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    Kazumasa Ikoma

    Marketing Associate

    Through his experience of organizing events and conducting market researches, he touches on multiple topics from new technology trend including IoT, chatbot, AI to office design and culture development.

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  • Nov 9, 2017

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アメリカ企業はなぜ今オフィスを移すのか?

今アメリカ企業にオフィス移転の動きが次々と見られている。これは完成間近とされるサンフランシスコのセールスフォース本社や、クパチーノにあるアップルパークだけに留まらず、General ElectricやMarriott Internationalといった歴史ある企業にも共通している。彼らは社員のコラボレーションやイノベーションという要素以外にも目的としているものがあるようだ。

今回は事例とともに、アメリカの企業がオフィスを移転する3つの理由を紹介する。

1. 人材発掘のためのロケーション

日本ではオフィスをアクセスの良い駅に構える、駅近に置く、また大通り沿いに構える等、通勤や営業活動のしやすさが考慮される傾向にある。しかし、国土の広いアメリカにおいてロケーションに求めるものは別にある。それは人材の発掘である。

アメリカでは現在多くの企業が都市部に集中する傾向が高まっている。その背景について、ブルッキングス研究所と都市社会学の専門家であるリチャード・フロリダの分析によると、学生の卒業後の動きと関係があるようだ。

そのレポートによると、ニューヨークでは学生の74.2%が卒業後もニューヨーク市周辺に留まるとのこと。その他にもシアトル、デトロイト、ヒューストン、アトランタ、ダラス、ポートランドやシカゴと優秀な大学が集まる都市で、卒業生の70%以上がその地域周辺に残ることがデータで示されている(※1)。この結果から、若くて優秀な社員を獲得するにはこのような都市にオフィスを置くことが重要のようだ。

map-MPIリチャード・フロリダが所長を務めるトロント大学ロットマン経営大学院マーチン・プロスペリティ研究所の資料

実際に人材獲得のためにオフィスを都市部に移すと公言する企業は増えている。1922年よりネブラスカ州オマハでビシネスを展開してきた大手食品メーカー、ConAgra Brandsは昨年7月に本社をイリノイ州シカゴに移転。「ブランドの立て直しと新しいアイディアの発案を行うために必要な人材の獲得に向け、最良の一手を打った」と同社CEOのショーン・コノリーは語る。

「より優秀な人材を獲得するために、若い従業員に魅力的に映るロケーションは必要だった」と語るのはMarriott InternationalのCEO、アルネ・ソレンソン。60年以上にわたりアメリカ・メリーランド州のモントゴメリー・カウンティに拠点を置いていたが、2022年の賃貸借契約終了に合わせ、新本社を現在の本社からおよそ7km離れた、ベセスダのダウンタウンに移すことを決定した。

他にも世界最大級の複合企業であるGeneral Electricは、コネチカット州フェアフィールドの本社をマサチューセッツ州ボストンに移動。ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ボストン大学、ウィートン大学をはじめとした、世界的に名高い名門校が集まる場所に本社を構えることで、優秀な頭脳を持つ人材の獲得を狙う。新オフィスの完成は2019年夏頃に予定されているが、社員の移動は昨年から徐々に始まっている。

General-electricGeneral Electric本社の完成予想図(写真はBLDUPより引用)

このように、大企業が必要な人材の獲得のために本社を移すことはもう珍しいことではない。リロケーションを通して、次世代のビジネスの支えとなる人材が眠るロケーションを常に探しているのである。

2. 企業のニーズに対応するビルオーナーの柔軟性

上で挙げたGeneral Electricsをはじめ、Apple、Facebook、Google、Linkedin、SalesForce、American Airlinesといった企業は新しく本社オフィスを建て直し、多くの注目を集めている。しかし、これらの企業の躍進は本社以外の社員の働きもあってのことである。実際にここに挙げた企業の社員の50%以上は本社オフィスとは別の地域で働いている。

sf-apple完成間近のSalesforce Tower(左)とApple Park(右)

このように本社以外でも様々な都市に支社オフィスを構えて人材獲得をするケースにおいては、大企業であってもまずは規模の小さいチームからスタートすることがほとんどだ。このような状況において、わざわざオフィスを建てるよりもコワーキングスペースはスムーズな支社開設になりやすい。実際、コワーキングスペースを利用する大企業の数は増えている。

CBREのレポート(※2)によると、アメリカ国内で44%と半数近い企業がすでにコワーキングサービスを利用、2020年までには65%まで上るという推測されており、企業の積極的な姿勢が窺える。今まではスタートアップやフリーランサーのためのワークプレイスという印象が強かったが、大企業にもコワーキングスペースの需要は増えているのだ。

