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  • Yasuko Katsumata

    Yasuko Katsumata

    Project Manager

    Project Manager at btrax, who studied marketing in San Francisco and has been working on cross-cultural marketing consulting projects with creativity.

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  • Jul 5, 2018

food startup

アメリカの食品問題に挑むスタートアップまとめ

「スタートアップ」という言葉がだいぶ浸透し、日本でもアントレプレナー向けのミートアップや起業家を育成するようなプログラムや施設が増えてきた。そんな今だからこそ改めて触れておきたい点がある。

それは成功している多くのスタートアップは問題を解決するために生まれてきたということだ。ユーザーの理解から始まり、問題を特定をし、新しい価値のあるソリューションを提供し続けることで急成長を成し遂げてきたのである。

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こういったスタートアップのなかでも、特に注目したいのがフード系だ。アメリカの食料問題、特に肥満の問題は非常に深刻で、彼らはその解決に取り組んでいる。彼らがすごいのは現在明らかになっている問題の解決だけではない。

サービスを通して、ユーザーの社会問題に対する貢献度や達成感を与えることでユーザーの自己実現欲求を満たし、一つの問題解決以上の価値を提供しているのだ。

日本は世界的に見ても健康意識の高い国だが、それでも食品ロス、中高年を中心として生活習慣病、食品偽装、異物混入(食の透明性)などの問題が根強く残るのも事実。このような社会問題を解決するためにアメリカではどのようなスタートアップが生まれ、それがどのようにユーザーに受け入れられているのかを紹介したい。

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アメリカの肥満問題は食品不足が一因だった

アメリカが肥満大国なのは有名な話だが、その問題を調べていくと、アメリカ特有の理由や様々な問題が絡み合っていることが見えてくる。

まず肥満問題の深刻度合いについて簡単に説明すると、アメリカの20歳以上の成人で太っている(オーバーウェイト:一般的にBMI指数が25-29.9)もしくは肥満(オビース:一般的にBMI指数が30以上)の人の割合は全体の約70%にも及ぶ。肥満の増加率は減ってきたという報告こそあるものの、肥満は未だにアメリカで深刻な問題の一つでなのである。

america is fatter than ever
(写真はこちらのサイトより転載)

また肥満によってもたらされる病気の医療コストは年間1500億ドル、肥満による生産性の損失も何十億ドルとも言われ、経済的な面からも非常に深刻な問題となっている。

アメリカの肥満という問題には様々な背景が関係しているが、「地方」と「低所得」がキーワードとなりそうである。アメリカで太っている人の割合が高いのは、飲食店が多くあるような都市部を擁する州ではなく、実は南部を中心とした地方エリアなのだ。

このようなエリアは農作物や健康的な食べ物を取り扱うスーパーが近くになく、フードデザート(食べ物砂漠)と呼ばれており、実に2300万人がフードデザート地域に住んでいると言われている。

またこのような地域の中でもファストフードやコンビニエンスストアへのアクセスの方が良い地域(フード沼、food swampsとも呼ばれる)も存在し、スーパーがないだけよりも肥満への貢献度が高いとの調査もある。さらに低所得者の世帯は、肥満により患った病気に対する医療費が払えないなど悪循環が続いているのだ。

食品は不足しているのに大量に廃棄されているという問題も

食品が行き届いていない問題がある一方で、皮肉にも大量の食品廃棄が発生している現実もある。実際にアメリカでは毎日約15万トンの食べ物が廃棄されているという。一人当たりにすると約450グラムを捨てているということだ。さらにこれらの食べ物を生産するのに使っている水、土、ガソリンなどのエネルギーも無駄にしていることを考えると、無視できない問題である。

ちなみに2016年には米国農務省と環境保護庁が「2030年までに食品廃棄を50%減らす」という目標を発表した。企業に加え、NPO、個人消費者に対しても協力が求めれれており、各州や市レベルで制度が整えられ始めている。

加工食品ブランドに対する不信感

このような食品不足と食品廃棄が発生しているアメリカの食生活には、さらに悪影響とも言える習慣がある。それは加工食品が日常の食卓に並ぶことだ。

アメリカのフードマスマーケットでは、加工食品の大手ブランドが存在感を放っている。マクドナルドやコカ・コーラやペプシなどの炭酸飲料メーカー、クラフト、キャンベルスープなどの加工食品メーカーがこれまでの広がりを見せることができたのは価格を少しでも下げることを可能にした大量生産システムがあったからこそ。

また、アメリカ全土に商品を行き渡らせることができるだけの流通網、全国的に認知度を上げるための広告資金があったことも関係するだろう。そしてその結果、これらの加工食品は広くアメリカの食卓に浸透していったのだ。

major food brands
(写真はこちらのサイトより転載。加工食品を含むコンシューマー商品業界マップ。これら中に健康的と言える食品が果たしてどのくらいあるだろうか)

しかし最近になって、これらの加工食品ブランドは消費者からの信頼を失いつつある。実際に消費者からの需要が減ってきたため、一部の大手スーパーでは取り扱う加工食品を少なくするための見直しが行われている

その一因となっているのが、一部のブランドの遺伝子組み換えや非倫理的な生産方法といったサステイナビリティの問題が明るみに出てきたことだ。さらに大手ブランドがアメリカ全土に食品を行き渡らせているということは、運ぶのにそれだけ排気ガスを使っているというのと、ローカルの農作物を差し置いて売られている可能性があるということ。

