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  • Kazumasa Ikoma

    Kazumasa Ikoma

    Marketing Associate

    Through his experience of organizing events and conducting market researches, he touches on multiple topics from new technology trend including IoT, chatbot, AI to office design and culture development.

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  • Mar 15, 2018

govtech

“行政とスタートアップの協業”に見る課題解決のアプローチ

今私たちの生活の中や仕事場でIT化されるシーンが増えていますが、行政においてもIT化の波が押し寄せています。

以前よりあるGovTech(Government + Technology)という言葉ですが、最近ではより一般的に見られるようにもなりました。それに合わせて最新技術を持つスタートアップが行政と協力してテクノロジーを市民の生活に役立てようとする動きが活発になってきています。

今回はそんな近年の行政デジタル化の動向、そしてスタートアップと行政の取り組みを支援するサンフランシスコ市発のSTiRプログラムをご紹介します。

関連記事:なぜサンフランシスコでは未来的なサービスが続々と生まれるのか?

成長が続くGovTech市場

近年スタートアップが持つ最新テクノロジーを行政に活用して、IT面から業務や市民生活の改善を行う流れがアメリカ国内で顕著になりつつあります。

アメリカ西海岸に拠点を置き州や地方行政を中心にリサーチを行うe.Republic社のIT市場調査によると、行政におけるITへの投資額は2015年から安定的な増加傾向を見せています。

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(画像転載元:e.Republic社IT市場調査より)

この流れはアメリカだけに留まらず、世界的にも同様の傾向が見られます。IT業界の調査・アドバイザリー企業として著名なGartner社は昨年10月に98カ国の合計3160人のCIO(最高情報責任者)を対象にアンケート調査を実施。

そのうち461人が政府、地方都市のCIO担当者でしたが、彼らの回答だけを抽出した結果、彼らの中で最も実施の優先度が高いとされたものはデジタルトランスフォーメーションでした。

ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるというデジタルトランスフォーメーションのアイディアの下、データ収集と分析を可能にするITインフラを強化し、それを元にした市民へのサービスの改善が今行政のIT担当者の間で注目されているのです。

国を挙げて行うデジタル化プロジェクト

エストニア共和国

実際にそれぞれの国の動きを見ても行政のIT化の波は大きくなっていることがわかります。バルト三国の一国であるエストニア共和国は、ソ連崩壊後から国の立て直しを図る手段としてデジタル化を進めたことで以前から有名です。

1999年から導入したe-Cabinetは内閣閣僚が閣議のアジェンダを確認したり、発言する閣僚は事前に申告したりすることが可能なシステムを導入し、閣議にかかっていた時間を4-5時間から30-90分に短縮しました。

さらに2000年に開始した税金申告システムのe-Tax、2002年に15歳以上の国民全員に所有を義務付けた電子IDカード、2005年のネット選挙システムi-Voting、さらに2011年には20分足らずで会社を登記できるe-Businessといったシステムが市民生活に浸透しています。

「電子政府」として著名なこのエストニア共和国の活動がここに来てさらなる注目を集めているのです。

govetech

シンガポール

同様にシンガポールでは1980年より国を挙げてIT化を進めてきましたが、2017年に体制を立て直し、首相官邸下に一般国民向けデジタルサービスの拡充を目的としたSmart Nation and Digital Government Group (SNDGG)を設立しました。

実施機関のGovTech Singaporeの働きで、テクノロジーを活用した『スマート国家』を目指し、国が掲げるSmart Nation Singaporeプロジェクトを支えています。

インド

インドでも2015年に本格始動した行政デジタル化プロジェクト、Digital Indiaがナレンドラ・モディ首相を筆頭に進められ、2014年から2018年までの5年間で組まれた1兆1,300億インドルピー(約1兆2,128億円*1)の予算を元に動き続けています。

イギリス

イギリスでもここ数年の動きが注目されており、テックスタートアップの事業の公共サービス化を支援するPublic社によるレポートでもイギリスの2010年の政権交代以降、行政のデジタル化は加速し、2025年には2.5兆円の規模にまで成長すると見込まれています。

