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ブロックチェーン技術の最新活用事例2選
今、ブロックチェーンへの投資とその活用に世界的に注目が高まりつつある。市場調査会社International Data Corporation(IDC)の2018年1月のレポートによると、ブロックチェーンへの支出は2018年に21億ドル(全世界合計)に達し、1年前よりも2倍以上増加しているとのことだ。
さらにこの支出は今後も増加し、2021年には92億ドルにまでなると予測されている。
これほどまで注目されるようになったブロックチェーン。アメリカのブロックチェーンを活用したサービスを提供するスタートアップはサンフランシスコに多く集まっており、勢いを増しているという。
ブロックチェーンは金融業界への活用事例がもっとも多いと言われている。金融商品のやりとりにはセキュリティの高さが求められることと、銀行や証券会社など仲介業者が多いという特性があった。ブロックチェーンにはこのどちらも解決する技術があるという点が注目されている背景として挙げられる。
そこで本記事では、ブロックチェーンとは何かをおさらいすると同時に、最新のブロックチェーン技術で変わりつつある金融業界のサンフランシスコ・シリコンバレーにある注目スタートアップ2社を紹介する。
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そもそもブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは、データ管理システムのネットワーク形態の一種であり、分散型台帳技術とも呼ばれる。ブロックチェーンと聞くと仮想通貨で代表的なビットコインを連想されるかもしれないが、ビットコインはブロックチェーン技術を活用したサービスの一つだ。
ブロックチェーンは次のような仕組み、メリットが特徴と言われている。まず、ユーザー間の取引データをユーザー同士が管理するデータ管理の仕組みを持っている。従来だと各所に広がるデータを中心のサーバーに集め、管理者がそれを管理すると言った中央集権型システムだった。
ブロックチェーンは、ユーザー同士がお互いのデータを監視するP2P(ピアトゥーピア。従来のサーバー管理のように情報をもつコンピューターが一カ所に集中せず、複数のコンピューターにより共有されること。Skypeなど金融取引以外でも利用されている。)であることでデータの整合性を保つシステムとなる。
これによりシステム維持費を削減することができるようになった。また、全てのユーザーを一括で攻撃することが不可能になるためセキュリティ面の強化も図れる。さらに改ざんが極めて難しくなるため、取引データをオープンにしても安全と言ったメリットもあるのだ。
(「ブロックチェーンとは」World Economic Forumのビデオを転載)
1. Ripple:世界中どこでもリアルタイムの決済が可能に
サンフランシスコに本拠を置くスタートアップRippleは、ブロックチェーンを活用したユーザー同士の直接金融取引のサービスを提供している。グローバルな取引であっても、世界中の銀行や金融機関などの中央に集まる通信網を介さずに、ユーザー同士が直接取引リアルタイム支払いができる仕組みだ。
Rippleは2012年に設立されたスタートアップで、GoogleのベンチャーキャピタルであるGoogle Venturesや欧州の大手銀行であるBanco SantanderやStanChartなどが主要株主になっている。各国からの支援を受け、グローバル間での取引にも取り組む世界的なフィンテック企業と言える。
また、Rippleの従来の国際送金構造からは一線を画した次世代の国際送金システムも注目を集めている。
従来の海外送金は手数料や送金時間がかかるのが課題だった。海外送金によく使われるのサービスに、世界200カ国以上の金融機関が利用するSWIFTがあるが、SWIFTの国際送金ネットワークを利用する際には為替手数料や、中継する銀行を含めて金融機関への手数料が必要となり、コストが膨らむのだ。
さらに、国際送金をする場合は通常1~3日かかってしまう。
一方Rippleは独自のブロックチェーン技術であるInterledger Protocolを活用することで、低コスト、スピーディーかつ安全な送金を可能にした。この技術により従来の海外送金で必須であった中継となる銀行を経由せずに、ユーザー同士で直接相手の口座に送金ができるようになったのだ。
(動画は公式サイトより転載)
2. Interstellar:個人間の金融取引についても安全かつ低コストを実現
次に、ブロックチェーン技術は海外送金に限らずセキュリティ、コストカットの面にメリットが期待されている。従来は証券会社が中心となって行われていた証券の売買などの金融取引のシーンに導入されたInterstellarの事例を紹介する。
Interstellarはサンフランシスコに本社を置き、ニューヨークとシンガポールにも拠点をもつスタートアップだ。非営利団体であるStellar開発財団の支援を受け、2018年9月にブロックチェーンで個人間の取引を可能にした「StellarX」という新サービスを公開した。
SterllarXはSterllar(単位:XLM)と呼ばれるRippleをベースにとして開発された仮想通貨を使っており、手数料は実質無料で、仮想通貨や法定通貨、債券などのあらゆる資産の取引ができる。
(ユーザーフレンドリーなUIにもこだわっている。写真は公式サイトより転載)
SterllarXとRippleとの違いは、取引を行う対象が企業間ではなく、個人間であるということだ。Rippleは主に先進国の大手金融機関などの企業を対象としているが、Sterllarは個人向けだ。その認証にはFacebookを利用しており個人でも気軽に使い始めることができる。
さらにSterllarXを使うことで高いセキュリティに守られた低コストの取引を行うことができる。
従来の金融取引は投資家との間に銀行や証券会社などの仲介業者がいるのが一般的であったため、取引手数料が発生したり、サーバーがダウンした際に売買が止まって売り時や買い時を逃してしまうなどのリスクがあった。
P2PによりStellarXには仲介業者は存在せず、トレーダー間で直接取引が行われるようになった。さらに取引は数秒の間に処理が完了するため、サーバーダウンによるデータ損失等のリスクを回避することができる。
このようにSterllarXは個人間送金におけるセキュリティの確保、低コストでの運用を可能したのだ。
これに加え、取引高が最も多かったユーザーは毎週100万XLMの報酬がもらえるというベネフィットもあり、さらに投資の流動性を高める要素として期待されている。
金融業界におけるブロックチェーンの今後
今回は金融業界におけるブロックチェーン技術を活用するスタートアップ2社を紹介した。ブロックチェーンは他にも数多くの分野で活用されつつあり、サンフランシスコ・シリコンバレーでもブロックチェーンを活用したスタートアップが次々と誕生している。
MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏は著書「教養としてのテクノロジー」の中で「ブロックチェーンを使ってデジタルアセット(電子的な資産)の管理ができるようになると、貸し付けや債券に溜まっていた資金の流動性が上がり、お金がもっと投資に向かう」と言っている。
今まで銀行や証券会社を介して行うことが当たり前だった金融取引が、個人同志の直接取引が可能になってきた。
このようにブロックチェーンの技術が今後広まっていくと、金融の世界では資産の電子化がさらに進み、留まっていた資金の流動性が増し、今よりも自由に投資に向かう時代が到来すると予測されている。
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![]() | 戸崎 いずみ -Guest Writer- Consultant / 信託銀行で個人投資家向けに資産運用・継承相談を経験後、大手広告会社でハウスメーカーと住宅購入者のマッチングを行うカウンターサービスのチーフを務める。その後、投資家向け経済情報サイトで記事企画・執筆を経験。現在は金融・住宅を専門分野とし執筆を中心に活動。 |