このようなサステナブルでない食品加工物が求められなくなってきた現在、支持されるフードブランドのあり方が変わりつつある。

関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦

これらの問題に取り組むために始まったスタートアップ

食品不足による肥満、食品廃棄、サステナビリティ。これらの課題に問題意識を持って解決を試みるスタートアップが勢いをつけている。以下に紹介するスタートアップは皆アメリカの食に関する問題に対して様々なアプローチでサービスを提供している。

1. Imperfect Produce:インスタ映えはしないが質が保たれた食材を提供

2015年にベイエリアでスタートした、見た目が不揃いのため廃棄する予定だった食材を買い取り、サブスクリプション式でスーパーよりも安価な食材を販売しているスタートアップ。

彼らの買い取り元は大手からローカルの小さなオーガニックの農家までにわたり、コミュニティーへ大きく貢献している。彼らは創業から約2年で1800トンもの捨てられるはずだった食材を廃棄することなく引き取ったという。

また、彼らはオーガニック食材も扱い、サービスを通して無駄にならなかった水や二酸化炭素の量を計算して、サステイナビリティの状況を把握している。ローカルの農家やフードバンクとも積極的にパートナーシップを組み、持続可能な地域づくりにも貢献している。

imperfect produce_insta
(写真はImperfect Produceインスタグラムより転載)

2. Full Harvest:廃棄食材のマッチングを行う

Full Harvestは農家が持て余した形が不揃いの野菜や果物を、レストランやジュースストアなどが他よりも安く食材を購入することができるB2B向けの廃棄食材マッチングプラットフォームだ。

もともと創業者のChristine Moseleyはオーガニックのコールドプレスジュースストア事業の拡大に従事していたが、高品質の食材を扱っていたため、そのコールドプレスジュースは1本13ドルもしていたという。

彼女がこの価格になってしまう理由を探っていると、コールドプレスジュースに使う食材はプレスされるのに、見た目が綺麗で高品質なフルーツや野菜を使っていたことがわかり、まずはここを変えられないかを検討。さらにサプライチェーンを探っていくと、大量の食材廃棄があることにショックを受けた。

そして彼女は、農家が売れないと判断していた高品質な食材と、実は食材の見た目はそれほど重要ではないが、できるだけ良心的な価格で良いものを売りたいお店側を繋げるというサービスを開始するに至ったのである。

3. Copia:食べ残しを回収して必要な人に寄付する

Copiaは企業ででた余剰食品を、非営利団体に提供しているサービスだ。アメリカ、特にシリコンバレーエリアの企業では企業が社員向けにケータリングの食事を提供したり、福利厚生の一部で無料スナックがオフィスに並んでいたり、食事付きのイベントやカンファレンスがあったりと、食に溢れている一方で、食べ残しも発生している。それらの食べ物をCopiaのドライバーが綺麗に包み、非営利団体まで運ぶという仕組みである。

企業側にとって利点となるのは、Copiaのデータを元にどの食べ物によく余りが出るのか、どのくらいの量が適切なのかがわかるので、次の購入の決定がしやすくなるということだ。

先ほど挙げた通り、連邦政府が食品廃棄問題対策に動き出しているため、企業として食品廃棄を出し続けることは今後コンプライアンス違反にもなりかねない。Copiaの利用はそんな問題を回避できるうえに、社会問題解決に貢献しているという満足感を与えることも企業ユーザーにとってはメリットとなっているようだ。

copia food waste impact
(写真はCopiaウェブサイトより転載。無駄にしなかったものの効果の金額シミュレーションを表示)

まとめ:自分が食べている食べ物の本当の価値を見つめ直し、問題解決に多角的に取り組む

肥満、食品不足、食品廃棄などアメリカの食にまつわる問題は誰が見ても明らかである。この問題を多かれ少なかれ実際に体験した人が、問題を突き詰め、解決しなくてはいけない!という信念を持って始めたスタートアップが広まってきている。

さらに今まで大手ブランドが提供してきた加工商品が疑われるようになり、それらの商品を売るためのマーケティングやロジスティックスなどはかつてのように効果がなくなり始めている。

食べているものがどのように作られ、どのように運ばれ、どのように消化されているのかを知り、食べ物の本質に対する認識が高まってきた今だからこそ、このような問題解決に取り組むスタートアップが支持され、ユーザーもそこに貢献することに新しい価値を見出しているのではないだろうか。

フード系スタートアップを調べていくと、実体験や調査などで現状の問題とユーザーを理解し、課題を明らかにし、新しい価値のあるサービス・商品を提供していくことがスタートアップビジネスには欠かせないことが改めてわかる。

また、今回紹介したフード系スタートアップの問題には、一般消費者、一般企業(スーパー、レストラン、ファストフードチェーンなど)、食品会社、農家、低所得者など多くの人が絡んでいることがわかる。彼らユーザーをあらゆる方面からを理解し、問題を見極めて価値を提供できるように取り組むことが重要になっていると言える。

参考:

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btraxはサンフランシスコと東京に拠点に置くデザイン会社です。イノベーションデザインサービスを通して新たなユーザー体験を生み出すことで新たな事業の創出に貢献いたします。これまでに国内外合わせて300社以上の実績があり、自動車、メーカー、小売、食品、テクノロジーなど幅広い分野においてサービスを提供しています。

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