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    Kazumasa Ikoma

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  • Aug 31, 2017

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Airbnb、地酒「明石鯛」の海外展開担当者が語る ー ローカリゼーション戦略における2つのポイントとは

先日、Indeed.comにてローカリゼーション・スペシャリストの求人が増えているという記事がForbesに掲載された。特にAmazonを初めとした急成長を遂げている企業を中心に、記事掲載時点でアメリカではすでに1700件以上の求人があるという。多くの企業で地域や文化の違いに細かく対応したビジネスを展開しようとする風潮が強くなっているようだ。

D.Hausでは「グローバリゼーションとローカリゼーションの両立」を行ってきた2人の専門家を招き、トークイベントを開催。そこで話された内容の一部をレポートする。

スピーカーの紹介

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トーマス・アレンド
ドイツ・ベルリンでコンピューター・サイエンスの博士号を取得後、IBM、SAPを経て2006年、GoogleにInternational Product Managerとして入社。5年間勤務した後、TwitterとAirbnbにてInternational Product Leadとしてチームを率いる。

2014年に自身のスタートアップ、Savvy.isを立ち上げ、教える側と学ぶ側を繋ぐプラットフォームを提供している。

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大見謝若奈
btraxが提供するイノベーションブースターのファシリテーター。

舞台美術家、雑誌社のセールス等の経験を経て、2006年から10年間、兵庫県明石にある日本酒ブランド「明石鯛」の3人編成の海外展開チームに所属。戦略からプロダクトデザイン、物流まで担当した経験を持つ。

アメリカの大きなスタートアップで海外展開の経験を持つアレンド氏に、日本酒の地元ブランドの海外展開を行った大見謝氏。ドイツ語訛りが強い英語を話すが故に海外展開チームに入ったというアレンド氏と、唯一英語を喋れるということで海外展開チームに抜擢された大見謝氏。この興味深い共通点と違いを持つ2人の経験から学ぶ。

関連記事:世界で成功を収めている主な非米国系スタートアップ10の事例

巨大グローバル企業においてすらまだ新しい海外展開チーム

Netflixは今年Q2のファイナンシャルレポートにおいて、全世界におけるアカウント数が1億を突破し、また初めてアメリカ国外からのアカウント数が国内のものを上回ったことを発表した。1997年に創設されたNetflixが今やっとグローバルビシネスへの大きな転換期を迎えた背景には、2015年から同社東京オフィスで日本法人代表として、プロダクトの国際展開を担当してきたグレッグ・ピーターズ氏の働きが大きいとスピーカーの1人であるアレンド氏は語る。

またアレンド氏が2006年に入社したGoogleも当時からすでに世界的に有名であったにもかかわらず、彼が入社するまで海外展開チームは存在しなかったという。それまでプロダクトの翻訳はボランティアによって行われていたが、その質や頻度、タイミングの管理がされていなかったことで「アメリカで公開して他国で公開していない」時間差を様々なプロダクトで引き起こした。結果的にロシアでの競合YandexにGoogle ストリートビューの先手を取られるなど、国際的に競争力を落とす場面が多くあったと彼は語る。

yandex-streetviewYandexのStreet View(Yandexより引用)

この問題解決のためにアレンド氏率いるチームは翻訳言語リストを作成。世界中で話されている言語の使用人数やインターネット人口などのデータから、どのプロダクトでも必ず対応する15の言語を第1階層言語、とその次に重要な25の言語を第2階層言語として最終的に選定したそうだが、これも今からほんの約10年前の話なのである。

もちろん言語の翻訳はプロダクトのグローバル展開にとって大きな一歩ではあるが、ローカリゼーションにおいてはほんの一部に過ぎない。ユーザー体験が今後鍵となるが故に、現地のユーザーの行動を把握してプロダクトを丁寧に地域に順応させることは必要不可欠なのである。

2人の専門家が現地調査で発見したユーザーの本音

「ビジネスの地域化には消費者の行動を自分の目で見て調査することが重要だ」とアレンド氏と大見謝氏は口を揃えて語る。そこには、ネットで得られるデータや情報だけで他国にいるユーザーの行動を推測するだけではなく、そのデータの裏にある理由を探す必要があるという考えがあるようだ。ここでスピーカー2人が実際に行った調査を紹介する。

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Airbnbの例

アレンド氏が現地調査をして良かった例の1つとして、Airbnbで“Lost in Neighborhood”と呼ばれる、日本人ネットユーザー独特の行動傾向を挙げている。

当時のAirbnbのウェブサイトは、綺麗な景色の写真と検索ボックスがメインに配置された作りで、ユーザーに自由に検索してもらうようデザインされていた。しかし日本人ユーザーだけは他の国のユーザーと違い、検索ボックスを一切に使わずに画面下までスクロールダウンし、「ご近所ガイド」から行き先をクリックしていた。

ここには、旅行先で立ち寄れそうな近場の例、例えばロンドンではチェルシー、サンフランシスコだとカストロ地区、と言った具合に具体的な観光名所を掲載していたのである。

airbnb20132013年の日本語版公式ページ(Find Job! Startupより引用)

