btraxはメインビジネスとして、米国進出を試みる日本企業をデザインやプロモーションの面でサポートしており、最近ではSF NewTech Japan Night の主催によってスタートアップ企業の米国進出支援も行なっている。Japan Nightを行なう中で米国進出を目指す日本のスタートアップの数は徐々に増えてきている様に感じる。しかしながら、VISAや言語の壁、文化の違いなど障壁は多く、なかなかこちらにオフィスを構えて本格的にサービスを始めるという段階まで進んでいる企業は実際少ない。そんな中、第3回SF NewTech Japan Nightに出場したGrow! Inc. は、昨年米国での会社登記を済ませ、米国進出に向けて着々と準備を進めている。今回は、そんなGrow!のCEOである一ツ木氏に話を聞き,実際に米国進出までの道のりや今後の展望についてお話を聞かせていただいた。
インタビューでは、ビジネスやスタートアップに限らず,どんな場合においても必要な1つの原則を自身の経験を交えてお話しいただいたので、関連する動画の話と織りまぜながら共有したいと思う。
Grow! Inc.は、お気に入りのコンテンツにボタンを通じてチップを贈り、コンテンツ製作者を支援できるとともに、コンテンツを友人と共有できるソーシャル・チッピング・プラットフォームである。今現在日本では6000人以上のユーザを獲得し、計900万ページ上にGrow!ボタンが設置されている。
Grow!の始まりは、強い問題意識からであった。若い頃に音楽をやっていた一ツ木氏は、周囲のクリエイターたちがアルバイトをしながら生計を立てている事に疑問を感じ、長い間そんな友人たちを助けたいという想いを抱いていた。ネット業界で働き、そこで得た知識をもとに全てのクリエイターたちにファンがネット上で直接、少額で投資する事が出来る仕組みを共同創業者と共に思いついた。こういった経緯があり、「ファンとクリエイターの関係をインターネット上で創り上げたい」という強い目的意識からGrow!は誕生したのである。
WHYの大切さ
Simon Sinekの”How great leaders inspire action ”というTEDの動画を見た事があるだろうか。4,177,227回の再生回数を誇る、TED内でも最も高くランクインしているStoryである。このプレゼンテーションの中で彼が力強く唱えている黄金のサークル理論をここで紹介したい。
通常、企業はみな、自分が「何を売っているか(WHAT)」「どんな風に売っているか(HOW)」を理解しており、多くの経営者は自身の事業について最も多くを語る。つまり、WHAT(何をするのか)-HOW(どうやってするのか)-WHY(なぜするのか)の順番で事業を決めているのである。しかしながら、時代を変革させ、人々の行動を変える偉大なる存在は、いつも根本にWHY(何故やるのか)をおいて事業を考えている。何が目的なのか、何のためにこの会社は存在するのか。何故顧客はその製品を買う必要があるのかを中心に考え、必ずWhy-How-Whatの内から外に物事を考える。それを指針として、一つ一つの行動をおこなっている企業や人間こそが、偉大なるリーダーとして人々の行動を変えることができるという話であった。
今回のGrow!の一ツ木氏の米国進出に関するインタビュー内容は、上記の話と強くリンクしていた。Grow!がいち早く米国への進出を行動に移すことが出来た理由、それこそがまさに”WHY”の存在なのである。米国進出をする目的、あえて難しい状況である米国で勝負する理由、それがしっかりと根底に有ることが、Grow!をここまで進めてきた原動力なのであると一ツ木氏は語っていた。
Grow!が米国進出をする理由
Grow!が米国進出をした理由は3つ有る。まず法律的に日本では個人間の金銭のやり取りが禁止されていることが一つにあげられる。お金を融通する機能を持つサービスは銀行の様な金融機関であると分類化され、その数を増やしてはならないとされているのである。反面、米国は金融機関の設立に規制がないため、Grow!の行なっている、個人から個人へオンライン上で直接送金することに関しては全く問題がない。
第2に市場規模。アメリカの寄付市場の規模は24兆円(日本の外食産業と同じ)であると見込まれており、毎年衰退することなく安定的に推移している。加えて、オンライン上の寄付に関しては、ここ4年で3倍に成長している。反対に日本での市場規模は30分の1の8000億円であり、そもそも寄付の文化が根付いていないというのが現実としてある。従って、米国においては、Grow!の提供するサービスであるオンライン上での個人からクリエイターへの寄付というシステムが日本より機能しやすいのである。
第3にチップ文化。米国に旅行されたことのある方はご存知だろうが、米国ではレストランやホテル、タクシーなどあらゆるサービス提供に対してチップを支払う文化がある。これは顧客が提示された金額に加えて、サービスを行なってくれた個人に対して支払われるものであり、個人間の直接的なお金のやり取りが概念として既に存在している。Grow!の提供するシステムはチップ文化という米国の文化背景に非常に上手く合致するため、日本よりも受け入れられやすいのである。
上記の3つの理由から、Grow!は米国で事業を行なうことを前提として考えていたため、サービス開始時から1Grow!=100円ではなく1Grow1=$1に設定している。このように「米国市場で勝負しなければいけない理由」があったことから、目標がぶれる事無く、挫折する事無く、米国での登記まで辿り着く事ができたのである。
今回のインタビューから我々が学んだのは、”Why(何故やるのか)”の存在であった。「何故」という理由付けがしっかりしていれば、方向性は絶対にぶれないし、ぶれた時もすぐに調整が出来る。そこが行動を起こせるか起こせないか、継続できるかできないかを分けるカギとなっている。会社の経営にしても、自分のキャリアにしても全て、”Why”が不可欠であり、その目的意識が自分を信じ続ける支えと成り,また周囲の人間にも強い影響を与えることができるのであろう。それは常に高尚なものでなくとも良い。最も大切なのは、自身の行動の理由、存在の理由を考えながら自分が何(What)をどうするか(How)を決定していくというプロセスを意識することだという教訓を、今回のGrow!一ツ木氏へのインタビューから得ることができた。
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SF New Tech Japan Nightサイト 一ツ木氏のインタビュー記事
by
Mai
前回のPart1 に続き、今回もSocial Media Week Tokyo でのスピーチをもとにソーシャルメディアについての話をする。今回のテーマは、「米国でのマーケティングに於けるソーシャルの価値及びソーシャルキャンペーン事例」であり、ソーシャルメディアを使ってどのようなマーケティングを行うのか、アメリカでどのようなキャンペーンが行われているのか、アメリカ企業のマーケターたちはどのような価値を感じているのかについて紹介していく。
ソーシャルメディアが他のメディアに与える影響
従来人々は、新聞やテレビを情報源として最新のニュースを手に入れていたため、プロのジャーナリストによるコンテンツが最も早く正確な情報であった。しかし、ここ数年のソーシャルメディアの台頭により、誰もが情報を発信できる世の中になった。その事件が起こった時に最も近い場所にいるひとがTwitter等を通して情報を発信でき、それはもはやプロのジャーナリストと同じ、若しくはより素早く正確な情報なのである。1つの例で言えば、かの有名なハドソン川に飛行機が不時着した事件で、「不時着した飛行機に乗ってる」というタイムリーな情報がTwitter上で流れた。それは明らかに新聞等のメディアより早く正確な価値のある情報であり、人々が事件を知る最初のきっかけとなった。
こういった例からも分かる様に、ソーシャルメディアは「ユーザ中心とした最強のインタラクティブメディア」として今後のメディアの形を変えていくと予測されている。1つの新たなメディアの形として、Fast Companyの、最も革新的な企業50選にも選ばれていたFlipboard が、従来のメディアとソーシャルメディアを同レベルで扱っているソーシャルマガジンとして話題を呼んでいる。自分の好きなカテゴリを購読できるのみでなく、友人のニュースフィードから情報が配信され、プロのメディアからのコンテンツと一般ユーザからのコンテンツの融合として認識されている。
企業から見たソーシャルメディアの価値
統計上では、今現在企業がソーシャルメディアに感じている価値は、ブランド認識率の向上が88%と最も多く、その後にユーザの交流、売上高の増加やパートナーシップ、広告費用の削減が続く。そして今後も多くの企業がソーシャルメディアの活用を増やしていく予定であり、主にYouTube, Facebook, Blog, Twitter, LinkedInを有効活用しビジネス価値を生み出そうとしていることがグラフから分かる。
企業がソーシャルメディアから得られる主な価値は、大きく分けて4つ有る。
マーケティング
ブランディング
カスタマーサポート
HR/人事関連(ソーシャルリクルーティング)
以下で一つ一つ事例を紹介しながら見ていくとする。
マーケティングプラットフォームとしての利用
「ユーザにシェアしてもらうのが基本 」
現在、過半数のネットユーザーが商品を購入する前にブログなどでレビューを確認した上で商品を購入するという。
また、広告の内容を信用するネットユーザはたったの14%であるのに対し、80%のユーザが知人のおすすめ情報を信用するという従ってこの事実から、最も効果的なマーケティング方法は口コミであり、友人と常に繋がり自分に関連する情報を得るソーシャルメディアという存在は、まさに口コミでのマーケティングの波及効果を大幅に拡大する非常に役立つツールであるという事が出来る。
Relevancy
ソーシャルメディアを使用する上で必ず知っておくべき言葉、それは”Relevancy (関連性)”である。人は自分に関係のある人、自分が興味あるもの、自分に関連する場所や生活スタイルに関心を抱く。企業から配信される情報や広告の中でも、自分に関連する要素が強い(Relevancyが高い)ほど、消費者の記憶やブランド認知、そして購買意欲に強い影響が与えられるという調査結果が出ており、ソーシャルメディアのフィード上に流れてくる情報(=主に自分に関連する情報)が最も強く消費者の心に刺さるという事実が判明している。それでは如何にしてより多くの人々のニュースフィードに企業情報を流すことが出来るか。それは前に”ソーシャルメディアにおいて必ず知っておくべき事” でも紹介した、「Engagementを得る事」であり、具体的には「より多くのユーザにコンテンツをシェアしてもらう」ことである。
以下では,実際にソーシャルメディアに工夫を凝らして、数多くのユーザのEngagementを引き出した例を2つ紹介する。
Corona Times Square
かの有名なメキシコ産のビールであるCoronaは、期間限定で「CoronaのページをLikeして、自分の写真をアップロードしたら、New Yorkのタイムズスクエアのスクリーンにあなたの顔を映しますよ」というキャンペーンを行った。その結果CoronaはFacebookページに100万人に近いファンを獲得し、今でもファンとの活発な交流を続けている。
Renault
続いては、フランスの自動車会社であるルノーがオランダのモーターショーで行ったキャンペーンである。ルノーはショーでの利用専用のカードを作り,Facebook情報とカードを紐付けして、車を試し乗りしたユーザが気に入った車を見つけた際にワンタッチでシェアできるという仕組みを構築した。ショーにおいてその場でファンを得るのみでなく、ファンが友人たちへシェアする事により波及効果を狙った非常にシンプル且つ効果的な方法であったという事が出来る。
ソーシャルメディアを活用したブランディング
「ブランドは顧客が創り出すもの 」
ブランドは、インタラクティブな経験から顧客一人一人が感じるものである。勘違いされ易いが、ブランドや商品は、必ずしも良いもの=顧客が良いと思うものではない。従って,「顧客がどう感じるか」でブランドは構築され,顧客が実際に「自分たち(We)がブランドを創り上げているのだ」と感じる事が重要である。ユーザを巻き込んでブランドを作り上げるのに最も適した方法がソーシャルメディアであり、企業は顧客の声を真摯に聞き、自らのブランドに反映していく必要がある。
Calbee
これはbtraxが実際に行ったfacebookキャンペーンであり、顧客とともにブランドを創り上げた一例である。CalbeeがSan Franciscoに米国第1号店をオープンする際、キャラクターとなる女性キャラの名付けコンテストをオンラインで行ったのである。サンフランシスコで働くキャンペーンガールであるという設定で名前を募集し、意見を取り入れた結果としてCaleena Ann Francisco という名前に決まった。彼女のFacebookページも作成され、顧客のアイデアによって生み出されたこのキャラクターは、Calbee San Francisco Storeの顔となり、今でも愛されている。
GAP
これは反対に失敗した事例である。GAPは一度ロゴを抜本的に変更した事があったが、その事実を知る人は非常に少ない。何が起こったかというと、GAPは約一年前に正式に新しいロゴをリリースしたが、消費者受けが大変悪く、ソーシャルメディアを通して激しくバッシングが起こったのである。以下の図は、新しいロゴとそれに対する消費者の反応であり、”Crap(最悪)”と称され、結局たったの数週間でGAPはロゴを元に戻した。この例はまさに、企業からの一方的な価値判断にユーザがソーシャルメディアを通して反応し、ユーザにとっての価値水準に変えた例である。
ソーシャルメディアを経由したカスタマーリレーション
ソーシャルメディアは、カスタマーとの関係構築においても大きな役割を果たす。企業が最も重要視するうちのひとつである顧客からのクレームは、ソーシャルメディアを通して発見する事が可能なのである。1つの例としてスターバックスは、Twitterを 早期問題発見のために使用しており,「Twitter上で問題にならない事は問題ではない(Twitter上で発見される不満こそが顧客が真に感じている不満である)」と言っている。以下では1つ、非常に印象深いソーシャルメディアを利用したカスタマーリレーションを紹介する。
Morton’s
Morton’sは、米国で有名な高級ステーキチェーン店である。ある一人の男性が、「@Morton, 今から2時間以内に空港に着くんだけど、ステーキを持ってきてくれないかい?」と冗談でツイートした所,Mortonのマネージャーが実際にステーキを持って空港で待っており、その男性は非常に驚き、大喜びしたという。なんとも信じられない話ではあるが、さすが米国これは実際にあった話である。その男性はフォロワーが10万人以上もいるインフルエンサーであったという事もあり、このニュースは全米に伝わり、Mortonのカスタマーリレーションの評価に大きく貢献した事は言うまでもない。
ソーシャルメディアをHR/人事関連業務に活用
この分野においては、主に2つの用途があり、1つが人材獲得(ソーシャルリクルーティング)、もう1つが既存の従業員の満足度アップである。
ソーシャルリクルーティング
日本でも多くの企業が採用にソーシャルメディアを使い始めており、今後採用方法に大きな変化を巻き起こすと期待されている。今後もこの風潮は続き、拡大していくだろうという事が下の統計結果を見るとよく分かる。
求人を行っている会社の95%がSocial Mediaを利用する予定である
その内訳は、86%がLinkedIn, 60%がFacebook, 50%がTwitter
人からの紹介経由の人材は54倍採用率が高く、25%離職率が低い
LinkedIn記載の求人情報は平均で11回ユーザーに転送され、30人以上の応募がある
ソーシャルリクルーティングには、大きく分けて3つのメリットがある。
第1に、特殊技能やバックグラウンドを発見する事ができる。前にLinkedInの営業の方と話していた際に、「LinkedInで80万円払うと色んなユーザが発見できる」と言われ、「じゃあ日本語・英語・中国語を話せて、MBAを持っていて,且つデザインのバックグラウンドがある人を探してほしい」と少し挑戦的な質問をして見た事がある。その際なんと、LinkedInは、実際にその条件に当てはまる人を3人も見つけてきたのである。LinkedInの可能性について改めて感心させられた瞬間であった。
第2に、受動的志願者に出会える。LinkedInに登録している人の80%は就職・転職活動中ではないが、90%以上のユーザはキャリア情報に興味がある。従って,企業は常に欲しい人材を捜してアプローチをかけることができ、且つユーザも自分の興味のある仕事があれば、コンタクトをとってみる事も可能なのだ。第3に、社外の人に,会社の雰囲気を知ってもらう事が出来る。btraxでは、社内で何か催し事があるたびにFacebookに写真をアップしたり、プロジェクトを紹介したりなどして,会社の内部の雰囲気を少しでも知ってもらえるよう努めている。実際にインターンとして来ている人々も、入社前にFacebook上で社内の様子を何となく掴むことで少し安心できたと話していたので、入社を志願する人にとっても良い情報源となっているようである。
既存の従業員の満足度アップ
既存の従業員の満足度を向上させるために、Facebookを使う例は良くある。サンフランシスコ発の企業であるTruliaは、ソーシャルメディア上での企業のプロモーションに貢献した社員にポイントを与え、実際にオフラインでベネフィットが得られる仕組みを構築している。その結果Truliaは従業員の愛社精神を高める事に成功しており、且つコミュニティを通してブランド向上を高める効果も得ている。
ソーシャルメディアマネジャーという新たな役職
この役職は、ソーシャルメディアを使って,上記で挙げたマーケティング、ブランディング、カスタマーリレーション、人事全てを管理するのがメインの仕事となる。従って会社各担当部署と連携を取る事が不可欠であり、高いコミュニケーション力が必要とされる。各部署から得た情報を元に,日々のFacebookの投稿や、ツイートをスケジュールし、データを見ながら日々修正していく。また、顧客やライバルの動きを確認するのも仕事であり,リアルタイムで顧客が何を言っているかに注意を払っていなければならない。また、目的はユーザとコミュニケーションをとることなので、時には軽いノリでユーザを楽しませるユーモアセンスも必要である。
ソーシャルメディアマネジャーのリクルーティング
ソーシャルメディアに詳しい人材を連れてくるのも1つの方法としてあるが、大企業の場合は、それぞれの分野に精通している人を連れてきてソーシャルメディアマネジメント部署を作るという方法もあり、実際Coca Colaはその方法を採っている。ちなみにbtraxでは、新人がソーシャルメディアを担当する事が多い。新人に任せてみる事で,彼らは社内で、何がどこでどうなっているのかを理解し、それを分かり易く顧客にお知らせする事で自らも会社について深く知る事が出来る。未だ新しい分野なので、経験より、その分野に興味があるかどうかを重視した方が良いと個人的には感じている。
ソーシャルメディアウィークに出場する事によって、ソーシャルメディアについて自身も学ぶ事が出来た良い機会となった。また、それと同時に配信するコンテンツの重要性や、今持っているコミュニティの大切さにも気づく事が出来た。このブログもbtraxにとっては重要なソーシャルメディアツールの1つであり,更新の際にはFacebookやTwitterでもお知らせしている。今後も、ブログを購読している皆様や、FacebookのページをLikeしてくれている皆様、Twitterでフォローしてくれている皆様にとって有益な情報をお届けしていけるよう、精進していきたいと思う。
関連リンク:
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill
先日シリコンバレーの中心にあるPalo Altoにて、Startup Weekend が開催された。このイベントは三日間のうちに、チーム編成からプロトタイプ作成までを54時間にておこなってしまうという、言ってみれば、スタートアップ・ブートキャンプ的イベント。シアトルで発祥したこのイベントシリーズは、その性質と同じく急激に広まり、Startup Weekend Tokyo を始めとして、世界各地で開催されている。2011年の末にはついにGlobal Battle まで開催された、今最もホットなスタートアップイベントシリーズの一つである。
このイベントが凄いのは、参加しているほぼ全ての人が即席スタートアップに関わり、数日後にはプロダクトが完成する。そして、優勝チームにはより大きなプレゼンイベントへの出場権が与えられ、場合によっては会社設立から資金調達までが可能となる。また、特筆すべき点としては、参加者、オーガナイザーの他に、”メンター”と呼ばれる人々が参加する。このメンター達は、主催者側から選ばれたそれぞれの分野のエキスパートで、参加チームは資金調達からプロモーション方法まで、スタートアップに関するあらゆる事柄のアドバイスを無償で受ける事が出来る。
毎回のイベント事に個別のテーマが与えられるが、今回開催されたのは、Startup Weekend Mobile と題し、Mobile系サービスがテーマ。1/20 (金)の夜から22 (日)に掛けて、アメリカ最大のモバイルキャリアであるAT&Tのラボオフィスを利用して行われた。参加者は約120人で、合計17のチームが編成された。このイベントに対し、僕はUI/UXを始めとして、プレゼン資料やプロモーション素材、アイデンティティーに至るまで、デザイン全般のアドバイスを提供する、”デザインメンター”として参加させてもらった。
前回サンフランシスコにて女性起業家をテーマにしたStartup Weekend Woman 2.0, そして前々回のMEGA Startup Weekend から数えて、Startup Weekendでメンターを務めるのはこれで実に3回目となる。どの回も全く違うチームとサービス内容に対してのアドバイス提供になるのだが、実は毎回必ず聞く内容や、チームが直面するハードル、そしてスタートアップを始めるにあたって、共通する抑えておきたいポイントが見えてきたので、まとめてみたいと思う。
メンターをして気づいた点
デザインメンターとは?
自分に与えられた正式な役割はデザインメンターであるが、チームメンバーと議論する内容のほとんどがデザインよりもプロダクトのコンセプトや機能、そしてビジネスに関連する事柄。ヴィジュアルデザインはそれらを整理した最終的なアウトプットであるので、まずはユーザーに何をどう届け、どのようなカタチでビジネスに展開して行くかを整理する事が一番重要になる。実際の所、世の中でイメージされている”デザイン作業”はデザインプロセスの中の最終的な小さな一部でしか無く、デザイナーの仕事の大部分がプロダクトに関する情報整理と、その展開方法に関してのディレクション設定である。特にモバイルのUI/UXに関しては、ページ数やプロセスをどれだけ削れるかが優れたエクスペリエンス達成の肝になる為、ストーリーボード作成やワイヤーフレーム等の実際のデザイン作業を開始する前段階のお膳立てが非常に重要になる。
Startup Weekendにおけるデザインメンターも、プロダクトを、見せ方+システム+ビジネスの三方向から総合的に診断し、それぞれの分野においてバランスのとれたものにすべく、正しい方向にチームを導くのが仕事となる。ちなみに、同じサービスアイディアでも、UI/UXの品質次第で、結果が大きく左右されるので、デザインメンターの役割は非常に重要になる。
メンターとしての本当の役割
よくメンターの役割はアドバイスを与える事だと思われがちだが、意外とアドバイスを与える事は少ない。それよりも、チームとのアドバイスセッションの時間のほとんどは、相手に質問する事に費やされる。編成されたばかりのチームで、思いついた直後のアイディアを議論していると、つい全体像が見えにくくなり、より多くの機能やコンテンツを詰め込もうとしてしまう。また、サービス内容にフォーカスしすぎる為に、ビジネスモデルが、ないがしろになってしまうケースも多く見られる。そこでメンターは、客観的な視点から “なぜ” そうなっているのか、どのようなプロセスで展開を予定しているか等の質問をし、チームメンバーの思考をクリアにして行くのが主な役割。そして、良いメンターの秘訣は、チームに対して正しい質問をする事。正しい質問を元に、メンバー自身が自ら答えを導きだせる環境を造り出すのが重要である。その為には、相手のアイディアを引き出す聞き上手である事も大切な要素。こちらがほとんど話をしていないのに、”良いアイディアをくれて有り難うございます” と自己完結的に感謝される事も多い。
なぜメンターになるか
Startup Weekendに参加しているメンターは基本的に全てボランティアである。それも貴重な金曜日の夜から日曜日の夜までの時間を他人のプロジェクトに費やす。メンターに選ばれる方々の多くは、それぞれの分野にて相応の成功を収めている。それ故に大変忙しいケースが多いのだが、それでもパーソナルな時間を割いて、起業家志望の方々に知識とノウハウを提供する。自分も去年より参加してから気づいたのだが、メンターになる事で得られるメリットは意外と多い。まずは、つわもの達がしのぎを削るシリコンバレーで最新のトレンドやテクノロジーを目の当たりにする事が出来る。特に各チームごとに様々なジャンルのサービスアイディアがあるので、彼らと話すだけでも随分と有益な情報収集になる。場合によっては自分の知らなかった社会的問題やニーズの解決を目指しているチームもあり、非常に興味深い。その他のメンターとの結びつきも強いので、他の分野からの専門的な知識も得る事が出来る。また、各チームごとにビジネス、デザイン、エンジニア等の担当メンバーから特に優秀な人材の発掘の可能性もある。そして何よりも、常に自分がスタートアップの情熱に触れている事で、会社を始めた頃のワクワク感を体感する事が出来るのが一番の魅力である。
多種多様なチーム編成
毎回シリコンバレーやサンフランシスコでのStartup Weekendに参加して感じるのが、参加者の多様性。老若男女x多人種で構成されるチームは、様々な角度から物事を見る事で、隠れたユーザーニーズを引き出す。例えば今回も高齢者向けのサービスや、小さな子供を持つ親御さん向けのサービス等のアイディアがあったが、それぞれの世代の参加者がチームに参加していたのがポイントだろう。特にアメリカでは、企業におけるベテランクラスの方々がスタートアップに関わる事も多く、それが成功の一翼を担っているのは間違いないと思う。様々な生活習慣・スタイルを持つ人たちでダイナミックに構成されるチームからは斬新なアイディアが出やすい。
深刻なデザイナー不足
今回のイベントでも、一般的なスタートアップ企業でも、最近は深刻なデザイナー不足に悩んでいる。言い換えると、一昔前はあまり重要ではないと思われていたデザイナーの存在が、最近は会社の将来を左右する程になってきた。企画やシステム開発はある程度フレームワーク化出来たとしても、クリエイティブな仕事をテンプレート的にこなすのには限界があり、それでは差別化も出来ない。やはり、多くのユーザーを獲得し、長期的に使ってもらう為には、美しい見た目と優れたユーザーエクスペリエンスが必須となる。毎回イベントが開催されるたびに主催者側から、”もっと多くのデザイナーの方々に参加してもらいたい” との声が上がっている。日本の方々でも腕に自信のあるデザイナーは是非参加する事をお勧めする。若干英語に苦手意識があったとしても、自分の得意分野で勝負する事は十分可能である。
スタートアップが必ず抑えておきたいポイント
今回のイベントでのアドバイスセッション中に気づいたのだが、毎回各チームに必ず聞くポイントがある。それらはピッチの際や、投資家へのプレゼン等でも必ずと言って良い程抑えておくポイントであるので、ご紹介する。ここでは雰囲気を出す為に敢えて英語のままで。
Market Size – サービスがターゲットとする市場規模。この規模と見込みマーケットシェアを算出してサービスの可能性を設定する。
Key Competitors – 主な競合サービス。この数が少ない方が成功する可能性が高い。
Customer Validation – 想定するユーザーがどれくらいそのサービスを必要としているかを証明するデータ。ニーズに対するしっかりとしたデータがあれば、失敗する可能性を下げる事が出来る。
Distribution Strategies – サービスを広める為の戦略。広告プロモーションから、キャンペーン、ソーシャルメディアまで、多岐にわたる。
User Acquisition Strategies – ユーザーの獲得戦略。サービスにどのようにしてサインアップしてもらうかの方法論。
Motivating Factors – ユーザーが使いたくなる要素。使っていて楽しいゲーミフィケーションもその一つ。
Road Blocks - ユーザーが使いにくいと思ってしまう要素。無駄に多いステップや、分かりにくいボタン位置、不必要なセキュリティ要素はすべてそれ。
Entry Barrier – 参入障壁。他社がマネのしにくい要素。固有のテクノロジーや人材、特許等もその例。
Monetization – サービスの課金モデル。フリーミアムや、月額課金、アプリ内課金等。
Business Model – 全体的なビジネスモデル。収益ゼロからのエクジットモデルでもOK。
参加者との熱い議論
実は今回のアドバイスセッションのうち、一つのチームとの議論がかなり白熱した。結論から言うと、先方が僕からのアイディアに全く同意出来ずに、かなりの言い争いになった。最終的には、”それは君個人の考えで、他のユーザーはそうは感じない” と言われてしまった。しかし、その後日に他のイベント会場にて偶然その方に会い、”あの時はとても有益なアドバイスを頂けて嬉しかった。今度仕事を依頼したいんだけど。” と言ってもらえたのは嬉しかった。
ちなみに今回の出場チームはこちら:
イベント出場チーム一覧
金曜日の夜に120人程の参加者が集まり45のア イディアが集められた。そのうち、17が予選を通過し、チームを編成。僕自身はメンターとして、土曜日の夜7pmより、それぞれのチームに対して、15分 のアドバイスセッションを行った。今回はアイディア、参加者共に非常にクオリティが高いと感じた。それぞれのチームとサービスアイディアは下記の通り。
HabituallyMe
アプリに自分が達成したい習慣を入力し、21日でそれらを達成さ せる。その際には友達を誘い入れ、一緒に頑張る事で達成率をアップさせるのが狙い。ソーシャル修行のようなサービス。
Pop-up
ファーマーズマーケットやフードトラック、Pop-up Shop等の非定期ショップの検索サービス。全米に広がるデータベースを元に、最新の情報をユーザーに提供する。
4Square Dating
バー やクラブでのパーティー等の際に、チェックイン情報やFacebookのプロフィールデータを元に、近くに居る共通点の多い人達を表示。友達の友達も分か りやすく表示する。”似たようなサービスで、WondershakeやMiepleっていうのがあるのしってる?”と聞いたところ、”知らなかった。で、 それらはうまくいってるの?” との答え。
Real Change
サポートしたい政治家や法案に対して、モバイル経由で寄付が出来る仕組み。また、現在提案中の法案や立候補中の候補者も表示。
LiveBuzz
スポーツや音楽等をリアルタイムで観戦中に、自分の感情をボタン一つで表現。ユーザーが文字をタイプする事無くワンタップで自己表現が可能になる。
ChannelMe
動画を通して、自分のライフログを”自分チャンネル”を通して表現出来るサービス。
Audience Amp
セ ミナー系イベントにてリアルタイムで、プレゼンターに対してのフィードバックが提供出来るアプリ。
Shop N Tag
店頭で商品やバーコードの写真を撮り、値段を入力。他の店舗やオンライン等で最安値が更新された際にアラートが届く。
SpeechLater.com
ニュー スやブログサイトで読む時間が無い際に、ブラウザープラグインを利用して、ハイライトした部分をスマートフォンに転送。時間のある時に機械音声にて読み上 げてくれる。
AwayWeGo
ロケーション情報を元に、自分の居る場所に応じたモバイルゲームを提供。車に乗っている時に子供達をおとなしくさせる為に一役買うのが狙い。
Find My Phone Deal
携帯機種の買い替えをサポートするアプリ。新型機種やキャリア別の購入可能なデバイスを表示し、最安値のストアも検索可能。
Poopspotter
道ばたや公園に転がっている犬のフンを知らせてくれるサービス。ユーザーが自主的に情報と写真をアップして、他のユーザーに警告する。
Claim Wars
子供がスマートフォン上で動画を見る際に、あらかじめ大人がそのコンテンツ内容に制限が掛けられるアプリ。また、自分の子供に見せたい動画をブラウザーからワンクリック登録する事も可能。
Sidewalk HQ
こ こ最近より話題が高まっているモバイルクレジットカードリーダー、Squareが提供するAPIを利用し、ロケーションごとの売り上げや販売商品内容を表 示するアプリ。デザインは卓越だった。場所によってどのくらいの売り上げが見込めるか、等の予測機能がつくとかなりエキサイティングなものになるはず。個人的にイチオシのチーム。
オフィシャルレポート(英語)はこちら から。
おまけ
今イベントでは、デザイナーが全く不在のチームがあり、彼らには直接ロゴのデザインと、カラースキームアイディアを提供した。政治家にモバイルから寄付が 可能なReal Changeというサービスに提供したロゴはこちら。自分としても久しぶりのロゴデザインの機会をもらった。とても楽しい経験だった。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill
先日開催された第三回SF New Tech Japan Night の出場チームに対して、イベント翌日にシリコンバレーで活躍するVCの方から、個別にアドバイスをもらうための面談を行った。このセッションは、サンフランシスコSOMA地区にあるbtraxオフィスの会議室にて10/4の午前10時から1社それぞれ15分の予定でスタートした。結果的には平均1社45分というかなり充実した内容となった。
日本から来た若き起業家のアドバイザー役を買ってくれたのは、友人もでありシリコンバレーにてVCファーム: Fenox Venture Capital を経営しているAnis Uzzaman である。Anisはアメリカの大学を卒業後、東京工業大学で修士を、首都大学ではPh.Dを獲得している。それ故に日本語も堪能で、日本のスタートアップや起業家を応援する気持ちが人一番強い。その後IBMの社内M&Aを経て、現在のVCファームのCEOに就任した。彼は今回のイベントを知り、通常は分刻みのスケジュールで超多忙なところを、好意で面談を申し出てくれた。
自身も投資事業だけではなく、他社のアドバイザーや会社の立ち上げにも関わっている彼が、Japan Night出場者に対し提供するアドバイスはどれも的確で、聞いている方としてもとても勉強になった。それらの中で、これからアメリカやシリコンバレーでビジネスを展開して行く上で、非常にユニークで有益なポイントが幾つかあったので、ご紹介する。
シリコンバレーのVC; Anis Uzzamanから起業家へのアドバイス
日米の会社のレベルの差は大きく無いが、絶対的なコネクション量が違う
日本とアメリカの両方のスタートアップ企業を詳しく調査している彼によると、会社やそこで働いている人材のクオリティー、そして提供する商品やサービスに於ける日米の差はあまり大きく無いという。しかしながら、アメリカ、特にシリコンバレーの会社や関わる人々が持つコネクション量と質が絶対的に有利なので、同じような展開をしようとしても、アメリカでは成功の可能性が上がる。
意思が強ければ誰とでも繋がれる
誰かと繋がりたいと思った時に、それが可能かどうかは本人の意思の強さ次第。強烈な思いで突き進めば、何らかの方法でアポイントが取れるはず。現に彼自身も、最近多くの知り合いに声をかけ、1週間以内でバンク・オブ・アメリカの社長とアポを取る事が出来たという。思いが強ければ、それが行動に現れ、周りが助けてくれる事もある。
アメリカはアグレッシブでスピードが速い
アメリカでビジネスに関わる人々は、図々しいぐらいにアグレッシブでスピードが速い。目標を達成する為には、ある程度強引な裏テクも駆使する。真面目で堅実な日本人起業家では、なかなか太刀打ち出来ないケースもある。
シリコンバレーでは有望な会社に投資するのは至難の業
いくら著名なシリコンバレーのVCでも、有望で注目されているスタートアップに投資するのは容易ではない。お金以外に何かしら提供出来る要素が無いと、他のVCを優先される事もある。実際彼の会社も今年のY Combinator主催のピッチコンテストでの出場企業に声を掛けたが、既に他のVC25社が面談待ちの状況だったらしい。
サービス名に関連するドメイン名は全て取得するべし
Anisが全てのチームにアドバイスしていたのが、ドメイン名について。.comだけに限らず、.netや.orgを初めとして、出来るだけ多くのバリエーションを取る。そうする事により今後他の会社が同じような名前で展開するのを未然に防げる可能性がアップする。また、最近ではTwitter, YouTube, Facebook等のアカウント名も併せて取ってしまうのが◎。逆に既に名前が取られている場合は、サービス名の変更も検討した方が良い。
名前やロゴが良い会社やプロダクトはそれだけで成功する場合もある
とても知的で論理的な彼からアドバイスで一番意外だったのがこれ。最終的に人間は感情で決断する。会社やプロダクトの名前やロゴがキャッチーで、人の記憶に残りやすく、上手に表現が出来ているそれだけでも、成功の可能性が大幅に上がる。ある出場社にも”良い名前だね。成功するんじゃない?”と言っていた。
スタートアップにとって、社会貢献イメージは大切
全く何もない所から始めるスタートアップは、どれだけ多くの人からの協力を得られるかが勝負。周りから協力してあげたいと思わせるのが非常に重要になる。提供するプロダクトが何かしら社会貢献に役立つのであれば、賛同者を得られやすく、成功へ結びつきやすくなる。スタート時に、”売り上げのX%を何々に寄付します!”と宣言するのも良い。
Necessity vs Commodity
提供するサービスが消費者にとって、無くてはならないもの(Necessity)なのか、欲しいもの(Commodity)なのかで、その後の成功のスケールが変わってくる。やはり、Necessityとみなされる商品やサービスは大成功を治める可能性が高い。ちなみに、人々にとって必要不可欠なのは衣食住だけではなく、FriendsやLove等も含まれるという。
日本で登記した後、アメリカに会社を移すのは難しくない
ケースバイケースだが、一度日本で法人登記をしてから、会社をアメリカに移すのはそれほど難しくは無い。日本の会社を子会社にしたり、吸収合併する等、幾つか方法がある。ビジネスの展開パターンやファンディング状況に合わせて臨機応変に対応すべし。
会社は”カタチ”が重要
アメリカで会社を経営した人は気づくだろうが、法務や財務に関する資料作りから、社内外組織作りまで、細かな会社の”カタチ”、英語で言うとFormalityは非常に重要。これがおろそかになると、思わぬ所で痛い目にあう事も。企業は外からも中からもキレイに構築すべきである。
CEOの仕事はプロダクトを進める事。その他役員の仕事は組織作りと資金調達
スタートアップは、ついCEOが全てを行ってしまうケースが多いが、少しでも早くCEOがプロダクト作りとその普及に専念出来る組織作りを行うべき。その為には、優秀な人材を役員として採用し、COOによる社内外の組織作りや、CFOによる資金調達等の役割分担を行う。
役員の報酬2に対しアドバイザーの報酬は1が目安
より多くの優秀なアドバイザーを集めるのも非常に重要であるが、その際のアドバイザーに対する報酬は、役員の1/2が目安となる。これは現金ではなくストックオプション等でもOK. なお、上場後はストックオプションは使えなくなるので、引き続き必要な場合は、きっちりと現金を支払う事になる。
特許はとても大切
これもほぼ全ての出場者の方々にアドバイスしていたポイント。資金調達やバイアウト、そして会社の競争力を高める為には、取得してる特許の種類と数が非常に重要になってくる。日本ではなかなか取りにくいビジネスモデル特許も、アメリカだと専門の弁護士に頼めば取りやすい。特許を持っているだけでも、投資家との面談の際の希望出資金額が格段に変わってくる。
人間は感覚で動く、心理戦は非常に効果的
投資家へのピッチや、エクジットの際のネゴシエーション等で心に響くプレゼンを提供出来るかどうかは非常に重要。相手がどんなに優秀で大物だったとしても、最終的には心理戦になる。特許の数や、具体的な数字、会社の大きなビジョン、アドバイザーの名前など、見た目に響く要素を提示出来るかが大切。
各投資元へのエクイティは最大20%を目処にする
エンジェルやVCから投資を受ける際は、そのボリュームを必ず会社の20%以下に抑える事。それ以上の配分になってしまうと、将来的に様々な理由で会社が不利な立場になる。”どうしても”という時でも、23%以上は割り当てない。
立ち上げ時 対 エクジット時の希薄化率は約60%
会社を立ち上げた際に割り当てられた株式はその後、追加出資等で希薄化され、エクジット時には目減りしてしまう。これを英語でDilutionと呼ぶが、その際のDilution Rate (希薄化率)は約60%が目安となる。例えば、立ち上げ時に会社の10%を保有している場合は、エクジット時には6%に目減りする。なお、会社によって大きく違いがある場合もあるので、ご注意。
会社立ち上げ直後にM&Aを考える
会社のエクジットをバイアウトと設定している場合は、プロダクトリリースがされる随分前や、場合によっては会社の立ち上げ直後からM&A活動を開始するのが良い。それにより、目標とするバイアウト先がどのようなプロダクトに興味があるかを知る事が出来、商品開発に有利に働く。そのようなケースは、大きな企業のM&A担当者と知り合いになっておくのは非常に重要なポイント。
バイアウト向けのCEOは、背が高く、顔が良く、話が上手い人を
実際にエクジットが見えて来た際には、それを本職としてる人間をCEOとして雇うのもセオリー。この辺だと、会社のバイアウトを請け負う専門家が沢山居る。多くの場合彼らは背が高く、顔が良く、話が上手い。それにより買収額が何倍になる事もあるという。
イメージ作りの為のMBA中退?
最近のスタートアップCEOの”はやり”はMBA中退。出場者からの、”やっぱアメリカでMBAとか行った方がいいですかね?”の質問に対し、”初めは通い始めて、会社がうまく行きそうになったらドロップアウトしたら?良いイメージ作りになるんじゃないの?”とAnis. 実に、アメリカで成功して名が知られている多くのCEOは、なぜかMBAや大学を中退している。大胆な行動力で、ある意味ハクが付くのかも。
今回、これから世界で活躍するであろう日本の起業家達に対して、具体的且つ役立つアドバイスを完全なる好意で提供してくれたAnisにはとても感謝している。ちなみにアドバイスを受けた何人かは、「自分の会社にこんなに可能性があるとは知りませんでした。めっちゃテンション上がりました。」と言っていた。これからも彼と協力し、少しでも結果に繋がるスタートアップ支援が提供出来ればと思う。なお、彼は今月末に開催されるTechCrunch Tokyo 2011 のイベントにてモデレーターを務める予定なので、ご興味のある人は是非会ってみると良いと思う。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill
サンフランシスコ界隈で2011年より急激な人気を集めているコワーキングスペース(Co-working Space)に関し、以前にこちらの記事 にまとめた。それ以来、日本の多くの方々からご興味をもって頂いている。また、先日は最も歴史のあるコワーキングのCitizen Spaceにて、光栄にも大前研一さんとの座談会 にもパネルとして参加することが出来た。
また、今まで多くの方々にコワーキングの魅力と特徴をご説明した経験を生かし、最近では日本国内にてサンフランシスコのスタイルを参考にした、OFFICE KOROBOCL , Garage Labs , ツクルバ , HUB Tokyo それぞれのコワーキングスペースに対してアドバイザー/メンターとして参加させていただいている。
今年は一気にコワーキングブームが訪れたが、来年以降は自然淘汰が始まる可能性もある。その一方で、ここ数ヶ月で急成長しているスペースもある。先日の大前さんとのイベント及び、これまでのコワーキング運営者とのやりとりを元に、コワーキングを成功させるには3つの大きなポイントがある事が分かった。今回は、日本でコワーキングスペースを運営するにあたり、必ずおさえておきたいポイントと幾つかの具体的アイディアをまとめる事にした。運営の際の参考になれば嬉しい。
ポイント1: 明るくオープンな環境を創り出す
コワーキングがシェアオフィスと一線を画する大きな理由の一つが、その”オープンさ”であろう。不特定多数の人が出入りし、誰でも見学出来るのがコワーキングの魅力ともなっている。具体的な方法論としては:
日中は正面ドアにカギやセキュリティーを掛けない
大きな窓があり、自然光を多く取り入れる
初めて来た人は、最初の一日が無料で利用できる
席や机は空いている所を自由に利用する
室内の内装や壁をカラフルに
ソファーを設置し、気軽に作業可能にする
机以外のエリアでも仕事が出来るようにする
会議室をガラス張りにする
家具等のレイアウトをきっちりとしすぎない
静かに電話の出来るエリアを作る
ポイント2: 入居者同士のコラボレーションを誘発
コワーキングスペースとして、多くの入居者を獲得しても、おのおのがそれぞれのプロジェクトのみに専念しているだけでは、単なるシェアオフィスになる。コワーキングの一番の醍醐味は、チームや企業の垣根を越えたコラボレーションであり、それによりアイディアが活性化され、クリエイティブな結果を生み出す所にある。
作業エリアの他に自由に利用可能なコミュニティエリアを作る
管理人はコミュニティマネージャーと呼ぶ
机は部屋の真ん中に置き、入居者はそれを囲むように利用する
机は雛形や台形のものを利用し、クリエイティブなレイアウトを実現する
IT業界以外の企業も積極的に入居してもらう
なるべく多くの壁をホワイトボードとして利用可能に
昼休みには入居者の商品やサービスの発表会を行う
出世した企業は壁にロゴを飾り表彰する
月一でコンテストを開催する
他のコワーキングやインキュベーターとのコラボイベントを企画する
ポイント3: 独自の付加価値を生成
サンフランシスコに10以上あるコワーキングは、それぞれがユニークな特徴を持っている。例えば完全招待制だったり、非ITを優先したり、クッキングコンテストを行ったりしている場所もある。今後日本でもコワーキングスペースが軒並み増えてくる事が予想されるので、運営する場合は、独自の付加価値を提供する必要が出てくると考えられる。こちらで見られるアイディア例としては:
利用時間やスタイルに応じて複数の料金プランの設定
入居者のクオリティーを保つ為に一定の基準と審査を行う
夜7時以降は頻繁にセミナー、ネットワーク等のイベントを開催する
投資家が頻繁に出入りする
キッチンにあるお菓子は食べ放題
お茶は完全オーガニック
夕方5時以降はビールが振る舞われる
椅子や机等はおしゃれなデザイナー家具
訪問者には簡単なオフィス内ツアーを提供
先輩起業家や投資家にメンター登録をしてもらう
ペットの同伴を許可する
海外からの入居者を受け入れる
以上が、簡単にまとめたこちらで成功しているコワーキングスペースの特徴である。日本で参考するのには難易度が高い点も含まれているが、なるべく実現出来ると良いだろう。
また、日本国内の物件では規約上、不特定多数の入居者が出入りするのが難しいケースもあるようだ。しかしながら、セキュリティーはあまり厳しくせずに、自由で開放的な空間を創造するのがコワーキング運営者の仕事となる。管理人やコミュニティマネージャーを入居者からの持ち回りにしても良いし、どうにかして、ありがちなクローズドな雰囲気のシェアオフィスにしない方法をあみだす必要があるだろう。
日本人の気質や文化を考えると、初対面の方々同士でコラボレーションをするのは抵抗があるかもしれないが、コワーキングスペースの一番の価値は、どれだけ多くの入居者がその後、世の中に貢献出来るかだと考えられる。言い換えると、ソーシャル・アントレプレナーの輩出に成功出来る場所が、最も成功しているコワーキングと考えても良いだろう。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill
このところ、ビジネス系メディア等を通しアメリカのスタートアップに関するIPOや、大規模資金調達などの大きな成功に関連するニュースが頻繁に伝えられている。一方で、その影では想像を絶するスケールの失敗談も数えきれない程存在するが、それらが表に出る事は非常に稀である。人々の目は常に成功者に集まり、敗者にスポットライトは当たらない。
しかしながら、現在大成功を治めている人達でも、そこにたどり着くまでに乗り越えて来た数々の試練や、背筋も凍るような修羅場を経験しており、それらに関する話を聞くのも非常に勉強になる。まさにそこに焦点を当てたカンファレンスが、Failcon である。
2009年より年に一度サンフランシスコにて開催されるこのイベントのテーマは、「数々の失敗ケースから学び、成功に繋げる」というもの。一日を通して開催されるプログラムは、多くの試練を乗り越え成功にたどり着いた起業家や投資家を中心に、「役立つ失敗談」を中心としたスピーカーセッションやパネルディスカッションで構成される。このイベントはSF New Tech との姉妹イベントでもある事で、チケットを頂く事ができた。数あるセッションの中でもUber ファウンダーのTravis Kalanikのキーノートスピーチを紹介したい。ちなみに、Uberとはサンフランシスコに本社があるスタートアップで、スマートフォンから気軽にリムジンをタクシー感覚で利用出来るサービスである。その手軽さや便利さが大人気で、最近の成功企業との一つとして数えられている。
プログラムパンフレットに記載された彼のスピーチのタイトルは「Uber Case Study」。当然、Uberがここまでたどり着くまでに経験した様々な失敗談が語られるのかと思っていたが、内容は全く違っていた。スピーチが始まるや否や、彼が一言「タイトルはそうなっていますが、Uberは失敗ケースではありません。今日は、Uberを始める前に僕が過去10年間で経験して来た内容を話したいと思います」と切り出した。そしてその内容は、今までの自分が経験して来た失敗や間違いが、非常に小さなスケールで些細な事だったと痛感する程、凄まじかった。
多くの失敗経験を持つ起業家は沢山いるが、おそらくTravisほど多くの、そして厳しい修羅場をくぐり抜けて来た起業家は稀であろう。自身も「世界中で最もラッキーでは無い起業家」と自負している。ちなみに、「もっともアンラッキーな起業家」では無いのは、最終的にエクジットまでたどり着いたからだそう。それでは、彼のスピーチで語られた失敗歴を幾つかご紹介する。
自身の投資家に訴えられる
第一次ドットコムバブルの90年代後半、UCLAに在学中に友達とP2P系のサービスを立ち上げた。時流に乗り、LA地域の大物投資家から投資を受けたのは良いが、契約書をよく読まずにサインをしてしまった。他の投資家に事業の話をしてはいけない旨の条項に反した疑いで、告訴される。その翌日に、そのニュースがWall Street Journalに記載され、会社の評判が最悪に。投資家は怖い人たちだと学ぶ。
主要エンタメ企業33社から合計$250Bの訴訟を受ける
提供していたのがNapsterと同系のP2Pファイルシェアサービス(ユーザー同士が音楽や映画のファイルをネット上で交換可能にする)だったことで、2000年にアメリカ国内のエンターテイメントコンテンツ提供企業、合計33社からコピーライト違反の疑いで2,500億ドルの訴訟を起こさる。ちなみに訴訟額はその当時のスウェーデンのGDPとほぼ同じ。賠償金が払えないので会社更生法を申請。その後、破産申請を取り扱う裁判所にて、会社及びサービスを合法的に手放す為に、買収の為のオークションを実施。30分以内で、会社が売却される。
ネットバブル崩壊後の2001年にネットワーク系の会社を立ち上げる
上記のテクノロジーをベースに、訴訟を起こした33社への”復讐”を果たすため、メディア系企業がユーザーとなるサービスを提供するRedSwoosh社を設立するが、ネットバブル崩壊直後だった為に、誰にも相手にされない。ある有名投資家には、「ネット系ビジネスは終了した。全てのイノベーションは出尽くした。」と言われる。日銭を稼ぐ為にコンサル業務を行う。
共同創業者に裏切られる
投資を検討してもらっていたSONY Ventures社に共同創業者(Co-founder)がこっそりメール。その内容は、「どうせこの会社はうまく行かないので、僕とエンジニアを雇ってくれないか。」後日、メールを見つけた時は足下が崩れる思いをする。その後共同創業者をクビにする。のちに財務を担当してた彼が会社の税金をごまかしていた事が発覚。連邦政府への税金未納の罪で刑事訴訟寸前までに発展。
滞納していた税金と従業員の給料を払う為に奔走
税金未納の罪で実刑になるのを防ぐため、そして、7人居る従業員の給料も3ヶ月滞納してた為、必死で投資家に出資を頼み込む。やっとの事で非常に不利な条件で$300Kの資金を調達するが、税金と給料を支払った後に残った額は$90K. その後少しでも会社を存続させる為に、従業員はパートタイムになる。その後も会社存続の為に常に資金調達に追われる。
Microsoftからの買収オファーを受けるが…
開発していたシステムに対して、Microsoft社がWindowsへの組み込みを検討。会社の買収を持ちかけるが、直前まで金額が明かされない。非常に興味があると散々じらされた後、最終打ち合わせ当日に初めて公開された契約書に記載されていた金額は、たったの120万ドル。90万ドルの負債があったため、実質は30万ドルの買収オファーになってしまうので、打ち合わせを10分で終了(破談)。
Twitterで初めて届いたメッセージが退職願
資金難に直面した為、1人を除いて全てのエンジニアが会社を去る。その後カンファレンスに参加中にTwitter経由で初めて届いたメッセージは、140文字で綴られた最後のエンジニアからの退職願。その内容は、「今まで有り難うございました。僕はGoogleに転職します。さようなら。」ちなみに、彼をGoogleへ引き抜いたのは、以前に裏切りでクビにした共同創業者。
エンジニアの辞職により商談決裂
上記と同じ時期に年間100万ドルのディール交渉をAOLと行う。順調に進み、契約書の最終調整を行っていた矢先に、全てのエンジニアが退職した事実がメディアにタレ込まれ、ディールが破談になる。
会社にエンジニアが不在
2005年頃になると資金難が理由で社内にエンジニアが不在になる。知り合いに紹介された変わり者のエンジニアに必死でしがみつく思いで仕事を依頼。しかも彼には本職があり、手伝ってもらえるのは火曜日と木曜日の午後10時以降のみ。
経費削減の為にタイへ移住
自分達で安価なオフショアを実現する為に、生活費の安いタイへ2ヶ月間移住する”セルフ・オフショア”を行う。その影響か、100万ドル出資していた大口投資家が投資の打ち止めと、投資額の返却を要求。それを補填する為に、既存投資家、新規投資家、商談中クライアントを含む4社同時契約を行い、気が狂いそうになる。
10年間自分への給料は0
投資家に騙され、大手企業から訴訟を起こされ、共同創業者に裏切られ、資金調達に奔走していた10年間、自分への給料は全く払う事が出来なかった。その間は両親と住み、食事はカップラーメンのみ。もちろん彼女はできない。そのような日々10年間過ごして来た。
その後、彼の会社、RedSwooshは2007年にライバルのAkamai社へ2,300万ドルでバイアウトを成功させる。
Travisによると、これまでの数々の苦労を考えると、現在のUberにおける多少の試練は、子供の遊びのような感覚だと言う。相当の修羅場をくぐり抜け、それでも自分とヴィジョンを信じ、あきらめなかった彼には最大限の敬意を表したい。正に、”A winner never quits, A quitter never wins.” (勝者はあきらめない。あきらめる奴は勝者にはなれない) である。
プレゼン後の質疑の際に、「もし10年前に戻れるとして、今説明頂いた数々の苦労をしなければならないと分かっていたとして、あなたはそれでも会社を始めますか?」との質問に対して、Travisは一言、「当たり前じゃないか。色々あったけど、最終的には$23mでExitしたんだぜ!」と答えた。その際に彼の目に光っていた涙が全てを物語っていた。彼はこの10年間でお金では買えない何かを手に入れたのであろう。
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill
スピーチ全編:
来る今月17日にサンフランシスコ市内にて、ビートラックス社 CEO; Brandon K. Hillがビジネス・ブレイクスルー (BBT) 代表取締役の大前研一氏との対談に参加する事が決定した。メイントピックは、最近急激に加速しているコワーキングスペースとそれに伴う新しいワークスタイルに関して。
近年6年間で世界に600を越えるコワーキングスペースが作られ、現在活気のあるコワーキングムーブメントが起きている。そして活気を帯びてか、シリコンバレーでのコワーキング(Co-working), コラボレーション、イノベーションについて議論するイベントが大前研一氏が率いる向硏会 によってサンフランシスコのコワーキングスペース、Citizen Space にて開催される。
向硏会 とは、経営コンサルタントの大前研一氏の主催する日本の企業経営者の勉強会・ネットワークである。今回のイベントでは、サンフランシスコやシリコンバレーを中心とした周辺エリアが、いかにして持続し続けるイノベーションを創り続けることを可能にしているかを学ぶ。
■イベント概要:
日程:10月17日(月) 18:00~21:00
場所:Citizen Space (アメリカ、サンフランシスコ)
425 2nd St, Suite 100, San Francisco, CA 94107
■イベント詳細:
6:00- 6:30 交流会, 軽食など
6:30-8:00 パネルディスカッション
8:00-8:30 多数パネリストからの質疑応答
8:30-9:00 懇親会
■パネルモデレーター:Jaymes Hines
スピーカー : 大前研一氏, 向硏会
Brandon K. Hill, CEO, btrax
Toby Morning, CEO, Citizen Spaces
Raines Cohen, Coworking Coach
■イベントチケット:
無料 (http://citizenspace.eventbrite.com/ )
■主な対談トピック内容: コワーキングスペースが提供する価値
コラボレーション(Collaboration):
コワーキングスペースで働くことの最大の利点のひとつは様々な知識を持った様々なタイプの人々に出会えることである。そこで創造されるコラボレーションには非常に大きな価値がある。
開放性(Openness):
開放的なコワーキングスペースの環境下では、オープンスペースでのディスカッションを推奨する。
単純に人が集まっていてもアイディアが共有されなければ、メリットは少ない。Coworkingとはアイディア共有の場であり、そこでおおきにシナジーが生成される場所でもある。
コミュニティ(Community):
コワーキングスペースではコネクションと成熟した支援を促進し、強く国際的なコワーキングコミュニティを生み出し、入居する人々を繋げ、強いコミュニティー意識を生成する。
接近性(Accessibility):
あらゆるタイプの人々にとって、アクセスしやすい環境の創造を目指している。オフィススペースの立地はもとより、投資家や関係者が気軽に出入り可能な環境を整え、入居者へのメリットを促すとともに、改善点があれば、喜んでフィードバックもうけつけ、常によりよい環境を作り上げる事に従事している。
* 日経ビジネスによるイベントレポート
by
僕が経営者として、アメリカで会社を経営する際に一番重要視しているのが、正しいコーポレートカルチャー(企業文化)の形成である。自社が提供するサービスのクオリティーを始めとして、人事や作業効率まで、多くの側面に対して企業文化が影響する。会社のカルチャーが悪ければ、優秀な人材の獲得及び保持は難しくなり、クリエイティブな発想も生まれにくくなる。結果的に提供サービスの質も落ち、業績が悪くなるといった負のループを生み出してしまう。
逆に優れたカルチャーの形成に成功すれば、極端な話、ある程度放っておいても会社は自ずと成長する。カルチャーが優秀な人材を獲得/育成し、作業効率が高い環境下でスタッフが最大限実力が発揮出来る。それにより優れたサービスが生まれるのである。企業文化とは一言で言うと、その会社の”雰囲気”であり、従業員が気持ち良く仕事をする事が出来る”環境”でもある。その形成要素はオフィスのインテリア、レイアウトから始まり、勤務体系、人事システム、組織構成、レクリエーション施設、そして経営者の人格に至るまで幅広い。以前にEC studioの山本社長が書かれた記事 にもある通り、日本とアメリカのオフィス環境はかなり違う。
ここ最近、クライアントや友人の会社を訪問するうちに、急成長中を成し遂げている会社には共通した企業文化がある事を発見した。それもサンフランシスコ市内の会社のカルチャーはシリコンバレーや他のアメリカの地域の会社と比べてもかなり独特で、それ故にユニークで優秀なスタッフを引きつけているといっても良いだろう。スタッフがその会社のカルチャーを気に入ってくれれば、離職率をぐっと下げる事が出来る。成長しているスタートアップ企業は多くの場合、かなり自由な雰囲気で、管理も緩い様に見受けられる、しかしながらそれぞれのスタッフが責任を持ってしっかりと結果を生み出す事が出来るカルチャーにはどんな秘密があるのだろうか?
サンフランシスコ市内で急成長している会社の10の共通点
会社が急成長している場合、毎週の様に複数のスタッフが増員され、短時間で会社の規模が拡大する。一方で、全てのスタッフに対して細かくマネージメントを行うのは現実的に不可能になる。特にクリエイティブなポジションが重要視されるWebスタートアップ系の場合、あまりがっちりとした管理体制は逆効果で、スタッフの流失を招いてしまう。そこで重要になってくるのが企業文化である。これから説明する10のポイントは、ページ下部にリストされている急成長中のサンフランシスコのスタートアップに共通してみられるコーポレートカルチャーの構成要素である。
1. おしゃれでかっこいい
この街のスタートアップ企業のオフィスに来てまず感じるのが、開放的でおしゃれであると言う事。多くのスタートアップオフィスの壁がレンガ製なのは、彼らが密集する地域:SOMAエリアの建物が元々は倉庫だったのが理由。古い建物を改造している事が逆にレトロでおしゃれでかっこいい雰囲気を演出している。また、家具屋やインテリアもモダンでスタイリッシュな物をそろえている所が多い。恐らくセンスの良いオフィスマネージャーもしくは、外部のインテリアデザイナーの仕事であろう。オフィスがかっこいい事で、スタッフも気持ちよくクリエイティブな仕事が出来る。まさにデザインの力である。よく日本からうちのオフィスに来られた方が、「おしゃれなオフィスですね」と言われるが、この辺では実はかなり標準レベルである。
2. オープンなコミニュケーション
オフィスの雰囲気が開放的であると同時に、コミニュケーションもオープンにしている所が多い。特に会社が大きくなってくると、なかなか近付き難くなるCEOも気さくに話しかけられるような仕組みを提供している。例えば、Twitter社では毎週金曜日の午後に誰でも社長室に入り、提案や提言が出来る時間を設けていたりする。また、会議室の壁もガラスで覆われているオフィスが多く、どのような人々が話し合っているかが一目で分かる。もちろん社内SNSやメッセージシステムで部署の隔たりを超えたコミニュケーションが出来るのは言うまでもない。また、社外の人が出入りしやすい様に出入り口のセキュリティーはあまり厳しく無く、就業時間以降はイベント開催の場所としてオフィスを開放したりする会社も多い。他社のスタッフとの交流の機会が増える事により、社内だけでは思いつかないアイディアを取り入れる事が出来る様になる。
3. 愛社精神を育む遊び心満載のグッズ
この辺の会社を訪問していつも楽しみなのが、オフィス内にある自社グッズである。会社のロゴの入ったステイショナリーは基本で、ソファに置いてあるクッションや壁にかけてあるポスター、らくがき、そしてカーペット、スクリーンセイバー、T-シャツ、バッグ、栓抜きまで至る所に会社のロゴや、サービス名をもじったデザインが施されている。多くの場合、あまり忙しく無い時に社内デザインチームが遊びの社内向けプロジェクトで作ったりするのだが、これがまた愛社精神をアップさせる要因に一役買っている。会社の利益の一定の割合を社内グッズの予算として割り当てている会社もあり、利益がアップされると社内の面白グッズが増えたりする。ちなみに会社で作るT-シャツはかなりお土産として喜ばれるので、日本から来られる方は是非自社T-シャツを沢山ご持参下さい。
4. フラットな構成としっかりとしたレポートシステム
組織構成は、プロジェクトによりそれぞれのチームごとに分れているケースが多いが、日本のような縦型ではなくて、フラットであるケースも多い。しかしながら、責任者へのレポート形態はしっかりと構築されており、作業が効率的に進み、進行具合が一目で分かる様になっている。全体的にフラットな雰囲気であるが、情報伝達はしっかり出来ており、権限と責任の分担範囲がきっちりと定められている。組織はフレキシブルであるが、自分の担当範囲があやふやになる事は無い。また、良いアイディアを思いついたスタッフは、直々の上司を飛び越えてCEOやCTOに進言出来るようになっており、適切な評価が得られる。また、CEOは個々のスタッフに対して、何時でもしっかりとした会社のビジョンを伝えるのが仕事である。
5. 個性の出せるデスクエリア
オフィス全体の雰囲気がクリエイティブである事は重要であるが、それと同時にそれぞれのスタッフが好きな様にデスク周りをカスタマイズ可能にしてある。日本国内の会社のデスクが全て同じに見えるのと対照的に、アメリカの場合、スタッフの個性が出る。特にサンフランシスコの会社はそれが極端で、例えば日本好きなスタッフの机には日本刀やだるまが置かれていたり、自然好きなスタッフのデスクは一見サファリパークだったりする。若いスタッフが多い会社だと、デスクエリアに遊び道具が散乱しているケースも珍しく無い。
6. どこでもリラックスして仕事ができるスペース
自分のデスクに座りっぱなしだとクリエイティブな発想が生まれない事も多い。それを解消する為に、どこでも仕事が出来るような環境が整っていたりする。オフィスの空いているスペースにソファが設置されていて、寝転がって仕事をしてもOK. それ故に、オフィスの至る所の壁がホワイトボードになっていて、思いついた時にメモが出来る様になっている。場合によっては、気分転換の為に最寄りのカフェに行くのも許可されている。また、息抜きに遊べるようなパターゴルフやビリヤード、ダーツがあったりする。スタッフの脳からより多くのα波が出るような施策が施されている。
7. 動物フレンドリー
他社のオフィスに遊びに行くと犬が飛びついてくる事がある。多くの会社でペット同伴を許可しているだけではなく、推奨もしている。動物がいる事でスタッフの心が和み、自ずと良いチームワークが生成される。実は、btrax社のクーパー君 も幾度と無くスタッフに癒しの時間を提供し、ストレスを軽減させている。ファウンダーの愛犬の名前がそのまま社名になっているZynga社オフィスには多くの犬がおり、専用の犬用プレイルームまで完備している。ペットを飼っているスタッフにとっては、他には無い魅力となっている。
8. 飲み物と食べ物が充実
Googleが流行らせたと言っても過言ではない社内での食事提供は、サンフランシスコでも大人気。特にこの街ではヘルシー志向の方が多いので、サラダ等の野菜を中心に会社がスタッフにランチを提供している。オフィスの至る所に飲み物の冷蔵庫やスナック菓子コーナーが設置されており、最近では伊藤園のおーいお茶がこのエリアのスタートアップには大人気になっている。会社によってはシェフがいたり、ケータリングを頼んだりもする。また、月に一回スタッフ同士でクッキングコンテストを行っている所もある。
9. フレキシブルな勤務体系
アメリカの企業で残業が少ないのは有名な話だが、この辺では勤務体系も非常にフレキシブルに設定している。よく見られるケースは、コアアワーとフレキシブルアワーの設定。例えば、10時から17時までは必ずオフィスにいる必要があるが、それ以外はその日によって自由に変更し、最終的に一日8時間就労すれば良いといった仕組み。これにより、例えばバスや電車が遅れても、遅刻を心配する事が無く、無駄なストレスを生み出さない。また、夜学校に行っている人等は、早朝出勤をし、早めに上がる事も出来る。個人の生活リズムに合わせた勤務体系と言える。
10. 厳しい評価基準/成果主義
一見自由で管理の緩い企業文化だけの様に見える一方で、人事の評価や成果に対する基準はシビアである。自由に仕事ができる反面、明確なゴール設定と、評価基準、そしてチームスタッフ全員から評価を受ける360 Evaluation Systemにより、成果を生み出す事の出来ない、もしくはチームにとって不利益なスタッフは容赦なくクビになる。逆に考えると能力のあるスタッフにはフェアなシステムであり、しっかりと結果が出せるのであれば、仕事の仕方に細かく口を出さないのがスタートアップ企業の一番ユニークな企業文化である。また、会社によっては、部下から上司や社長に対しての評価システムを採用している事もあり、経営者といえどもあぐらをかいてはいられない。
日本では企業文化を重要視する企業がまだまだ少ない様に感じられるが、アメリカだと流動性の高い優秀なスタッフが会社を選ぶ上での大きなファクターになっている。これからは高い給料だけでは優れた人材の獲得には限界があり、より良いカルチャーの形成が経営者の大きな仕事の一つとなってくるであろう。日本から来た企業がアメリカで現地のスタッフを雇う時には是非気をつけたいポイントでもある。また、もしかしたら日本とこの辺のスタートアップの実力の差はこんな所にも要因があるのかもしれない。
今回参考にした企業:
Twitter, Yammar!, Adobe, ngmoco, USTREAM, Yelp, SAY media, Cruncyroll, Zynga, Method, Automattic, Vertical Brands, Justin.TV, Current TV, Trulia, EventBrite, Mochi Media, Scribed, Bloomspot, Twillio, Lunar Design, odopod, btrax
筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill