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海外クラウドファンディングで成功するために押さえるべき5つのポイント
クラウドファンディングに出展するアイデアも、プラットフォームも決まり、いよいよキャンペーンを出展する人のために今回は資金調達を成功させるための5つのポイントを紹介したい。
やるべき3つのポイント
まずは5つのポイントのうち、実行するべき3つのポイントを紹介する。
① 初期に多額の調達を行う
やるべきポイントの1つ目は、キャンペーンの初期に多くの資金を調達することだ。
キャンペーンの最初と最後が重要
上の図は、INDIEGOGOにこれまで出展された10万件のキャンペーンを調達金額を縦軸に時間を横軸に取り平均化したものである。白い曲線は1日ごとに調達した金額を表している。この白い線から分かるように、資金調達の多くは、キャンペーンの最初と最後に集中している。INDIEGOGOの統計によれば、平均的に資金調達額の42%が初日と締め切りの3日間で集められる。つまり、資金調達の上でキャンペーンの最初と最後が肝心ということだ。
キャンペーンの出だしが勝負を決する
さらに成功したキャンペーンに限って見ると64%がキャンペーン開始から2日間で資金調達額に到達しているという。INDIEGOGOやKICKSTARTERが30日間の調達期間をオススメしているのもこのデータを見れば納得できる。調達期間が長ければ、その時間分多く調達できると思いがちであるが、キャンペーン開始直後にどれだけ調達できるかが勝負の鍵となる。
あらかじめ出資者を探しておく
では具体的にどのような準備を行えば、良いスタートを切ることができるのだろうか。一般的に、準備には少なくとも2ヶ月はかけたほうがいいと言われている。その期間にキャンペーンのSNSページを作ったり、製品を作ったりと様々な準備を行うだろうが、意外と重要なのがキャンペーン初日に必ず出資してくれる人を探しておくということだ。出だしが重要なクラウドファンディングにおいて、初日と2日目にいくら資金調達ができているかは成功への鍵である。
成功した多くのキャンペーンが目標金額の5~30%を自身のネットワーク(家族、同僚、友達)から集めていると言われているくらいだ。新規の出資者にとって、キャンペーンがその時点でどれくらい調達しているかは、出資をするかどうかを決める重要な要素である。
② ストーリー作成
2つ目のポイントはストーリー作成に注力することだ。ストーリーとはキャンペーンページのドラフトのことだ。言わば、キャンペーンを出資者にアピールするためのものである。しかし、ただキャンペーンの紹介をするだけのストーリーでは出資者の心を揺さぶることはできない。どのようにキャンペーンをアピールするか、どのように出資者から信頼を得るかなど、試行錯誤を重ねてストーリーを作成する必要があるため、出展前にある程度の時間をかけた方がいい。
ストーリーをキャンペーンページ上で語る手段としては2つある。テキストと動画だ。
テキスト
テキストとはストーリーを文字で表現したものだ。以下の点を参考にしてほしい。
- 短く、シンプルに伝える
- 画像を入れて見やすくする
- 出展者がどういうバックグラウンドを持っているか、どのようにアイデアを思いついたかなど、詳細を載せた方が信頼感を得られる
動画
KICKSTARTERによると、キャンペーンページに動画があるだけで成功率が20%上がるという。作成できるなら積極的に動画をストーリーにいれた方がいい。
- 動画は2~3分が良い
- 出展者が自らの口でプレゼンする動画が良い。キャンペーンへの想いや情熱を文字だけで伝えることは難しいため、動画で伝えた方が良い
何をストーリーに盛り込むか
ストーリーの内容については各プラットフォームにテンプレートがあるので参考にした方がいい。テンプレート以外にストーリーに盛り込むなら以下の7点がオススメである。
- 製品紹介
- 製品の使い方
- 掲載しているメディア
- 出展者紹介
- 報酬
- キャンペーン中の予定のタイムライン
- FAQ
③ 報酬の設定
3つ目のポイントとして報酬の設定がある。報酬とは出資者が出資金額に応じて受け取るものであり、出展者は出展前に報酬を設定しなければならない。ちなみに、報酬のことをINDIEGOGOではPerksと呼び、KICKSTARTERではPledgeやRewardsと呼んでいる。
金額の設定
報酬の金額として最も人気があるのは25ドルの報酬であると、KICKSTARTERでもINDIEGOGOでも言われている。そのため、ある程度の量を生産することができる報酬を25ドルに設定したほうが良い。
- KICKSTARTERによると報酬価格の平均は70ドルである
- INDIEGOGOによれば、資金調達額の30%が100ドルの報酬で占められている
- 報酬金額を設定する時に配送料や手間のコストを考慮せずに設定する人が多いため、注意したほうがいい
報酬の種類
- 3~8種類の報酬を用意しておくことをオススメする。なぜなら、INDIEGOGOの成功しているキャンペーンの70%は3-8種類であるからだ
- 少額の報酬も必ず用意した方がいい。KICKSTARTERによると、20ドル以下の報酬が無いキャンペーンの成功確率は28%だが、20ドル以下の報酬があるキャンペーンは、成功確率が少なくとも45%もあるという。1ドルの報酬で5000ドルの資金調達を行った例もKICKSTARTERにあるくらいだ
具体例
では、具体的にどのような報酬を用意すればいいのか。KICKSTARTERで公開されている一般的な報酬のタイプを紹介しよう。
コピー系:アルバム、CD、DVD
コラボレーション系:出資者の名前を製品にいれたり、エンドロールで流したりする
経験系:訪問できる、著者と直接電話できる、キャストと一緒に食事
記念の品系:ポラロイド写真、サンキューカード、Tシャツ、ステッカー、マグカップ、ステッカー
早期出資者特典(Early Bird):最初の200人は通常価格の20%引き
秘密の報酬機能
最近、INDIEGOGOが始めたSecret Perkという秘密の報酬機能を使うのもプロモーション手段としては有効だ。Secret Perkとは、キャンペーンページに特定のURLから入った人だけに特定の報酬を見せることがサービスのことである。一般的なキャンペーンページでは、その報酬をみることができないためSecret Perkと言われる。使い方としては、早期出資者にURLを配ったり、SNSで限定的にURLを公開したりすることで、特定の出資者を優遇できる。
やってはいけない2つのポイント
入念な準備を行って、キャンペーンを出展してしまえばそれで終わりということではない。最初に述べたように、多額の資金が集まるのは初期と締め切り前の3日間である。キャンペーン中も気を抜くことはできない。これから、やってはいけない2つのポイントを紹介しよう。
④ コミュニケーションを怠る
海外クラウドファンディング入門編 〜これからクラウドファンディングの時代が来る Part 1〜でも述べたようにクラウドファンディングの魅力の一つにユーザーとの共創がある。キャンペーン中に寄せらせるユーザーのコメントやフィードバックに対応し、ユーザーからの信頼を獲得しなければならない。そのため、出展者はユーザーとのコミュニケーションを定期的に取り続ける必要がある。
コミュニケーション方法
具体的にはどのようなにしてユーザーとコミュニケーションを取り続けるのだろうか。
その1:キャンペーンページを更新し続ける
INDIEGOGOによると、成功しているキャンペーンは平均的に4回のページ更新を行っている。一般的なキャンペーンの長さが30日だとすると、おおよそ1週間に1度は更新をしているということだ。更新する内容は、チームメンバーの紹介や製品の進捗状況など何でもいい。とにかく出資者達に活動しているということをアピールすることが重要だ。
その2:新しい報酬を追加する
キャンペーン中に新しい報酬を追加することもコミュニケーションの1つだ。INDIEGOGOによると、成功しているキャンペーンは平均で12個の報酬を追加している。これらは、ユーザーからのコメントやフィードバックを反映して作成している。
例えば、INDIEGOGOに出展していたドローンのキャンペーン「Plexidrone」はユーザーからのフィードバックを元に the PlexiPack Mini Backpackという報酬を追加した。当初はPlexiPack HardBackというドローンを入れるためのバッグを報酬として用意していた。
しかし、多くのユーザーがもっと軽くてコンパクトなバッグが欲しいとコメント欄で訴えた。そこで出展者がコンパクトなMini Backpackを報酬に追加したところ、出資者が一気に増え、目標額の10倍である約220万ドルの調達に成功した。
⑤ 約束を破る
多くのプラットフォームでは成功する秘訣として、出資者に対して正直に伝える重要性を訴えている。出展者は目標額を達成するために、できないことやありもしないことを公表してはならない。そして、キャンペーンページで約束したことは、必ず果たした方がいい。なぜなら現在のクラウドファンディングには、キャンペーン終了後もECのようにキャンペーンを継続できるシステムがあるからだ。
(詳しくは、米国2大クラウドファンディング INDIEGOGOとKICKSTARTER比較編 〜これからクラウドファンディングの時代が来る Part 2〜のInDemandやSpotlightを参照)目標額を達成した後も稼ぎ続けるために、信頼度や実績が必要であり、長期的に見てキャンペーンを成功させたいなら、出資者に対する約束は破らない方が良い。
実際に約束を守ることができずに炎上したキャンペーンもある。
ZANO (Part2の記事から抜粋)
約4億円の資金調達に成功したにも関わらずプロジェクトが実行されず炎上したZANOだ。ヨーロッパ最大のKICKSTARTERプロジェクトと言われていたZANOは空撮用の小型ドローンで撮影対象との距離を認識することで追尾できたり、自動で所有者の元に戻ってきたりする機能が注目された。2015年1月の締め切り後に製造を開始すると説明していたZANOだが製造の延期を繰り返し7ヶ月経った時点でも飛行安定性が低く撮影時の画質も低かった。
出展者のReedmanはソフトウェアのアップデートによってそれらの問題は解消されると説明したが、飛行安定性や画質の問題は解決されず、ZANOのセールスポイントである自動追尾機能なども全く実現されなかった。怒った出資者達によってFacebookやTwitterが炎上し、change.orgで返金運動まで起こっている。
実際の成功例
以上の5つのポイントを踏まえて、実際に成功したキャンペーンはどうなのか見ていこう。
Pebble
2012年にKICKSTARTERで当時の最高額である約12億円の調達に成功したキャンペーン
① 初期に多額の調達を行う:2時間で目標金額の10万ドルを達成し、28時間で100万ドル達成しているため、初期に多額の調達を実行できている。
② ストーリー作成:キャンペーンページの動画では、創業者が自らPebbleの説明を行い、Pebbleへの想いを語っている。動画の途中でチームメンバーが全員登場するシーンやプロトタイプが完成した当時の動画を入れている点が出資者の心を揺さぶっている。
③ 報酬の設定:報酬は全部で9種類用意してある。最低99ドル、最高1250ドルである。報酬は全てPebble本体であり、少額報酬を用意せずに数量と色で報酬を分けている。また、早期出資者200人に対して限定品を作るようなプロモーションを行っている。
④ コミュニケーション:キャンペーンが成功するまで12回も更新を行っている。新しい報酬は出してはいないが、ソフトウェアの更新をキャンペーン中や終了後に行っている。
⑤約束:約束もしっかり守っている。ここでの信頼が後のPebble Timeへの成功に繋がっている。製品の配送前にも出資者に対して、パッケージングしている動画を投稿したり、工場での様子を掲載したりしている。
Coolest Cooler

KICSTARTERで歴代2位の約15億円を集めた多機能クーラーボックス
① 初期に多額の調達を行う:36時間以内に目標金額である50万ドルを達成している。
② ストーリー作成
Coolest Coolerの動画でも創業者自らの口でキャンペーンについて語っている。また、メディア掲載や報酬を画像を使って分かりやすく出資者に伝えているのも参考にできる。
③ 報酬の設定:報酬は以下の9種類設定している。
- 5ドル – 名前を出資者のクーラボックスに書く
- 25ドル – ブレンダードリンクの作り方の本とカップ
- 55ドル – Tシャツ
- 165ドル – Coolest Cooler本体(初回購入者限定)
- 185ドル – Coolest Cooler本体
- 225ドル – Coolest Cooler本体とTシャツとブレンダードリンクの作り方の本とカップ
- 500ドル – Coolest Cooler本体と出展者に30分間会話し、フィードバックできる権利
- 1750ドル – Coolest Cooler本体 10個
- 2000ドル – Coolest Cooler本体と出展者が自ら出資者のところに行ってバーテンダーになる
額も5ドルから2000ドルと幅広く、経験系の報酬もユニークなものがある。185ドルの報酬を約5万人が購入しており、最も厚い層となっている。
④ コミュニケーション:キャンペーン終了までに11回のアップデートを行っている。また、キャンペーン終了の3日前に、ユーザーのコメントを反映してアクセサリーを入れる場所やBluetoothスピーカーの大幅な改定を行っている。
⑤ 約束:Coolest Coolerは上記の4つのポイントをほぼ完璧に満たしており、クラウドファンディングを成功させる上で参考にできる。しかし、5つ目のポイントである「約束を破らない」を満たすことはできなかった。
KICKSTARTERの出資者に報酬を提供する前にAmazonで販売を開始してしまったのだ。期待の大きかったキャンペーンだけあって、大炎上してしまった。最後は出展者がYoutubeで事態を説明する動画を投稿することで収束させたが、これから出展する人は反面教師にしてもらいたい。