実のところAirbnbにとってそのような地区を掲載していたのはSEO対策のためで、要はホームページが検索上位にひっかかるためだけのものだった。Airbnbの社員の誰もが期待していなかった流入経路を使う日本人ユーザーの行動背景を理解すべく、アレンド氏は日本でユーザー調査を行った。

そこで彼が見つけたのは、何かクリックするものがなく、入力フィールドだけがあるホームページだと日本人ユーザーは強い不安を覚えるということだった。カタカナ、ひらがな、漢字のどれで記入すればいいか、ウェブサイトが認識しない場所名を入れたらどうなるのか。何を入力していいのかわからないという不安から、検索ボックスだけの空間は日本人ユーザーにまったく好かれなかった。

解決策を模索しようとしたアレンド氏は、偶然にも自身がフランス・パリへの航空券を取ろうとしたときに、有名航空会社のウェブサイトが目的地を検索するタイプではなく、リストの中からクリックして選ぶというタイプのものであることを発見する。「P A R I S」という5文字を入力するのではなく、ヨーロッパ、フランス、パリと言った順序でユーザーに3回クリックさせるようにウェブサイトが設計されていたのだ。

アレンド氏はこれをAirbnbのウェブサイトに応用し、日本でユーザーテストを実施。今まで大きく表示していた検索ボックスを小さく画面上部に表示し、人気旅行先のリストを表示したところ、ユーザーが泊まる場所を探し予約するまでの契約数が格段に向上したのだ。

airbnb2017現在のAirbnbのホームページ(日本語版公式サイトより引用)

日本で公式ウェブサイトが公開されたのは2013年。2014年にはロゴの変更があったが、日本人ユーザーに合わせたウェブデザインはこのような経過を経て今に至るのである。

関連記事:
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明石鯛の例

一方、大見謝氏がイギリス・ロンドンで展開した日本酒の「明石鯛」ブランドは他の有名日本酒ブランドと比べ、人的そして資金的にも限られたリソースしかなかったため、他ブランドとの競争を避け、ロンドン市民向けに「ワンアンドオンリー」のブランドを作り上げる方向で現地化を進めた。他ブランドよりも身近な日本酒にすることを目標にしたのである。

実際、当時のロンドン市民にとって日本酒は「日本食レストランに置いてあるもの」という認識が強かった。そこで大見謝氏にとって「日本食と合うもの」という彼らの日本酒に対する固定概念を崩すというところが大きな課題となった。

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彼女率いるチームは日本食レストランには見向きもせず、南国の雰囲気漂うティキバーを初めとした、現地で人気のあるおしゃれなバーに出向いて明石鯛ブランドの日本酒テイスティングを実施。現地の人が好むものを数種類まで絞った他、ロンドンで活躍するミクソロジストとコラボレートし明石鯛を使ったカクテルを生み出した。

ラム酒の代わりに明石鯛の本醸造酒を使ったSake Mojitoや、生姜とレーズンをインフューズさせた大吟醸酒がベースのName of the Samuraiなど日本酒へのハードルを下げ、「東洋の粗悪な酒」という間違った先入観を壊すきっかけになった。

写真左はName of the Samurai (by Nightjar Bar in London)

また、ロンドン現地化の工夫は日本酒のラベル部分にあたる「裏貼り」にも施されている。今までそのまま英訳されていた精米歩合や日本酒度、酸度、アミノ酸度などの表記を一切取っ払い、ワインのラベルのように保存方法やそれに合う料理を記載するようにしてユーザーを意識した、わかりやすくシンプルなデザインに変更した。

akashitai-label1明石鯛 本醸造の裏張りの日本語表記(左)と英語表記(右)

プロダクトそのものの変更はせず、ロンドンに暮らす人、訪れる人に馴染みのある形で溶け込んだことで、明石鯛ブランドの日本酒はワインのように、現地の人たちに親んでもらえるような新たな地位を築いたのである。

プロダクト周辺のエクスペリエンスもローカライズが必要

これら以外にも、ユーザーにとってプロダクトを使うにあたってのハードルになる部分は至るところに存在する。アレンド氏はその事例として、Gmailのアカウント数が日本で伸び悩んでいたことを明かす。

今日では一般的である、SMSで本人確認を行うための電話番号登録は、実は現在GoogleのGmailアカウント作成においては必ずしも求められない。これはアレンド氏が経験した2000年代の日本の携帯電話事情が反映されている。

googleaccount

国際展開チームはGmail上のスパム排除を目的として、電話番号による本人確認プロセスを先述した40の言語に翻訳。ほぼ全世界でアカウントを作成できるようにしたが、当時iモードが主流でテキストメッセージを利用するユーザーがほとんどいなかった日本では、サインアップ数が他国に比べ圧倒的に少なかったという。

「丁寧に翻訳を施し、スムーズなサインアッププロセスを用意したにもかかわらず、日本の進んだモバイルテクノロジーを考慮できていなかったのは大きなミスだった」とアレンド氏は語る。

