日本のバックグラウンドを持ちながらアメリカでデザイナーとして生きる二人がデザインについて語ったら—?
上杉周作(@chibicode)、小学校まで日本で育ち、その後アメリカへ。エンジニアとしてApple、facebookでインターンをした後、その肩書きを捨て実名Q&AサイトQuoraでプロダクトデザイナーに。エンジニア/デザイナーというバックグラウンドを持つ彼と、同じく高校卒業まで日本で育ち渡米、デザイナーであると同時にbtrax CEO、Brandon K Hill(@BrandonKHill)の対談から考える、「デザイン」そして「デザイナー」の役割とは。
対談日: 2012年5月4日
対談場所: btraxオフィス (サンフランシスコ市内)
インタビュアー: 日比谷すみれ
- 日本とアメリカのプロダクトやデザインの違い
- 教育—答えを求めるのか、何を作り出すのか
- デザイナーとは一体?
- デザインと向き合うことの大切さと辛さ
- 今後の道—良いデザインがもっと世の中に広まるために
—1.日本とアメリカのプロダクトやデザインの違い—
【btraxは先月末、サンフランシスコでSF Japan Night Ⅳを開催しました。3月に東京で行われた最終予選に上杉さんもパネリストとして参加していただきましたが、今の日本のプロダクトについてどうお考えですか。】
上杉周作氏 (以下SU) 以前見たSF Japan Nightよりも更にレベルが上がっていると感じましたが、捨てきれていない・削れきれていないという点でプロダクトが甘い物が多かったように感じました。見て「えっ!」って思う物がない。
Brandon K Hill (以下BH) 日本のやつって、既存の「改良版」なのに対して、アメリカでは全く無い物が出てくるよね。「えっ、うそ!」ていうマーケット、コンセプト、プロダクト。今の時代でもそういった何も無いエリアって、まだユーザー自身が気付いていないけど絶対ある。
SU) Hacker NewsというHacker向け情報サイトから週に一度メールが届くんですけど、Recently Launchedというコーナーが好きで。その週にローンチされたサービスが5、6つ出てくるんだけど、半分くらいはジョーク。(笑)だけど時々すごいのが出てくるんですよね。こんなの考えたことなかった、っていう。
BH) でもね、日本の良さって超あって。例えばデザインだと、プロダクトパッケージが本当に洗練されている。僕が日本でまずやることって、コンビニとかでドリンクのコーナーをずっと見るの。毎回行くたびにかなりおしゃれでかっこいいボトルのデザインが見れるから。完全不審者なんだけどさ。(笑)パッケージの仕事って売ること、つまり手に持たせてレジにに持っていかせることでしょ。だから、消費者が良いデザインを決める。デザインの質はそれに引っ張られる場合が多い。
実はアメリカの消費者って全体的に見るとセンス良くないんだけど、日本人の消費者ってセンス良いと思う。そんな日本人にウケるパッケージってかっこよくておしゃれ。変なこともしてるしよく分かんないのもあるけどすっごい素敵なの。こういうのが消費者にacceptされるのって素晴らしいと思って。デザイナーとしても仕事やりがいがある。アメリカだととりあえず原色で派手に作れば良いんだよ、それがマスで売れるから、てね。(笑)でもその一方で、アメリカのプロダクトやサービスは奇抜でユニークでイノベーションがあるものも多いと思う。0を1にするのが得意で、日本は上手に1を100にするよね。
—2.教育、答えを求めるのか、何かを作り出すのか—
【その日米のプロダクトやデザインの質の違いはどこから生まれてくるのでしょうか。】
BH) それは教育。日本の教育では、まず答えがあってどれだけその答えにたどり着くか。アメリカでは何も無いところに物を作り出して行くことが評価される。だからクリエイティブな人材が育ちやすいと思う。日本だと選択式の設問が多いけど、アメリカは自由回答が多い。
SU) 多くの数学者に共通することって、シンプルだけど美しく力強いものを求めることなんです。例えば、有名なオイラーの 式、eiπ + 1 = 0。この1つのシンプルな式に数学の一番大切なものが入ってるんです。大学で数学をやっているとものすごく難しい問題で答えが10行にもなるのもあるんだけど、一番ベストな答えは2行で答えることができます。数学できる人ってオイラーの定理だったりそういうのが好き。
こっちのサービスを見てても同じで、例えばtwitterとアメブロって両方とも自分を発信するっていうプラットフォーム。だけど、twitterは140字でやってるのにたいして、アメブロはたくさんの機能がどんどん追加されていきますよね。twitterはまるで「eiπ + 1 = 0」。ものすごいシンプルだけどその中でいかに最大限の効果を出せるか考えられています。
BH) それ何かっていうと、日本的考えが n+n なのに対してアメリカ的考えは n×n 。日本の場合だと、最初からどんどん足して行くことを良いとされるけど、アメリカのデザインやプロダクトって入り口がすごくフォーカスされていて、細くて小さい。そこに何かを入れるとばああーって一気に広がって行く。そのエフィシェンシーってすごいよね。ビジネスでもデザインでもそういった「レバレッジを効かせる」ということが考えられていて感心する。 アメリカではちょっと石を置いただけで大きい物がぽーんて上がるようになっているのに対して、日本ではみんなで頑張って大きい物を上げようとしている、っていうのかな。一回ステップバックして、どこにてこを置いたら一番簡単に石が上がるかな?っていうのを考えなきゃダメかも。
例えばアメリカのスタートアップなんかはバイラルマーケティングが非常に上手で、1人のユーザーを獲得したと同時にサービスが何100人にも広がる仕組みを作ってる。シリコンバレー周辺では、皆最小の労力で最大の結果を出す事を狙ってる。多くの人がどうやったらビーチで仕事が出来るかを真剣に考えていたりするしね。
SU) それに関連する事だと、The Visual Display of Quantitative Information(Edward R. Tufte )という本を日本のデザイナーに読んでほしくて。一番俺が重要だと思ったのは、『インクの量を最小化して、情報を最大化しろ。』という言葉。彼はデータ量を使ったインクで割る「date/ink」 という言葉を作ったんですけど、Quoraも10px×10px、色も灰色のアイコンでいかにインク量を少なくして表現しようとするか、そこから全てが始まっています。
もう1つ、日本とアメリカで象徴的な違いがあって、アメリカでは小学校で作文を書くときwordで書かせます。けど日本は作文用紙を使いますよね。2つの大きな違いって作文用紙は直すコストがwordよりもかなり大きい。ただ文字を消すだけならいいけど、段落の順番を変えるとかすごい労働量ですよね。ワードだったらただコピー&ペースト。それだけのインセンティブの違いだけど、効率を高めてる分、アメリカではその「再構成の回数」が日本のよりも10倍くらい多いんです。そのことによって構成を努力する力が身に付いたと思ってます。
BH) この間ちょうどオフィスで「アメリカ人はなんでシャーペンの良さが分からないんですか?」って話があったんだけど、これもまさに象徴的なことだよね。アメリカではそもそも消しゴム全然使わないから、書いた後に直すっていうコンセプトが無い。シリコンバレーでもなんでもそうだけど、作ってとりあえずリリースする。消しゴム、ないんだよね。この国。(笑)だけど日本人は直して直して、完璧になるまでなかなか出さない。ダメだったら破って次に進めばいいんだよ。
【アメリカの大学教育で学んだこととは?】