地方創生の柱となるSTiRプログラム

このように行政のテクノロジー化が世界の様々な地域で見られるようになった影響で、最新テクノロジーを持つテック系スタートアップの活躍にがますますの期待が集まるようになっています。

特にスタートアップは国の中央政府よりも地方行政との相性が良く、彼らが持つ細かな課題に対しピンポイントで最新テクノロジーを提供できるため、『テック×行政』のシナジーを生み出み環境を作りやすいのです。

それでは、ここからはそんな地方行政に焦点を当て、スタートアップと地方行政の協業を支援するサンフランシスコ市の取り組み『Startup in Residence』を紹介したいと思います。

STiR
(画像転載元:STiR公式ウェブサイトより)

『Startup in Residence (STiR)』様々な課題を抱える地方行政とその課題解決のためのテクノロジーを提供できるスタートアップを繋げる、サンフランシスコ市が創設したプログラムです。プログラム内でマッチングした行政とスタートアップは16週間という期間の中で解決すべき課題の明確化から実際のプロダクト開発まで行っていきます。

行政はこれまでも公衆衛生から安全な街づくりに至るまでありとあらゆる課題の解決に取り組んできましたが、彼らが持つテクノロジーやプロセスは民間企業のものから遅れをとっているという問題がありました。サンフランシスコ市はここに目をつけ、この差を埋めることをプログラムの目標としました。

昨年12月に急逝した元サンフランシスコ市長のエドウィン・リー氏はサンフランシスコをスタートアップの街に躍進させた立役者の一人でしたが、本プロジェクトはそんな彼が力を入れる取り組みの一つとして2014年に開始しました。

関連記事:スタートアップ育成のためにサンフランシスコ市が行なっている事

翌年からアメリカ商務省による3年間の援助を受け、サンフランシスコ・ベイエリアにある4都市(オークランド、サンフランシスコ、サンレアンドロ、ウェストサクラメント)に展開。今年2018年に入り、都市問題解決に取り組む非営利団体のCity Innovate Foundationと提携して国内11都市に展開し、これまでに30のスタートアップと協働してきました。

現在はアメリカ国外の都市でも同じ名を持つプロジェクトが次々と開始され、日本でも総務省による実施の検討がされており、実際に神戸市はリアルワールドゲーム社との協業で市民の健康課題解決を行う取り組みを昨年12月に行ったばかりです。

上でも触れましたが、行政や市民のニーズに応えられるサービスやプロダクトの開発を行うGovTech市場は成長中であり、サンフランシスコはここにスタートアップ都市としての利を活かしています。世界的なスタートアップにさらなる活躍の場を期待すると共に、世の中のIT化を支援し世界の効率化という巨大なプロジェクトに取り組んでいるのです。

STiRで活躍する行政とスタートアップの事例紹介

このようなプログラムは社会へのインパクトを何よりも求める気質が強いスタートアップにとって格好の舞台であり、実際に行政との提携例も少しずつ増えています。ここでSTiRプログラムで生まれた3つの協業事例を見ていきましょう。

1. Binti × サンフランシスコ市:フォスターケア改善アプリ


Bintiはサンフランシスコ市役所の社会福祉を担当するHuman Service Agency (HSA)と協力。市のフォスターケア(里親制度)システム内において身寄りのない子供達の里親になることに関心のある市民向けに、モバイルフレンドリーなクラウド型プラットフォームを提供しました。

今まで紙で行われていた手続きをデジタル化したほか、市民が興味レベルから最終的に里親になる判断を下すまでのプロセス改善を行い、ソーシャルワーカーがこれまでかけていた作業時間を最大40%短縮し、事務作業に追われていた時間を市民への対応に費やせるようになりました。

共同開発したこのプラットフォームは結果的にカリフォルニア州以外にもコロラド州、ノースカロライナ州の計31の公的機関で導入されました。そして何よりも大きな成果として、サンフランシスコ市内のフォスターケアシステムで市民による里親への応募数がプロダクトローンチ後に300%増となりました。

2. LotaData × サンレアンドロ市:市民サービス改善のデータ収集・分析システム

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(画像転載元:STiR公式ウェブサイトより)

位置情報のデータ分析に強いLotaDataはサンレアンドロ市の福祉や市民へのレクリエーションを提供するRecreation and Human Services (RHS)と提携。

RHSは約9万人いる市民に年間5000ものプログラムやイベントを提供し、さらにコミュニティセンターやシニアセンター、公園を含めた40の施設を管理しています。その管理の効率化のために近年新たなシステムを導入したのですが、プログラムの計画や予算づくりの重要な指標数値を得ることができない問題が浮上しました。そこで、市民に提供するプログラムの内容や彼らの参加率を高めるために必要なデータ分析や最終決定を下せる材料となるデータインサイトの技術が必要となったのです。

LotaDataはこの課題に対し、『People’s Intelligence』と呼ばれるプラットフォームを開発。市のシステムと外部の第3者データを活用して、地域ごとの参加率データをまとめられるようにしました。加えてワンプッシュで次回のプログラムや設備の紹介等をメールで送れるシステムも導入しました。

LotaDataの創業者兼CEOのアプ・クマール氏はこのプロジェクトと自社の技術を通して、サンレアンドロ市が市民やコミュニティとより有意義な形で触れ合うようにすることができ、非常に貴重な経験になったと語っています。

3. Appledore × ウェストサクラメント市:ホームレス支援用のシステム

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(画像転載元:STiR公式ウェブサイトより)

Appledoreはウェストサクラメント市警察と協業し、彼らがより効率よくホームレスを助けられる取り組みを支援しました。

ウェストサクラメント市警察の課題は、ビデオ会話を通じて社会福祉サービス部門との面談をリアルタイムで行うことができるモバイルツールを導入することで、当時の時間がかかるプロセスの改善を行うことでした。

またそのアプリを通して、瞬時に福祉サービスの受け取りが可能かどうかを確認できるようにすること、ホームレスの状況に合わせて交通機関や食べ物、シェルターの割引券を提供すること、さらにどこでホームレスに出会ったかをマッピングして今後のサービス改善に役立てること、といった数々の具体的な課題への解決策を必要としていました。

Appledoreはこの課題に対し、警察官とソーシャルワーカーの仕事に密着し、それぞれの部署の作業プロセスの理解に多くの時間を費やしました。その2部署がどのように連携をとっているか、そしてこれまでどのようなデータをとってきたのか、それを踏まえて今後のサービス提供にどのような機能をアプリに盛り込む必要があるかを明確にしていくプロセスを取りました。

そして警察とソーシャルワーカー間の連携を図るソフトウェア開発を進めていき、Appledoreは『Outreach Grid』と呼ばれる、ホームレスの情報を収集・管理するモバイルプラットフォームを開発しました。これにより、今までウェストサクラメント市警察がホームレスの個人やキャンプの情報収集に費やしていた時間を最大8時間減らすことに成功したのです。

Appledoreはこのプログラム中にデジタルガレージが提供するシードアクセラレータープログラム『Open Network Lab』にも選出され、スタートアップ企業としてのさらなる成長の機会を得ることができました。

またウェストサクラメント市でシティマネージャーを務めるジョン・ロビンソン氏も今回のプロジェクトに大きな意味を感じており、「今回市のスタッフがSTiRプログラムを通してAppledoreと協働し、スタートアップの成功を支えるアジャイル開発プロセスを経験できたことは大きな価値だった」とプログラム後のインタビューで語っています。

まとめ

今回「行政 × スタートアップ」というテーマで見ていきましたが、このようにテクノロジー・デジタル化の流れというのは行政においても避けられない風潮になりつつあります。

特に最後のウェストサクラメントのジョン・ロビンソン氏の言葉の中で、市のスタッフがアジャイル開発を実戦で学ぶ機会が貴重な価値となったとあるように、今イノベーションに必要とされている手法やプロセスといったものは民間企業と同じく行政でも重要なものになっているのです。

それと同時に私たちの市民生活の管理にも次々と最新テクノロジーが導入されていることは重要なことだと思います。今後もGovTechの動向は注目必至です。

*1 レートは3月12日時点(1ルピー=1.64円)

*本記事はCAPA様のブログに公開されている「テクノロジーの活用が行政の未来を変える」シリーズの前編後編より転載いたしました。

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