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また大見謝氏は似たような日米での違いとして、支払い方法を挙げる。アメリカ人のクレジットカードの平均所有数が2.4枚(※1)に対し、日本人は3.2枚(※2)というデータだけを見ると、日本の方がよりクレジットカードを使っていると一見想定してしまいがちだ。しかし、実際は日本人の多くがウェブサイト上でクレジットカード情報を打ち込むことに強い不安を感じる傾向があるという。音楽をオンラインで買うにもわざわざプリペイドカードを店舗まで買いに行く人がまだかなりいるようだ。

そのほかにも、日本市場に参入しようとする海外企業が世界的に利用されているPayPalがまだ日本でそれほど使われていないことに驚き、逆にコンビニ支払いや代引きといった日本独特の支払い方法に対応しなければならず困惑することもある。プロダクトが現地の人に受けるためには、直接的にプロダクトと関わらない部分にも注意を払う必要がある。

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グローバル展開の2つのポイント

2人の専門家曰く、企業がグローバリゼーションとローカリゼーションを考える上で確認すべき重要なポイントは次の2つである。

1. ローカリゼーションのスペクトラムにおいて企業がどの程度まで進めたいのか

プロダクトやサービスの海外展開を翻訳だけで済ませてしまうか、より現地化させたいのであればその地域のニーズに特化したプロダクトを一から新たに作り出すことが必要になる。この質問に対する企業上層部の答えによって海外展開チームが取るべきアクションは変わるのである。

例えば上で挙げたNetflixは、日本において特に若い世代で大人気となった番組『テラスハウス』をどこよりも早く先行配信している。また、又吉直樹の小説『火花』のドラマ化等、日本の顧客を強く意識したオリジナルコンテンツも制作している。このことは彼らにとってのローカライゼーションのスペクトラムがかなり深い位置にあることを示している。

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Netflixオリジナルドラマ『火花』ホームページ(公式サイトより引用)

2. 企業にとって特定の地域への展開とはどういった意味を持つのか

「国外へサービスを展開するというのは企業にとってどのような意味があるのか。」市場が大きいからなのか、ブランド的に必要なのか、企業としての次の2年間のゴールなのか、それとも「将来展開できたらいいな」程度なのか。それによってローカリゼーションチームが持てるリソースや海外展開における現実的なレベルも変わってくるのである。

アレンド氏がいた2013年当時から「Win China」という2文字を掲げて中国市場を狙っていたというAirbnbでは、2017年からの2年間で中国での従業員を300人まで増やすと、同社広報担当のニック・パパス氏は語っている。同社ファウンダーの1人であるネイサン・ブレチャージク氏もBBCの記事にて中国市場への強い興味を依然として示しており、彼らの企業全体の本気度が高いことがわかる。

実際に今年3月には「愛をもってお互いに歓迎する」という意の「Aibiying(爱彼迎)」と、中国語を話す人にとって発音しやすいようにサービスを改名。支払い方法は現地で一般的であるAlipayに対応するなどローカリゼーション戦略を着々と進めている。

一方、日本の日本酒市場には限界を感じるものがあるという理由から海外に目を向けた大見謝氏の明石鯛ブランドは、海外を漠然と見てしまったことで世界に広がる様々な国の市場に目移りしてしまったという。最終的にロンドンの1ヵ所に落ち着くまで、様々な国の展示会に出展したことで費やした金額と時間は大きな反省点だったと彼女は語る。

リソースが限られている企業こそ、1度に展開する国は欲張らずに1つだけにすることが重要だと彼女はまとめた。

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アレンド氏が実際に仕事をしてきたGoogle、Airbnb、Twitterなどの超有名グローバル企業も、この2つのポイントを明確にし、現在世界的な立ち位置を築いている。これらは国際化と地域化の戦略には欠かせない項目のようだ。

最後に

上記の2つのポイントを踏まえた上で一番重要なのは、企業上層部によるトップダウンの指示で会社全体をグローバリゼーションとローカリゼーションに巻き込むことだという。しかしながら、グローバル展開を目指す企業の多くでまだ実践されていないとアレンド氏は語る。

デザイン案が決まり、製品を納入、できるだけ早くローンチしたいと士気が高まる製品開発チームに対し、言語対応のためにさらに数週間かかるという国際展開チームの間で深い溝を作ってしまい、企業内での不協和音を引き起こしかねない。上で挙げた企業の輝かしい成功の裏にもこのような衝突は少なからずあったはずだ。

「グローカル化」という言葉が叫ばれて久しいものの、その実践は難しく、これからも多くの企業でキーワードとなりそうだ。本ブログでこれからも様々な事例を紹介していきたい。

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関連記事:Apple, Google, ディズニーも最初はこんな小さなガレージからスタートした

※1 http://www.experian.com/live-credit-smart/state-of-credit-2016.html
※2 http://www.global.jcb/ja/press/news_file/file/20170217.pdf

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