BH) 僕はサンフランシスコの大学のデザイン科にいたんだけど、すごく厳しかった。プロのデザイナーになるのはかなり大変で、デザインを学んだ人でも社会で通用するデザイナーになれるのは10%もいないから、学校の時点でふるいにかけられる。確かにそういう点では、親切だとも言えるのかな。クラスが厳しくて、デザインのプレゼンの際なんかには、みんながいる前で先生から普通に「お前デザイナー辞めろよ」みたいに言われるの。その先生も現役のデザイナーだったりするので、説得力があるよね。
SU) 俺もある現役デザイナーのクラスでスケッチ1000枚書いてこい、って言われて最後のほうは間に合わなかった。(笑)それと、ある授業の課題を何も考えずにやってしまったことがあって、みんな画鋲で持って来た物を前に貼るんですけど貼れなくて。先生に「お前のどこいった?」って聞かれたんですけど「いや、どこいったんでしょうね。」って。その後めちゃくちゃ落ち込んで、先生に「出せませんでした。」ってメールして「じゃぁ明日までにもってこい」って言われてその日やって・・・ってすっごい恥かいた経験があります。
アメリカの大学の授業って授業がトラウマになる人もたくさんいるくらい。生徒がすごいまじめなのもそうだし、そのクラスを作った人や今教えている人がよく考えた結果。毎年毎年教えられて行くことに改良が加えられて行く。日本の大学でそういうことをやろうとしても時間がかかってしまうと思います。ある意味アメリカの大学は教える方も真剣勝負だと思います。

【ではもし上杉さんとBrandonさんが日本の大学生だったとしたら?】
SU) いや無理ですね。精神的に。多分遊んでました。俺まわりに合わせようと生きているから。(笑)こっちだとみんな勉強してるからそれに合わせてればいいんですけどね。
BH) 日本の場合、入学時に学部を決めると思うんだけど、まず自分が入りたい学部が無い!(笑)無理矢理興味の無い学部に入ったとしても、続かないかな。辞めなくてもだらだら走ってアウトプット0かもしれない。ある時btraxにインターンに来たやつですごく優秀なやつがいて、そいつに「お前の大学すごいんだね」って聞いたら「大学関係ないっすよ、大学行ってないっすもん。」つまりそれは大学で身に付けたことじゃないって。日本の大学って魅力ないのかなと思った。
あと、そもそも東京は誘惑が多すぎる。主要な大学が都内にあるので、集中できなくて辛いことをやっていたくなくなる。アメリカってこの辺(サンフランシスコ)の大学の立地も超田舎だから。日本の大学の立地はありえないとおもう。あれだと学生にとっては拷問だよね。
SU) それはありますね。僕もこの間5週間日本にいてこっちに戻って来てびっくりしました。逆に僕が通った大学(カーネギーメロン大学)のあったピッツバーグは鉄鋼業で栄えた街で今は凄く廃れてしまった街だったから、今はもうお金もないし冬は寒いし。でも逆に勉強に集中できました。
大学ではコンピューターサイエンスを勉強していて、そのときに大学時代にダメダメダメダメ、ってダメ出しされるのに慣れたのが良かったなって。ある数学のクラスで一年間ずっと難しい定理を証明することばっかやらされて。1ページくらいの証明を書いて提出するんですけど、「いやここが甘くてダメだ」って何度も戻される。けどそのクラス自体、週30時間勉強しないと成績が取れない上、そのクラス以外の勉強もあわせると週70時間くらい勉強しないと単位が取れない。そのくらいの厳しいレベルでやっていたのが今すごく役に立ってます。
というのも、ダメだと言われたときに、自分がダメだったんじゃなくて、自分の努力が足りなかったり考えが甘かったことを指摘してくれたと自動的に捉えること。そういう前向きな姿勢を学ぶことができたんです。(これは理系に限った話じゃなくて)俺は大学で数学やったけど、アメリカでは文系の人でも小論文をすごい書かされて、「ダメだ」って何回も直されるんです。そういったことが高等教育でカバーされてたのが良かったかなって思ってます。
BH) 確かに、アメリカの大学を出た人って瞬間のフォーカス力がすごい。追いつめられる訓練を何度も何度もさせられるから。あり得ないぐらいの短い時間でのアウトプットを求められるから、常に気が抜けない。
SU) そうですね、日本もそういうの受験勉強でやってるはずなんですけど、多分アウトプットの形が違う。
BH) 受験勉強でフォーカスされるのは記憶力と耐久性。要するにマラソン。アメリカって短期勝負型で、スプリント、スプリント、スプリント。集中の質が違うよね。
SU) 日本人には是非一年間難しいプログラムでアメリカの大学に留学してほしいです。語学留学ではなくて・・・。そうすればこのあとはこうすればいい、というのが分かるから。
—3.デザイナーとは一体?—
【では「良いデザイナー」って一体何なんでしょうか?】
SU) まず自分の媒体を知っていなければいけないっていうのがあります。例えば、Webデザイナーに基本的にiPhoneのデザインをやらせてはいけないんですよ。どれくらい余白をとるかがWebとiPhoneでは全然違うから。とりあえず自分が手を動かすヤツをしっていないければいけない。あと色々あるけど、問題解決ができるかどうかも重要。
BH) 僕の場合はデザイナーを採用する立場から言わせてもらうと、媒体やスタイルを問わずデザインに関してのベーシックが全て出来ていて、プラス誰にも負けないような得意分野が1つぽーんとあるって人。
SU) 逆Tの字ですね。
BH)(そのTの字の)横が無くて縦だけの人は絶対ダメ。得意分野が一つだけあっても、ベーシックが出来ていないデザイナーは長持ちしないと思う。実は、「デザインができる」っていう表現自体がすごく難しくて、「作れる」ことの手前に、デザイナー的考えをするっていうのがある。みんな作ることばっか考えちゃうんだけど、作る前に解決するべき問題をどういう風に受け取って処理するか。そこ処理出来るか出来ないかで勝負決まっちゃうから。
だけど、「問題をどう処理するか=デザイナー的考え」と同時に「モノに命を吹き込む行為」であるデザインの側面もすごく面白い。例えば、ただの石はそのままだったら拾ってもすぐに捨てるけど、それに仏様の彫刻を施してあったら捨てないでしょ?同じ物がデザインを施されることによってその価値を生み出される。問題を解決した訳じゃなくても、良いデザインは人の気持ちを引っ張ることができる。そして悪いデザインのものは存在する時間が短いのと反対に、良いデザインのものって長く生き続けることができる。与えられたデザインの質でプロダクトの寿命を左右するから、そういう点でデザインの力ってすごい重要。
SU) そうですね。重要な使命感があって、生かすも殺すも自分次第。それが面白いです。
【ではどうしてデザイナーになったのでしょうか?】
BH) デザイナーになろうと思ってなってた訳じゃなくて、気付いたらなってた。魚ってがんばって泳いでないでしょ、気付いたら泳いでた。そんな感じ。デザインをするために生きてる感じしかしない。
SU) デザインは生き方って、誰かが言ってましたよね。
BH) イタリアのデザイナーが言ってたんだけど、デザイナーは一日24時間仕事をしている。デザイン作業をしていないときでも、日々の生活から常にインプットしていて、それをアウトプットに活用する事でずーっと「デザインの仕事」をしてる。
SU) 俺としてはあんまりそれかっこいいと思ってないです。時々短気になります。全く考えられていない広告とかを見て腹が立っちゃって、心の問題上あんまりよくない。(笑)
BH) 絶対音感がある人が雑音聞いたら気持ち悪くなるのと一緒だよね。アメリカのスーパーマーケットとか腹が立ってしょうがない。パッケージがひどい。
【アメリカのスーパーで見かけたサッポロビールの缶はとってもオシャレでしたよ。私はパッケージを見て買いました。】
BH) アメリカ人はそういう繊細な違いに気付かないよ。(笑)
SU) うん、気付かないですね。(笑)
BH) アメリカの場合、値段と量が重要で、でっかく0カロリーとか直接ベネフィットが書いてあることがポイント。
【そこは矛盾している気がします。Appleはシンプルなデザインを突き詰めていますよね?】
