「迷ったら逃げろ。 」
これはNEW PEOPLE, Inc. CEO 堀淵清治氏が日本の若者へ送ったメッセージだ。
まずは直面していることから逃げろ、と言いたい。これを選ばなきゃという社会的プレッシャーや不安は確かにある。だけど、思い詰めることなんて何もない。とりあえず迷ったら逃げる。逃げられなくなったら腹をくくる。
「そういう考えの方が、世界平和の役に立つと思うんだけどな。(笑) 」と最後にお茶目に付け足す堀淵氏は筋金入りのヒッピーだった。早稲田大学法学部卒業後就活をせずにそのままアメリカへ飛び立ったまま、10年間事実上仕事をせず山にこもっていたという。しかしその後1985年に会社を立ち上げた彼こそが、日本が世界に誇るマンガという文化をアメリカ、そして世界へ広めた第一人者。彼は今、ここサンフランシスコでまた新たな挑戦を始めている。一起業家として、堀淵氏にこれまで、そして今後のビジョンを伺った。
自分の直感に従って「面白い」と思うことにトライし続けてきた結果が、日本とアメリカ、そして世界とを結ぶ「文化の架け橋」となった。(中略)我々ひとりひとりの直感は、きっと世界のどこかでつながっている。僕はそう信じている。
(『萌えるアメリカ』 P11)
なぜアメリカに来ようと思ったのでしょうか。
大学三年のときに友達と一ヶ月サンフランシスコを旅行。この全てを包み込むような雰囲気にすっかり惚れ込んでしまって、卒業と同時に渡米。なぜ日本で就職しなかったかというと、知らない誰かと机を並べて仕事をするのが嫌だった。
どのようにして日本のマンガをアメリカに持ってこようという発想を思いついたのでしょうか。
大学生時代、マンガは好きだったけどマンガオタク、という訳ではなかったんですよ。久々に一時帰国した際に読んだ大友克洋の『童夢』を読んで、日本のマンガはここまで進んでいるのか、と衝撃を受け、1985年、小学館のオーナーに会ってそのときふと「日本のマンガをアメリカでやったら面白いと思うんです。」と話したことから話が始まった。
ビジネスなんてほとんど何も知らなかったしマンガオタクでもなかったけど、逆に知らなかったことが良かったのかもしれない。
堀淵氏は1986年7月7日に小学館の出資を受けVIZ Communications, Inc.を設立。1999年のアメリカでのポケモンの大ヒットや、2002年にはアメリカ版週間少年ジャンプを販売開始。まさにアメリカにおけるマンガ/コミックス市場拡大を牽引してきた。
卒業と同時に渡米し、マンガオタクでもなくビジネスの知識もなかったという堀淵氏。金儲けやビジネスに興味が無く、自分のやりたいことを追い求めて気付いたら会社という形になって人が周りに集まっていた—多くの起業を志す人々は堀淵氏のように自分のやりたいこと、夢を追い求めて結果会社を作りたいと思い起業家となるのだろう。ではその後、世の中から求められて会社を大きくしていく必要がでたとき、どのようにその組織を大きくしていくのだろうか?
起業家、経営者として、どのように組織を大きくしていくのでしょうか。
できない。僕にも君にも。そもそもの発想が違うから無理なんだ。
そういったことを考えてくれるパートナーがいてくれれば大きくなる。逆に経営者はentrepreneurとしての最初のビジョンが何よりも重要。僕みたいに適当にやっていこうって人もいるけど、100人近く(の組織)になってくるといい加減なことは出来ないよね。(笑)だからHRが必要になってくる。
会社を大きくしていくこともなかなか勇気がいる。その辺はまあ、そうなったときに考える。とにかく自分の思い描くコーポレートカルチャーを作り守って行くこと、ビジネスパートナーとして会社のことをきちっと考えてくれる人、この2つが重要。
1987年に堀淵氏を含め4名でスタートした VIZ Communications, Inc.はその後2003年に小学館と集英社の合同出資を受けてVIZ, LLCに。2005年にはマルチメディアカンパニーとしてのブランドを確立するために小プロエンターテインメントと合併しVIZ Media, LLC.と改名。アメリカに日本のマンガが広がると同様に拡大していったVIZだが、現在堀淵氏の軸は出版業務から映画配給やイベント運営に移っている。
2009年、堀淵氏はサンフランシスコのジャパンタウンにNEW PEOPLE, Inc. という新しい会社、そして同名のビルを立ち上げた。
現在はマンガ出版の第一線からは退かれているとのことですが、どのようなことをされているのでしょうか。
ビル建てたからね、NEW PEOPLE の管理運営かな。(笑)あと映画の配給とポップカルチャーのお祭り、アメリカに進出してくる日本企業のお手伝いをしている。
特にビルに関するところでは、京都のデザイナーと100%made in Japan、失われつつある日本の伝統技術で『SOU・SOU』というブランドを作っている。例えば、地下足袋は放っておいたらなくなってしまうけど、スニーカー風にして・・・ゆっくりでいいからこれを世界中に売り出して行きたい。日本の伝統文化を守るためという民族主義的発想よりは、(日本の伝統文化は)純粋にかっこいい!っていう発想。かっこいいものを作りたい。
そう語る堀淵氏は著書の中でも日本という国の魅力を以下のように述べている。
僕にとって日本の魅力とは、この国のおおらかさや曖昧さから生まれる美しい柔軟性だ。(中略)ではその(日本人らしい)オリジナリティとは何なのかとあらためて考えるとき、僕はやはり、アメリカへやってきたすぐの頃、ヒッピー文化を通じて精神世界や東洋思想に触れた際に思いがけず再開した「八百万の神々が住む国ニッポン」の美しい自然を思い起こす。(中略)それはつまり、世界はいつも我々とつながっているのだということを、古代から聖域として遺し伝えて来た国のオリジナリティだ。
(『萌えるアメリカ』 P244)
今後のビジョンについて詳しくお聞かせください。
日本の価値を世界に紹介する「文化ビジネス」を今後もっとやっていきたい。日本の知恵・ノウハウをもっとアメリカに、そして世界に伝えていきたい。ただこればっかりはなかなか一起業がビジネスとしてやることに限界を感じていて、本当は国がもっとお金を出してやっていく必要があるだろう。
具体的に今後やろうと思っていることは2つ。
1つは1年に1回行われるJ-POPサミットをもっと洗練させて大きくしていきたい。
あとは日本からアメリカに来たいと思っている若い人や会社へのコンサルティング。今、パワーはアジアに向いているけどアメリカは巨大な国で、ここで何か出来ることはないかなって来る人がたくさんいる。一緒にやれて、自分も面白くて、ビジネスも上手く行くと思うものをお手伝いしたい。
ただ、アメリカだから自由でいいでしょ、って思ってる人がいるけどそれは違う。どこでも人と人との基本の付き合いがあるから礼儀をつくすとか最低ラインの基本が無いとダメ。
今年で4回目となるJ-POP SUMMIT Festivalは「Cyberpop Overload!」をテーマに2012年8月25日、26日にサンフランシスコのジャパンタウンで開催される予定。詳しい情報はNEW PEOPLE, Inc.のwebサイト まで。
3月30日に日本・東京にて、第4回SF New Tech Japan Nightセミファイナル が開催される。当日は全15社のユニークなスタートアップ企業が4月25日サンフランシスコにて開催される本戦行きをかけて火花を散らすことになるが、応募企業も回を経るごとに増加し、今回過去最高の応募総数となった。日本のスタートアップ企業の海外志向の高まりが伺える。
btrax 社ではJapan Night を通じて日本企業の海外進出を支援するとともに、実際に海外にてビジネスを展開する日本人の支援にも力を入れている。その取り組みのひとつが今回で2回目を迎える「BUSINESS Dojo(ビジネス道場) 」である。
ビジネス道場は、サンフランシスコ・シリコンバレー地域の起業家精神を抱く日本人に向けて、志を同じくする同志たちと集まり、ビジネス知識および起業への意識を高めあうための機会を提供すべく始まった。起業家や専門家を1人フィーチャーし、自身の成功経験や失敗経験、起業において役立ったアプローチなど、米国で起業家として力を発揮するための貴重な情報を共有することを目的としている。
初回であった前回は、著名なコワーキングスペースであるCitizen Space にて、人事・異文化問題のスペシャリストとして知られるGlobalBridgeHR 副社長Rochelle Kopp(ロッシェル・カップ)を招き、「シリコンバレーでの効果的な採用面接の進め方」についてのプレゼンテーションが行われた。そして、第2回となる今回は、Jazz Club「Yoshi’s 」の創設者である秋葉好江氏をスピーカーに迎え、卓越したアーティストでありつつ、第一線で活躍する起業家でもある秋葉氏の起業家精神についてお話をいただく。
起業に向けた意識、知識の共有、ネットワーキングの貴重な機会である第2回ビジネス道場の参加チケットの購入はこちら から。
■イベント詳細
日時:3月27日(火)18:00~21:00
場所:Citizen Space (425 2nd ST #100, San Francisco, CA 94107)
■スケジュール
18:00 会場オープン
18:00~19:00 ネットワーキング
19:00~20:00 プレゼンテーション(秋葉好江氏)
20:00~21:00 ネットワーキング
■プレゼンテーションの内容
・サンフランシスコ近辺のベイエリアで、数多くの日本食レストランの経営者が存在する中、どうして秋葉氏は際立って成功しているのか?
・秋葉氏の起業家精神とは何か?
・長く成功し続ける秘訣とは何か?
