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  • May 1, 2013

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聖地サンフランシスコでハッカソンに参加して感じた“スタートアップを育む土壌”とは

僕は現在、サンフランシスコに本拠地を構えるクリエイティブ・エージェンシーであるbtraxでデザイナーとして働かせて頂いている。海外に住んだ経験は勿論、留学経験も無い自分がなぜ今サンフランシスコにいるかというと、大好きなデザインとエンジニアリングが有機的に反応しビジネスとして花開く街、それがサンフランシスコであり、学生の頃よりずっと憧れていた場所だからだ。

さて、僕は先日、54時間を通じてひとつのスタートアップを立ち上げるハッカソン、スタートアップウィークエンドに参加してきた。

スタートアップウィークエンドとは、三日間のうちに、チーム編成からプロトタイプ作成までを54時間にておこなってしまうという、言ってみればスタートアップ・ブートキャンプ的なイベントである。シアトルで発祥したこのイベントシリーズは、その性質と同じく急激に広まり、Startup Weekend Tokyoを始めとして、世界各地で開催されている。2011年の末にはついにGlobal Battleまで開催された、今最もホットなスタートアップイベントシリーズの一つである。当ブログでも過去に何度か取り上げたことがあるので、そちらも参照されたい。

御存知の通り、サンフランシスコといえばスタートアップの聖地である。僕はこのハッカソンに参加することで、この土地がいかにスタートアップを育む土壌として完成されているかを学ぶことができた。今回は、僕がスタートアップウィークエンドで経験したこと、学んだことを、イベントの流れに沿って以下に紹介していきたい。

 

参加するまでの決意・決断

いきなり情けない話で大変恐縮であるが、このスタートアップウィークエンドに参加するまでに本当に覚悟が必要であった。弊社のCEOであるBrandonがイベントのデザインメンターを務めているため無料で参加できるとのことで、参加登録こそ参加者募集を見つけた瞬間に行ったのだが、開催会場に入るまでに何度も出場をやめて帰ろうと思った。

なにしろ、54時間全て英語でディスカッションをしてスタートアップを作るのである。しかもここはサンフランシスコ、参加者のモチベーションの高さは想像に難くない。自分のスキルが通用するのか、ディスカッションに参加できるのか。自分の英語は聞いてもらえるのだろうか。無視されるのではないか。

考えれば考える程、自分が場違いに思えて参加をやめようかと思ったのが本音だ。当日の午後など、スタートアップウィークエンドのことを考えると仕事が全く手につかず、「一緒に参加しよう」と必死に同僚を説得したりしていた。だが、もしここで逃げれば一生後悔すると思い、僕は会場に飛び込んだ。そして、僕のスタートアップウィークエンドは始まった。

parisoma

会場はサンフランシスコのSoMA地区と呼ばれるサンフランシスコの中でも特に最近スタートアップが集っている地区にあるコワーキングスペース「PARISOMA」で行われた。創造性を刺激するものに囲まれたこのコワーキングスペースはその夜、多くの参加者と観覧者でほぼ満員状態であった。このイベントでは期間中の食事はすべて用意され、参加者はハッカソンのみに集中できる体制が整っている。

 

サンフランシスコのエレベーターピッチ

スタートアップウィークエンドでは最初のアイスブレイクののち、アイディアを持ってきた人が参加者の前で発表し、聴衆がそれらのアイディアに投票し週末をかけてとりくむ事業を選抜する。 発表のルールは、「制限時間1分間でスライドなどを使わないこと」。エレベーターピッチと呼ばれるものだ。たった1分間のプレゼンにもかかわらず、プレゼンターの表現の仕方は実に多種多様であった。

淡々と問題意識を述べるピッチ、アイディアをがっつり1分間話すピッチ、ジョークで笑いをとるピッチ。ある女性の参加者は、「Sex is fun! Right?」という喋り出しで会場の注意をしっかりと引いていた。

実は僕には以前から暖めていたアイディアがあった。参加することすらやめようかと思っていた自分だったが、会場の熱気、そしてアグレッシブな参加者を見ていると自分もピッチしたくなってきてしまった。どうせここまで来たんだ。全部参加してやろう。そう思い僕もピッチに挑戦してみた。

震える手でマイクを握り、参加者の前に立ち、たった1分間で自分のアイディアを紹介する。そこで驚いたのは聴衆の目の鋭さである。1分間、皆が自分の目をまっすぐに見ながらアイディアを聞いてくれていた。合計30人ほどがピッチを行ったのだが、30人全てのアイディアに注がれる視線は終始鋭いものだった。

 

参加者とアイディアの多様性

サンフランシスコでのスタートアップウィークエンドの特徴として、参加者の多様さがある。学生からおじさんまで、年齢層が非常に厚い。そしてデザイナーやディベロッパーや起業家ではない、普通の人の参加人数が非常に多い。女性の数も予想以上に多かった。

日本においてハッカソンやビジネスコンテストなどといったイベントに出ると、年齢層やバックグラウンドはある程度偏ることが多いが、このイベントには学生からおじさん、おばさんまで万遍なく参加していた。このイベントに参加するためにワシントンやコロンビア、果てはカナダやインドからわざわざやってきた参加者もいた。参加者のモチベーションの高さは尋常ではない。

このような多様な参加者から発せられるアイディアは当然多種多様であった。ICTを用いて社会問題を解決しよう、といったアイディアからサンフランシスコの急な坂を避けてくれるナビゲーションを作ろうといったアイディアまで、非常にバラエティに富んだアイディアがピッチされていた。

 

積極性と情熱がアイディアを活かす

ピッチ終了後、発表されたアイディアに関するフリーディスカッションの時間が設けられる。約1時間にわたって、アイディア発表者は模造紙を持ちながら歩きまわり、投票者に自分のアイディアを売り込むのだ。投票者はじっくりとアイディアを吟味し、自分の持つ投票用のポストイットを気に入ったアイディアに貼る、という流れだ。

今回のイベントでは、発表者が30人ほど、投票者が20人ほどというバランスであった。自分のアイディアを選んでもらうためには、投票者にもっとアピールしなければいけないシステムだ。1時間の間、会場はこの日最高の盛り上がりを見せていた。

僕はと言うと、ネイティブの参加者がとてつもないスピードの英語でディスカッションをしている光景を前に、どうしても気後れしてしまっていた。しかし前に出なければ得票することは出来ない。意を決して人混みに飛び込み、ポストイットを持つ人を見つけ、話しかける。最初の何人かには響かなかったようだが、必死に説明した後に「Oh, I love your idea!」と言われポストイットを自分の模造紙に貼ってもらえた時にはとても嬉しかった。

結果として僕の得られた票数は4票。優秀アイディアには選抜されず、他のアイディアにジョインすることになった。僕は自分のアイディアに似ていて、かつピッチがとてもリズミカルで魅力的であったクリスのアイディアにジョインすることにした。クリスは絵に描いたような「イケメンアメリカ人」で、他の参加者には無い独特のカリスマ性のようなものを持つ人だ。

 

驚くべきチームビルディングの早さ

クリスのアイディアにジョインしたのは、デザイナーの僕・エンジニアのアラン・マーケッターのジョンで、合計4名の文字通り最小単位のスタートアップとなった。さあ、ここからがスタートアップ・ウィーケンドの本番である。このチームで3日間かけて一つのスタートアップを作るのだ。

ここで特筆すべきなのは、チームビルディングの早さである。アメリカに来てから常々感じていたのだが、アメリカ人が初対面の人と仲良くなる早さは尋常ではない。御存知の通り英語には敬語がなく、特に西海岸の英語は丁寧語(Would you~, Could you~)などもあまり使われないので、どんなに歳が離れていても会話は自然と砕けた雰囲気になる。

僕達4人は年齢もバックグラウンドも様々であったし、僕が最年少であったが、1時間も話していればすぐに4人は打ち解けて、互いに信頼出来る関係を築くことが出来た。夜23時半まで互いのスキルやバックグラウンド、スタートアップウィークエンドに参加した経緯などを語り合い、「これからよろしくな!」と互いに握手を交わし、初日は幕を閉じた。

 

アイディアを育てるディスカッション

スタートアップウィークエンド2日目。朝9時から会場に集合し、朝食を取りながらクリスのピッチした最初のアイディアを4人でビルドしていくのだが、このディスカッションにもアイディアを育てる秘密があると感じた。 それは、「意見が溢れるように出てくる空気」「テンションを高める相槌」だ。

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オリジナルアイディアをめぐってディスカッションをしている間、非常に速いテンポで意見が交わされる。メンバーがこの流れに一度乗ると、アイディアや意見が溢れるように出てくる。どんなに小さなアイディアや、取るに足らない意見でも自然と口から出てきて、ディスカッションを生むのだ。「こんなアイディア言わないほうが良いかな」、「俺が言うほどのことでもないか」などと躊躇している暇がない、と言えばよいのだろうか。僕が今まで経験してきたチームディスカッションでは出会わなかった、会話の大きな流れを感じていた。

そしてそれをより促進し、出てくるアイディアの質を高める魔法が、「テンションを高める相槌」だ。誰かが発言したアイディアには、必ず誰かが「Exactly!」「Absolutely!」と反応していく。そして「and…」と自分の意見を付け加え、それにまたみんなが「love it!」「awesome!」と反応し、アイディアを盛り上げていく。このプロセスは本当に魔法のようだった。4人の間でアイディアをラリーすることでみるみるうちにチームが流れに乗って行くのを感じた。

アイディアが具体的になり、どこまで実装するかがある程度決まると、ひたすらプロトタイピングにうつる。デザイナーの僕はUIのワイヤーフレームを作成し、エンジニアのアランは使えそうなAPIを探す。ジョンとクリスは市場調査やマネタイズ方法を引き続きディスカッションする。このプロトタイピングの過程は日本のハッカソンやアジャイル開発のシーンと特別変わらないように感じた。

 

街でビール片手に市場調査

もくもくとプロトタイピングをしていると、クリスが突然「そろそろユニオンスクエア(サンフランシスコの繁華街)に行くか!」と言い出した。ユーザの生の声を聞きに行こうと言うのだ。僕らは一度プロトタイピングを中断し、ユニオンスクエアに行った。

ここで紹介したいのはアメリカンスタイルの市場調査だ。彼らは当然のようにバーに入りビールを頼み、グラスを片手に飲んでいる客へインタビューへ行く。こうしてポテンシャルユーザと飲みながら話して、直接反応をみるのだ。

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さらに驚くべきは市民の反応だった。「今新しいアプリを作ってるんだけど、ちょっと意見を聞かせてくれないかな?」と尋ねると、「へえ!それはエキサイティングだね!どんなアプリ?」という具合に、皆がインタビューに快く応じてくれるのだ。インタビューの御礼を言うと「良いアプリが出来ることを期待しているよ。上場したら株主になるから、最初に知らせてくれよ!」と言ってくれる。

合計で10回ほどのインタビューを行ったが、全員が嫌な顔ひとつせずに、述べたような反応でインタビューに応じてくれたことがとても新鮮であった。Vineというビデオ撮影アプリを使って、「これからこのアプリのプレゼンをするのに使いたいから、アプリを気に入ったかどうか、ビデオを撮影しても良い?」とお願いしたが、みな快くビデオ撮影も承諾してくれた。街全体が、市民全員がスタートアップの誕生や新しいアプリの登場を後押ししてくれているのを肌で感じた時間であった。

 

最終プレゼン

市場調査も行い、出来る限りのプロトタイピングも行い、残すは最終日の最終プレゼンとなった。15のチームが各々の成果を5分間のプレゼンで発表する。サンフランシスコのスタートアップウィークエンドには、現地の投資家や起業家が聞きに来ることでも有名なので、並々ならぬ熱気が会場を包んでいた。

この最終プレゼンの場作りにも紹介したい話がある。イベント主催者がプレゼンの前に、「いいかい、プレゼンの良し悪しの50%はオーディエンスで決まる。オーディエンスがエキサイトすれば、プレゼンの内容はもっとエキサイティングなものになるんだ。最終プレゼンを盛り上げていこう!」と言うと会場は喝采に包まれた。そして各チームのプレゼンの前には全員総立ちで盛り上げ、常に盛り上がった状態でプレゼンを迎える。その光景はさながらAppleの新商品発表会のようだった。

アイディアを競わせて優劣を決めるというよりも、純粋にこれから発表されるアイディアを楽しもう!という空気がそこにはあった。 アイディアの全体的な感想としては、マネタイズ方法などは日本のハッカソンやビジネスコンテストで発表されるものに比べて遥かに甘い印象を受けた。

一方で、実装のクオリティ・デザインの完成度はどのチームも目を見張るものがあった。そのままローンチしてもまったく問題ないレベルのものが並んでいた。サンフランシスコの技術レベルの高さを改めて痛感した。 また、アイディアの多様性も素晴らしかった。

実際に、優勝したアイディアは初日に例のきわどいピッチで会場の注目を集めた「自宅で気軽に性病検査が出来るようにするサービス」である。このようなアイディアの多様性も、サンフランシスコならではだなとしみじみ感じてしまった。

 

最後に

僕らのチームは最優秀アイディアに選ばれることはなかった。だが3日間を通じて得られた経験は、当初の想像を遥かに超えるものだった。

また同時に、本当にハードな3日間だった。ディスカッションでは上手く意見を伝えられず、悔しい思いの連続であったし、マーケッターのジョンとは少し険悪な空気になったこともあった。しかし、最後に「Issey, you really kicked ass!」と言われたときには嬉しくて涙が出てきた。(その後にアランが「kicked assっていうのは、最高に良い仕事をしたな!って意味だぜ」と教えてくれたのもとても嬉しかった。)

サンフランシスコがなぜこんなにも多くのスタートアップを生む土地なのか。なぜ多くの起業家がサンフランシスコを夢見て挑戦してくるのか。その理由を身を持って体験できたことは実に有意義な経験だった。日本には日本の国民性・やり方がある。

この場でサンフランシスコと日本の優劣をつけるつもりは毛頭ない。しかし、クリエイティブワークに携わる一人のデザイナーから見て、この街が本当に魅力的な街であることは確かだ。この記事を通してサンフランシスコという街の魅力が広まり、少しでも日本への良い刺激となれば幸いである。

member

 

追記

僕達が作ったスタートアップ、TopoGraphical Labsがお送りする高低差マップ連動ナビゲーションアプリ、「TreadSetter」のスクリーンショットを何枚かお見せしよう。

このアプリがローンチしたあかつきには、素晴らしい街サンフランシスコの坂を避けて観光するのに是非ご活用頂きたい。 mock

筆者: 石倉 一誠 (Issey Ishikura) / UI/UX desiger, btrax, Inc.

 

 

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