BH) え、だってAppleはやっぱりまだマジョリティじゃないよ。
SU) 今だに”Apple products are overpriced”って言われてますよね。
BH) ここ(サンフランシスコ)は特別だからね、ここにいるから気付かないだけ。あと、Appleが象徴的なのは良いデザインが世の中の人に受け入れられて、その効果を発揮するのには時間がかかるという事。彼らは設立時から一貫して素晴らしいデザインと機能性にこだわって商品を造って来たけど、やっと市民権を得られるようになったのはここ最近の話で、一時期は倒産の可能性もあった。本当に良いデザインを世の中に普及させようと思うと、短期間での結果は出にくいので、かなりの忍耐と強い信念が必要だと思う。でも長期的に見るとデザインのチカラは計り知れないと思う。
SU)(今はそういう状況だけど)俺がAppleの戦略でいいな、って思うのは、「子供にフォーカスしてること」なんです。Appleストアに行くと子供の遊び場が必ずあって、前まではiMac、今はiPadが置いてあります。それで子供がゲームで遊べるっていう。今そうやってAppleのプロダクトと育って行った将来、それよりもはるかに悪い物を見て、「何これ?」って思いますよね。けどWindowsに慣れて育ったら悪い物を見ても「悪くないじゃん」って感じてしまう。美しいものに慣れたとき、そうでないものを見るとすごい「あれ」ってなる、そのAppleの戦略良いなーと思って。
BH) あと、世の中で一番素敵な、完成されたデザインって自然っていう説がある。自然は何よりも素晴らしく機能的であり無駄が無く、意味がありシンプル。スズメバチが黄色と黒なのは危ないから、とか・・・すべてにおいてファンクションとフォームのつじつまがあっていて、一番合理的な形をしているのが自然。自然を研究するとデザインの勉強としていいのかもしれない。そういう意味で田舎育ちには良いデザイナーが多いのかも。
SU) Christopher Alexander の「Notes on the Synthesis of Form」という本に書かれていた「自然は常に最適な結果になるためにevolution(進化)していく」ということですね。長い間続いた古代文明の家などは必ず良くデザインされているらしいです。
—4.デザインと向き合うことの大切さと辛さ—
【では上杉さんはどうしてエンジニアからデザイナーになったのでしょうか?】
SU) 覚えてないです。(笑)本当にたまたま。エンジニアとして働いていたときにQuoraのデザイナーの人とランチをして、エンジニアとしてではなくデザイナーとして面接を受けろ、って言われて。Quoraにすごく行きたかったから、デザイナーとして面接を受けてダメだったらエンジニアで受け直そうなんて思ってたんですけど、デザイナーとして採用されたから、それからデザイナー。(笑)でも、今デザイナーを捨てる気はありますし、自分が持っている物が何も無い状態にあるのが好きなんです。例えばブロガーとして有名だとずっと面白い記事を書かなきゃってすごいプレッシャーがありますよね?捨てるのに抵抗が無いんで、もしまた捨てた物が必要になったらあとから拾えば良いと思っていて。仕事もぽいって捨てちゃいましたし、抵抗が無い。
BH) けどデザイナーってそういう危うさがあるよね。デザイナーと仕事をする上でそこって普通の人と全然違うから大変。常に刺激なり何かしらの興奮がないとデザインすることを辞めちゃう。
SU) 上がデザイナーっていうのが重要で、理解してくれるリーダーなりマネージャーが必要だと思います。
BH) うん、デザイナーってデザインだけでは短期的な結果に近づきにくいんですよ。長期戦なんで。さっきも例に挙げたけどAppleだってそう。時間を掛けて良いデザインを生み出す事をみんな途中で捨てちゃうんだよね。「デザインをきっちりやっていく!」と決めた時のそのリスクってすごい。時間がかかる分、捨てる方が楽で、短期的にかかるコストや、プロダクションの効率性、目先の利益を出しやすいから。でも長期的に考えると差別化がしにくくなる。ビジネスのトップの人間がそこまで腹くくって、俺はデザインちゃんとやりたいからその通りにやって売上は気にするな、っていう人じゃないとデザイナーは良い仕事をできない。
SU) あと、自分に正直な人でなければデザイナーにはなれないと思います。QuoraのUIの中の文章を書いてて「これすごい良いんじゃない?」って思ってたけど翌朝見たら「ああだめだ→じゃぁどこが変えられるか?」っていう繰り返しです。最初の10行とか100回書き直します。デザイナーをやる前は 自分で「これで終わり」って思い込ませてしまって止めてしまってました。完全に自分に正直になって「まだだめだ」って自分に言えること。そして同時に、「もうだめだ」って思わないように心をコントロールしなきゃいけなくて、それが難しいですね。自分に嘘つかない人にならなきゃだめなのかなって。
【途中でくじけてしまうことは無いのでしょうか?】
SU) メンターがいたから助かったんです。上に立つ人って、俺が「これもういいでしょ」、って言ったときに「まだだめだ」っていわなきゃだめなんですけど、そのときに「お前はもうダメだ」じゃなくて落ち込ませないようにしかもやる気を出せるように言わなきゃダメなんですけど、それってすごい難しいですよね。
BH) それ、自分のような立場からするとすっごい難しい。デザイナーが出して来たものが納得いかないときに「それはだめ、やり直して」って言わなきゃいけないの。だけどその人が頑張ってやってるの知ってるからどうしようかなーって悩むよね。そう言う時は、頑張ってやり直さなきゃ行けない理由を説明する。上手い方法は「どうしてこういう風にやったの?」って聞いてあげること。「でもこういう考え方はどう思う?」って質問すると、「ああそっちのほうがいいかも」自分で理解してくれる。「やり直しても良いですか?」って自分で言ってもらえるところまで質問を投げて行けばいいのかなって。
SU) 自分の上司で上手いなーと思ったのは、「いいと思う。でももう一日考えろ」って言うの。(笑) 何その含みのある言い方、ってこっちとしては思うんだけど改めて見てみると直すところも見えて来て。それでそのことを上司に報告すると、もともとダメだって分かってたのに、「じゃあ今度次のを見せて」って言われる。そういう上司との関係ってすごい難しかった。
BH) 日本人で、デザイナーって聞くと「おしゃれ!かっこいい!」とか言う人いるけど、実際「超地味」で「超残酷」で「超疲れる」。しかもやった割に報酬や成果があわないんじゃないかって思うくらい大変。それでもやりたいって思う人じゃなきゃデザイナーは向いてない。
—5.今後の道。良いデザインがもっと世の中に広まるために―
【では今二人が現在解決したい問題とは一体?】
SU) 教育をデザインで変えたいですね。それについて今度のTEDでも話そうと思っています。イノベーションを起こすのに必要な人はどういう人たちか?と考えたとき、3つパターンがあって、その辺を説明出来ればと思います。あと良いデザイナーを生み出す為の教育に関してとかも。お楽しみに。
BH) 僕はデザインとビジネスをもっと密接に関わらせて行きたい。資本主義の国の場合、どんなにきれいなデザインのモノでもビジネスの要素がなければ死んでしまう。例えば、もしどんなに良いデザインのwebサービスがあっても、ビジネスとして成り立たなかったらcloseしちゃうでしょ。世の中にインパクトを与えるためには、この要素が無いと人の心もお金も社会も動かせない。ビジネスとデザインをもっと密接に関わらせることによって、すごく良いデザインがビジネスに影響していくかなって。そんなよいデザインを普及させて行きたい。デザインとビジネスを融合させれば社会に対する影響力も大きいと考えてる。
【今後の目標は?】
SU) 肩書きや場所関係なく自分一人で生きて行けるようになりたい(ロケーションフリー的に)。けどデザイナーでフリーランスって難しいんですよね。だから最近またエンジニアリングを学んでいます。
