザーチャンネルとユーザー数の獲得につながる
チャットボットは以下の条件下においてすばらしい働きをする
・ユーザーが目的が1つで、選択肢がたくさんありすぎる時
・データを集めることは簡単だが分析・使用が難しい時
・ユーザーと信頼ある関係を築けた時
・今すぐ情報が必要でない時
・難しい言語理解が必要でない時
・ユーザーがネットサーフィンを楽しんでいない時