このようなフレキシブルスペースは支社開設以外にも企業ごとにユニークな使い方が見られる。Microsoftは今年ニューヨークオフィスにいる社員の30%、同オフィス営業チームの70%となるおよそ300人にWeWorkへのアクセスを提供。社員の自由な働き方を推進しながら、同時にスタートアップカルチャーを学んでもらうことが彼らの狙いだ。

ww-sohoニューヨーク・ソーホー地区にあるWeWork Soho

一方IBMは、メンターシップや教育プログラムの提供で有名なコワーキングスペース、Galvanizeと提携。IBMのクラウドプラットフォーム、Bluemixを使って一般向けにIBMが持つアジャイル開発、リーンスタートアップやプログラミングメソッドを提供する環境を開設した。歴史的に多くのテック企業がガレージで生まれたことから、「Bluemix Garage」と名付けている。

他にGoogleやAmazonはそれぞれ自社で専用コワーキングスペースを複数開設し、自社のプラットフォームを利用する顧客との繋がりをさらに強くする取り組みを行っている。

AWS-sfカリフォルニア州サンフランシスコにあるAWS Pop-Up Loft

このようなコワーキングスペースの需要の高さが、これまでのオフィスビルオーナーとテナントである企業の関係性も変えつつある。これまでの賃貸借契約は5年から10年の単位で更新され、一度契約されたスペースにオーナーが積極的に関わるようなことはなかった。しかし今ではコワーキングサービスに対抗する形で、共有ミーティングスペースの提供やフロントデスクスタッフ、ITサポートなどサービスを充実させ、ホスピタリティを重視した役割をオーナーが担うようになっている。

今年初めにはニューヨークにある不動産会社、Tishman Speyer社がテナントのために仕事とプレイベートの時間の充実をサポートするサービス、Zoを導入。オフィスビル内での託児所や健康診断・医療サービスから、健康維持のためのヨガやフィットネス教室、健康な食事のケータリング、ファッションやネイルサロン紹介、旅行計画代行サービスまで含む、働く人のためのライフスタイル・サポートサービスの提供を始めた。

自社オフィスでなくても、企業はこのような高度なサービスをいつでも受けられる環境が手に入るである。ビルオーナーたちの競争は激化しそうだ。

今後多くの企業はオフィススペースの立地や面積の広さだけでなく、このような提供サービスも見比べながらコワーキングスペースかオフィスビルにテナントとして入ることを選ぶことになる。アメリカにある企業は、自社のニーズに合わせて柔軟にオフィススペースを選んでいるようだ。

3. 環境を意識した地域貢献型のオフィス

日本でも環境を意識したオフィス作りを行ったりオフィスビルに入居したりすることで、地域に貢献する企業は多く存在するが、アメリカではオフィスを建てる時にそれが最重要項目の1つになる。環境と人に優しいオフィスを作ることで企業のイメージアップに繋げる前に、まず社会的に認められることを目的にしているのだ。

環境に優しい建物の指標であるLEEDや、利用者にいかに健康的な建物であるかという基準のWELLがある。これから建つオフィスは積極的にこういった指標をクリアすることを目指し、またビルにテナントとして入る場合でも内装工事を施し、環境に優しいオフィスにする努力を行っている。

またアメリカの中でもカリフォルニア州は環境保護に対し特に積極的な姿勢を見せている。California Green Building Standard Code、通称「Cal Green」と呼ばれる規定を建築基準法に取り入れ、州全体を挙げて環境保全を推し進めている。企業が新しくオフィスを建てる時にはこの法に従う必要があることから、この基準をクリアしやすい場所・地域に建てる、もしくは建物を選ぶことがコストを抑える面で重要になる。

環境や人に配慮することは企業としての社会に対する努力の姿勢でもあり、また義務でもある。そのようなオフィスを探す、もしくは建てるというのは企業にとって自社の価値を表す重要なポイントなのだ。

まとめ

オフィス選びはどの企業にとっても大きな決断の1つであるが、それは国によって大きく特徴が異なることがわかる。上で挙げたものの中には日本でも活用されそうなものもあるだろう。企業が次のオフィスを決める時には、オフィスに求める役割をしっかりと熟考しながらも上記を参考にしてみてはいかがだろうか。

参考記事:
※1 Richard Florida: The U.S. Cities Winning the Battle Against Brain Drain
※2 CBRE Research: Global Occupier Survey 2017
Trade & Industry Development: Why Corporate Headquarters Relocate

*本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

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