BH) 会社をやってる限りロケーションフリーは無理だとしても、多くのロケーションで人に影響を与えたい。世界の色んな地域で働ける環境作りがしたくて、なら自分の住みたい街に会社のブランチを作ればいいかなって思って。それがどこかというと、東京とLAとNY。それらの街にオフィスを作る予定です。
【最後に: デザイナーに必要な資質って何だと思いますか?3つ挙げてください。】
BH)
- 自己顕示欲の強さ。自分を表現したいかどうか、目立ちたがり屋
- 既存の物を疑って考えること。
- 遊び心。冗談とかイタズラ好きで、相手を喜ばせるっていうことを考えられるかどうかがとても重要。
SU)
- デザイナーって役をこなせるかどうか。デザイナーは会社の中でもプレッシャーを受ける立場だから。
- デザインやっている時間が一番好きになれるかどうか。
- 何が正しいのか、正しい答えを探し続けることを出来るかどうか。俺は中学、高校生のときに片付けがとても好きで週に一度どこに机があるのが一番良いかというのを考えて動かしていました。今はiPhoneのホーム画面もいつもどこにどのアプリがあるのが良いかというのを考えて動かしています
インタビューを終えて—デザイナーは世界で一番残酷で、一番夢のある職業—
こ のインタビューをするまで、私はデザイナーとはなんだか魔法使いみたいでカッコイイと思っていた。けどそれは完全に非デザイナー側からみた勝手な妄想であり、私はデザイナーの単なる一面しか見えていなかったと気付いた。
実際のデザインとは、ロジックというピースを1つ1つはめていった大きなジグソーパズル。決して短期勝負ではないその作業は私が想像していたものよりはるかに過酷なもの。そしてそんなデザインをする彼らデザイナーは、私よりも遥かに正直に自分と、デザインと向き合っている。今この世界にある優れたデザインは、世界のどこかであるデザイナーが命を吹き込んだ特別なもの。そう考えるとデザイナーとは世界で一番残酷、だけど世界で一番夢のある職業なのかもしれない。
また、同時にもう1つこのインタビューを通して確信したことがある。誤解を恐れずに言うと、デザインとはデザイナーのものだけではない、ということだ。今このpostを読んでいるあなたも、そしてこのpostを書いている私も毎日何かをデザインをしている。「どういう構成にしたら読んでいる人に彼の言ってることが上手く伝わるか」「文字の大きさは」「句読点をうつ場所は」・・・
誰かのことを想像して自分を表現するとき、私たちはもう、「デザイン」をしている。 二人の対談はデザイナーやデザイナーを目指す人のためだけではなく、全ての人に当てはまることだ。
「ダメだと言われたときに、自分がダメだったんじゃなくて、自分の努力が足りなかったり考えが甘かったことを指摘してくれたと自動的に捉えること。そういう前向きな姿勢を学ぶことができたんです。」
つまり自分に正直になること。それは決して簡単ではないが、パソコンやソフトウェア、テキストも必要なく、今すぐ始められるより良いデザインへの第一歩に違いない。
上杉周作
シリコンバレー在住のデザイナー。@chibicode
88 年生まれ。神奈川県出身。小学6年まで横浜みなとみらいで暮らす。中学からアメリカ東海岸に引越す。現在は海外を拠点にデザイナーと して活動中。元Facebook、Appleにてエンジニアとしてインターン。元Quoraデザイナー。カーネギーメロン大学でコンピューターサイエンスを学び、その後同大学院にてデザインの修士号を取得。シリコンバレーで今最も注目されている日本人の1人。講演「20歳を過ぎてからプログラミングを学ぼうと決めた人たちへ」 慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで講演も行った。
Brandon K. HIll (ブランドン・片山・ヒル )
btrax, Inc.CEO @BrandonKHill
サ ンフランシスコ州立大学デザイン科卒。北海道札幌市出身の日米ハーフ。高校卒業時までほぼ日本で育ち、1997年アメリカサンフランシスコに移住。現在は サンフランシスコに本社のあるグローバル市場向けBranding / Marketing 会社btrax CEO.。今後の目標は日本の若い起業家、起業家志望者に向け、より多くの成功事例を見せる事により、世界進出の夢を与えること。

はじめに
教授からのWhy? Why? Why?と立て続けに押し寄せる「どういったロジックを元に〜をデザインしたのか?」という質問の嵐に対して、学生達がBecause, Because, Becauseと素早く理論を構成して「何故なら〜だからです」というロジックを組み立て続ける。そんな米国大学で展開されるデザイン講義を目の辺りにしてきた僕は、「デザインとはこんなにも理論的なプロセスだったのか」という率直な実感を持っています。
デザインと聞くと、生まれ持った才能を存分に発揮して、クリエイティブに様々なものを生み出していくというイメージをお持ちの方も多いかも知れませんが、これは全くの誤解であると言えます。本来、デザインプロセスとは問題解決を前提としているため、地味な作業の連続であり、非常に理論的なプロセスで構成されています。
僕は日本で5年間、米国で3年間デザインの教育を受けましたが、実感として米国におけるデザイン教育の方が理論的な傾向は強いと感じています。そこで今回は、僕が一体どんなデザイン教育を米国大学で受け、何を感じてきたのかということをお伝えさせて頂きたいと思います。

1. デザインとアートの違い
“What is the difference between art and design?”(デザインとアートの違いとは何か?)この質問は、米国で初級デザインクラスを受ける学生達が、教授達から頻繁に投げかけられる問いの1つです。何故この質問がよく使わるのかというと、デザインを習い始めた学生の多くは、デザインとアートを混同しているためです。デザインとアートの間には、決定的な違いあります。それこそ”Design solves a problem, art is expression”(デザインとは問題解決であり、アートとは自己表現である。)というものです。
ここから言えることは、Why?をBecauseで説明出来なければ、それは明らかにデザインではないということなのです。何となく、個人的に好きだから、感覚で、といった理由を述べた時点でそれはアート(自己表現)であり、デザイン(問題解決)ではありません。それは言い換えると、問題と向き合い、それを解決する中で生まれたモノのみがデザインであるということでもあります。では一体どういった要素や原則を元に、デザイナー達はロジックを組み立てるのでしょうか。
2. デザインの基本要素と基本原則
僕が教わったデザインの教授は、7つのwhyに答えられない者はグラフィックデザイナーではないと常々口にしていました。何故ならデザインの基本要素は7つ存在していて、そのそれぞれに対してBecauseを考えるのは基本中の基本であるとされているからです。
下記が、デザインにおける7つのBasic Elements(基本要素)です:
- Line(線)
- Color (色)
- Shape (形)
- Space (空間)
- Form(フォーム)
- Value (明度)
- Texture(質感)
デザイナー達は何かを作る際にはこれらのデザインを構成する全ての要素に対してBecauseを考えていきます。また、デザインにおける6つのBasic Principal(基本原則)というものがあり、要素を組み合わせて全体構成を考える際に適応されます。
- Balance(バランス)
- Gradation(グラデーション)
- Repetition(反復)
- Contrast(コントラスト)
- Harmony(調和)
- Dominance(割合)
初級デザインのクラスでは、優れたデザイナーがデザインしたものを上記の要素にそれぞれ分解•分析して、なぜそれが優れたデザインなのかということを知り、説明出来るようになることから始まります。
ちなみにもう少し上のクラスになると、Why?→Becauseという1つの階層で終わるのではなく、Why?→Because→Why?→Because→Why?→Because→…をどんどん繰り返すようになります。これは一つの側面からWhyを問い続けることで、問題の本質まで思考を巡らせるためです。これを様々な側面から行うことで、理論をより強固なものにしていきます。
ここまで読むと、Whyに対するBecauseさえしっかりしていれば見た目はどうでもいいのか?という疑問が浮かんでくるかも知れませんが、実はデザインにおける「問題解決」と「見た目」は密接に関わっています。
4. 機能と形態は表裏一体
デザインは美的造形性に加えて、優れた機能性も同時に兼ね備えていることが必須です。ここで言う美的造形性とは見た目の美しさであり、機能性とは本来そのデザインが担う問題解決の手段を指します。
この文脈で、有名な建築家ルイス・サリヴァンが残した”form follows function”という考え方は現代に受け継がれ、芸術やデザインの分野に多大な影響を与えました。これは機能(問題解決)を追求することで形態(見た目)が自然に定まるとする考え方です。
現在プロダクトデザインで世界的な地位を築いたAppleの創設者であるスティーブ•ジョブズが残した下記の言葉もまた、そうした考え方を深く反映するものであったように感じています。
“デザインとは「どう見えるか(how it looks)」ではなく、「どう機能するか(how it works)」の問題である” — スティーブ・ジョブズ
ただしこれを機能が最も重要という意味で捉えてしまうと本来の意味を見失ってしまうかも知れません。機能と見た目は表裏一体。だからこそwhyを問うことが重要であり、それに答えることは見た目の美しさを洗練する行為でもあるのです。
5. デザインプロセス
ではもう少し広義でのデザインを考えた時、全体的にどういったプロセスで構成されているのかということをご紹介したいと思います。デザイン分野によって細かなステップは違うものの、僕の通っている大学では大まかに以下の5段階がデザインの基本フェーズとして教えられています。
a. Understand the problem(問題の理解)
b. Gather Information(情報収集)
c. Think by sketching and choose one (アイデアの拡散と収束)
d. Production(アイデアの具現化)
e. Refine (改良)
a. Understand the problem(問題の理解)
最初の段階では、まずクライアントが抱えている問題を洗い出します。多くの場合はヒアリングをすることから始め、デザインによって解決するべき問題が何になるのかを特定していきます。
この段階で、そのデザインが達成するべきゴールは何で、最終的に見たり使ったりするのは誰で、競合にはどんな相手が居て、デザインが最終的に置かれる環境設定は具体的にどんな具合で、伝えるべきメッセージは何で、どういったイメージを利用者に抱かせるべきで、どんな反応を得たいのかといったことを突き詰めて行きます。
b. Gather Information(情報収集)
問題を特定したら、次にその問題を解決するために必要な情報を収集するべくリサーチをしていきます。オンラインではWebサイトやデータベースを見ながらファクトを集めたり、オフラインでは必要とあればインタビューを設定して問題解決のキーとなる情報を持つ方へ直接話しを伺いに行ったりもします。また、何かを作る場合にはどんなリソースが利用可能で、どういった素材を使うことが出来るのかといったことも考えていきます。
c. Think by sketching and choose one (アイデアの拡散と収束)
「合計が10となる数式を求めなさい」という問題には、1+9、2+8、3+7…というように多くの求め方が存在するように、現実の世界でも1つの問題を解決するための道筋は数多く存在しています。
そこで、問題を特定し考えるために必要な情報が揃った後は、徹底的に解決方法の数を出すというプロセスを踏みます。このフェーズにおいて、IDEOという世界的に有名なデザインコンサルティング会社が行うブレインストーミングのフレームワークは非常に有名です。
1.Defer Judgement (批判を延長する)
2.Encourage Wild Ideas (突飛なアイデアを奨励)
3.Build on the Ideas of Others (他人のアイデアを再利用する)
4.Stay Focused on Topic (テーマにだけ集中する)
5.One Conversation at a Time (1度に1つの会話)
6.Be Visual (ビジュアル化する)
7.Go for Quantity (量を追求する)
彼等はこのフレームワークを元にブレストを行い、数多くの案を次々と出して行きます。最終的には壁一面がイラストや言葉で表現されたアイデアを書いたポストイットで埋め尽くされます。
こうしたブレインストーミングに限らず、様々な切り口を拡散する思考方法をラテラル思考(水平思考)と呼び、ロジカルな思考だけでは辿り着きづらいクリエイティブな解決案にまで思考幅を拡大させることを主な目的として利用されます。
また、僕の通っている大学では「考え尽くしたら思考をオフにしてリラックスする」という方法も推奨されています。人間の脳は、まったく関係のないことをしている時に特定の答えを閃きやすいという性質を利用したアイデア発想法とされています。
こうして拡散された数多くの案は、合評やフィードバックを経て収束され、選んだ案を元にデザインを作る段階へと入って行きます。
d. Production (アイデアの具現化)
「作りながら考えろ」というのはデザインを学ぶと必ず教わるやり方です。何かを作る時、頭や紙の上だけで考えてしまうとどうしても机上論になりがちなので、実際に作りながら進めるのが一番効果的であるということを伝えています。
1-3の段階で大まかなパズルのピースは出揃い、それらをどのようにはめ込み、組み立てるかといった一連の仮説やストーリーは出来ています。しかし、実際に作ってみないと分からない部分というのがどうしてもあるため、アイデアを具現化させながらさらに作りこんでいく必要があります。
この段階で、デザイナーはモックアップやプロトタイプと呼ばれる完成一歩手前となるダミーに落とし込んでいくのですが、設計図で見るデザインと、形になったデザインを見るのとでは感じ方に天と地ほどの差があります。
また人間の認知能力というのは非常に優れていて、僕たちはデザインを見た瞬間、無意識のうちに様々な情報を認識•識別しています。こうした認知のおかげで僕たちは「あっ、このデザイン何となく好きだな」と一瞬にして感じることが出来てしまいます。
“God is in the details.”(神は細部に宿る)という言葉がありますが、無意識の認知は細部にまで及び、例え1mmの違いですら時にデザイン全体へ大きな影響を及ぼすことすらあります。だからこそデザイナー達は1mm単位までしっかりディテールを追求し、細部が全体に及ぼす感覚までデザインするように心がけています。
こうして具現化され、ディテールまで作り込まれたデザインですが、デザインプロセスがここで終わることはありません。
e. Refine (改良)
完成されたように見えるデザインも、デザイナーやクライアントではなく、実際の利用者からは思いもしなかったようなフィードバックが返ってくることがあります。これは想定したデザインの機能と、実際に作用している機能との間にギャップがあるためです。
そうしたギャップを埋めより現実的で効果的なデザインにするために、様々なユーザーテストを行っていきます。こうして集計したフィードバックを元にして、余計な機能を削いだり、足りていない機能を加えたりして、バランスを改良していきます。
上記5段階をプロセスを経て、ようやくデザインは市場へと出ます。もちろんこのプロセスは単なる基本形であり、業種によって違いますし、プロジェクトによって変形したり、新しいプロセスを加えたりするので、デザインの大まかな流れとして認識して頂ければと思います。
7. Typography(タイポグラフィ)講義
タイポグラフィとは、活字を適切に配列することで、文字の体裁を整える技術です。例えば読者の方が今ご覧になっているこの文章も、一つ一つの文字が横や縦にスペースを保ちながら並べられることで読むことが出来ます。
文字と文字との間隔、センテンスごとの間隔、センテンス上下一行づつの間隔、これら全てには名前があり、グラフィックデザイナーはこれら全てのスペースを調節します。
一行に何文字を入れて、文字間隔はどれくらいに設定するべきなのかといった作業も、実は感覚ではなくて視認性を高めるために定められたルールが数多くあります。グラフィックデザイナーはこれらのルールを適応しながら、理論的に文字情報を配置していきます。
またタイポグラフィ講義では、デザインで使用してもOKなフォーマルなフォントリストが生徒に配布され、基本的にそれ意外のフォントを授業で利用することは推奨されません。理由はシンプルで、デザインに利用出来るような美しいフォントというのは実際には非常に限られていて、無料で配布されているようなフォントは視認性や実用性が非常に低いためです。
また、それぞれのフォントの組み合わせにも相性があり、どのフォントがどのフォントとマッチするのかという相性なども学びます。こうして学生達は様々なフォーマルなフォントと慣れ親しみ、どのようにデザインへと適応させるのかを具体的に学んでいきます。
ちなみに僕の大学のデザイン学生は、タイポグラフィのクラスをA, B, Cと3つ取らなければ卒業出来ません。これは視覚デザインにおいて文字情報が占める割合は非常に重く、タイポグラフィが出来ることはグラフィックデザイナー/Webデザイナーにとっては必須であるためです。
8. 中国系移民の教授から学んだ移民の可能性
僕は米国のデザイン講義を担当する教授から、デザインだけではなく英語を第二言語とする移民が秘める可能性についても学びました。
今でも思い出しますが、僕は留学当初、明らかに中国なまりで英語も不完全な中国系移民の教授が、数多くの人気デザインクラスを担当しているという事実に驚きを隠せませんでした。彼は中国から米国大学へ留学し、その後デザイナーとして働いた後に、米国の大学でデザイン教授として働き始めたのだそうです。
アジアからの大学留学生が、後に海外就職を果たし、米国で人気デザイン講義を掛け持って教えるまでになるという彼のストーリーは、留学生の僕にとっては感動的ですらありました。
そんな中国人教授が使う英語はシンプルにして明快であり、授業内容も中国と米国のデザイン事情を交えながら教えるという移民ならではの独自スタイルを確立しています。
特にカルフォルニアでは様々な文化背景をもった教授や生徒達が同じ教室で学びあうので、講義内容だけではなく彼等の文化や考え方を知り、自分のデザイン的な視野を広げることが出来ることも一つの魅力かも知れません。
9. 必修科目としての企業インターンシップ
僕は現在、大学のクラスとしてbtraxへインターンシップをさせて頂いています。多くのデザイン系学生にとってこの企業インターンシップは必修であり、取らないと卒業することが出来ません。
デザインのアカデミックインターンシップは様々ですが、実はその7-8割以上が無給であるとも言われています。こう書くと学生達を無給で働かせるのはひどいという声が聞こえてきそうですが、実はその逆であったりします。
米国のデザイン学生達は、むしろ無給でインターンシップ出来る企業を探します。それはネームバリューのある会社は無給、ネームバリューの無い会社は有給という常識が定着しているからです。
学生達は卒業後に就職する際、ネームバリューのある会社でのインターン経験をresumeに書く事で自らを売り込むことが出来ます。多くの学生にとってはインターンで報酬を得るよりも、卒業後に希望の会社へ就職することの方が重要であるため、無給インターンであっても経験を稼ぐためにどんどん応募します。また無給インターンで働いた後に、その会社から正社員としてのオファーが来ることも少なくありません。
また、企業もこの事を熟知しているため、ネームバリューのあるデザイン会社の多くはインターンを無給とします。それとは反対に、ネームバリューだけでは学生をインターンとして呼び込むことの出来ない企業は、その対価としてインターン生にお金を払うのです。
10. MBA & Designという新領域
ビジネスとデザイン。この二つにそれぞれ全く違ったイメージをお持ちの方も多いかも知れませんが、この記事を読んで、少しデザインに対する捉え方が変わったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はデザインコンサルティングとビジネスコンサルティングは密接に関連していて、切っても切れない関係にあります。
また、様々なビジネス分野におけるデザインの重要性が高まってきている近年、デザインとビジネスの両軸を行うことの出来る人材需要も比例して高まってきています。
こうした背景も手伝い、最近はMBAとデザインを融合したコースを提供する海外大学院が徐々に増え始めています。そうした大学では、デザインプロセスからビジネス理論までを幅広く学び、最新の市場ニーズにあう知識や技術が習得できるように講義が設計されています。
僕はこうしたコースを提供する大学院に強い興味を持っているんですが、現在幸いにもこれらを実践的に学ぶ機会を得ています。というのも、btrax社はビジネスとデザインの融合を掲げているため、業務内容が非常に理論的かつクリエイティブです。もしbtrax社でのインターン内容も「米国のデザイン教育から学んだこと」に含めるとするのであれば、僕は今まさに「デザイン×ビジネス」を米国で直に学ぶ機会に恵まれていると言えます。
11. 終わりに
僕は日本と米国でデザイン観がどうしてこうも違うのだろうと留学して以来ずっと考えてきましたが、どうもお互いの国が持っている根深い文化背景に由来するところが大きいという結論で間違いないと考えています。
例えば言語一つとってみても、日本語は円を書くようなメッセージの伝え方をしますが、英語は直線的に物事を伝えます。文章の構成方法も違えば、コミニケーションの要所も全く違います。
こうした文化背景は、その土地に住む人々の思考方法に多大な影響を与えています。異なる考え方は、異なるモノを生み出します。インプットが違えばアウトプットが異なるのは必然であり、その結果として出来上がるデザインも全く違うものになっていきます。
今回は「米国のデザイン教育から学んだこと」という題で書かせて頂きましたが、僕は日本のデザイン教育から学んだことも沢山あります。どちらが良いというわけではなく、どちらにも長所と短所があり、それらをうまくバランスさせることが重要なのではないかと思うのです。
まだまだ実践していかなければいけないことが数多くありますが、日米それぞれから素晴らしい要素を学び、グローバルにデザインを展開させる上で何が重要なのかということを意識しながら、これからも真摯にデザインと向き合っていきたいと思う次第です。
* togetterにも今回の記事内容をまとめました。多くの方から反響を頂いておりますので、こちらも同時にご覧になって頂ければ幸いです。
*追記:「スペシャルインタビューブランドン氏」に、btraxのCEOであるBrandonさんが下記のトピックで受けたインタビューが掲載されました。
- 世界で勝負するために、日本が学ぶべきユニバーサルデザイン
- 日本に足りない能力とは?