■プレゼンター略歴
秋葉好江
ジャズクラブ「Yoshi’s 」 創設者。神奈川県逗子出身。戦争孤児で私設の孤児の家で育つ。1963年に渡米。ワシントンDCからボルチモアを経て、1968年、カリフォルニア大学バークレー校にてアートとダンスを専攻。また、ミルズ大学大学院にてダンスセラピー、パフォーミングアーツを学ぶ。1972年に日本食レストラン「Yoshi’s 」を開店。同店は現在、全米屈指のジャズスポットとしてオークランド、サンフランシスコで営業中。現在、お店の経営の傍ら自宅で子供を中心に茶道、禅、華道を教えている。2011年10月に講談社より「We can do it! みんな できるさ 戦災孤児が叶えたアメリカンドリーム 」を発売。
■主催者について
ビジネス道場は、btrax とGlobalBridgeHR の共同プロジェクトとして運営されています。
btraxは、異文化ブランディングとウェブコンサルティングを手がける専門会社です。新興企業や新規ブランドのほか、世界的な大手企業や広告代理店の事業支援で豊富な実績を誇り、顧客は現在6カ国に広がっています。主なサービスには、ウェブデザインとウェブ開発、Eコマース、ソーシャルメディア、携帯メディア、ブランディング、ローカリゼーションなどがあります。
GlobalBridgeHRは、人事コンサルティングとアドバイザリーサービスを総合的に手がけており、特に米国で事業展開する外国資本企業や外資系列企業のコンサルティングを得意としています。チーム形成のあらゆる段階にわたるサービスを提供しており、効果的に社員の能力を開発し、士気を高め、成果に報いるための人事管理インフラの策定を支援しています。
公式ウェブサイト: http://businessdojoevents.com/
Facebook Fan page: http://www.facebook.com/pages/Business-Dojo/349019371797090
多くの皆様のご来場を、心よりお待ち申し上げております。
3月30日に日本・東京にて、第4回SF New Tech Japan Nightセミファイナル が開催される。当日は全15社のユニークなスタートアップ企業が4月25日サンフランシスコにて開催される本戦行きをかけて火花を散らすことになるが、応募企業も回を経るごとに増加し、今回過去最高の応募総数となった。日本のスタートアップ企業の海外志向の高まりが伺える。
btrax 社ではJapan Night を通じて日本企業の海外進出を支援するとともに、実際に海外にてビジネスを展開する日本人の支援にも力を入れている。その取り組みのひとつが今回で2回目を迎える「BUSINESS Dojo(ビジネス道場) 」である。
ビジネス道場は、サンフランシスコ・シリコンバレー地域の起業家精神を抱く日本人に向けて、志を同じくする同志たちと集まり、ビジネス知識および起業への意識を高めあうための機会を提供すべく始まった。起業家や専門家を1人フィーチャーし、自身の成功経験や失敗経験、起業において役立ったアプローチなど、米国で起業家として力を発揮するための貴重な情報を共有することを目的としている。
初回であった前回は、著名なコワーキングスペースであるCitizen Space にて、人事・異文化問題のスペシャリストとして知られるGlobalBridgeHR 副社長Rochelle Kopp(ロッシェル・カップ)を招き、「シリコンバレーでの効果的な採用面接の進め方」についてのプレゼンテーションが行われた。そして、第2回となる今回は、Jazz Club「Yoshi’s 」の創設者である秋葉好江氏をスピーカーに迎え、卓越したアーティストでありつつ、第一線で活躍する起業家でもある秋葉氏の起業家精神についてお話をいただく。
チケットの購入はこちら
■イベント詳細
日時:3月27日(火)18:00~21:00
場所:Citizen Space (425 2nd ST #100, San Francisco, CA 94107)
■スケジュール
18:00 会場オープン
18:00~19:00 ネットワーキング
19:00~20:00 プレゼンテーション(秋葉好江氏)
20:00~21:00 ネットワーキング
■プレゼンテーションの内容
・サンフランシスコ近辺のベイエリアで、数多くの日本食レストランの経営者が存在する中、どうして秋葉氏は際立って成功しているのか?
・秋葉氏の起業家精神とは何か?
・長く成功し続ける秘訣とは何か?
■プレゼンター略歴
秋葉好江
ジャズクラブ「Yoshi’s 」 創設者。神奈川県逗子出身。戦争孤児で私設の孤児の家で育つ。1963年に渡米。ワシントンDCからボルチモアを経て、1968年、カリフォルニア大学バークレー校にてアートとダンスを専攻。また、ミルズ大学大学院にてダンスセラピー、パフォーミングアーツを学ぶ。1972年に日本食レストラン「Yoshi’s 」を開店。同店は現在、全米屈指のジャズスポットとしてオークランド、サンフランシスコで営業中。現在、お店の経営の傍ら自宅で子供を中心に茶道、禅、華道を教えている。2011年10月に講談社より「We can do it! みんな できるさ 戦災孤児が叶えたアメリカンドリーム 」を発売。
■主催者について
ビジネス道場は、btrax とGlobalBridgeHR の共同プロジェクトとして運営されています。
btraxは、異文化ブランディングとウェブコンサルティングを手がける専門会社です。新興企業や新規ブランドのほか、世界的な大手企業や広告代理店の事業支援で豊富な実績を誇り、顧客は現在6カ国に広がっています。主なサービスには、ウェブデザインとウェブ開発、Eコマース、ソーシャルメディア、携帯メディア、ブランディング、ローカリゼーションなどがあります。
GlobalBridgeHRは、人事コンサルティングとアドバイザリーサービスを総合的に手がけており、特に米国で事業展開する外国資本企業や外資系列企業のコンサルティングを得意としています。チーム形成のあらゆる段階にわたるサービスを提供しており、効果的に社員の能力を開発し、士気を高め、成果に報いるための人事管理インフラの策定を支援しています。
公式ウェブサイト: http://businessdojoevents.com/
Facebook Fan page: http://www.facebook.com/pages/Business-Dojo/349019371797090
多くの皆様のご来場を、心よりお待ち申し上げております。
はじめに
教授からのWhy? Why? Why?と立て続けに押し寄せる「どういったロジックを元に〜をデザインしたのか?」という質問の嵐に対して、学生達がBecause, Because, Becauseと素早く理論を構成して「何故なら〜だからです」というロジックを組み立て続ける。そんな米国大学で展開されるデザイン講義を目の辺りにしてきた僕は、「デザインとはこんなにも理論的なプロセスだったのか」という率直な実感を持っています。
デザインと聞くと、生まれ持った才能を存分に発揮して、クリエイティブに様々なものを生み出していくというイメージをお持ちの方も多いかも知れませんが、これは全くの誤解であると言えます。本来、デザインプロセスとは問題解決を前提としているため、地味な作業の連続であり、非常に理論的なプロセスで構成されています。
僕は日本で5年間、米国で3年間デザインの教育を受けましたが、実感として米国におけるデザイン教育の方が理論的な傾向は強いと感じています。そこで今回は、僕が一体どんなデザイン教育を米国大学で受け、何を感じてきたのかということをお伝えさせて頂きたいと思います。
1. デザインとアートの違い
“What is the difference between art and design?”(デザインとアートの違いとは何か?)この質問は、米国で初級デザインクラスを受ける学生達が、教授達から頻繁に投げかけられる問いの1つです。何故この質問がよく使わるのかというと、デザインを習い始めた学生の多くは、デザインとアートを混同しているためです。デザインとアートの間には、決定的な違いあります。それこそ”Design solves a problem, art is expression”(デザインとは問題解決であり、アートとは自己表現である。)というものです。
ここから言えることは、Why?をBecauseで説明出来なければ、それは明らかにデザインではないということなのです。何となく、個人的に好きだから、感覚で、といった理由を述べた時点でそれはアート(自己表現)であり、デザイン(問題解決)ではありません。それは言い換えると、問題と向き合い、それを解決する中で生まれたモノのみがデザインであるということでもあります。では一体どういった要素や原則を元に、デザイナー達はロジックを組み立てるのでしょうか。
2. デザインの基本要素と基本原則
僕が教わったデザインの教授は、7つのwhyに答えられない者はグラフィックデザイナーではないと常々口にしていました。何故ならデザインの基本要素は7つ存在していて、そのそれぞれに対してBecauseを考えるのは基本中の基本であるとされているからです。
下記が、デザインにおける7つのBasic Elements(基本要素)です:
Line(線)
Color (色)
Shape (形)
Space (空間)
Form(フォーム)
Value (明度)
Texture(質感)
デザイナー達は何かを作る際にはこれらのデザインを構成する全ての要素に対してBecauseを考えていきます。また、デザインにおける6つのBasic Principal(基本原則)というものがあり、要素を組み合わせて全体構成を考える際に適応されます。
Balance(バランス)
Gradation(グラデーション)
Repetition(反復)
Contrast(コントラスト)
Harmony(調和)
Dominance(割合)
初級デザインのクラスでは、優れたデザイナーがデザインしたものを上記の要素にそれぞれ分解•分析して、なぜそれが優れたデザインなのかということを知り、説明出来るようになることから始まります。
ちなみにもう少し上のクラスになると、Why?→Becauseという1つの階層で終わるのではなく、Why?→Because→Why?→Because→Why?→Because→…をどんどん繰り返すようになります。これは一つの側面からWhyを問い続けることで、問題の本質まで思考を巡らせるためです。これを様々な側面から行うことで、理論をより強固なものにしていきます。
ここまで読むと、Whyに対するBecauseさえしっかりしていれば見た目はどうでもいいのか?という疑問が浮かんでくるかも知れませんが、実はデザインにおける「問題解決」と「見た目」は密接に関わっています。
4. 機能と形態は表裏一体
デザインは美的造形性に加えて、優れた機能性も同時に兼ね備えていることが必須です。ここで言う美的造形性とは見た目の美しさであり、機能性とは本来そのデザインが担う問題解決の手段を指します。
この文脈で、有名な建築家ルイス・サリヴァンが残した”form follows function”という考え方は現代に受け継がれ、芸術やデザインの分野に多大な影響を与えました。これは機能(問題解決)を追求することで形態(見た目)が自然に定まるとする考え方です。
現在プロダクトデザインで世界的な地位を築いたAppleの創設者であるスティーブ•ジョブズが残した下記の言葉もまた、そうした考え方を深く反映するものであったように感じています。
“デザインとは「どう見えるか(how it looks)」ではなく、「どう機能するか(how it works)」の問題である” — スティーブ・ジョブズ
ただしこれを機能が最も重要という意味で捉えてしまうと本来の意味を見失ってしまうかも知れません。機能と見た目は表裏一体。だからこそwhyを問うことが重要であり、それに答えることは見た目の美しさを洗練する行為でもあるのです。
5. デザインプロセス
ではもう少し広義でのデザインを考えた時、全体的にどういったプロセスで構成されているのかということをご紹介したいと思います。デザイン分野によって細かなステップは違うものの、僕の通っている大学では大まかに以下の5段階がデザインの基本フェーズとして教えられています。
a. Understand the problem(問題の理解)
b. Gather Information(情報収集)
c. Think by sketching and choose one (アイデアの拡散と収束)
d. Production(アイデアの具現化)
e. Refine (改良)
a. Understand the problem(問題の理解)
最初の段階では、まずクライアントが抱えている問題を洗い出します。多くの場合はヒアリングをすることから始め、デザインによって解決するべき問題が何になるのかを特定していきます。
