
デザイン会社 btrax > Freshtrax > 米国2大クラウドファンディング...
米国2大クラウドファンディング INDIEGOGOとKICKSTARTER比較
日本の良いサービスや商品を海外に売り出す方法として海外クラウドファンディングがあると紹介した(〜これからクラウドファンディングの時代が来る〜 海外クラウドファンディング入門編)が、どのようなクラウドファンディングプラットフォームが海外にはあるのだろうか?
2大プラットフォーム INDIEGOGOとKICKSTARTER
海外クラウドファンディングの中でも突出して大規模なのがINDIEGOGOとKICKSTARTERである。どちらも報酬型のクラウドファンディングであるが、2つのプラットフォームを合わせると総プロジェクト数55万件、支援者数約1900万人、総投資額約29億ドルと圧倒的な存在感を放っている。
■INDIEGOGOの特徴
2種類の調達方法 Flexible fundingとFixed funding
INDIEGOGOにはFixed fundingとFlexible fundingの2種類の調達タイプがある。前者のFixed fundingを選択すると、設定した期間内に目標金額を達成できなかった場合、集めた資金は全て出資者に返還される。言い換えると、達成しなかった場合はプロジェクト自体がスタートしない。
(KICKSTARTERのAll or Nothingもこのタイプと同じ)後者のFlexible fundingでは、目標金額を達成したかどうかに関わらず、期間内に集まった資金を得ることができる。(しかし95.6%のユーザーはFlexible fundingを利用している。)
テストマーケティングに利用可能
サイト掲載の審査が厳しいKICKSTARTERに比べて、INDIEGOGOは比較的寛容なプラットフォームである。したがって、成功するかの有無に関わらず、ユーザーからのフィードバックを得ることを主な目的として”とりあえず”出展するケースもある。そのため成功率ではKICKSTARTERに劣るが、テストマーケティングとして出展しやすい。
調達成功後のサービス”InDemand”
INDIEGOGOには資金調達を達成した出展者向けに期間終了後でも利用できるInDemandというサービスがある。InDemandでは、たとえ期間が終了してもプラットフォーム上にプロジェクトを残すことができ、これまでのように出資額に応じて報酬を出すことができる。
さらに、報酬内容や報酬額を変更することができるため、InDemandは事実上のeコマースと同じ役割を果たすことになる。
豊富なカテゴリー
INDIEGOGOには24種類のカテゴリーがあり、KICKSTARTERよりも9種類多い。ちなみに、出資額TOP20のうち13個はテクノロジーかデザインのカテゴリーに属している。
人気カテゴリー例:テクノロジー、デザイン、アート、映画、健康
■KICKSTARTERの特徴
All or Nothing
KICKSTARTERにはAll or Nothingという1種類の投資タイプしかない。All or Nothingでは目標金額を期間内に達成したときにのみ、出資額を受け取ることができる。しかしKICKSTARTERのサイトによれば、期間内に目標金額の20%に達したプロジェクトのうち81%はそのまま目標金額を達成している。
さらに目標金額の60%に達したプロジェクトの98%は目標金額の達成に成功しているという。つまりAll or Nothingと言えども、統計上は目標金額の20%が大きな壁であり、それを突破して目標金額の60%を達成できれば、ほぼゴールと言っても過言ではないということだ。
調達成功後のサービス”Spotlight”
KICKSTARTERにもINDIEGOGOのInDemandと似たサービスのSpotlightがある。Spotlightでは調達成功後であってもキャンペーンページをカスタマイズして製品を得ることができたり、リンクを貼ることで自身のホームページに誘導することもできる。
ゲーム関連製品に強い
カテゴリーごとの調達額を見ると、総出資の20%(約4億ドル)をゲーム関連の製品が占めており、出資額TOP20のうち11品がゲーム関連の製品である。KICKSTARTER発の有名な製品としてFacebookに20億ドルで買収されたVRのOculus Riftがあるが、これもゲーム関連の製品である。
■INDIEGOGOとKICKSTARTERの比較表
![]() | ![]() | |
設立年 | 2008 | 2009 |
本社 | サンフランシスコ | ニューヨーク |
創設者 | Slava Rubin Danae Ringelmann Eric Schell | Perry Chen Yancey Strickler Charles Adler |
プロジェクト数 | 約27万5千件 | 約28万件 |
成立プロジェクト数 | 約4万5千件 | 約10万 |
支援者数 | 900万人 | 1000万人 |
ユーザーの居住国数 | 223ヶ国 | 230ヶ国 |
総投資額 | 8億ドル | 21億ドル |
仕組み | ・Flexible ・Fixed | All or Nothing |
設定期間 | 1~60日 | 1~60日 |
手数料 | 運営手数料 5% + ・Paypal(3~5%) ・クレジットカード(3%+$0.3) ・海外送金手数料($25) | 運営手数料 5% + クレジットカード(3% + $0.2) |
成功率 | ・9.5% (Flexible funding) ・17.3%(Fixed funding) | 36.29% |
調達後のサービス | InDemand | Spotlight |
設定可能なリターンの種類 | 1~20種類 | 1~50種類 |
プロジェクトカテゴリー | 24種類 | 15種類 |
成功した主なプロジェクト例 | ・Flow Hive 調達額:1200万ドル ・Scanadu Scout 調達額:170万ドル ・Tesla Museum 調達額:140万ドル | ・Pebble 調達額:1000万ドル ・Veronica Mars 調達額:570万ドル ・Oculus Rift 調達額:240万ドル |
■どちらの方が適しているか?
INDIEGOGOとKICKSTARTERを比較したが、どちらにも一長一短がある。両者に出展することも可能ではあるが、管理することが難しくなるためオススメはしない。出展の目的に合わせて使い分けるのが良いだろう。
INDIEGOGO
特徴でも記したように、INDIEGOGOの最大の魅力は誰でも容易に出展できることである。特に、結果を予測しにくいマニアックな製品の出展を考えている人にとっては非常に魅力的なプラットフォームである。実際に、養蜂者向けのFlow Hiveという製品はINDIEGOGOで3万7千人以上の支援者数と1200万ドル(1500億円)以上の資金調達に成功した。こんなマニアックな製品がこれほどの資金を集めると初めから予想した人は少ないだろう。
また、INDIEGOGOはマニアックな製品でなくても海外でヒットするかをテストするのに利用する価値が高い。創業者の一人である、Danae Ringelmannもテストマーケティングとして利用することを薦めているくらいだ。
KICKSTARTER
KICKSTARTERの魅力は、出展されているプロジェクトの質の高さである。厳しい審査を乗り越えたプロジェクトだけが出展されているので成功率も高く、これまでに成功したプロジェクトの数もINDIEGOGOの2倍以上ある。また、投資額の観点から見てもKICKSTARTERの2014年の総投資額はINDIEGOGOの3倍の額の3億ドルもある。
そのため目の肥えた投資家が多く訪問しており、自信のある製品を売り込みたい人には魅力的なプラットフォームだろう。特に、ゲーム製品に強いKICKSTARTERではゲーム製品に詳しい人達でコミュ二ティができており、有益なフィードバックを得ることができるため、ゲーム関連のプロジェクトを出展したい人にはオススメである。