- 今、世界に向けて
今どういった事が日本のwebデザインの現場に求められていて、どうやって国際化社会に対応していくべきなのかというソリューションが具体的に提示されています。今回の記事と併せて読まれると更に日米間の現状理解が深まると思われますので、是非ご覧になってみて頂ければ幸いです。
筆者: Masato Brian Miura @rami2929
初めまして、日本の大学を休学し、10月からbtraxでインターンとして働いている田制明日香と申します。btraxの社内を大きく分けるとデザイン/制作とマーケティングの2つの部署で構成され、私はマーケティングチームに加わり、社内外のプロジェクトのアシスタントとして働いています。btraxは企業の海外向けブランディングや、スタートアップ向けのUI/UXデザイン、プロモーショナルマーケティング向けデザインなどのプロジェクトを手掛け、Webデザインだけではなく多様なデザインサービスを提供しています。
最近ではbtraxは日本のスタートアップ企業の海外進出向けのマーケティングサービスやイベント開催等で知られていますが、btraxのメインサービスはデザイン関連であり、スタッフの約半分はデザイナーです。アメリカではこのような会社はクリエイティブ・エージェンシーと呼ばれています。私はデザイナーではありませんが元々デザインには大変興味があり、実際にこのようなクリエイティブな環境に身を置くと毎日新鮮な刺激を受け、自分なりに”デザイン”というものを考え直す機会が数多くあります。これまでのインターンを通じて非デザイナーである私がデザインの現場で学んだ事をまとめます。
デザインのクオリティーはビジネス成果と直結
デザイン会社で働き始め、まず最初に気付くポイントは、デザインの品質がビジネスの成果に直接影響するということ。同じような商品やサービスを提供しても、パッケージ、パンフレットやサイトのデザイン等のデザインの違いが売り上げに直接影響します。また、デザインの役割はターゲットとする客層に最適なメッセージを提供し、クライアントのビジネス価値を最大限引き出す事が求められます。このポイントを踏まえ、Calbeeの北米進出向けブランディングプロジェクトでは、既存の国内でのブランドイメージに捕われる事無く、自由な発想に基づいて最適なデザインを創作したサービスをアメリカ市場に提供しました。その際も、社内チームではクライアントのビジネス的結果を一番に考え、ブランディング/デザインサービスを提供したと教えて頂きました。
デザイナーは才能よりも努力
インターンとして働き始め一番驚いたことは、良い意味でデザイナーは”地味”であるということ。当初デザイナーは天性の才能と個性を生かして仕事をするものだと思っていましたが、デザインの仕事の90%程は理論に基づいて進められ,残りの10%の部分でそれぞれの個性などを出すことができるそうです。逆に言えば、デザインの才能が無いと思っている人でも努力してデザイン理論を学びさえすれば、プロとして通用する可能性もあるということです。
マーケティング部とクリエイティブ部は表裏一体
btraxでは、マーケティングチームとクリエイティブチームが密接に関わって1つのプロジェクトを進めて行きます。特にプロモーション系のキャンペーンを行う場合、マーケティングチームの企画力やメディアとのコネクションとクリエイティブチームのデザイン力を融合させ、一つのサービスを提供します。クライアントにとって最も効果的で最善のソリューションを提供するという目的を達成する為に、ロジカルなチームとクリエイティブなチームが日々意見を闘わせているのを目にします。
良いデザインを生み出す秘訣はクライアントとの信頼関係
デザイナーにとって一番のチャレンジは、クライアントから信頼を得ることです。クライアントとの信頼関係がしっかりと構築されている場合、こちらから提出するマテリアルに対して安心して了承をして頂けます。一方で、事前に信頼関係が出来ていない場合、こちらからのプロとしての意見よりもクライアントの主観が入ってしまう時がある為、結果に結びつく良いクオリティのものが出来にくくなってしまう時があります。btraxはクリエイティブ・エージェンシーとして数多くの優秀なデザイナーを抱えていることに自信がある為、安心して仕事を任せて頂けることが大変嬉しいなと感じます。
Webやモバイルサービスの成功の秘訣はUI/UX
以前に書かれたこちらの記事の通り、最近のWeb/モバイルサービスがヒットするかどうかはそのUI/UXのクオリティーに左右されます。特にアメリカのユーザーはシンプルなものを非常に好み、少しでも使いにくいと感じるとすぐに使わなくなってしまうので、細かい注意を払う必要があります。そのような文化の違いから、このサンフランシスコ周辺のスタートアップや企業が提供するアプリのUI/UXにおけるデザインクオリティーは非常に高く競争率も激しいです。実際にbtraxが日本のアプリを海外向けにローカリゼーションする際もUI/UXの改善から行うケースも少なくありません。
良いUI/UXを構成するのはビジネス+システム+デザインの融合
インターフェースやユーザーエクスペリエンスはデザインに密接に関わってる為、デザイナーから提案をするものだと思っていました。しかし実際は、デザインという観点だけではなくビジネスとシステムという観点も必須であり、そのビジネスとシステムとデザインとのバランスが非常に難しく重要です。ユーザーに対して望むアクションを起こしてもらう、コンバージョン率や複雑なシステムをどのようにして直感的な使い易さに変換して行くか等、それぞれの分野の知識やインプットが最適なバランスで融合された時にやっと優れたUI/UXを作ることができます。単純に綺麗な画面やスムーズな動きを作ることだけでは成功することは厳しいと感じます。
もの造りはプロセスが重要
最終的に出来上がったデザインだけを見ると、誰にでも作ることができるシンプルなものだと思うときがあります。しかしながら、それに至るまでの背景や哲学等のプロセスが非常に複雑且つ重要です。単純に同じようなものをデザインしたとしてもその裏に明確なビジョンがない場合、その良さは伝えることはできず結果にも結びつけることは難しいと思います。単純に見えるデザインでも奥が深く、大変興味深いポイントです。
良いデザインはシンプル
良いデザイナーは削るのが上手く、そして良いデザインは究極なまでにシンプルになっています。例えば、企業のロゴを一つとっても長い間愛されているものはやはりシンプルであり、飽きがこないものが多いと思います。単純にデザインというと、”誰も真似ができないような独特なもの”を想像してしまいがちですが、プロのデザイナー達が創り出す作品はシンプルに洗練されているものです。
シンプルなものほど造るのが難しい
そして、シンプルなデザインは作るのに多くの労働力と時間を要します。完成されたものだけを見ると短時間で作ることができるように見えますが、そこに行き着くまでには多くの議論と実証を繰り返しています。クライアントの方に満足して頂く為に背景にある情報をしっかりとコンセプトとして説明することもデザイナー達の仕事になります。
良いデザインは言語の壁を超える
最後にデザインのチカラで言語の壁が超えることができるということを強く感じます。品質の良いデザインは少ない説明のみでメッセージがクリアに伝えることができ、無意識に消費者の心をくすぐります。これは万国共通であり、例え母国語でさえも多くの人はあまり多くの文章を読むことを好まない為、btraxがアメリカやアジアの企業向けにローカリゼーションを行う際にも文字で伝えるのではなくデザインで”魅せる”方法を取っています。
インターンを始めて2ヶ月程が経過しましたが、毎日非常に密度の濃い勉強をさせて頂いてます。様々なものが溢れている時代の中これからはどのような仕事をするにしてもデザインの観点は重要視され、それが大きくビジネスに影響することは明らかです。また長年使用される作品は世界中のあらゆる所で通用し普遍的なものであり、マーケティングセンスだけではなくそれと同じ程にデザインを洗練させることが激しい競争を生き残る為に必要不可欠になっています。
筆者: 田制 明日香 @asuponnne
以前にデザインが担うブランディング価値についてのポストをしたが、ヴィジュアルデザイン以外の効果的なブランド構築方法として、ここ最近はソーシャルメディアが大きく注目されている。そもそもブランドイメージとは、発信側が与える”印象”と受け取り側との”やり取り”を中心に構成される事を考えると、インタラクティブな要素の強いソーシャルメディアは後者において、大変効果の高いメディアであると言える。
数あるソーシャルメディアチャンネルの中でもFacebookはその特性上、バイラル性も高く、個人的な利用以外でも、企業が提供する商品やサービス、そしてその企業自体のブランド構築ツールとしての側面も見られる。特にアメリカでは既に多くの企業がFacebook Pageを通して顧客、そして潜在顧客へのブランド構築を行っており、ここ数年の間、複数の事例を研究する事でFacebookページを活用したブランド構築における幾つかの方法論が見えて来た。
Facebook Pageとは企業や提供商品、サービス、そして個人に対する”ファン”が集まるページで、ユーザーがそのページを”Like”する事で、ファンの数を増やす事が出来る (例: btrax社のファンページ) 。 ファンになったユーザーには、そのページ上で表示される新着情報や、キャンペーン、ユーザーとのやり取りが自身のステータス上に届けられ、企業側は効果的なブランディング展開が可能になる。実に全Facebookユーザーのうち、約51%がファンになっているページのブランドの商品やサービスを他のブランドより優先して購入すると答え、約60%が友達にそのブランドを勧めると答えている。(その他のFacebookに関する統計)
その一方で、ページを単純なファン数だけでは、ブランディング価値が低いのも事実である。自社のページを”Like”してもらう以上に、多くのユーザーをEngageさせる必要がある。Engageとは日本語にするとユーザーの”取り込み”であり、効果的なコンテンツ提供を通して、興味を引き、やり取りに参加させ、そのブランドに対しての取り込みを行う。Facebook Pageを利用してのEngageには下記の7つのプロセスが考えられる。(7 Steps of Engaging fans on Facebook)
Facebookを使ったファン取り込み (Engagement) への7つのステップ
- Step 1: Attention
ページの存在に気づいてもらう
- Step 2: Participation
ファンになってもらう
- Step 3: Interaction
Like等のアクションの誘発
- Step 4: Leadership
他ユーザーへの影響
- Step 5: Loyalty
ブランドロイヤリティ生成
- Step 6: Superfan
熱狂的なファンへの成長
- Step 7: Evengelist
エヴァンジェリストへ昇華
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一方で、上記のようなプロセスを経てブランド構築をする際には、少しでもやり方を間違ってしまうと、逆効果も生み出してしまう。仮にページをLikeしていたとしても、興味を失ったファンは、Likeしていないユーザーと同等の価値しか望む事が出来ない。また、最悪の場合、kページを “Unlike” してしまう。最新のCMBによるユーザーアンケート統計によると、ブランドに興味を持たなくなったユーザーがFacebook Pageを “Unlike” する理由としては、1.ポストが頻繁過ぎる, 2.宣伝ポストが多過ぎる, 3. 同じようなコンテンツが多く、面白く無い 等が挙げられる。
上記の統計で分かる通り、ファンページ運営上、避けるべきポイントがある。例えばTwitterアカウントとFacebook Pageを同期しただけで、更新を全てTweetからの情報だけに頼るのは良く無い。また、ページを見に来るユーザーに対して何かしらの”特典”を提供する必要もある。もしユーザーの興味を起因に成功し、何かしらアクションを興してもらえれば、ステータス画面を通じその友達にもページの存在を知ってもらえる一つの要因となり、まさにソーシャルメディアが持つバイラル性を活用したブランディング戦略が展開される。
実例から見るファン獲得・エンゲージ方法
それでは、実際のケースを元に、Facebookを有効活用している企業が、どのようにしてユーザーをファンに転換し、その後アクティブなEngage戦略を行っているかを検証してみよう。
ポイント1: Facebook Pageがニュースソース以外の役割を果たす
繰り返し同じような情報ばかりが配信/記載されるだけのページだと、多くのユーザーが興味を失ってしまう。プラグインやアプリを活用して、ユーザーとのインタラクションを生み出すページ生成が必要になってくる。その辺を上手く展開しているのが、ファッションブランド: ideeliのFacebook Page (ファン数は20万弱)である。
彼らのページの運営戦略のポイントとしては:
- 頻繁にプロファイル画像を切り替え、フレッシュなコンテンツのイメージを提供している。
- 新しいユーザー獲得の為に、次々とプロモーションを行っている。最近では3つの旅行が当たるキャンペーンを行った。このようなプロモーションを実行、及び景品の宣伝を通して現在のファンの取り込みと新しいファンの獲得を行っている。
- 上記のようなプロモーションを定期的に行う事で、一度参加したユーザは他にもプロモーションが行われていないかを探すため、ページにある面白いアイテムを見て回り、また次のプロモーション情報を得る為に、頻繁にページに戻ってくる。
- ファンページのタブ機能を利用し、ランダムに複数のプラグインを表示することで、常にユーザーはページ上を長時間ブラウズし複数のタブを試す。特に、”Shoes”のタブに注目すると、掲載されているフラットシューズが “上品か派手か?” について自分の意見を投票出来る様になっている。即座に開票結果が表示される投票に加えて、その靴のボックスの右下のコメントプラグインを使ってもっと詳細なコメントを入力できる。自分が残したコメントは直接自分のニュースフィードでシェアされる。ソーシャルシェアを形成する最適な方法の例である。
- また、同タブで、コメントの右下のプラグインを介して小売商品クラブのメンバーになるように誘導し、同じページのヒット数を稼いでいる。
- 上記に加え、ideeliはシンプル且つクリエイティブな方法でeコマースの要素も実装した。一度に一種類だけ購入可能な靴の画像が表示されるローテーションエリアに購入ボタンを設置した。ideeliのFacebookファンページで過ごして いる間に、ユーザーは靴の写真をブラウズしながら、すべての写真を見ることができ、気が向いた時にその商品を購入する事も可能である。
- 最後に、RSSプラグインを利用して複数のタイプのコンテンツを表示している。例えば、芸能人のジェシカ・シンプソンからのコメントをフィーチャーし、ユーザーの興味を引く事に成功している。

ポイント2: ソーシャルシェアリングの創造
実に18%のユーザーが自分の好きなブランドを支持している事を友人に伝えたい事を理由に、Facebookに載っているブランドページのファンになっている (eMarketer)。このようなソーシャルシェアリングを後押しするためには、何をするべきであろうか?
- ユーザーにシェアできる何かを与える! ユーザーは何をシェアしたいのか? 面白いあるいはおかしなコンテンツ、ジョーク、漫画、写真、ビデオ。ビデオコンテンツに注目したinfinitiのFacebookのページでは、新しいモデルの4本のコマーシャルが掲載されている。それぞれにページ専用のFacebookの「シェア」ボタンが付いており、ユーザーのニュースフィードに直接ビデオを送れるようにデザインされている。ニュースフィードで自分の友達すべてもそのビデオを見ることが可能。

ポイント3: ブランド親和性の創造
8%のユーザーがFacebook経由で初めて知ったブランドのファンになっている。そして6%がファン専用コンテンツにアクセスしている (eMarketer)。自分のユーザーを内部関係者のVIPのようにもてなし、この関係を表現する環境を構築することは、ブランド親和性を創造するのに役立つ。ブランド親和性を創造するため、Facebookファンページ上でinfinitiが実際どのようにページを利用しているか見てみよう。
- infiniti JXコンセプトカーの8月公開に先立ち、infinitiはプロフィールのページに時間限定付きの回転型写真プラグインをインストールした。これにより、今までに見たことがないコンセプトカーの写真をそのページのファンだけに公開した。また、より一層の相乗効果を生み出す為に、ファンページ上で次の写真が追加される日時までのカウントダウンを表示し、ユーザーの期待をかき立てる事に成功した。

infinitiに加えて、 EA Sports SSXゲームのファンページにも、興味深いファン向けのファン専用コンテンツが利用されている。
- 自社のゲームファンのために、 EA Sportsは、別々の日に1度に1つづつ、ゲームキャラクターをフィーチャーしたコミックコンテンツを発表している。毎回のリリースにあわせてユーザーはファンページに訪れ、コミックを閲覧する。リリースされた各コミックはファンページの訪問者だけがアクセスできる専用コンテンツの一部にする事で、ファンが感じる優越感も強化した。

Facebookファンページ以外にファンとの交流を育むにはどうしたら良いだろうか? ページ上に他のソーシャルチャンネルを記載・表示し、ファンに他のオプションを与える事も重要である。
- infinitiの初期Welcomeページでも採用されいているように、Twitterからフィードインされたコンテンツを表示する。
- 同じくinifinitiのページでは、他のソーシャルチャンネルであるFlickr, YouTube, そしてTwitterへのリンクも記載する事で、ユーザーインタラクションの幅を広げている。
企業や商品/サービスにおけるブランド構築には、顧客に対するイメージ造りと、インタラクションから生まれる親和性の創造の両方が必要になってくる。優れたヴィジュアルデザインが前者を担う一方で、ブランド経験を提供するチャンネルは複数に及ぶ。その一方で、距離的な問題等で、直接ユーザーとのやり取りが困難である場合が、ソーシャルメディアがかなり威力を発揮する。特に日本から海外ユーザーに向けて正しいブランディング構築に於いては、Facebook pageを中心としたソーシャルキャンペーンを活用する事をお勧めする。
ちなみに、具体的なキャンペーン内容や、コンテンツ制作依頼に関してはこちらから。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill