【基本】海外クラウドファンディング入門編
日本の良い商品やサービスを海外で販売したいというリクエストが多い。方法として思いつくのは、海外向けに作成した個別ECサイト、Amazonへの出展、海外で開催されるトレードショーへの参加などがある。しかし、意外とどの方法をとっても思ったよりも結果が出にくいのが現状である。
特にユニークな製品や品質の高いプロダクトの場合は、 Amazonなどのモールに載せると埋もれてしまうし、トレードショーに出展した際も日本に戻ってからのフォローアップが難しい。個別ECサイト構築にはコストと時間が掛かる割にはユーザー獲得が容易ではなく結果が出にくい。
そんな悩みを解決する方法として、海外のクラウドファンディングに出展することで一度に世界中から多くのオーダーを獲得した例が多数出てきている。今回は、最近のECを取り巻く現状と、新しい形の販売方法であるクラウドファンディングに関して日本から海外に販売することを前提に考えてみる。
現在の海外におけるオンラインストア, Eコマースの状況
北米のECの成長率
米国フォレスター社のリサーチによると2011年から2016年の5年間でEコマースに対しての消費金額が62%上昇する見込みである。これまでも、そしてこれからも北米のECは着実な成長が見込まれる。
北米のECはAmazonの1人勝ち状態
しかしながら、2013年度のサイト別EC売り上げを表した下記の図のように、1位のAmazonと2位のAppleでは売上で5倍近くの差がある。北米のEC業界は完全にAmazonの独占状態である。確かにECの市場は年々増加しており、ECを使えば商品を世界中に紹介できコストも海外展示会ほどかからない。しかし、一からECサイトを立ち上げて集客することはかなり困難であることがこの図から読み取れるだろう。
時代はECからクラウドファンディングへ
この統計から見ても、北米向けに商品を販売する場合、当然Amazonを経由する事が最も近道になる様に感じる。しかし、Amazonで扱われている製品は家電や日常生活用品を中心に、コモディティ的な商品が多く、どうしても価格競争に巻き込まれやすくなる。また、ユニークな製品はこのような巨大モール型ECに出展しても、どうしても埋もれてしまう。
そこで、Amazonのように主要プレイヤーが固定化されているEC業界に新たな風を吹き込むが如く現れたのが。クラウドファンディングである。クラウドファンディングはまだ市場に出回っていない新規の商品や企画アイディアをページに載せ支援者からのお金を集める仕組み。既存のECと比べてみても在庫の準備をする必要が無く、オーダーが入ってから製造する事が可能である。逆にオーダーが集まらない場合は製造の必要するら無い。
海外のクラウドファンディングとしては、大手IndiegogoとKickstarterがある。数年前よりこの2つのプラットフォームが瞬く間に出展数とユーザー数を増やしていき、現在では2社の合計購入者数は470万人と目が離せないプラットフォームとなった。
ユーザーはなぜクラウドファンディングを利用するのか
ECと同じく世界中の人にアピールすることができ、初期コストが低い。例えマニアックなものでも販売することができ、完全受注性なため、リスクもECサイトに出展するより低い。テストマーケティングとしても使えるクラウドファンディングはECとは異なった消費者体験を提供することができる。
そもそもクラウドファンディングって何?
クラウドファンディングとは起業家やクリエイターが資金を調達する手法の一つである。元々は群衆(crowd)と資金調達(funding)の造語である。出展者はインターネット上のクラウドファンディングプラットフォームを通して、自らのアイデアをプレゼンテーションする。そのアイデアに賛同した人はオンライン上で出資ができる。
出展者は希望額を提示し、一定期間内に額を達成した場合プロジェクトが成立し実行される。それまで出資というとVCなどの最低出資額が高いものが一般的だった。しかしオンラインを使うことでより多くの人に出資してもらえることから少額出資でもプロジェクトが成立するようになった。また、アイデアの内容も具体的な製品から政治活動、アーティストの支援など幅広いものが存在する。
クラウドファンディングキャペーン3つのタイプ
報酬型:プロジェクトへの出資額に応じて、金銭以外の報酬を受け取る。報酬の中身はプロジェクトの製品やサービスであることが多い。(海外クラウドファンディングで有名なIndiegogoやkickstarterはこの報酬型である。)
寄付型:その名の通り、寄付として出資するため報酬がない。非営利のプロジェクトや個人のキャンペーンの資金集めに用いられる。
金融型:出資に対して利益の一部や株式などを報酬として受け取る。上記の2つと比べると最低投資額が高い。(最低1,000ドルなど)
クラウドファンディングの5つの魅力
では、クラウドファンディングは一体何が魅力的なのか紹介したい。
1. 完全受注性生産型
製品販売のクラウドファンディングでは、出資者へのリターンとしてその製品を送ることが多い。その場合、販売数があらかじめ分かるため生産管理がしやすい。また、出資額が希望額に達さない場合、プロジェクト自体が実行されないため、クラウドファンディングの結果を見ながら生産に柔軟に対応できる。
2. 世界から注目される
これは海外クラウドファンディングに限った話かもしれないが、世界中の人に出展したアイデアを披露できる。さらに展示会のようにその場に居合わせた人ではなく、アイデアに本当に興味がある人にアピールすることができるため、その場で注文されることが多い。
2014年度で海外クラウドファンディング大手2社(IndiegogoとKickstarter)の総プロジェクト数は約20万件もあった。それほどプロジェクトがあれば、サイトを定期的に訪問するユーザーも一定数存在する。また、製品が共感や話題を呼ぶとソーシャルメディアで拡散されたり、世界各国のメディアに掲載されることで多くの人に露出することができる。
3. 初期コストが低い
一般的に展示会を行うとなるとブース代や人件費がかかる。ましてや海外のトレードショーに出るとなると渡航費や滞在費などもかかり3日間で600万円ほどかかってしまう。しかし、クラウドファンディングならば、Webサイトや動画作成費などで約100万円しかかからない。
4. 大きなオーダーや資金が集まりやすい
海外クラウドファンディング大手2社での平均達成金額は約25,000ドル(300万円)にも上る。クラウドファンディングだけで資金調達した最高額がスマートウォッチのPebble Timeで、約2千万ドル(24億円)も調達に成功している。その出資者の数は約7万4千人と膨大である。
5. ユーザーとの共創を通じたテストマーケティングが可能
クラウドファンディングのプラットフォームには、出展者のアイデアに対してコメントやフィードバックを行うことができる機能がある。購入を真剣に考える出資者からの生の声は出展者にとっては有益な情報である。また、テストマーケティングとしても利用価値が高い。
まとめ
これまで日本の商品やサービスを海外に販売する場合、利用できる手段が限られていた。しかし、クラウドファンディングの出現によって低コストで世界中の潜在顧客からオーダーを獲得できるようになった。個人でも良いアイデアであれば容易に世界中に売り込むことができるし、コメントやフィードバックを出資者から貰えるためテストマーケティングとしても使える。クラウドファンディングは、新時代の販売チャネルとして存在感を放っている。
日本でも海外ほど大規模ではないが、Makuake、Redayfor?やCAMPFIREなどのクラウドファンディングプラットフォームが台頭してきており、徐々に日本でもクラウドファンディングが浸透してきている。
次回は総プロジェクト数40万件を超える2大海外クラウドファンディングプラットフォーム、IndiegogoとKickstarterの比較を行いたい。
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