この段階で、そのデザインが達成するべきゴールは何で、最終的に見たり使ったりするのは誰で、競合にはどんな相手が居て、デザインが最終的に置かれる環境設定は具体的にどんな具合で、伝えるべきメッセージは何で、どういったイメージを利用者に抱かせるべきで、どんな反応を得たいのかといったことを突き詰めて行きます。
b. Gather Information(情報収集)
問題を特定したら、次にその問題を解決するために必要な情報を収集するべくリサーチをしていきます。オンラインではWebサイトやデータベースを見ながらファクトを集めたり、オフラインでは必要とあればインタビューを設定して問題解決のキーとなる情報を持つ方へ直接話しを伺いに行ったりもします。また、何かを作る場合にはどんなリソースが利用可能で、どういった素材を使うことが出来るのかといったことも考えていきます。
c. Think by sketching and choose one (アイデアの拡散と収束)
「合計が10となる数式を求めなさい」という問題には、1+9、2+8、3+7…というように多くの求め方が存在するように、現実の世界でも1つの問題を解決するための道筋は数多く存在しています。
そこで、問題を特定し考えるために必要な情報が揃った後は、徹底的に解決方法の数を出すというプロセスを踏みます。このフェーズにおいて、IDEOという世界的に有名なデザインコンサルティング会社が行うブレインストーミングのフレームワークは非常に有名です。
1.Defer Judgement (批判を延長する)
2.Encourage Wild Ideas (突飛なアイデアを奨励)
3.Build on the Ideas of Others (他人のアイデアを再利用する)
4.Stay Focused on Topic (テーマにだけ集中する)
5.One Conversation at a Time (1度に1つの会話)
6.Be Visual (ビジュアル化する)
7.Go for Quantity (量を追求する)
彼等はこのフレームワークを元にブレストを行い、数多くの案を次々と出して行きます。最終的には壁一面がイラストや言葉で表現されたアイデアを書いたポストイットで埋め尽くされます。
こうしたブレインストーミングに限らず、様々な切り口を拡散する思考方法をラテラル思考(水平思考)と呼び、ロジカルな思考だけでは辿り着きづらいクリエイティブな解決案にまで思考幅を拡大させることを主な目的として利用されます。
また、僕の通っている大学では「考え尽くしたら思考をオフにしてリラックスする」という方法も推奨されています。人間の脳は、まったく関係のないことをしている時に特定の答えを閃きやすいという性質を利用したアイデア発想法とされています。
こうして拡散された数多くの案は、合評やフィードバックを経て収束され、選んだ案を元にデザインを作る段階へと入って行きます。
d. Production (アイデアの具現化)
「作りながら考えろ」というのはデザインを学ぶと必ず教わるやり方です。何かを作る時、頭や紙の上だけで考えてしまうとどうしても机上論になりがちなので、実際に作りながら進めるのが一番効果的であるということを伝えています。
1-3の段階で大まかなパズルのピースは出揃い、それらをどのようにはめ込み、組み立てるかといった一連の仮説やストーリーは出来ています。しかし、実際に作ってみないと分からない部分というのがどうしてもあるため、アイデアを具現化させながらさらに作りこんでいく必要があります。
この段階で、デザイナーはモックアップやプロトタイプと呼ばれる完成一歩手前となるダミーに落とし込んでいくのですが、設計図で見るデザインと、形になったデザインを見るのとでは感じ方に天と地ほどの差があります。
また人間の認知能力というのは非常に優れていて、僕たちはデザインを見た瞬間、無意識のうちに様々な情報を認識•識別しています。こうした認知のおかげで僕たちは「あっ、このデザイン何となく好きだな」と一瞬にして感じることが出来てしまいます。
“God is in the details.”(神は細部に宿る)という言葉がありますが、無意識の認知は細部にまで及び、例え1mmの違いですら時にデザイン全体へ大きな影響を及ぼすことすらあります。だからこそデザイナー達は1mm単位までしっかりディテールを追求し、細部が全体に及ぼす感覚までデザインするように心がけています。
こうして具現化され、ディテールまで作り込まれたデザインですが、デザインプロセスがここで終わることはありません。
e. Refine (改良)
完成されたように見えるデザインも、デザイナーやクライアントではなく、実際の利用者からは思いもしなかったようなフィードバックが返ってくることがあります。これは想定したデザインの機能と、実際に作用している機能との間にギャップがあるためです。
そうしたギャップを埋めより現実的で効果的なデザインにするために、様々なユーザーテストを行っていきます。こうして集計したフィードバックを元にして、余計な機能を削いだり、足りていない機能を加えたりして、バランスを改良していきます。
上記5段階をプロセスを経て、ようやくデザインは市場へと出ます。もちろんこのプロセスは単なる基本形であり、業種によって違いますし、プロジェクトによって変形したり、新しいプロセスを加えたりするので、デザインの大まかな流れとして認識して頂ければと思います。
7. Typography(タイポグラフィ)講義
タイポグラフィとは、活字を適切に配列することで、文字の体裁を整える技術です。例えば読者の方が今ご覧になっているこの文章も、一つ一つの文字が横や縦にスペースを保ちながら並べられることで読むことが出来ます。
文字と文字との間隔、センテンスごとの間隔、センテンス上下一行づつの間隔、これら全てには名前があり、グラフィックデザイナーはこれら全てのスペースを調節します。
一行に何文字を入れて、文字間隔はどれくらいに設定するべきなのかといった作業も、実は感覚ではなくて視認性を高めるために定められたルールが数多くあります。グラフィックデザイナーはこれらのルールを適応しながら、理論的に文字情報を配置していきます。
またタイポグラフィ講義では、デザインで使用してもOKなフォーマルなフォントリストが生徒に配布され、基本的にそれ意外のフォントを授業で利用することは推奨されません。理由はシンプルで、デザインに利用出来るような美しいフォントというのは実際には非常に限られていて、無料で配布されているようなフォントは視認性や実用性が非常に低いためです。
また、それぞれのフォントの組み合わせにも相性があり、どのフォントがどのフォントとマッチするのかという相性なども学びます。こうして学生達は様々なフォーマルなフォントと慣れ親しみ、どのようにデザインへと適応させるのかを具体的に学んでいきます。
ちなみに僕の大学のデザイン学生は、タイポグラフィのクラスをA, B, Cと3つ取らなければ卒業出来ません。これは視覚デザインにおいて文字情報が占める割合は非常に重く、タイポグラフィが出来ることはグラフィックデザイナー/Webデザイナーにとっては必須であるためです。
8. 中国系移民の教授から学んだ移民の可能性
僕は米国のデザイン講義を担当する教授から、デザインだけではなく英語を第二言語とする移民が秘める可能性についても学びました。
今でも思い出しますが、僕は留学当初、明らかに中国なまりで英語も不完全な中国系移民の教授が、数多くの人気デザインクラスを担当しているという事実に驚きを隠せませんでした。彼は中国から米国大学へ留学し、その後デザイナーとして働いた後に、米国の大学でデザイン教授として働き始めたのだそうです。
アジアからの大学留学生が、後に海外就職を果たし、米国で人気デザイン講義を掛け持って教えるまでになるという彼のストーリーは、留学生の僕にとっては感動的ですらありました。
そんな中国人教授が使う英語はシンプルにして明快であり、授業内容も中国と米国のデザイン事情を交えながら教えるという移民ならではの独自スタイルを確立しています。
特にカルフォルニアでは様々な文化背景をもった教授や生徒達が同じ教室で学びあうので、講義内容だけではなく彼等の文化や考え方を知り、自分のデザイン的な視野を広げることが出来ることも一つの魅力かも知れません。
9. 必修科目としての企業インターンシップ
僕は現在、大学のクラスとしてbtraxへインターンシップをさせて頂いています。多くのデザイン系学生にとってこの企業インターンシップは必修であり、取らないと卒業することが出来ません。
デザインのアカデミックインターンシップは様々ですが、実はその7-8割以上が無給であるとも言われています。こう書くと学生達を無給で働かせるのはひどいという声が聞こえてきそうですが、実はその逆であったりします。
米国のデザイン学生達は、むしろ無給でインターンシップ出来る企業を探します。それはネームバリューのある会社は無給、ネームバリューの無い会社は有給という常識が定着しているからです。
学生達は卒業後に就職する際、ネームバリューのある会社でのインターン経験をresumeに書く事で自らを売り込むことが出来ます。多くの学生にとってはインターンで報酬を得るよりも、卒業後に希望の会社へ就職することの方が重要であるため、無給インターンであっても経験を稼ぐためにどんどん応募します。また無給インターンで働いた後に、その会社から正社員としてのオファーが来ることも少なくありません。
また、企業もこの事を熟知しているため、ネームバリューのあるデザイン会社の多くはインターンを無給とします。それとは反対に、ネームバリューだけでは学生をインターンとして呼び込むことの出来ない企業は、その対価としてインターン生にお金を払うのです。
10. MBA & Designという新領域
ビジネスとデザイン。この二つにそれぞれ全く違ったイメージをお持ちの方も多いかも知れませんが、この記事を読んで、少しデザインに対する捉え方が変わったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はデザインコンサルティングとビジネスコンサルティングは密接に関連していて、切っても切れない関係にあります。
また、様々なビジネス分野におけるデザインの重要性が高まってきている近年、デザインとビジネスの両軸を行うことの出来る人材需要も比例して高まってきています。
こうした背景も手伝い、最近はMBAとデザインを融合したコースを提供する海外大学院が徐々に増え始めています。そうした大学では、デザインプロセスからビジネス理論までを幅広く学び、最新の市場ニーズにあう知識や技術が習得できるように講義が設計されています。
僕はこうしたコースを提供する大学院に強い興味を持っているんですが、現在幸いにもこれらを実践的に学ぶ機会を得ています。というのも、btrax社はビジネスとデザインの融合を掲げているため、業務内容が非常に理論的かつクリエイティブです。もしbtrax社でのインターン内容も「米国のデザイン教育から学んだこと」に含めるとするのであれば、僕は今まさに「デザイン×ビジネス」を米国で直に学ぶ機会に恵まれていると言えます。
11. 終わりに
僕は日本と米国でデザイン観がどうしてこうも違うのだろうと留学して以来ずっと考えてきましたが、どうもお互いの国が持っている根深い文化背景に由来するところが大きいという結論で間違いないと考えています。
例えば言語一つとってみても、日本語は円を書くようなメッセージの伝え方をしますが、英語は直線的に物事を伝えます。文章の構成方法も違えば、コミニケーションの要所も全く違います。
こうした文化背景は、その土地に住む人々の思考方法に多大な影響を与えています。異なる考え方は、異なるモノを生み出します。インプットが違えばアウトプットが異なるのは必然であり、その結果として出来上がるデザインも全く違うものになっていきます。
今回は「米国のデザイン教育から学んだこと」という題で書かせて頂きましたが、僕は日本のデザイン教育から学んだことも沢山あります。どちらが良いというわけではなく、どちらにも長所と短所があり、それらをうまくバランスさせることが重要なのではないかと思うのです。
まだまだ実践していかなければいけないことが数多くありますが、日米それぞれから素晴らしい要素を学び、グローバルにデザインを展開させる上で何が重要なのかということを意識しながら、これからも真摯にデザインと向き合っていきたいと思う次第です。
* togetterにも今回の記事内容をまとめました。 多くの方から反響を頂いておりますので、こちらも同時にご覧になって頂ければ幸いです。
*追記:「スペシャルインタビューブランドン氏 」に、btraxのCEOであるBrandonさんが下記のトピックで受けたインタビューが掲載されました。
世界で勝負するために、日本が学ぶべきユニバーサルデザイン
日本に足りない能力とは?
今、世界に向けて
今どういった事が日本のwebデザインの現場に求められていて、どうやって国際化社会に対応していくべきなのかというソリューションが具体的に提示されています。今回の記事と併せて読まれると更に日米間の現状理解が深まると思われますので、是非ご覧になってみて頂ければ幸いです。
筆者: Masato Brian Miura @rami2929
はじめに
僕は高校を一年で自主退学し、高専卒業後は「デザインとビジネスの着地点を見つける!」と米国留学のために威勢良く渡米しましたが、待ち構えていたのは悪戦苦闘を強いられるアメリカ流の洗礼の数々でした。
一番始めのセメスターは散々たる結果で、大学からは「成績不振が続けばすぐ強制退学にします」という通知書が届き(なんとか次のセメスターでオールAを取り挽回)、起きてから寝るまで行った勉強のストレスで体の節々が異常を訴え始めながら、米国大学のトイレで何度吐きそうになるまで悔し泣きをしたか、今となってはもう数えることが出来ません。
そんな苦悩の日々から約3年が経った今、僕はbtraxというWeb Consulting AgencyのCEOであるBranodonさんから一本釣り的に採用され、書類審査や従業員面接のプロセスを全て省略して頂き、日本人留学生にとって非常に困難と言われる海外インターン就職に卒業する数ヶ月も前から合格し、しかもロサンゼルスに住みながらサンフランシスコの会社へリモートで勤務しています。
申し遅れました、皆さん初めまして。今月からbtrax社でインターンをさせて頂く三浦雅人と申します。Web DesignとBusiness Development (in LA area)を担当させて頂いています。
僕は留学当初は右も左も分からずに模索し続けていたので、これからアメリカでの就職やインターンを希望される方々に少しでもお役に立ちたいと思っています。この場を借りてお伝えする「僕がアメリカでのインターン就職経験を通して得た8つの学び」が何かしら皆様のお役に立てば幸いです。
1. ソーシャルメディア活用が好機を掴む
それは突然でした。ある日Facebookを確認すると、「将来一緒に仕事する可能性についてお話したいので、一度お会いしませんか?」とのメッセージが。差出人は、btrax社のCEOであるBrandonさん。「まさか!」という言葉が、頭の中を走り抜けました。
というのも、その時の僕は米国大学卒業後にbtrax社のインターンへ申込むために着々と準備を進めており、その会社を経営する方から直接連絡が来るというのは文字通り「まさか」の展開だったわけです。
後から伺ってみると、Brandonさんは僕がブログに書いたデザインとビジネスに関する記事を読み、興味を持って連絡したとのことでした。僕がブログを書いていなければ、恐らくbtrax社と接点を持つのは数ヶ月も後に遅れていたことでしょう。あるいは僕がtwitterを利用していなければ、ブログ記事がBrandonさんまで届くことすら無かったのではないかと予想しています。
数十年前にSix degrees of separationと呼ばれる「全ての人は6人を介せば全て繋がる」という仮説が立てられましたが、最近は「ソーシャルメディア上では全ての人と3人を介することで繋がることが出来る」という仮説が発表され話題になりましたよね。
これだけ個人間の距離が緊密になっているアメリカ社会では、ネットワーキングは就職において非常に重要な要素です。アメリカで本当に重要な役職は求人に載ることすらなく、人づてを経て紹介されると言われるほどなので、ソーシャルメディアを使ったセルフブランディングを行っておいて損をすることはまずないかと思います。
また米国企業のの採用担当者は応募者のソーシャルメディアを検索して人間性を確認することも多いので、プライバシー設定や公開する写真の適切性なども考慮する必要があります。
就職活動におけるソーシャルメディア活用が凄いのは、書類面接や面接のプロセスを全て省いて、CEOの方や担当採用の方と直接お話を出来る機会を得るチャンスがあるというところかも知れません。
ただし、一般的には履歴書やカバーレターと呼ばれる手紙を企業に送るのが王道です。これも非常に大切なので、個人的な経験も含めて以下に続けて書いてみたいと思います。
2. 英文resumeとcover letterは自分をマーケッティングする道具
resumeとcover letterはセットで、この二つがないとアメリカ企業への就職はまず出来ないと言っても過言ではありません。resumeとは履歴書のことで、cover letterとは企業へ自分をアピールするための手紙のことです。どのように企業を知り、自分がどのような価値を提供することが出来るのかを伝えます。
もう少しこの書類の重要性を確かめるために、試しにAmazon.comで「cover letter」とタイプすると、何と1万5千冊を超える書籍が見つかります。この数字からも、米国でどれだけcover letterが重用視されているのかが伺えるかと思います。
また企業の視点に立ってみればすぐに分かりますが、魅力的な会社であればあるほど応募者が殺到するため、採用担当者が目を通すresumeやcover letterの量は膨大になります。よってここでの勝負は、いかに自分を的確にマーケティングする(売り込む)かという一点に尽きます。
個人的な感想として、日本人が他のアメリカ人の方達と同じ方法で戦っても多くのハンデを負う上にレッドオーシャンになってしまうので、「バイリンガルマーケット(例え英語がビジネスレベルでも)」+「アメリカ人達と渡り合うことの出来る技術スキル」+「誰にも負けない何か一つの分野に対する情熱」、という3つの軸を持って挑むのがベストだと考えています。
ちなみに普段から親しくさせてもらっているアメリカ人の知り合いの方は、非常に魅力的なcover letterを書き、送信した数秒後に携帯に電話が入り、当日に採用が決まるという離れ業を成し遂げてしまいました。後からその会社のCEOの方に聞いた話しですが、彼は友人のcover letterだけを見てすぐに連絡したいと思われたそうです。
では、どうすれば採用担当の方に強烈なアピールをすることが出来るのか。この問いに対する僕なりの答えを、次に書いていきたいと思います。
3. 会社に対して何が提供出来るかを考える
医者は患者を問診することによって症状を探り、適切な薬を処方することが出来ます。このプロセスは就職する時も同じことです。
自分が企業に何を提供(薬)出来る考える時、1人で考えてしまっては全く的外れな提案になってしまいます。それは、それぞれの会社によって求めている内容(症状)が全く異なるためです。
実際に企業が抱えている問題を知らなければ、何を自分から提供出来るのかを考えることは出来ません。相手の問題を解決するために自分は何が出来るのか?という発想が、エンゲージ率の高い提案には欠かせないのです。
そこでまずは、希望する会社の事を徹底的に調べる必要があります。実際に僕もbtrax社に関するリサーチから多くを学ばせて頂きました。どれくらい調べたかというと、CEOであるBrandonさんとの最初の対談で「何でそんなbtraxの企業秘密的なことまで知ってるんですか?」と言われるくらいです。ある時は友人から「君はbtraxのストーカーなの?」と言われたこともありました。
しかし、オンラインでの情報収集には限界があります。会社の事をちゃんと理解している人に会社が何を必要としているかを聞くのは非常に重要なので、インターンの方にお話を伺ってみたり、現在働いているスタッフの方からお話を聞くのも有効です。例外なく僕もやりました。アメリカではイベント等でCEOの方を直接あたってみると、意外と収穫があったりもします。
こうしてオンラインとオフラインの情報収集を終えた頃には、企業が抱える問題や、必要としているスキルが見えてきます。それらの情報を元に、自分が何を提供出来るのかをresumeやcover letterを通して情熱的に表現することが、「何だこいつは!?」と良い意味で思われるような、「外国人とか関係なくめっちゃ会ってみたい!」と感じてしまうような、そして「もう電話をかけずにはいられない!」というアクションを取ってしまうような、そんなインパクトを与えるきっかけになるのではないかと思うのです。
ソーシャルメディアを活用し、情報収集も十分にして、resumeやcover letterを出し終えて一安心、と思っていてはアメリカでの就職はやっていけません。企業とのコンタクト段階で必ず必要となる「攻めの姿勢」についても、詳しく見ていきましょう。
4. 待たない姿勢を保ち続ける
「待つな。」これは僕の大学が行う就活講義で、学生達へ一貫して伝えられるメッセージです。このたった3文字に、攻めの姿勢とは何かが簡潔に表現されています。これこそ、アメリカ就職で僕たちが保たなければいけないスタイルだと言えます。
この「待たない姿勢」を理解することは、アメリカの就職活動文化を正しく理解することでもあります。またそれは日本の就職活動と全く異なる側面でもあるため、日本の感覚だけで進めようとすると失敗する可能性が高いかも知れません。
では具体的に何が違うのでしょうか。僕は大学の講義で教授が教えていた内容が、非常に印象的で今でも忘れられません。教授はこんな例を挙げていました。
「resumeやcover letterを出し終え、social mediaも活用し、君達に希望の企業から連絡が来たとしよう。そして企業が君に興味を持っている旨を伝え、数日後に連絡するので待って欲しいと言ったとする。さて、君達が次に取るべき行動は何かな?」
日本の感覚で言うと、ここから指定日に合わせてinterviewへの準備を万端にしたりすると思うんですが、その解答は僕の予想とは180°反するものでした。教授はこう続けます。
「企業から数日待って欲しいと言われても、決して待ってはいけない。アグレッシブかつジェントルな態度で毎日電話を入れるべきだ。企業が君のことを少し煙たがるぐらいが丁度いい。この段階で何が起きているかと言えば、企業は候補者を数名に絞る過程で振るいをかけている。その大切な選別を、運に任せてはいけない。ありとあらゆる手段を使って、彼等に君の情熱を伝えなければいけない。もしも毎日積極的に電話をかけてくるような学生が居れば、向こうもどれだけ君がその会社で働きたいのかを感じ取るだろう。この世界では情熱も立派なスキルであるということを、決して忘れてはいけない。」
ちなみに僕がBrandonさんから初めて頂いたメッセージは「近いうちにLAに行く機会があると思うので、その際にお会いしませんか」というものでしたが、僕が返信したメッセージは「今週末にサンフランシスコでお会いさせて頂けないでしょうか」というものでした。
実際に企業とコンタクトを取り始めるシチュエーションは様々な場合が考えられますが、どんな場合であっても丁寧かつ積極的なコンタクトを取り続ける事で、他の候補者達から差別化を図ることが出来るかも知れません。特に学生のスキルというのは僅差である場合が多いので、最後に命運を分けるのは個人が持つ情熱であるように思います。
こうして企業とコンタクトを取り始めることが出来れば、その先に待ち構えているのは待ちに待った面接です。いわゆる愛を告白する場所です。ここでは、いかにより突っ込んで自分をアピールすることが出来るかというのが大切になっていきます。
5. 面接という名のプロポーズ
面接はcover letterでは表現しきれなかった、一歩踏み込んだ愛をプレゼンする場であると認識するといいかも知れません。しかし、やはりアメリカでの面接は非常に厳しいです。慣れない英語での受け答えは当然のことながら、大学で面接トレーニングを受けたアメリカ学生達とも争わなければいけません。
それでも、日本人である僕達にも徹底的に出来ることが一つだけあります。それは、準備です。いかに一歩踏み込んだプレゼンを出来るかは、どれだけ準備に時間を費やしたかに比例すると思います。そしてそれは必ず、面接官へと伝わります。
皆さんは、アメリカ流のプロポーズを見たことがあるでしょうか?
このプロポーズには、一体どれだけの知力、費用、労力、時間が費やされているのでしょうか。彼は一体、どれだけの愛を持ってして彼女にプロポーズしたのでしょう。この15分のプロポーズに、一体どれだけの努力が必要とされたのでしょうか。
これは企業面接でのプレゼンに似ています。もちろん職種によって何をプレゼンするかは異なりますが、「相手が何を望み、それに対して自分が何を提供できるのか」を徹底的に考えるという原則は同じなのです。
相手の趣味趣向を知らずに告白しても、振られるのが関の山。それを踏まえて入念に準備してから、上記動画の彼のように準備万端でベストを尽くすと、Luck(運)が後からついて来るかも知れません。
6. 会社に大きな貢献が出来ないのであればインターンは採用されない
少なからず僕は最大限に貢献しようと、足りない頭を日々ひねっています。アメリカ学生の友人達もみんなどうやって企業に貢献するか、インターンをしながら必死に考えています。この不況で就職先がないアメリカの学生も多いという高倍率競争なので、まさに毎日が命がけです。
例として僕は場合は「btraxのオフィシャルwebサイトを新規事業内容に沿ってデザインし直す」というインターン採用試験を、Brandonさんと初めて会ったその日に期限付きで手渡されました。
上手くいけばインターン採用かつデザインも実際に利用されるという非常にやりがいのある課題だった反面、下手なデザインを提出するようであればインターン不採用という事実も事前にハッキリと伝えて頂きました。
アメリカではインターンに任せられる仕事の責任範囲が、正社員となにも変わらないことが多いです。そうした背景も手伝ってインターン採用は非常に厳しく行われ、個人の実力が重用視されます。
採用試験の結果、嬉しいことに僕のデザインは現在のbtraxのオフィシャルウェブサイトとして反映されています。企業の鏡でもあるオフィシャルサイトをインターンのデザインから採用するわけですから、言い換えればそれだけ責任とやりがいのある仕事をインターンに任せることの出来る環境が整っているということでもあります。
さて、採用のオファーを頂いた後は、どうやって自分という存在をアメリカの会社で主張していくかというプロセスが大切になっていきます。
7. ユニークに自分の存在感を出す
自己主張が当然のアメリカでは、自分の色を積極的に出さないと中々サバイバルしていけないという印象があります。まるで大学の授業で積極的に発言する生徒が高く評価される社会を反映するかのように、企業でも存在感を出しながら価値を貢献出来る人材が求められます。
個人的で率直な感想として、btraxで働いている方達は非常に優秀で、僕のような新米が何をどう貢献出来るのか探すのだけでも一苦労です。そこで、自分がどうすればユニークに自分の存在感を出すことが出来るのかということを、この2ヶ月間ずっと自問自答してきました。
btraxの事業活動を大まかに二分するとデザインとマーケティングとなります。僕はデザインとビジネスを何年も同時に勉強してきましたし、この二つの事業の間を円滑に繋ぐべく、両サイド的ポジションとして自分をアピールしていこうと決めていました。
結果的にデザインとマーケティングチームのどちらにも参加させて頂ける運びとなりましたし、今こうしてブログを書いているのも、文章を書くのが好きなので何か記事を書かせて下さいと僕から提案させて頂いたのが始まりです。
例え意見が採用されなくても、特に失うものは何もありませんし、アメリカではプラスに評価される可能性もあります。却下されることを恐れて発言しないくらいなら、何度断られてもいいので自分が出来ることを提案し続けた方が自分の存在感を出せるように思います。
8. 自分の将来のビジョンを持つ
今まで歩んで来た自分の短い人生を振り返ると、強烈にやりたいと思った事に対して突き進むことで、先にある予想もしていなかったような景色が次々と見えてくるという経験の連続だったように思います。
どうせ明日死ぬかもしれず、数十年しか続かない人生であれば、周りの声に耳を貸さずに、自分の心の奥深くにある声に耳を傾け、その欲求へ素直に従う生き方もいいと思うんです。
人生は誰もが平等に1度きり。それなら今、1秒づつ過ぎ去って行くこの瞬間に、時間を忘れて無我夢中になってしまう自分の大好きなことを思いきりやらずして、他に何をしろというのでしょうか。
僕はあるビジョンをもってアメリカへ留学しましたが、それは今でも色褪せることなく自分の中で育ち続けています。その想いがなければ、こうしてbtraxで働くという機会に恵まれることも無かったのではないかと思います。
高校受験に失敗した時に、親父からさりげなく渡された手紙を、今でも読み返すことがあります。寡黙で、いつも行動で道を示そうとする親父が、珍しく僕に書いた手紙の一文には、こう綴られています。
「人生は山あり谷ありです。
いつも順調に進まないのが人生です。
今、希望がかなわなくとも、再挑戦は可能です。
雅人が希望する方向を見失わないで頑張って行けば道は開けます。
まだ15歳です。焦らず、腐らず、一歩一歩進んでください。」
その優しさに対して、全く答えることの出来ない自分の不甲斐なさに、悔しさで一杯になったことも沢山ありました。それでも自分の進むべき道を見極めるべく、この手紙を何度も読み返しながら、どう人生を歩んでいくべきなのかを考え続けてきました。
幾度となく折れそうになっても、諦めずに続けて結果が、自分をこの新しいスタートラインに立たせてくれているんだと思っています。
また留学をサポートし続けてくれた家族や友人達が居なければ、ここまで歩いてくることは不可能であったように思うので、これから行動をもって感謝を示し続けていこうと考えています。
アメリカでの就職は大変のこともあるかと思いますが、アナタの選択を、そして自分の信じた道を、たとえ前が見えずとも突き進んでみて下さい。その先にはきっと、明るくて眩しい景色が、アナタを待ち続けていると、僕は思います。
P.S. togetterにも今回の記事内容をまとめました。 多くの方から反響を頂いておりますので、こちらも同時にご覧になって頂ければ幸いです。
筆者: Masato Brian Miura @rami2929
こちらの写真は、数名の友人がシリコンバレー訪問中にMt.ViewにあるEvernote本社で撮ったものである。右から2番目に映っているEC Studioの山本社長 (別名インターン社長 )は、後にこの時の体験をアメリカ滞在中の数ある驚き体験の中でも特に特筆すべき事として話してくれた。
この時期サンフランシスコに数ヶ月滞在していた彼は、週末の土曜日に日本からの友人と共にシリコンバレーの有名な会社の幾つかを見学しに行った。まずFacebook社を訪問した際にはマークザッカーバーグを見かけた。その後Evernote社に行き、オフィス前の看板付近で勝手に写真撮影していた。すると、オフィスの中からアメリカ人のおじさんが出て来た。注意を受けるのかと思っていたら、「今日はあまり忙しくないから、中に入ってみるか?」と言ってくれた。彼らに声をかけてくれたのは、なんと同社CEOのPhil Libinであった。とても親切にオフィスを案内してくれ、最後には記念に一緒に写真を撮ってもらった。後日、山本さんはその事を “あり得ない経験” として大変驚き、喜んでいた。
確かにこれはとても驚くべき事だと感じた。なぜならアメリカでは、それが至極 “あり得る経験” だからである。彼によると、有名な会社の社長さんが、日本からやって来た名も無い人達にわざわざ時間を割いてオフィスを案内してくれ、最終的には写真も一緒に撮ってくれた事が非常に驚きであるらしい。確かに、忙しいと時間を割く事が難しくなる事はあるが、こちらではこのようなケースは珍しくは無い。むしろ人と人の付き合いの中で、肩書きや立場はあまり介在しないケースの方が多い。ビジネスのフィールドに於いても、大企業とスタートアップとの間に大きな隔たりも無く、むしろ交流も多い。それによるメリットもある。実際に、上記のような話は、恐らく日本の消費者に対してEvernoteの知名度とイメージアップに一役買うだろう。全米から見ても特に西海岸では、人付き合いが非常にオープンである。僕自身は日常的にそのような文化と生活に慣れていた為、逆にこの経験が特別なものと感じる日本の社会や文化が気になった。
アメリカの日常生活で常識的に感じていたオープンでフラットな文化は、学生の社会的ポジション一つとってみても、日本では必ずしも浸透していないケースもある。必ずしもアメリカ的文化が全て良いというわけではないが、隔たりの少ない社会が生み出すメリットは確かにある。
日本社会における学生のポジション
btrax社では2年程前より日本からの学生インターンを受け入れている。その学生の多くが非常に優秀であるため、本人達に日本でも相当活躍しているだろうと聞くと、必ずといって良い程「学生だと相手にされないんですよ」という答えが返ってくる。これにはとても驚く。アメリカではスタートアップを中心に多くの企業にて、学生やインターンの若者が活躍をし、新しい発想で会社を引っ張って行く場面が多く見られる。逆に学生の頃から実社会で頭角を現さない者は、どんなに高学歴でも就職先を見つける事も難しくなる。
その一方で、最近は随分と変化してきているかもしれないが、日本では学生が社会で活躍出来る場は制限されているように感じる。恐らく学生の頃から正社員として採用されるケースは少ないだろうし、学生インターン生に与えられる仕事内容は限定的であろう。しかしながら、その一方で、学生に活躍の場を与えるために、”学生向けイベント” や “学生コンテスト”と銘打ったイベントが行われている。正直これには大きな違和感を感じる。話題性やメディアからの注目を得るには良いかもしれないが、学生という枠で括り、特別扱いをしているコンセプトがどうしても理解し難い。実際のビジネスのフィールドでは、プレイヤーが学生だろうがベテランであろうが、そこは実力のみの勝負になる。
以前の東京でStartup Datingに参加して感じた事 でも少し触れたが、ベンチャー vs 大企業、学生 vs 社会人のような、立場や肩書きによる隔たりを生み出すセグメンテーションはオープンな交流を妨げかねない。また、それによるメリットも考えにくい。その辺はなるべくオープンにし、それぞれの個人や企業の実力で勝負出来る環境があったほうが、実力がつきやすいと思う。
アメリカの大学での経験
僕自身は日本の高校を卒業後、アメリカの大学に入った。実は恥ずかしながら日本では受け入れてくれる学校が無いレベルだったが、幸運な事にアメリカのカレッジはかなりオープンで、入試が無かった。入学する際のエントリーシートを記入し、クラス分けの為のテストを受けたのみ。授業内容もその多くが、教える方と教えられる方の隔たりが少なく、ディスカッションや生徒によるプレゼンテーションが多い。もし講師の講義内容に疑問があれば、どんどん発言できるし、それが評価にも繋がる。
実際、1年の一学期からWebやデザイン関連の授業では相当生意気な発言をしていたと記憶している。それでも期末の講師からの評価レポートには、”It was great to have you in the class”と書かれていたのが忘れられない。講師と生徒とのディスカッションを重んじるアメリカのフラットな授業のシステムが大好きになり、3学年以降の授業の多くでは先生の助手をさせてもらう事で単位ももらえた。そして、その当時よりフルタイムでWebデザイナーとしての仕事もしていた。
アメリカの企業が必要とするインターン生
社会においても、多くのアメリカの会社では組織がフラットである。会議中では、社長でもインターンでも発言する内容に対し、その人の肩書きによる周りの反応の違いは非常に少ない。”誰のアイディアか ” よりも “どのようなアイディア ” であるかが重要視される。むしろ場合によっては、上司のアイディアを否定し、より良い意見を提案出来るスタッフが評価される。
btrax社でも、日本の会社で経験を積んだスタッフは立場をわきまえた言動にとどめるケースが多いので、なるべくその辺は気にしないように促すようにしている。また、気になる事や改善アイディアがあれば、何時でも上司や社長に進言をできるようにし、フラットでオープンな環境づくりを目指している。実際に、日本の会社で約10年の経験があるインターン生は、インターン最後の日に我慢出来ず、”ここの会議のシステムは無駄ばかりです。僕にはもっと良いアイディアがあります。” と発言し、スタッフ一同より彼に対し賞賛の声が上がった。ちなみに、英語という言語は敬語や謙遜語等の表現がほとんどないので、フラットなコミュニケーション構築にはとても便利である。
身分や肩書きで左右される日本社会
ところで、btrax社でインターンを経験した方々の多くには、日本に帰国後も彼らの肩書きや立場に関係なく、今までのように仕事を手伝ってもらう事が多い。アメリカではフルタイムのスタッフと同じ目線で、分け隔ての無い仕事内容を任されていたが、やはり日本に戻ると、学生という事が分かっただけでも、多少なりとも会う人たちの対応に差がある様だ。もしスタッフの肩書きで無意識の うちにやり取りの内容に違いがあり、能力を最大限発揮しにくい社会環境だったとしたら、大変残念である。
ここ最近、出張等にて日本に行った際に漠然と感じている違和感の多くは、もしかしたら人付き合いと社会が普段生活しているアメリカと比べてあまりフラットでオープンではない文化により形成されている事が原因かもしれない。おそらくこの部分は日本国内だけで生活しているだけでは気づく事はあまり無いと思うが、日本人の多くの方々が無意識のうちに常識として身に付いているのであろう。
先日、日本に行った時も、とあるイベントに友人を連れて行こうとしたところ、”経営者のみ参加可能なイベントですので、その方が経営者であればOKです” と言われた。この時ばかりは正直、”なんだそれ?”と思ってしまった。経営者しか参加出来ないイベントにするメリットは果たしてあるのであろうか。プライバシー的な危惧やキャパシティー的な問題を除けば、オープンにする方がより活性化したイベントが開催できると思う。
シリコンバレーではオープンな交流が多い
一方で、最初に書いた通りアメリカに来た方々は、人々の交流のオープンさに驚く。イベントや交流会は毎晩のように開催され,著名な人々に出会う機会も多い。また、会いたいと思う人が居た場合、しっかりとした理由があり、場所とスケジュールのタイミングが合えば、ランチミーティング等をセットアップする事で会ってもらえることが多い。最初はある程度のコネクションがあったほうが有利だが、こちらのブログ にて説明されている通り、Niftyの河原さんが何のあても無く、気合いだけで念願のMeetup CEOとのインタビューをセットアップ出来たような例もあり、気合いと情熱で実現する場合も多々ある。
そもそもアメリカでは、ある程度の肩書きの人でも、誰とでもオープンに交流する考え方が一般的とされている為、肩書きや立場による隔たりは少ないと思われる。後々何がどう繋がるかがわからないので、どんな立場の人でも時間の許す限り、なるべく多くの人とオープンに交流しようと思っている場合は多い。実際に、軽い気持ちで知り合った人が後々自分にとってとても重要な人物になるケースもある。
起業家精神に基づく合衆国の歴史
この国やシリコンバレー周辺のオープンかつフラットな気質は、その歴史による影響が大きいだろう。元々既存の階層社会やしきたりから離れる為に、自分達の考える理想的な国家を作り上げた背景は、まるでスタートアップを立ち上げる人々の心理に近い。実にワシントンやジェファーソン等、アメリカ建国に関わった人々は”Founders”と呼ばれている。元々”部外者”で構成されたこの国は、身分や立場が一度リセットしてスタートしたため、平等意識が強い。その歴史の中でも”金がとれるらしい”との情報だけを頼りに、がむしゃらに西を目指した開拓者が作り上げた西海岸は、ゴールドラッシュ時の一攫千金を目指す人々と、彼らを助ける投資家やサポーター等で形成されるエコシステムのDNAが現在にも流れている。特にシリコンバレーでは一発当てて成功した人が次世代の起業家をサポートする助け合いの精神が確立している。そこには立場や肩書きによる隔たりは無く、それぞれのバックグラウンドに関わらず、チャレンジをする人々に対しては、オープンに交流を行う文化がある。
近年変わりつつある日本の社会環境
上記で随分と否定的な事を書いてしまったが、最近は随分と日本の社会環境や人々の意識も急激なスピードで変わって来ていると感じる。誰でも参加しやすいユニークなテーマのイベントや交流会も増えているし、2011年頃から日本でもコワーキングスペースが急増し、オープンな環境が徐々に普及し始めている。企業や業種に関係なく交流することで、ノウハウやアイデアを共有し、互いの知識や技術、経験を提供しあうコワーキングスペースの隆盛は、社会が求めるオープンな環境創造に対する一つのカタチに思われる。また、ネットを活用したコミュニケーションは年々活発になり、フラット&オープンなコミニュケーション手段も随分と発達してきているだろう。また、ブログやソーシャルメディアを活用する事で、気軽にそれぞれの個人の考え方やアイディアをが発信できるようになった。例えば著名人もTwitterなどの新しい媒体で日常的でカジュアルな考えを配信し、他のユーザーとの会話がしやすい環境も整いつつある。
また、ソーシャルメディアを代表するTwitterやFacebookといったシリコンバレーを代表する会社の企業文化を中心に、日本の企業にもシリコンバレー的な思考や考えなどが普及してきている。その影響か、スタートアップを中心に会社のカルチャーや経営者のマインドも随分フラットなものになって来ているだろう。今後はその辺をきっかけに、より多様なタイプの人々がユニークな発想で活躍出来る場の構築も期待される。
これから求められる事
かく言う自分自身も、まだまだオープンでフラットなコミュニケーションが出来ているとは自信を持って言うことはできない。日本でも、ソフトバンクの孫社長のように立場は関係なくユーザーからの意見をどんどん取り入れ、”やりましょう。” の一言で物事を進める凄い人達もいる。良い意見やアイディアであれば、それが本来誰の発言かには左右されずに、客観的に物事をとらえる姿勢は非常に重要である。それが無意識に出来なくなっているケースは意外と多い。
物事の本質を見抜くためには、相手の立場や肩書き等だけで態度を変えるべきではない。どんな時でも隔たりを無くし、純粋で一直線に結果が出しやすい環境を構築していく必要がある。広いネットワークを構築したければ、まずは自らその扉を開く事。世界で戦える企業を作る一つのプロセスとして、提供する商品やサービスの他にも、このあたりの意識も再考してみる事は大切かもしれない。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill
10月からbtraxでインターンとして働いている田制明日香と申します。以前にデザイン についての記事を書かせて頂きました。btraxでのインターンも次第に終わりに近づき、今までの業務を通して学んできたこと、感じたことを振り返り、まとめてみます。
第3回SF Japan Night
まず初めに、今回私にとって一番の大役が第3回SF Japan Nightの担当をさせて頂いたことです。採用が決定し、その後東京で行われるJapanNightセミファイナルに合わせて日本に一時帰国しました。私にとってこのJapan Night セミファイナルがbtraxでの初めてのイベント。普段なら行かない場所で普段なら会わない様々な方にお会いし、どうしていいのかも解らずものすごく緊張していたのを覚えています。久しぶりに見る日本でのイベントと初めて見る日本のスタートアップのピッチを見て、アメリカのそれらとの違いに正直驚愕しました。オーディエンスとのキャッチボールや一体感が大きな違いだと思いました。特に変化球も無く一方通行で話し続けるのは正直足を運んだオーディエンスにとって期待外れだと感じさせる可能性もあるので、プレゼンターとオーディエンスが対等でフラットであるという感覚を持たせ、コミュニケーションが取る工夫が興味をそそらせるのかなと思います。
日本からサンフランシスコへ戻り、本格的にJapan Nightの仕事が始まりました。上司や以前の担当者にたくさん教えてもらいながら、PRや関係者とのやり取りなどほぼ全てに対して仕事を任せて頂きました。未だ慣れないオフィスと限られた時間の中で多くの仕事がこなし、何を優先順位にすべきか、どのようにすれば効率良くできるかということを考え、実行していくのが非常に大変であり、苦労しました。上司とのすれ違いもありましたがそれでも私を受け止めてくれて、1つ1つ問題を話し合い解決していけたことは、辛かったですが楽しくて嬉しく且つ充実したものとなりました。そこから「会社で働く」ということを経験的に学びました。
結果として、Japan Night本番での出場者のピッチも素晴らしく、成功させることができたと思っています。ちなみに、Japan Night当日のリハーサルに本番で私がメイド姿をしてステージに上がるアイデアが決定し、まさか自分がそんなことになるとは微塵も想像していませんでしたが、今まで働いてきたJapan Nightを私自身が少しでも盛り上げることができるならと思い引き受けました。笑
スタートアップ関係
Japan Nightの他にもMA7 Ninja Challenge やSF New Tech など多くのスタートアップ系のイベントに関わらせて頂いたり、その他にも日々サンフランシスコで行われているイベントへと参加することによって、何も知らなかった状態から毎日自然と目にした多くのWebサービス、そのUI、ピッチを見て、新鮮な知識をたくさん吸収することができました。アメリカらしいシンプルなデザイン、サービスなど慣れない日本人から見る違和感から、アメリカでのシンプルを求める理由やどのサービスがヒットしそうなのかなど段々と感じられるようになりました。
包括的且つ客観的に見ると、”魅せ方”がとても重要だと感じます。例えば、単純にサービス自体がかなり良くてもピッチがつまらないもの、つまり”魅せ方”が下手だとせっかくのサービスの魅力も伝わらず、結果として実際のサービスの質以下のものに見えてしまいます。逆にあともう1歩だなと思うサービスでもピッチが上手であれば、人々の注意を惹き、サービス以上のものに見え、そこから投資家からのチャンスや更なるユーザー獲得などのステップが望めると思います。あと、スタートアップ関連には更に飛躍させるVCや様々な種類の投資家、メンターなどたくさんの人々があらゆる過程で関わっています。このベイエリア周辺における彼らの成り立ち方やその変化、カルチャーなどの生の情報を知り、学ぶことができたのは大きな財産です。
UC Berkeleyでの講演
ある日カリフォルニア大学バークレー校でとある日本の大学から勉強会として派遣され、ベイエリアを訪れた団体への少人数でクローズドな講演会があり、ブランドン氏が講師として招待されていた為、私も連れていって頂きました。そこで彼が話していた内容は他のイベントの講演や普段の会話でも聞いたことがないことばかりで、ものすごく勉強になりました。
彼の講演内容は「サンフランシスコ周辺の歴史と現状」「日本とアメリカの起業家の違い」。簡単にまとめると、少し昔の本格的なハイテクノロジーを使ったシリコンバレー周辺からサービスが誕生していた時代から、現在存在する気軽で簡単に利用できるサービスを元に独自のサービスを創り出すこと、そしてそれを若者でも簡単に創ることができるということからサービスを生み出すハードルが下がっている。よって、生み出すスピードや競争率が一層増している。また、中心地のシリコンバレーよりも遊ぶ場所が多く若者が集まるサンフランシスコへと少しずつ北上している。起業家やスタートアップの日米の捉え方の違いから、日本で行うには未だにリスクが多いと見なされがちであるということ。
また他にもシリコンバレーで活躍されている方が招待されていて、講演を聞くことができました。勉強会後に行われた長時間に渡るディスカッションでは、勉強会に参加された世界中の様々な場所で多方面に及ぶ活躍をされている方々同士のあらゆる観点から話し合う日本の現状、アメリカや欧州国との教育の違い、どうすれば日本を変えることができるのかなど、議論が白熱していて、話を聞いているだけで学ぶことが多く、また逆に意見を求められて少しでも発言できたことは貴重な経験となり大変充実したものでした。
そのディスカッション終了後、個人的にも相談をさせて頂き、勉強会に参加された多くの方々から将来に対するアドバイスを頂くことができました。私の性格や思考に合わせて頂いた親身なアドバイスに私自身大きく影響され、見逃していたり知らなかった方向性を知ることができ、自分の選択を増やすことができたと感じます。
シリコンバレーの某大手VC訪問
ある日ブランドン氏が長年の友人であるシリコンバレーのVCの方とお会いする機会があり、一緒に連れていって頂きました。初対面の時から雰囲気が他の人と違い、今まで会った中で本当に優秀で頭が良く切れる方達だと感じました。頭の回転が早く、話がストレートで無駄な言葉が無い。無駄がない為会話のキャッチボールが早く、とんとんと話が進んで行きます。素晴らしく優秀な方と話すと自分の頭の思考も早くなり、ただ話を聞いているだけでもいつも以上に頭が回りました。
その上で、自慢気や偉そうな態度は一切なく、フラットであり、誰に対しても態度が変わらない。さらに、今までの業界や流れから、先を読む能力も優れていると感じました。しかしながら、物事を見る観点は一般ユーザー目線も忘れていなく、一般ユーザーと投資家という観点から見る分析やアドバイスは、共感がしやすい上に説得力があり、大変納得できるものでありました。ブランドン氏と長年の付き合いということもあり、親しげな雰囲気の中で密度の濃く貴重な話が聞けたのは本当に素晴らしい経験でした。たった1時間の対談が倍以上に感じられる程テンポが早く、凝縮された内容はどの話を取っても面白かったです。本当にありがとうございました。
Co-working Space
今年始めにサンフランシスコで生まれ、現在日本でもホットになりつつあるCo-working Space 。実は日本の大学で都市政策ゼミに所属している為、不動産や都市開発関係にも興味があり、某大手不動産会社とのサンフランシスコの有名なCo-working Spaceを数社見学案内の仕事に実際に連れていって頂いたことがありました。そこでここではどのように運営されているのか、その特徴、オフィスの作り方、契約方法などを実際に管理している方から聞きました。
さらに、その後の日本でCo-working Spaceを開くにはどうしたらいいのか、何が障害になるのか、日本人の性格に合わせた造り、単なる”仕事をShareする場所”では無く、Co-working Spaceで生まれるコミュニティの形成など、全ての話が新鮮で面白かったです。特に印象強い点は外国人の観点からどのような設備や機能を需要としているのかということ。国際的に日本で一緒にビジネスする上で今の日本の現状に何が足りないのか、彼らがどう感じているのかを直接に聞けたことは、自分の将来のビジネスを考える新しい発見になりました。
大前研一氏との対談
そして、一番楽しみにしていたイベントは大前研一氏とのCo-Working Spaceに関する対談 です。当時インターン決定次の日にこのイベントの決定を聞いたので、「本当になんなんだこの会社。もうあり得ない!」と感動しました。著書やメディアを通してしか知らない、明らかに環境が違う方と一緒に関わることができるなんて、普通の学生の私には夢みたいでした。政府や政策よりに日本でのCo-working Spaceを捉えて話す一部の内容は、政治学科の私には身近な観点から考えることができました。会場として使用されたCo-working Space・Citizen Space の方達の新参者を「いつでも来ていいよ」と受け入れる姿勢がすごくオープンであり、日本ではなかなか真似ができないことだと思います。しかしながら、何よりも面白かったのはイベント終了後のオフラインの大前氏。また向研会として来られた方も素晴らしい方が多く、普通なら聞くことができない貴重なお話や一面を垣間見ることができました。
側で見るブランドン氏
私はbtraxのCEOであるブランドン氏 の社長室にあるデスクで働いています。彼はオンとオフの切り替えがはっきりしていて、仕事の時はやはり大変厳しいです。間違ったことやミスはしっかりとはっきり指摘してくれますし、逆に良い仕事ができた時はきちんと評価し褒めてくれます。だから、自分の評価をすぐに見ることができる為、働き甲斐があり、私自身の欠点や特徴などを客観的に知ることができる良い機会にもなりました。
また、彼の近くで働き、ビジネスに関わらずアメリカの文化や日本との違いなど様々に渡る些細な話1つ1つが大変勉強になりました。特に会社や社会に対して時にはビジネスにおいてカードになり得る情報をクローズドではなく、アメリカらしくオープンに捉える考え方に感心しました。時にはっきり言うこんな私の言葉も聞いてくれて、本当に様々な面で大変お世話になりました。ちなみに仕事で一番感動した彼の言葉は、私がある仕事に対して決断し、実行することに不安を感じ悩んでいる時に「大丈夫だよ。何かあったら僕が全て責任を取るから。」と言ってくれたこと。
大好きなサンフランシスコ
実はサンフランシスコに来たのは今回で2回目です。1年前に初めての一人での海外留学として選んで来たのがこのサンフランシスコでした。そしてその後偶然にもベイエリア周辺の大学への留学が決定し、今回が2回目。私はアメリカの都市で一番サンフランシスコが大好きです!アメリカの主要都市であるNew York, Boston, Los Angeles, Seattleなどを今まで訪れたことがありますが、様々な都市を訪れる度に早くサンフランシスコに戻りたい!一番大好き。とますます惹かれていきました。さっぱりした気候と澄んだ空気、そして人々が自由であることが当然であるという雰囲気が一番気に入っています。この自由で快適な風土の中、最先端のものが誕生していく環境、そしてそれが成り立ち、革新が起き続けていく理由を肌で感じることができます。本当にサンフランシスコが大好きです。
Japan Nightだけに関わらず、btraxの日本でのプレゼンスの台頭、日本でのスタートアップブームの興隆などに合わせて、本当に”最高のタイミング”でインターンができたと思っています。3ヶ月という期間以上に数え切れない程多くの経験と、ここに書き切れない程の知識と感情を得て、心からbtraxで働くことができて良かったなと思います。「btraxでなかったら」と、今までの経験と出会った人を振り返る度にこの言葉が何度も浮かびます。本当にbtraxでインターンをすることをおすすめします。経験の無い私を採用、評価し、信頼してくれた上司、分からないことを優しく教え、困った時に支えてくれた先輩方、そして私と関わって頂いた全ての方に、大変感謝しています。これからはスタートアップ系女子大生として、btraxで学んだ知識と経験を日本で少しでも生かし貢献していければと思います。
筆者: 田制 明日香 @asuponne
アメリカ・サンフランシスコのWebコンサルティング会社: btraxでは、2012年に向けて人材を募集しています。国際的なチームと一緒に世界を舞台に活躍できる、積極的でクリエイティブな方を募集。Web業界を代表する会社が立ち並ぶ、サンフランシスコのSoMa (South of Market) 地区にあるおしゃれなオフィスで、私たちと一緒に働いてみませんか?
正社員の他に、学生や社会人向けのインターンも募集しています。各種ポジションにて応募していますが、下記以外でも興味がある方は希望の職種に関する内容をお送り下さい。
私たちは……
すばらしいデザインはビジネスを変える!と信じています。
信頼してくださるお客様がたくさんいます。
みんなどこか個性的。
Webとデザインの未来を切り開きたい!
こんなヒト大歓迎!
するどい視点を持ちそれを形にできる!
ヒトとテクノロジーをうまく結び付けられる!
時にはまじめに、時には思い切れる!
Webやデザインのトレンドをサキヨミするのが好き!
応募概要
正社員及びインターン(有給・無給)
2012年春頃スタート
日常会話レベルの英語力は必須
インターンは3ヶ月, 6ヶ月、12ヶ月, 18ヶ月
ビザ発行可能
応募方法
日本語の履歴書、英語のResume, Coverletterをhr@btrax.com へ送付
第一次通過者には面接日程を告知
面接は日本語と英語
募集ポジション
企画/マーケティング
Web/グラフィックデザイナー
モバイルUI/UXデザイナー
モーショングラフィックデザイナー
フロント/バックエンドデベロッパー
CEOアシスタント
イベント企画・運営
その他
詳しいポジション詳細についてはこちら から。
ご質問等はhr@btrax.com までお気軽にお問い合わせ下さい。
初めまして、日本の大学を休学し、10月からbtrax でインターンとして働いている田制明日香と申します。btrax の社内を大きく分けるとデザイン/制作とマーケティングの2つの部署で構成され、私はマーケティングチームに加わり、社内外のプロジェクトのアシスタントとして働いています。 btraxは企業の海外向けブランディングや、スタートアップ向けのUI/UXデザイン、プロモーショナルマーケティング向けデザインなどのプロジェクトを手掛け、Webデザインだけではなく多様なデザインサービスを提供しています。
最近ではbtraxは日本のスタートアップ企業の海外進出向けのマーケティングサービスやイベント開催等で知られていますが、btraxのメインサービスはデザイン関連であり、スタッフの約半分はデザイナーです。アメリカではこのような会社はクリエイティブ・エージェンシーと呼ばれています。私はデザイナーではありませんが元々デザインには大変興味があり、実際にこのようなクリエイティブな環境に身を置くと毎日新鮮な刺激を受け、自分なりに”デザイン”というものを考え直す機会が数多くあります。これまでのインターンを通じて非デザイナーである私がデザインの現場で学んだ事をまとめます。
デザインのクオリティーはビジネス成果と直結
デザイン会社で働き始め、まず最初に気付くポイントは、デザインの品質がビジネスの成果に直接影響するということ。同じような商品やサービスを提供しても、パッケージ、パンフレットやサイトのデザイン等のデザインの違いが売り上げに直接影響します。また、デザインの役割はターゲットとする客層に最適なメッセージを提供し、クライアントのビジネス価値を最大限引き出す事が求められます。このポイントを踏まえ、Calbeeの北米進出向けブランディングプロジェクト では、既存の国内でのブランドイメージに捕われる事無く、自由な発想に基づいて最適なデザインを創作したサービスをアメリカ市場に提供しました。その際も、社内チームではクライアントのビジネス的結果を一番に考え、ブランディング/デザインサービスを提供したと教えて頂きました。
デザイナーは才能よりも努力
インターンとして働き始め一番驚いたことは、良い意味でデザイナーは”地味”であるということ。当初デザイナーは天性の才能と個性を生かして仕事をするものだと思っていましたが、デザインの仕事の90%程は理論に基づいて進められ,残りの10%の部分でそれぞれの個性などを出すことができるそうです。逆に言えば、デザインの才能が無いと思っている人でも努力してデザイン理論を学びさえすれば、プロとして通用する可能性もあるということです。
マーケティング部とクリエイティブ部は表裏一体
btraxでは、マーケティングチームとクリエイティブチームが密接に関わって1つのプロジェクトを進めて行きます。特にプロモーション系のキャンペーンを行う場合、マーケティングチームの企画力やメディアとのコネクションとクリエイティブチームのデザイン力を融合させ、一つのサービスを提供します。クライアントにとって最も効果的で最善のソリューションを提供するという目的を達成する為に、ロジカルなチームとクリエイティブなチームが日々意見を闘わせているのを目にします。
良いデザインを生み出す秘訣はクライアントとの信頼関係
デザイナーにとって一番のチャレンジは、クライアントから信頼を得ることです。クライアントとの信頼関係がしっかりと構築されている場合、こちらから提出するマテリアルに対して安心して了承をして頂けます。一方で、事前に信頼関係が出来ていない場合、こちらからのプロとしての意見よりもクライアントの主観が入ってしまう時がある為、結果に結びつく良いクオリティのものが出来にくくなってしまう時があります。btraxはクリエイティブ・エージェンシーとして数多くの優秀なデザイナーを抱えていることに自信がある為、安心して仕事を任せて頂けることが大変嬉しいなと感じます。
Webやモバイルサービスの成功の秘訣はUI/UX
以前に書かれたこちらの記事 の通り、最近のWeb/モバイルサービスがヒットするかどうかはそのUI/UXのクオリティーに左右されます。特にアメリカのユーザーはシンプルなものを非常に好み、少しでも使いにくいと感じるとすぐに使わなくなってしまうので、細かい注意を払う必要があります。そのような文化の違いから、このサンフランシスコ周辺のスタートアップや企業が提供するアプリのUI/UXにおけるデザインクオリティーは非常に高く競争率も激しいです。実際にbtraxが日本のアプリを海外向けにローカリゼーションする際もUI/UXの改善から行うケースも少なくありません。
良いUI/UXを構成するのはビジネス+システム+デザインの融合
インターフェースやユーザーエクスペリエンスはデザインに密接に関わってる為、デザイナーから提案をするものだと思っていました。しかし実際は、デザインという観点だけではなくビジネスとシステムという観点も必須であり、そのビジネスとシステムとデザインとのバランスが非常に難しく重要です。ユーザーに対して望むアクションを起こしてもらう、コンバージョン率や複雑なシステムをどのようにして直感的な使い易さに変換して行くか等、それぞれの分野の知識やインプットが最適なバランスで融合された時にやっと優れたUI/UXを作ることができます。単純に綺麗な画面やスムーズな動きを作ることだけでは成功することは厳しいと感じます。
もの造りはプロセスが重要
最終的に出来上がったデザインだけを見ると、誰にでも作ることができるシンプルなものだと思うときがあります。しかしながら、それに至るまでの背景や哲学等のプロセスが非常に複雑且つ重要です。単純に同じようなものをデザインしたとしてもその裏に明確なビジョンがない場合、その良さは伝えることはできず結果にも結びつけることは難しいと思います。単純に見えるデザインでも奥が深く、大変興味深いポイントです。
良いデザインはシンプル
良いデザイナーは削るのが上手く、そして良いデザインは究極なまでにシンプルになっています。例えば、企業のロゴを一つとっても長い間愛されているものはやはりシンプルであり、飽きがこないものが多いと思います。単純にデザインというと、”誰も真似ができないような独特なもの”を想像してしまいがちですが、プロのデザイナー達が創り出す作品はシンプルに洗練されているものです。
シンプルなものほど造るのが難しい
そして、シンプルなデザインは作るのに多くの労働力と時間を要します。完成されたものだけを見ると短時間で作ることができるように見えますが、そこに行き着くまでには多くの議論と実証を繰り返しています。クライアントの方に満足して頂く為に背景にある情報をしっかりとコンセプトとして説明することもデザイナー達の仕事になります。
良いデザインは言語の壁を超える
最後にデザインのチカラで言語の壁が超えることができるということを強く感じます。品質の良いデザインは少ない説明のみでメッセージがクリアに伝えることができ、無意識に消費者の心をくすぐります。これは万国共通であり、例え母国語でさえも多くの人はあまり多くの文章を読むことを好まない為、btraxがアメリカやアジアの企業向けにローカリゼーションを行う際にも文字で伝えるのではなくデザインで”魅せる”方法を取っています。
インターンを始めて2ヶ月程が経過しましたが、毎日非常に密度の濃い勉強をさせて頂いてます。様々なものが溢れている時代の中これからはどのような仕事をするにしてもデザインの観点は重要視され、それが大きくビジネスに影響することは明らかです。また長年使用される作品は世界中のあらゆる所で通用し普遍的なものであり、マーケティングセンスだけではなくそれと同じ程にデザインを洗練させることが激しい競争を生き残る為に必要不可欠になっています。
筆者: 田制 明日香 @asuponnne
数年前にサンフランシスコのダウンタウンで開かれた中小企業向け無料セミナーシリーズにて、知的財産権についての講義を受けた。講師によると、どうやら企業の価値を構成する要素は、時代と共に移り変わっているという。1980年代ごろまでは、工場や設備などの規模に代表される有形財産が企業価値の80%を占めていたが、90年代に入ると、企業価値を構成する要素の大部分が特許やブランド、そして社外秘ノウハウ等の無形財産に取って代わったという。
例えば明日、世界各地のコカコーラの工場が一瞬にして焼失しても、彼らのビジネスは揺るぎは無い。なぜなら、彼らには確固たるネームバリューと、顧客ベース、そして、世の中の人々を虜にさせる秘密のエキスの調合方法と特許があるからだ。
それでは、これからの企業にとって最も重要な資産は何であろうか?そもそも企業資産とは、会計におけるバランスシート上の数字で見ると、現金や不動産、設備、そして株式による時価総額等の財産の合計額である。しかし、その一方で、売り上げを生み出す収益源である顧客ベースも大切なのも確か。もしくは、その企業に勤める従業員が最大の資産だとの考え方もある。
しかしながら、為替やインフレ/デフレを中心とした貨幣価値の上下、刻一刻と変動を続けるマーケット、そして流動性の高い人的リソース環境等、近年においては確かなものがほとんど無い。実は、そのような状況下で最も重要な資産とは、世の中の人々が個々の企業に感じる『感情』であるといえる。これからの急激な変化の中では、感情的資産 (エモーショナル・エクイティ) を着実に構築する企業が生き残り、マーケットを掌握すると考えられる。
エモーショナル・エクイティとは?
日本語で言うと、”感情的資産”と訳される企業におけるエモーショナル・エクイティとは、そこで働くスタッフ、その顧客、そして無料ユーザーまでもを含む人々がその企業に寄せる思いの量である。具体的には、人々がその企業に対して、例えば下記のようなポジティブな感情を抱いている場合、その企業はエモーショナル・エクイティが高いと言える。
商品が欲しい
サービスを受けたい
サービスを使い続けたい
働いてみたい
ずっと働きたい
オフィス訪問してみたい
ロゴの入ったグッズが欲しい
応援したい
関わりを持ちたい
援助したい
上記で表されるような思いの量が多ければ多い程、会社の資産となり、会社の価値がアップされるという考え方である。例えば従業員の場合、その会社で働く事に対しての誇りであり、顧客から見るとブランドロイヤリティである。また、無料ユーザーからしてみると、「無くなっては困る」サービスを提供する企業であったりする。
Google社を例にとってみると、インターネットを使うほとんどのユーザーが検索エンジンを始めとし、彼らが提供する多くの無料サービスを利用している。おそらくお金は払っていなくとも、多数のユーザーにとって、無くなっては困るサービスである事は間違いない。故にエモーショナル・エクイティが高い会社と言える。
Appleの製品はどうだろうか?恐らく、Mac, iPhone, iPodなどを始め、多くの人々にとっては既に生活必需品とも言える商品を展開している。「Apple以外は検討対象にもならない」と考えている消費者も少なくは無いはずだ。
また、多くのスタートアップに見られる、スタッフや関係者に「タダでも協力したい」と思わせる強いビジョンと世界を変えるようなサービスを造ろうとしている会社も、たとえ会計上の資産が無くても、高い価値を有していると言えるだろう。その一方で、ビジネスモデルの社会への貢献度が低かったり、CEOのスキャンダル等で従業員の不信感を招いてしまった会社は、スタッフの忠誠心が下がり、エモーショナル・エクイティが低くなる。この場合も具体的な数字では表れないが、着実に会社の価値は下がっている。
高エモーショナル・エクイティのメリット
エモーショナル・エクイティを高める利点は幾つかあるが、大きく分けると、マネージメントとマーケティングそれぞれのチャンネルにおいて、非常に重要な効果を発揮する。
マネージメントに対してのメリット
こちらのポスト でも分かる通り、この会社、btrax(ビートラックス社)を始めた当初は資本金が極わずかで、スタッフに人並みの給料を払う事が難しかった。そこで、立ち上げメンバーは全て3ヶ月の無給インターン扱いとした。その代わり、一緒に仕事をする事で他には得られない経験や、会社の将来性を説き、スタッフのやる気をある程度キープする事が出来た。それ以来、新卒採用スタッフは学生の時に無給インターンをする事が会社のカルチャーとなっている。また、一度採用したスタッフも、会社のスタッフである事に誇りを持ってもらい、長期間働き続けたいと思ってもらうことで、アメリカでは珍しい低い離職率を達成している。会社に資金力が無い場合は、高いエモーショナル・エクイティを保持する事で、給料以外の目的でも働いてみたいと思ってもらえるような状態にし、人事を優位に進める事が可能になる。
マーケティングに対してのメリット
もし来月からFacebookが月$5の利用料を要求し始めたら、どのくらいのユーザーが利用し続けるだろうか?また、今年いっぱいでApple社が倒産を発表したら、それを防ぐ為にどのくらいの救済金が集まるだろう。また、一説にはもしTwitterが金銭的な理由でサービスを終了しなければ行けない事態になったとしても、その影響力や世の中への貢献度が理由に、アメリカ政府が助成金を出してでも救済するという。もし、彼らの商品やサービスが有料/無料問わず、消費者や世の中にとって、欠かす事の出来ない物になっていたとしたら、その会社に時価総額では図ることの出来ない価値があると言える。企業にとって、たとえ現時点での収益が少なくても、エモーショナル・エクイティを積み上げて行く事で、無形ではあるが、着実に企業資産を構築していると言える。
エモーショナル・エクイティ構築失敗事例: Netflix
一方で、大きな成功を収めながらも、エモーショナル・エクイティ構築に著しく失敗した例もある。アメリカ・シリコンバレーのオンラインDVDレンタル最大手, Netflixが2011年中頃から行っているサービス及び価格の改変発表である。1999年の創立以来、飛ぶ鳥を落とす勢いの快進撃で、既存DVDレンタル大手のBlockbusterを倒産まで追い込んだ。お得な料金で延滞料を気にせずオンラインからDVDをオーダーし、インターネットを使って映画をストリーミングで見る事が可能な同社のサービスは、多くのユーザー獲得に成功した。しかしながら、2011年7月に具体的な理由も無く、いきなり月間費用を60%アップする事を発表。その直後からFacebookファンページやtwitter上に強烈な勢いでネガティブコメントが寄せられた。それに加え、直後に同社は2012年2月より、DVDレンタルとストリーミング事業を分け、ユーザーに別々のプランに加入する事を要求。この決定は完全にユーザーからの反感を買い、ネットではユーザー主導によるNetflix解約キャンペーンが横行し、発表直後から同年9月末までにNetflix社の株価が半分近くに下落した。この事態に対し同社CEOはインタビューに対して「完全にしくじった」と漏らした。一連の事件でNetflixが所有するエモーショナル・エクイティが著しく低下したと考えられる。
エモーショナル・エクイティを図る方法
感情的資産と訳されるエモーショナル・エクイティはもちろん目に見えない物であるが故に、数字で図る事は非常に困難である。しかしながら、恐らく下記の計算式で算出される。
ポジティブな感情(感情資本) – ネガティブな感情(負債) = エモーショナル・エクイティ(感情資産)
もし自社の商品やサービス、そして会社自体の感情的価値を知りたいのであれば、下記の問いの答を想像するのが良い方法であろう。
もし既存の無料サービスが有料になったら、どのくらいのユーザーがアカウントをキープするだろうか?
もし従業員全員の給料が半分になったとしても、どのくらいの人数が働き続けてくれるだろうか?
もし会社の経営状態が悪化し、倒産の可能性が出て来た時点で、どのくらいの救済金が集まるだろうか?
極端な表現をすると、企業に関わる人々のその企業に対する依存性レベルがある程度の一つのバロメーターとなる。
エモーショナル・エクイティ構築方法
ではどのようにエモーショナル・エクイティを構築すれば良いのか?シンプルな答えは無いが、恐らく構成する要素としては下記が考えられるであろう。
会社のビジョン
商品・サービスの社会貢献度
イノベーション性の高い商品・サービス
リーダーのカリスマ性
会社のカルチャー (こちらのポストを参照 )
サービス/商品の魅力
有料/無料ユーザーへの提供価値
ブランド力
企業資産とは目に見える数字だけではなく、そこに関わる人々の思い、そして彼らの心をどれだけ掌握しているかを考慮する必要があると考えられる。世の中に貢献し、多くの人に喜ばれるサービスや商品、そしてスタッフが誇りを持って貢献出来る会社のエモーショナル・エクイティは非常に高い。これからの経営者は会社の業績アップや規模拡大だけではなく、確実なエモーショナル・エクイティの構築も大きな仕事の一つとなる。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill