デザイナーを目指す前に知っておいてほしいこと: 【対談】上杉周作 x Brandon K. Hill – デザインの裏側

main-pic日本のバックグラウンドを持ちながらアメリカでデザイナーとして生きる二人がデザインについて語ったら—?

上杉周作(@chibicode)、小学校まで日本で育ち、その後アメリカへ。エンジニアとしてApple、facebookでインターンをした後、その肩書きを捨て実名Q&AサイトQuoraでプロダクトデザイナーに。エンジニア/デザイナーというバックグラウンドを持つ彼と、同じく高校卒業まで日本で育ち渡米、デザイナーであると同時にbtrax CEO、Brandon K Hill(@BrandonKHill)の対談から考える、「デザイン」そして「デザイナー」の役割とは。

対談日: 2012年5月4日
対談場所: btraxオフィス (サンフランシスコ市内)
インタビュアー: 日比谷すみれ

  1. 日本とアメリカのプロダクトやデザインの違い
  2. 教育—答えを求めるのか、何を作り出すのか
  3. デザイナーとは一体?
  4. デザインと向き合うことの大切さと辛さ
  5. 今後の道—良いデザインがもっと世の中に広まるために

—1.日本とアメリカのプロダクトやデザインの違い—

【btraxは先月末、サンフランシスコでSF Japan Night Ⅳを開催しました。3月に東京で行われた最終予選に上杉さんもパネリストとして参加していただきましたが、今の日本のプロダクトについてどうお考えですか。】

上杉周作氏 (以下SU) 以前見たSF Japan Nightよりも更にレベルが上がっていると感じましたが、捨てきれていない・削れきれていないという点でプロダクトが甘い物が多かったように感じました。見て「えっ!」って思う物がない。

Brandon K Hill (以下BH) 日本のやつって、既存の「改良版」なのに対して、アメリカでは全く無い物が出てくるよね。「えっ、うそ!」ていうマーケット、コンセプト、プロダクト。今の時代でもそういった何も無いエリアって、まだユーザー自身が気付いていないけど絶対ある。

SU) Hacker NewsというHacker向け情報サイトから週に一度メールが届くんですけど、Recently Launchedというコーナーが好きで。その週にローンチされたサービスが5、6つ出てくるんだけど、半分くらいはジョーク。(笑)だけど時々すごいのが出てくるんですよね。こんなの考えたことなかった、っていう。

BH) でもね、日本の良さって超あって。例えばデザインだと、プロダクトパッケージが本当に洗練されている。僕が日本でまずやることって、コンビニとかでドリンクのコーナーをずっと見るの。毎回行くたびにかなりおしゃれでかっこいいボトルのデザインが見れるから。完全不審者なんだけどさ。(笑)パッケージの仕事って売ること、つまり手に持たせてレジにに持っていかせることでしょ。だから、消費者が良いデザインを決める。デザインの質はそれに引っ張られる場合が多い。

実はアメリカの消費者って全体的に見るとセンス良くないんだけど、日本人の消費者ってセンス良いと思う。そんな日本人にウケるパッケージってかっこよくておしゃれ。変なこともしてるしよく分かんないのもあるけどすっごい素敵なの。こういうのが消費者にacceptされるのって素晴らしいと思って。デザイナーとしても仕事やりがいがある。アメリカだととりあえず原色で派手に作れば良いんだよ、それがマスで売れるから、てね。(笑)でもその一方で、アメリカのプロダクトやサービスは奇抜でユニークでイノベーションがあるものも多いと思う。0を1にするのが得意で、日本は上手に1を100にするよね。

 

—2.教育、答えを求めるのか、何かを作り出すのか—

【その日米のプロダクトやデザインの質の違いはどこから生まれてくるのでしょうか。】

BH) それは教育。日本の教育では、まず答えがあってどれだけその答えにたどり着くか。アメリカでは何も無いところに物を作り出して行くことが評価される。だからクリエイティブな人材が育ちやすいと思う。日本だと選択式の設問が多いけど、アメリカは自由回答が多い。

SU) 多くの数学者に共通することって、シンプルだけど美しく力強いものを求めることなんです。例えば、有名なオイラーの 式、e + 1 = 0。この1つのシンプルな式に数学の一番大切なものが入ってるんです。大学で数学をやっているとものすごく難しい問題で答えが10行にもなるのもあるんだけど、一番ベストな答えは2行で答えることができます。数学できる人ってオイラーの定理だったりそういうのが好き。

こっちのサービスを見てても同じで、例えばtwitterとアメブロって両方とも自分を発信するっていうプラットフォーム。だけど、twitterは140字でやってるのにたいして、アメブロはたくさんの機能がどんどん追加されていきますよね。twitterはまるで「e+ 1 = 0」。ものすごいシンプルだけどその中でいかに最大限の効果を出せるか考えられています。

BH) それ何かっていうと、日本的考えが  n+n なのに対してアメリカ的考えは n×n 。日本の場合だと、最初からどんどん足して行くことを良いとされるけど、アメリカのデザインやプロダクトって入り口がすごくフォーカスされていて、細くて小さい。そこに何かを入れるとばああーって一気に広がって行く。そのエフィシェンシーってすごいよね。ビジネスでもデザインでもそういった「レバレッジを効かせる」ということが考えられていて感心する。 アメリカではちょっと石を置いただけで大きい物がぽーんて上がるようになっているのに対して、日本ではみんなで頑張って大きい物を上げようとしている、っていうのかな。一回ステップバックして、どこにてこを置いたら一番簡単に石が上がるかな?っていうのを考えなきゃダメかも。

例えばアメリカのスタートアップなんかはバイラルマーケティングが非常に上手で、1人のユーザーを獲得したと同時にサービスが何100人にも広がる仕組みを作ってる。シリコンバレー周辺では、皆最小の労力で最大の結果を出す事を狙ってる。多くの人がどうやったらビーチで仕事が出来るかを真剣に考えていたりするしね。

SU) それに関連する事だと、The Visual Display of Quantitative Information(Edward R. Tufte )という本を日本のデザイナーに読んでほしくて。一番俺が重要だと思ったのは、『インクの量を最小化して、情報を最大化しろ。』という言葉。彼はデータ量を使ったインクで割る「date/ink」 という言葉を作ったんですけど、Quoraも10px×10px、色も灰色のアイコンでいかにインク量を少なくして表現しようとするか、そこから全てが始まっています。

もう1つ、日本とアメリカで象徴的な違いがあって、アメリカでは小学校で作文を書くときwordで書かせます。けど日本は作文用紙を使いますよね。2つの大きな違いって作文用紙は直すコストがwordよりもかなり大きい。ただ文字を消すだけならいいけど、段落の順番を変えるとかすごい労働量ですよね。ワードだったらただコピー&ペースト。それだけのインセンティブの違いだけど、効率を高めてる分、アメリカではその「再構成の回数」が日本のよりも10倍くらい多いんです。そのことによって構成を努力する力が身に付いたと思ってます。

BH) この間ちょうどオフィスで「アメリカ人はなんでシャーペンの良さが分からないんですか?」って話があったんだけど、これもまさに象徴的なことだよね。アメリカではそもそも消しゴム全然使わないから、書いた後に直すっていうコンセプトが無い。シリコンバレーでもなんでもそうだけど、作ってとりあえずリリースする。消しゴム、ないんだよね。この国。(笑)だけど日本人は直して直して、完璧になるまでなかなか出さない。ダメだったら破って次に進めばいいんだよ。

【アメリカの大学教育で学んだこととは?】

BH) 僕はサンフランシスコの大学のデザイン科にいたんだけど、すごく厳しかった。プロのデザイナーになるのはかなり大変で、デザインを学んだ人でも社会で通用するデザイナーになれるのは10%もいないから、学校の時点でふるいにかけられる。確かにそういう点では、親切だとも言えるのかな。クラスが厳しくて、デザインのプレゼンの際なんかには、みんながいる前で先生から普通に「お前デザイナー辞めろよ」みたいに言われるの。その先生も現役のデザイナーだったりするので、説得力があるよね。

SU) 俺もある現役デザイナーのクラスでスケッチ1000枚書いてこい、って言われて最後のほうは間に合わなかった。(笑)それと、ある授業の課題を何も考えずにやってしまったことがあって、みんな画鋲で持って来た物を前に貼るんですけど貼れなくて。先生に「お前のどこいった?」って聞かれたんですけど「いや、どこいったんでしょうね。」って。その後めちゃくちゃ落ち込んで、先生に「出せませんでした。」ってメールして「じゃぁ明日までにもってこい」って言われてその日やって・・・ってすっごい恥かいた経験があります。

アメリカの大学の授業って授業がトラウマになる人もたくさんいるくらい。生徒がすごいまじめなのもそうだし、そのクラスを作った人や今教えている人がよく考えた結果。毎年毎年教えられて行くことに改良が加えられて行く。日本の大学でそういうことをやろうとしても時間がかかってしまうと思います。ある意味アメリカの大学は教える方も真剣勝負だと思います。

2nd

【ではもし上杉さんとBrandonさんが日本の大学生だったとしたら?】

SU) いや無理ですね。精神的に。多分遊んでました。俺まわりに合わせようと生きているから。(笑)こっちだとみんな勉強してるからそれに合わせてればいいんですけどね。

BH) 日本の場合、入学時に学部を決めると思うんだけど、まず自分が入りたい学部が無い!(笑)無理矢理興味の無い学部に入ったとしても、続かないかな。辞めなくてもだらだら走ってアウトプット0かもしれない。ある時btraxにインターンに来たやつですごく優秀なやつがいて、そいつに「お前の大学すごいんだね」って聞いたら「大学関係ないっすよ、大学行ってないっすもん。」つまりそれは大学で身に付けたことじゃないって。日本の大学って魅力ないのかなと思った。

あと、そもそも東京は誘惑が多すぎる。主要な大学が都内にあるので、集中できなくて辛いことをやっていたくなくなる。アメリカってこの辺(サンフランシスコ)の大学の立地も超田舎だから。日本の大学の立地はありえないとおもう。あれだと学生にとっては拷問だよね。

SU) それはありますね。僕もこの間5週間日本にいてこっちに戻って来てびっくりしました。逆に僕が通った大学(カーネギーメロン大学)のあったピッツバーグは鉄鋼業で栄えた街で今は凄く廃れてしまった街だったから、今はもうお金もないし冬は寒いし。でも逆に勉強に集中できました。

大学ではコンピューターサイエンスを勉強していて、そのときに大学時代にダメダメダメダメ、ってダメ出しされるのに慣れたのが良かったなって。ある数学のクラスで一年間ずっと難しい定理を証明することばっかやらされて。1ページくらいの証明を書いて提出するんですけど、「いやここが甘くてダメだ」って何度も戻される。けどそのクラス自体、週30時間勉強しないと成績が取れない上、そのクラス以外の勉強もあわせると週70時間くらい勉強しないと単位が取れない。そのくらいの厳しいレベルでやっていたのが今すごく役に立ってます。

というのも、ダメだと言われたときに、自分がダメだったんじゃなくて、自分の努力が足りなかったり考えが甘かったことを指摘してくれたと自動的に捉えること。そういう前向きな姿勢を学ぶことができたんです。(これは理系に限った話じゃなくて)俺は大学で数学やったけど、アメリカでは文系の人でも小論文をすごい書かされて、「ダメだ」って何回も直されるんです。そういったことが高等教育でカバーされてたのが良かったかなって思ってます。

BH) 確かに、アメリカの大学を出た人って瞬間のフォーカス力がすごい。追いつめられる訓練を何度も何度もさせられるから。あり得ないぐらいの短い時間でのアウトプットを求められるから、常に気が抜けない。

SU) そうですね、日本もそういうの受験勉強でやってるはずなんですけど、多分アウトプットの形が違う。

BH) 受験勉強でフォーカスされるのは記憶力と耐久性。要するにマラソン。アメリカって短期勝負型で、スプリント、スプリント、スプリント。集中の質が違うよね。

SU) 日本人には是非一年間難しいプログラムでアメリカの大学に留学してほしいです。語学留学ではなくて・・・。そうすればこのあとはこうすればいい、というのが分かるから。

 

—3.デザイナーとは一体?—

【では「良いデザイナー」って一体何なんでしょうか?】

SU) まず自分の媒体を知っていなければいけないっていうのがあります。例えば、Webデザイナーに基本的にiPhoneのデザインをやらせてはいけないんですよ。どれくらい余白をとるかがWebとiPhoneでは全然違うから。とりあえず自分が手を動かすヤツをしっていないければいけない。あと色々あるけど、問題解決ができるかどうかも重要。

BH) 僕の場合はデザイナーを採用する立場から言わせてもらうと、媒体やスタイルを問わずデザインに関してのベーシックが全て出来ていて、プラス誰にも負けないような得意分野が1つぽーんとあるって人。

SU) 逆Tの字ですね。

BH)(そのTの字の)横が無くて縦だけの人は絶対ダメ。得意分野が一つだけあっても、ベーシックが出来ていないデザイナーは長持ちしないと思う。実は、「デザインができる」っていう表現自体がすごく難しくて、「作れる」ことの手前に、デザイナー的考えをするっていうのがある。みんな作ることばっか考えちゃうんだけど、作る前に解決するべき問題をどういう風に受け取って処理するか。そこ処理出来るか出来ないかで勝負決まっちゃうから。

だけど、「問題をどう処理するか=デザイナー的考え」と同時に「モノに命を吹き込む行為」であるデザインの側面もすごく面白い。例えば、ただの石はそのままだったら拾ってもすぐに捨てるけど、それに仏様の彫刻を施してあったら捨てないでしょ?同じ物がデザインを施されることによってその価値を生み出される。問題を解決した訳じゃなくても、良いデザインは人の気持ちを引っ張ることができる。そして悪いデザインのものは存在する時間が短いのと反対に、良いデザインのものって長く生き続けることができる。与えられたデザインの質でプロダクトの寿命を左右するから、そういう点でデザインの力ってすごい重要。

SU) そうですね。重要な使命感があって、生かすも殺すも自分次第。それが面白いです。

【ではどうしてデザイナーになったのでしょうか?】

BH) デザイナーになろうと思ってなってた訳じゃなくて、気付いたらなってた。魚ってがんばって泳いでないでしょ、気付いたら泳いでた。そんな感じ。デザインをするために生きてる感じしかしない。

SU) デザインは生き方って、誰かが言ってましたよね。

BH) イタリアのデザイナーが言ってたんだけど、デザイナーは一日24時間仕事をしている。デザイン作業をしていないときでも、日々の生活から常にインプットしていて、それをアウトプットに活用する事でずーっと「デザインの仕事」をしてる。

SU) 俺としてはあんまりそれかっこいいと思ってないです。時々短気になります。全く考えられていない広告とかを見て腹が立っちゃって、心の問題上あんまりよくない。(笑)

BH) 絶対音感がある人が雑音聞いたら気持ち悪くなるのと一緒だよね。アメリカのスーパーマーケットとか腹が立ってしょうがない。パッケージがひどい。

【アメリカのスーパーで見かけたサッポロビールの缶はとってもオシャレでしたよ。私はパッケージを見て買いました。】

BH) アメリカ人はそういう繊細な違いに気付かないよ。(笑)

SU) うん、気付かないですね。(笑)

BH) アメリカの場合、値段と量が重要で、でっかく0カロリーとか直接ベネフィットが書いてあることがポイント。

【そこは矛盾している気がします。Appleはシンプルなデザインを突き詰めていますよね?】

BH) え、だってAppleはやっぱりまだマジョリティじゃないよ。

SU) 今だに”Apple products are overpriced”って言われてますよね。

BH) ここ(サンフランシスコ)は特別だからね、ここにいるから気付かないだけ。あと、Appleが象徴的なのは良いデザインが世の中の人に受け入れられて、その効果を発揮するのには時間がかかるという事。彼らは設立時から一貫して素晴らしいデザインと機能性にこだわって商品を造って来たけど、やっと市民権を得られるようになったのはここ最近の話で、一時期は倒産の可能性もあった。本当に良いデザインを世の中に普及させようと思うと、短期間での結果は出にくいので、かなりの忍耐と強い信念が必要だと思う。でも長期的に見るとデザインのチカラは計り知れないと思う。

SU)(今はそういう状況だけど)俺がAppleの戦略でいいな、って思うのは、「子供にフォーカスしてること」なんです。Appleストアに行くと子供の遊び場が必ずあって、前まではiMac、今はiPadが置いてあります。それで子供がゲームで遊べるっていう。今そうやってAppleのプロダクトと育って行った将来、それよりもはるかに悪い物を見て、「何これ?」って思いますよね。けどWindowsに慣れて育ったら悪い物を見ても「悪くないじゃん」って感じてしまう。美しいものに慣れたとき、そうでないものを見るとすごい「あれ」ってなる、そのAppleの戦略良いなーと思って。

BH) あと、世の中で一番素敵な、完成されたデザインって自然っていう説がある。自然は何よりも素晴らしく機能的であり無駄が無く、意味がありシンプル。スズメバチが黄色と黒なのは危ないから、とか・・・すべてにおいてファンクションとフォームのつじつまがあっていて、一番合理的な形をしているのが自然。自然を研究するとデザインの勉強としていいのかもしれない。そういう意味で田舎育ちには良いデザイナーが多いのかも。

SU) Christopher Alexander の「Notes on the Synthesis of Form」という本に書かれていた「自然は常に最適な結果になるためにevolution(進化)していく」ということですね。長い間続いた古代文明の家などは必ず良くデザインされているらしいです。

 

—4.デザインと向き合うことの大切さと辛さ—

【では上杉さんはどうしてエンジニアからデザイナーになったのでしょうか?】

SU) 覚えてないです。(笑)本当にたまたま。エンジニアとして働いていたときにQuoraのデザイナーの人とランチをして、エンジニアとしてではなくデザイナーとして面接を受けろ、って言われて。Quoraにすごく行きたかったから、デザイナーとして面接を受けてダメだったらエンジニアで受け直そうなんて思ってたんですけど、デザイナーとして採用されたから、それからデザイナー。(笑)でも、今デザイナーを捨てる気はありますし、自分が持っている物が何も無い状態にあるのが好きなんです。例えばブロガーとして有名だとずっと面白い記事を書かなきゃってすごいプレッシャーがありますよね?捨てるのに抵抗が無いんで、もしまた捨てた物が必要になったらあとから拾えば良いと思っていて。仕事もぽいって捨てちゃいましたし、抵抗が無い。

BH) けどデザイナーってそういう危うさがあるよね。デザイナーと仕事をする上でそこって普通の人と全然違うから大変。常に刺激なり何かしらの興奮がないとデザインすることを辞めちゃう。

SU) 上がデザイナーっていうのが重要で、理解してくれるリーダーなりマネージャーが必要だと思います。

BH) うん、デザイナーってデザインだけでは短期的な結果に近づきにくいんですよ。長期戦なんで。さっきも例に挙げたけどAppleだってそう。時間を掛けて良いデザインを生み出す事をみんな途中で捨てちゃうんだよね。「デザインをきっちりやっていく!」と決めた時のそのリスクってすごい。時間がかかる分、捨てる方が楽で、短期的にかかるコストや、プロダクションの効率性、目先の利益を出しやすいから。でも長期的に考えると差別化がしにくくなる。ビジネスのトップの人間がそこまで腹くくって、俺はデザインちゃんとやりたいからその通りにやって売上は気にするな、っていう人じゃないとデザイナーは良い仕事をできない。

SU) あと、自分に正直な人でなければデザイナーにはなれないと思います。QuoraのUIの中の文章を書いてて「これすごい良いんじゃない?」って思ってたけど翌朝見たら「ああだめだ→じゃぁどこが変えられるか?」っていう繰り返しです。最初の10行とか100回書き直します。デザイナーをやる前は 自分で「これで終わり」って思い込ませてしまって止めてしまってました。完全に自分に正直になって「まだだめだ」って自分に言えること。そして同時に、「もうだめだ」って思わないように心をコントロールしなきゃいけなくて、それが難しいですね。自分に嘘つかない人にならなきゃだめなのかなって。

【途中でくじけてしまうことは無いのでしょうか?】

SU) メンターがいたから助かったんです。上に立つ人って、俺が「これもういいでしょ」、って言ったときに「まだだめだ」っていわなきゃだめなんですけど、そのときに「お前はもうダメだ」じゃなくて落ち込ませないようにしかもやる気を出せるように言わなきゃダメなんですけど、それってすごい難しいですよね。

BH) それ、自分のような立場からするとすっごい難しい。デザイナーが出して来たものが納得いかないときに「それはだめ、やり直して」って言わなきゃいけないの。だけどその人が頑張ってやってるの知ってるからどうしようかなーって悩むよね。そう言う時は、頑張ってやり直さなきゃ行けない理由を説明する。上手い方法は「どうしてこういう風にやったの?」って聞いてあげること。「でもこういう考え方はどう思う?」って質問すると、「ああそっちのほうがいいかも」自分で理解してくれる。「やり直しても良いですか?」って自分で言ってもらえるところまで質問を投げて行けばいいのかなって。

SU) 自分の上司で上手いなーと思ったのは、「いいと思う。でももう一日考えろ」って言うの。(笑) 何その含みのある言い方、ってこっちとしては思うんだけど改めて見てみると直すところも見えて来て。それでそのことを上司に報告すると、もともとダメだって分かってたのに、「じゃあ今度次のを見せて」って言われる。そういう上司との関係ってすごい難しかった。

BH) 日本人で、デザイナーって聞くと「おしゃれ!かっこいい!」とか言う人いるけど、実際「超地味」で「超残酷」で「超疲れる」。しかもやった割に報酬や成果があわないんじゃないかって思うくらい大変。それでもやりたいって思う人じゃなきゃデザイナーは向いてない。

 

—5.今後の道。良いデザインがもっと世の中に広まるために―

【では今二人が現在解決したい問題とは一体?】

SU) 教育をデザインで変えたいですね。それについて今度のTEDでも話そうと思っています。イノベーションを起こすのに必要な人はどういう人たちか?と考えたとき、3つパターンがあって、その辺を説明出来ればと思います。あと良いデザイナーを生み出す為の教育に関してとかも。お楽しみに。

BH) 僕はデザインとビジネスをもっと密接に関わらせて行きたい。資本主義の国の場合、どんなにきれいなデザインのモノでもビジネスの要素がなければ死んでしまう。例えば、もしどんなに良いデザインのwebサービスがあっても、ビジネスとして成り立たなかったらcloseしちゃうでしょ。世の中にインパクトを与えるためには、この要素が無いと人の心もお金も社会も動かせない。ビジネスとデザインをもっと密接に関わらせることによって、すごく良いデザインがビジネスに影響していくかなって。そんなよいデザインを普及させて行きたい。デザインとビジネスを融合させれば社会に対する影響力も大きいと考えてる。

【今後の目標は?】

SU) 肩書きや場所関係なく自分一人で生きて行けるようになりたい(ロケーションフリー的に)。けどデザイナーでフリーランスって難しいんですよね。だから最近またエンジニアリングを学んでいます。

BH) 会社をやってる限りロケーションフリーは無理だとしても、多くのロケーションで人に影響を与えたい。世界の色んな地域で働ける環境作りがしたくて、なら自分の住みたい街に会社のブランチを作ればいいかなって思って。それがどこかというと、東京とLAとNY。それらの街にオフィスを作る予定です。

【最後に: デザイナーに必要な資質って何だと思いますか?3つ挙げてください。】

BH)

  1. 自己顕示欲の強さ。自分を表現したいかどうか、目立ちたがり屋
  2. 既存の物を疑って考えること。
  3. 遊び心。冗談とかイタズラ好きで、相手を喜ばせるっていうことを考えられるかどうかがとても重要。

 

SU)

  1. デザイナーって役をこなせるかどうか。デザイナーは会社の中でもプレッシャーを受ける立場だから。
  2. デザインやっている時間が一番好きになれるかどうか。
  3. 何が正しいのか、正しい答えを探し続けることを出来るかどうか。俺は中学、高校生のときに片付けがとても好きで週に一度どこに机があるのが一番良いかというのを考えて動かしていました。今はiPhoneのホーム画面もいつもどこにどのアプリがあるのが良いかというのを考えて動かしています

 

インタビューを終えて—デザイナーは世界で一番残酷で、一番夢のある職業—

こ のインタビューをするまで、私はデザイナーとはなんだか魔法使いみたいでカッコイイと思っていた。けどそれは完全に非デザイナー側からみた勝手な妄想であり、私はデザイナーの単なる一面しか見えていなかったと気付いた。

実際のデザインとは、ロジックというピースを1つ1つはめていった大きなジグソーパズル。決して短期勝負ではないその作業は私が想像していたものよりはるかに過酷なもの。そしてそんなデザインをする彼らデザイナーは、私よりも遥かに正直に自分と、デザインと向き合っている。今この世界にある優れたデザインは、世界のどこかであるデザイナーが命を吹き込んだ特別なもの。そう考えるとデザイナーとは世界で一番残酷、だけど世界で一番夢のある職業なのかもしれない。

また、同時にもう1つこのインタビューを通して確信したことがある。誤解を恐れずに言うと、デザインとはデザイナーのものだけではない、ということだ。今このpostを読んでいるあなたも、そしてこのpostを書いている私も毎日何かをデザインをしている。「どういう構成にしたら読んでいる人に彼の言ってることが上手く伝わるか」「文字の大きさは」「句読点をうつ場所は」・・・
誰かのことを想像して自分を表現するとき、私たちはもう、「デザイン」をしている。 二人の対談はデザイナーやデザイナーを目指す人のためだけではなく、全ての人に当てはまることだ。

「ダメだと言われたときに、自分がダメだったんじゃなくて、自分の努力が足りなかったり考えが甘かったことを指摘してくれたと自動的に捉えること。そういう前向きな姿勢を学ぶことができたんです。」

つまり自分に正直になること。それは決して簡単ではないが、パソコンやソフトウェア、テキストも必要なく、今すぐ始められるより良いデザインへの第一歩に違いない。

 

上杉周作
シリコンバレー在住のデザイナー。@chibicode
88 年生まれ。神奈川県出身。小学6年まで横浜みなとみらいで暮らす。中学からアメリカ東海岸に引越す。現在は海外を拠点にデザイナーと して活動中。元Facebook、Appleにてエンジニアとしてインターン。元Quoraデザイナー。カーネギーメロン大学でコンピューターサイエンスを学び、その後同大学院にてデザインの修士号を取得。シリコンバレーで今最も注目されている日本人の1人。講演「20歳を過ぎてからプログラミングを学ぼうと決めた人たちへ」 慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで講演も行った。

 

Brandon K. HIll (ブランドン・片山・ヒル )
btrax, Inc.CEO @BrandonKHill
サ ンフランシスコ州立大学デザイン科卒。北海道札幌市出身の日米ハーフ。高校卒業時までほぼ日本で育ち、1997年アメリカサンフランシスコに移住。現在は サンフランシスコに本社のあるグローバル市場向けBranding / Marketing 会社btrax CEO.。今後の目標は日本の若い起業家、起業家志望者に向け、より多くの成功事例を見せる事により、世界進出の夢を与えること。

〜迷ったら逃げろ〜 [起業家インタビュー] NEW PEOPLE 代表堀淵清治氏

迷ったら逃げろ。
これはNEW PEOPLE, Inc. CEO 堀淵清治氏が日本の若者へ送ったメッセージだ。

まずは直面していることから逃げろ、と言いたい。これを選ばなきゃという社会的プレッシャーや不安は確かにある。だけど、思い詰めることなんて何もない。とりあえず迷ったら逃げる。逃げられなくなったら腹をくくる。

そういう考えの方が、世界平和の役に立つと思うんだけどな。(笑)」と最後にお茶目に付け足す堀淵氏は筋金入りのヒッピーだった。早稲田大学法学部卒業後就活をせずにそのままアメリカへ飛び立ったまま、10年間事実上仕事をせず山にこもっていたという。しかしその後1985年に会社を立ち上げた彼こそが、日本が世界に誇るマンガという文化をアメリカ、そして世界へ広めた第一人者。彼は今、ここサンフランシスコでまた新たな挑戦を始めている。一起業家として、堀淵氏にこれまで、そして今後のビジョンを伺った。

自分の直感に従って「面白い」と思うことにトライし続けてきた結果が、日本とアメリカ、そして世界とを結ぶ「文化の架け橋」となった。(中略)我々ひとりひとりの直感は、きっと世界のどこかでつながっている。僕はそう信じている。
『萌えるアメリカ』P11)

なぜアメリカに来ようと思ったのでしょうか。

大学三年のときに友達と一ヶ月サンフランシスコを旅行。この全てを包み込むような雰囲気にすっかり惚れ込んでしまって、卒業と同時に渡米。なぜ日本で就職しなかったかというと、知らない誰かと机を並べて仕事をするのが嫌だった。

どのようにして日本のマンガをアメリカに持ってこようという発想を思いついたのでしょうか。

大学生時代、マンガは好きだったけどマンガオタク、という訳ではなかったんですよ。久々に一時帰国した際に読んだ大友克洋の『童夢』を読んで、日本のマンガはここまで進んでいるのか、と衝撃を受け、1985年、小学館のオーナーに会ってそのときふと「日本のマンガをアメリカでやったら面白いと思うんです。」と話したことから話が始まった。
ビジネスなんてほとんど何も知らなかったしマンガオタクでもなかったけど、逆に知らなかったことが良かったのかもしれない。

堀淵氏は1986年7月7日に小学館の出資を受けVIZ Communications, Inc.を設立。1999年のアメリカでのポケモンの大ヒットや、2002年にはアメリカ版週間少年ジャンプを販売開始。まさにアメリカにおけるマンガ/コミックス市場拡大を牽引してきた。

卒業と同時に渡米し、マンガオタクでもなくビジネスの知識もなかったという堀淵氏。金儲けやビジネスに興味が無く、自分のやりたいことを追い求めて気付いたら会社という形になって人が周りに集まっていた—多くの起業を志す人々は堀淵氏のように自分のやりたいこと、夢を追い求めて結果会社を作りたいと思い起業家となるのだろう。ではその後、世の中から求められて会社を大きくしていく必要がでたとき、どのようにその組織を大きくしていくのだろうか?

起業家、経営者として、どのように組織を大きくしていくのでしょうか。

できない。僕にも君にも。そもそもの発想が違うから無理なんだ。
そういったことを考えてくれるパートナーがいてくれれば大きくなる。逆に経営者はentrepreneurとしての最初のビジョンが何よりも重要。僕みたいに適当にやっていこうって人もいるけど、100人近く(の組織)になってくるといい加減なことは出来ないよね。(笑)だからHRが必要になってくる。

会社を大きくしていくこともなかなか勇気がいる。その辺はまあ、そうなったときに考える。とにかく自分の思い描くコーポレートカルチャーを作り守って行くこと、ビジネスパートナーとして会社のことをきちっと考えてくれる人、この2つが重要。
1987年に堀淵氏を含め4名でスタートした VIZ Communications, Inc.はその後2003年に小学館と集英社の合同出資を受けてVIZ, LLCに。2005年にはマルチメディアカンパニーとしてのブランドを確立するために小プロエンターテインメントと合併しVIZ Media, LLC.と改名。アメリカに日本のマンガが広がると同様に拡大していったVIZだが、現在堀淵氏の軸は出版業務から映画配給やイベント運営に移っている。
2009年、堀淵氏はサンフランシスコのジャパンタウンにNEW PEOPLE, Inc.という新しい会社、そして同名のビルを立ち上げた。

現在はマンガ出版の第一線からは退かれているとのことですが、どのようなことをされているのでしょうか。

ビル建てたからね、NEW PEOPLEの管理運営かな。(笑)あと映画の配給とポップカルチャーのお祭り、アメリカに進出してくる日本企業のお手伝いをしている。
特にビルに関するところでは、京都のデザイナーと100%made in Japan、失われつつある日本の伝統技術で『SOU・SOU』というブランドを作っている。例えば、地下足袋は放っておいたらなくなってしまうけど、スニーカー風にして・・・ゆっくりでいいからこれを世界中に売り出して行きたい。日本の伝統文化を守るためという民族主義的発想よりは、(日本の伝統文化は)純粋にかっこいい!っていう発想。かっこいいものを作りたい。

 そう語る堀淵氏は著書の中でも日本という国の魅力を以下のように述べている。

僕にとって日本の魅力とは、この国のおおらかさや曖昧さから生まれる美しい柔軟性だ。(中略)ではその(日本人らしい)オリジナリティとは何なのかとあらためて考えるとき、僕はやはり、アメリカへやってきたすぐの頃、ヒッピー文化を通じて精神世界や東洋思想に触れた際に思いがけず再開した「八百万の神々が住む国ニッポン」の美しい自然を思い起こす。(中略)それはつまり、世界はいつも我々とつながっているのだということを、古代から聖域として遺し伝えて来た国のオリジナリティだ。
『萌えるアメリカ』P244)

今後のビジョンについて詳しくお聞かせください。

日本の価値を世界に紹介する「文化ビジネス」を今後もっとやっていきたい。日本の知恵・ノウハウをもっとアメリカに、そして世界に伝えていきたい。ただこればっかりはなかなか一起業がビジネスとしてやることに限界を感じていて、本当は国がもっとお金を出してやっていく必要があるだろう。
具体的に今後やろうと思っていることは2つ。
1つは1年に1回行われるJ-POPサミットをもっと洗練させて大きくしていきたい。
あとは日本からアメリカに来たいと思っている若い人や会社へのコンサルティング。今、パワーはアジアに向いているけどアメリカは巨大な国で、ここで何か出来ることはないかなって来る人がたくさんいる。一緒にやれて、自分も面白くて、ビジネスも上手く行くと思うものをお手伝いしたい。
ただ、アメリカだから自由でいいでしょ、って思ってる人がいるけどそれは違う。どこでも人と人との基本の付き合いがあるから礼儀をつくすとか最低ラインの基本が無いとダメ。

今年で4回目となるJ-POP SUMMIT Festivalは「Cyberpop Overload!」をテーマに2012年8月25日、26日にサンフランシスコのジャパンタウンで開催される予定。詳しい情報はNEW PEOPLE, Inc.のwebサイトまで。

米国進出において必要とされる要素とは 〜Grow! Inc. CEO一ツ木氏インタビューより〜


btraxはメインビジネスとして、米国進出を試みる日本企業をデザインやプロモーションの面でサポートしており、最近ではSF NewTech Japan Nightの主催によってスタートアップ企業の米国進出支援も行なっている。Japan Nightを行なう中で米国進出を目指す日本のスタートアップの数は徐々に増えてきている様に感じる。しかしながら、VISAや言語の壁、文化の違いなど障壁は多く、なかなかこちらにオフィスを構えて本格的にサービスを始めるという段階まで進んでいる企業は実際少ない。そんな中、第3回SF NewTech Japan Nightに出場したGrow! Inc.は、昨年米国での会社登記を済ませ、米国進出に向けて着々と準備を進めている。今回は、そんなGrow!のCEOである一ツ木氏に話を聞き,実際に米国進出までの道のりや今後の展望についてお話を聞かせていただいた。

インタビューでは、ビジネスやスタートアップに限らず,どんな場合においても必要な1つの原則を自身の経験を交えてお話しいただいたので、関連する動画の話と織りまぜながら共有したいと思う。

Grow! Inc.は、お気に入りのコンテンツにボタンを通じてチップを贈り、コンテンツ製作者を支援できるとともに、コンテンツを友人と共有できるソーシャル・チッピング・プラットフォームである。今現在日本では6000人以上のユーザを獲得し、計900万ページ上にGrow!ボタンが設置されている。

Grow!の始まりは、強い問題意識からであった。若い頃に音楽をやっていた一ツ木氏は、周囲のクリエイターたちがアルバイトをしながら生計を立てている事に疑問を感じ、長い間そんな友人たちを助けたいという想いを抱いていた。ネット業界で働き、そこで得た知識をもとに全てのクリエイターたちにファンがネット上で直接、少額で投資する事が出来る仕組みを共同創業者と共に思いついた。こういった経緯があり、「ファンとクリエイターの関係をインターネット上で創り上げたい」という強い目的意識からGrow!は誕生したのである。

WHYの大切さ

Simon Sinekの”How great leaders inspire action”というTEDの動画を見た事があるだろうか。4,177,227回の再生回数を誇る、TED内でも最も高くランクインしているStoryである。このプレゼンテーションの中で彼が力強く唱えている黄金のサークル理論をここで紹介したい。

通常、企業はみな、自分が「何を売っているか(WHAT)」「どんな風に売っているか(HOW)」を理解しており、多くの経営者は自身の事業について最も多くを語る。つまり、WHAT(何をするのか)-HOW(どうやってするのか)-WHY(なぜするのか)の順番で事業を決めているのである。しかしながら、時代を変革させ、人々の行動を変える偉大なる存在は、いつも根本にWHY(何故やるのか)をおいて事業を考えている。何が目的なのか、何のためにこの会社は存在するのか。何故顧客はその製品を買う必要があるのかを中心に考え、必ずWhy-How-Whatの内から外に物事を考える。それを指針として、一つ一つの行動をおこなっている企業や人間こそが、偉大なるリーダーとして人々の行動を変えることができるという話であった。

今回のGrow!の一ツ木氏の米国進出に関するインタビュー内容は、上記の話と強くリンクしていた。Grow!がいち早く米国への進出を行動に移すことが出来た理由、それこそがまさに”WHY”の存在なのである。米国進出をする目的、あえて難しい状況である米国で勝負する理由、それがしっかりと根底に有ることが、Grow!をここまで進めてきた原動力なのであると一ツ木氏は語っていた。

Grow!が米国進出をする理由

Grow!が米国進出をした理由は3つ有る。まず法律的に日本では個人間の金銭のやり取りが禁止されていることが一つにあげられる。お金を融通する機能を持つサービスは銀行の様な金融機関であると分類化され、その数を増やしてはならないとされているのである。反面、米国は金融機関の設立に規制がないため、Grow!の行なっている、個人から個人へオンライン上で直接送金することに関しては全く問題がない。

第2に市場規模。アメリカの寄付市場の規模は24兆円(日本の外食産業と同じ)であると見込まれており、毎年衰退することなく安定的に推移している。加えて、オンライン上の寄付に関しては、ここ4年で3倍に成長している。反対に日本での市場規模は30分の1の8000億円であり、そもそも寄付の文化が根付いていないというのが現実としてある。従って、米国においては、Grow!の提供するサービスであるオンライン上での個人からクリエイターへの寄付というシステムが日本より機能しやすいのである。

第3にチップ文化。米国に旅行されたことのある方はご存知だろうが、米国ではレストランやホテル、タクシーなどあらゆるサービス提供に対してチップを支払う文化がある。これは顧客が提示された金額に加えて、サービスを行なってくれた個人に対して支払われるものであり、個人間の直接的なお金のやり取りが概念として既に存在している。Grow!の提供するシステムはチップ文化という米国の文化背景に非常に上手く合致するため、日本よりも受け入れられやすいのである。

上記の3つの理由から、Grow!は米国で事業を行なうことを前提として考えていたため、サービス開始時から1Grow!=100円ではなく1Grow1=$1に設定している。このように「米国市場で勝負しなければいけない理由」があったことから、目標がぶれる事無く、挫折する事無く、米国での登記まで辿り着く事ができたのである。

今回のインタビューから我々が学んだのは、”Why(何故やるのか)”の存在であった。「何故」という理由付けがしっかりしていれば、方向性は絶対にぶれないし、ぶれた時もすぐに調整が出来る。そこが行動を起こせるか起こせないか、継続できるかできないかを分けるカギとなっている。会社の経営にしても、自分のキャリアにしても全て、”Why”が不可欠であり、その目的意識が自分を信じ続ける支えと成り,また周囲の人間にも強い影響を与えることができるのであろう。それは常に高尚なものでなくとも良い。最も大切なのは、自身の行動の理由、存在の理由を考えながら自分が何(What)をどうするか(How)を決定していくというプロセスを意識することだという教訓を、今回のGrow!一ツ木氏へのインタビューから得ることができた。

 

SF NewTech Japan Night 東京での最終予選出場企業が決定いたしました!詳細はこちら

SF NewTech Japan Night イベントチケット購入ページはこちら

SF New Tech Japan Nightサイト 一ツ木氏のインタビュー記事

 

by

シリコンバレーのVCから日本の起業家に対してのアドバイス

main-pic先日開催された第三回SF New Tech Japan Nightの出場チームに対して、イベント翌日にシリコンバレーで活躍するVCの方から、個別にアドバイスをもらうための面談を行った。このセッションは、サンフランシスコSOMA地区にあるbtraxオフィスの会議室にて10/4の午前10時から1社それぞれ15分の予定でスタートした。結果的には平均1社45分というかなり充実した内容となった。

日本から来た若き起業家のアドバイザー役を買ってくれたのは、友人もでありシリコンバレーにてVCファーム: Fenox Venture Capitalを経営しているAnis Uzzamanである。Anisはアメリカの大学を卒業後、東京工業大学で修士を、首都大学ではPh.Dを獲得している。それ故に日本語も堪能で、日本のスタートアップや起業家を応援する気持ちが人一番強い。その後IBMの社内M&Aを経て、現在のVCファームのCEOに就任した。彼は今回のイベントを知り、通常は分刻みのスケジュールで超多忙なところを、好意で面談を申し出てくれた。

自身も投資事業だけではなく、他社のアドバイザーや会社の立ち上げにも関わっている彼が、Japan Night出場者に対し提供するアドバイスはどれも的確で、聞いている方としてもとても勉強になった。それらの中で、これからアメリカやシリコンバレーでビジネスを展開して行く上で、非常にユニークで有益なポイントが幾つかあったので、ご紹介する。

シリコンバレーのVC; Anis Uzzamanから起業家へのアドバイス

日米の会社のレベルの差は大きく無いが、絶対的なコネクション量が違う

日本とアメリカの両方のスタートアップ企業を詳しく調査している彼によると、会社やそこで働いている人材のクオリティー、そして提供する商品やサービスに於ける日米の差はあまり大きく無いという。しかしながら、アメリカ、特にシリコンバレーの会社や関わる人々が持つコネクション量と質が絶対的に有利なので、同じような展開をしようとしても、アメリカでは成功の可能性が上がる。

意思が強ければ誰とでも繋がれる

誰かと繋がりたいと思った時に、それが可能かどうかは本人の意思の強さ次第。強烈な思いで突き進めば、何らかの方法でアポイントが取れるはず。現に彼自身も、最近多くの知り合いに声をかけ、1週間以内でバンク・オブ・アメリカの社長とアポを取る事が出来たという。思いが強ければ、それが行動に現れ、周りが助けてくれる事もある。

アメリカはアグレッシブでスピードが速い

アメリカでビジネスに関わる人々は、図々しいぐらいにアグレッシブでスピードが速い。目標を達成する為には、ある程度強引な裏テクも駆使する。真面目で堅実な日本人起業家では、なかなか太刀打ち出来ないケースもある。

シリコンバレーでは有望な会社に投資するのは至難の業

いくら著名なシリコンバレーのVCでも、有望で注目されているスタートアップに投資するのは容易ではない。お金以外に何かしら提供出来る要素が無いと、他のVCを優先される事もある。実際彼の会社も今年のY Combinator主催のピッチコンテストでの出場企業に声を掛けたが、既に他のVC25社が面談待ちの状況だったらしい。

サービス名に関連するドメイン名は全て取得するべし

Anisが全てのチームにアドバイスしていたのが、ドメイン名について。.comだけに限らず、.netや.orgを初めとして、出来るだけ多くのバリエーションを取る。そうする事により今後他の会社が同じような名前で展開するのを未然に防げる可能性がアップする。また、最近ではTwitter, YouTube, Facebook等のアカウント名も併せて取ってしまうのが◎。逆に既に名前が取られている場合は、サービス名の変更も検討した方が良い。

名前やロゴが良い会社やプロダクトはそれだけで成功する場合もある

とても知的で論理的な彼からアドバイスで一番意外だったのがこれ。最終的に人間は感情で決断する。会社やプロダクトの名前やロゴがキャッチーで、人の記憶に残りやすく、上手に表現が出来ているそれだけでも、成功の可能性が大幅に上がる。ある出場社にも”良い名前だね。成功するんじゃない?”と言っていた。

スタートアップにとって、社会貢献イメージは大切

全く何もない所から始めるスタートアップは、どれだけ多くの人からの協力を得られるかが勝負。周りから協力してあげたいと思わせるのが非常に重要になる。提供するプロダクトが何かしら社会貢献に役立つのであれば、賛同者を得られやすく、成功へ結びつきやすくなる。スタート時に、”売り上げのX%を何々に寄付します!”と宣言するのも良い。

Necessity vs Commodity

提供するサービスが消費者にとって、無くてはならないもの(Necessity)なのか、欲しいもの(Commodity)なのかで、その後の成功のスケールが変わってくる。やはり、Necessityとみなされる商品やサービスは大成功を治める可能性が高い。ちなみに、人々にとって必要不可欠なのは衣食住だけではなく、FriendsやLove等も含まれるという。

日本で登記した後、アメリカに会社を移すのは難しくない

ケースバイケースだが、一度日本で法人登記をしてから、会社をアメリカに移すのはそれほど難しくは無い。日本の会社を子会社にしたり、吸収合併する等、幾つか方法がある。ビジネスの展開パターンやファンディング状況に合わせて臨機応変に対応すべし。

会社は”カタチ”が重要

アメリカで会社を経営した人は気づくだろうが、法務や財務に関する資料作りから、社内外組織作りまで、細かな会社の”カタチ”、英語で言うとFormalityは非常に重要。これがおろそかになると、思わぬ所で痛い目にあう事も。企業は外からも中からもキレイに構築すべきである。

CEOの仕事はプロダクトを進める事。その他役員の仕事は組織作りと資金調達

スタートアップは、ついCEOが全てを行ってしまうケースが多いが、少しでも早くCEOがプロダクト作りとその普及に専念出来る組織作りを行うべき。その為には、優秀な人材を役員として採用し、COOによる社内外の組織作りや、CFOによる資金調達等の役割分担を行う。

役員の報酬2に対しアドバイザーの報酬は1が目安

より多くの優秀なアドバイザーを集めるのも非常に重要であるが、その際のアドバイザーに対する報酬は、役員の1/2が目安となる。これは現金ではなくストックオプション等でもOK. なお、上場後はストックオプションは使えなくなるので、引き続き必要な場合は、きっちりと現金を支払う事になる。

特許はとても大切

これもほぼ全ての出場者の方々にアドバイスしていたポイント。資金調達やバイアウト、そして会社の競争力を高める為には、取得してる特許の種類と数が非常に重要になってくる。日本ではなかなか取りにくいビジネスモデル特許も、アメリカだと専門の弁護士に頼めば取りやすい。特許を持っているだけでも、投資家との面談の際の希望出資金額が格段に変わってくる。

人間は感覚で動く、心理戦は非常に効果的

投資家へのピッチや、エクジットの際のネゴシエーション等で心に響くプレゼンを提供出来るかどうかは非常に重要。相手がどんなに優秀で大物だったとしても、最終的には心理戦になる。特許の数や、具体的な数字、会社の大きなビジョン、アドバイザーの名前など、見た目に響く要素を提示出来るかが大切。

各投資元へのエクイティは最大20%を目処にする

エンジェルやVCから投資を受ける際は、そのボリュームを必ず会社の20%以下に抑える事。それ以上の配分になってしまうと、将来的に様々な理由で会社が不利な立場になる。”どうしても”という時でも、23%以上は割り当てない。

立ち上げ時 対 エクジット時の希薄化率は約60%

会社を立ち上げた際に割り当てられた株式はその後、追加出資等で希薄化され、エクジット時には目減りしてしまう。これを英語でDilutionと呼ぶが、その際のDilution Rate (希薄化率)は約60%が目安となる。例えば、立ち上げ時に会社の10%を保有している場合は、エクジット時には6%に目減りする。なお、会社によって大きく違いがある場合もあるので、ご注意。

会社立ち上げ直後にM&Aを考える

会社のエクジットをバイアウトと設定している場合は、プロダクトリリースがされる随分前や、場合によっては会社の立ち上げ直後からM&A活動を開始するのが良い。それにより、目標とするバイアウト先がどのようなプロダクトに興味があるかを知る事が出来、商品開発に有利に働く。そのようなケースは、大きな企業のM&A担当者と知り合いになっておくのは非常に重要なポイント。

バイアウト向けのCEOは、背が高く、顔が良く、話が上手い人を

実際にエクジットが見えて来た際には、それを本職としてる人間をCEOとして雇うのもセオリー。この辺だと、会社のバイアウトを請け負う専門家が沢山居る。多くの場合彼らは背が高く、顔が良く、話が上手い。それにより買収額が何倍になる事もあるという。

イメージ作りの為のMBA中退?

最近のスタートアップCEOの”はやり”はMBA中退。出場者からの、”やっぱアメリカでMBAとか行った方がいいですかね?”の質問に対し、”初めは通い始めて、会社がうまく行きそうになったらドロップアウトしたら?良いイメージ作りになるんじゃないの?”とAnis.  実に、アメリカで成功して名が知られている多くのCEOは、なぜかMBAや大学を中退している。大胆な行動力で、ある意味ハクが付くのかも。

 

今回、これから世界で活躍するであろう日本の起業家達に対して、具体的且つ役立つアドバイスを完全なる好意で提供してくれたAnisにはとても感謝している。ちなみにアドバイスを受けた何人かは、「自分の会社にこんなに可能性があるとは知りませんでした。めっちゃテンション上がりました。」と言っていた。これからも彼と協力し、少しでも結果に繋がるスタートアップ支援が提供出来ればと思う。なお、彼は今月末に開催されるTechCrunch Tokyo 2011のイベントにてモデレーターを務める予定なので、ご興味のある人は是非会ってみると良いと思う。

 

筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill

アメリカのトップVC: リード・ホフマンに聞いた起業家としての心得

main-pic今月はTechCrunch DISRUPTを始めとし、スタートアップ系の多くのイベントがサンフランシスコ及びシリコンバレー界隈にて開催された。9月9日(金)の夜、丁度DISRUPTのHackerthonが始まろうとしていた頃、そのメジャーイベントの影では500人程が一つの場所に集まり、一瞬にして30社のスタートアップが全くのスクラッチから誕生しようとしていた。MEGA Start-up Weekendは、ビジネスアイディアを持つ起業家志望者、技術で勝負するスタートアップ参画希望者、知識と経験を提供するスタートアップ支援者が一丸となり、世界へチャレンジするイベントである。(詳しいイベントレポートは、TechCrunch Japanの記事を参照)。

イベントの会場として選ばれたのがMt. ViewにあるMicrosoftシリコンバレーオフィス。その隣がGoogleでもう一つ奥にいくとLinkedInがある。そして、このイベントでのKeynote Speechを務めたのが、そのLinkedInのファウンダーであり、現在は自身のファーム、Greylockを通してAirbnb, Pandora, Facebook等の多くの有望スタートアップに投資を行う世界屈指のVC、リード・ホフマン(Reid Hoffman)である。ちなみに、彼は1995年から現在までに実に114社のテック系スタートアップに投資を行っている。スピーチでは、アメリカに於ける起業家の存在意義や、経済そして社会への影響力、そしてこの国自体が起業家精神の元に成り立っている事を説明。スピーチ最終には、「ビジネスなんて、どっちみち面倒な事ばかりなんだから、やるならデッカくいこうぜ!」と参加者を激励。その直後から彼のフレーズ “As entrepreneurs you should always think big, because it takes the same amount of work and pain as thinking small.” が参加者を中心にTwitter上に拡散されまくった。

本来彼は基調講演のみでの参加予定だったが、スピーチ後の質問コーナーにて参加者からの、”明日も来てくれますよね?” の問いに対し、”まいったな、週末もミーティングづくしで時間がないんだけど…。” とお茶を濁していた。しかし、土曜日のセッション中にこっそり参加者を覗きに来た彼を発見。自分がデザインメンターとして参加している事を伝えると、ランチタイムが近かった事もあり、30分以内の条件でオフィス内のカフェにて一緒にランチをする事に。カジュアルな雰囲気の中、起業家を応援する立場として、彼に幾つかの質問をしてみた。

概要:

インタビュー相手: Reid Hoffman (Partner: Greylock, Co-Founder and Exec. Chairman: LinkedIn)
インタビュアー: Brandon K. Hill (CEO, btrax, Inc.)
インタビュー日: 2011年9月10日
場所: Microsoft (シリコンバレー, Mt. View地区)

 

Brandon: 昨日スピーチは素晴らしかったです。有り難うございました。
Reid: ありがとう。未来のEntrepreneur達の前でスピーチする程エキサイティングな事は無いよね。僕としても光栄だったよ。

Brandon: やはり今の世の中にとって、起業家は重要なんでしょうか?
Reid: もちろんだよ。どんな会社でも最初はスタートアップだし、政府や国家だってある意味起業家精神の元に成り立っている。そして、今以上に起業家的な考え方やスピリットが重要な時代は無いと思う。

Brandon: それはなぜでしょうか?
Reid: 簡単な事だと思うよ。テクノロジーや市場の発達が原因で、物事やマーケットが変化するスピードが急激に早まっており、グローバリゼーションの波も加速している。それに併せて企業もアダプトして行かなければいけない。これからの将来に向けて起業家的考えがとても重要になる。これは必ずしも全ての人々が自分の会社を始めないといけないというわけではなく、いつでも急激な変化に柔軟に対応出来るような、”起業家的”な考え方がキャリア構築の面でもこれからは重要になってくる。

Brandon: ではどのように起業家精神を学んだら良いでしょうか?
Reid: 現実的に考えて “起業家学” という物は存在しない。むしろ、それを教えるのは不可能だろう。 細かなスキル、例えばビジネスプランの書き方、ビジネスモデルの作り方、マーケットリサーチ、同業他社リサーチ、会計、マネージメントといった内容を学ぶ事は可能だ。しかし、覚えておいて欲しいのは、起業家とはパイオニアである事。パイオニアとは新しい事にチャレンジする人たちの事なんだ。起業家になるのであれば、新しい事にチャレンジするべきであり、誰も経験した事の無いフィールドに飛び出す事でもある。そこで直面する数々の困難をどのようにクリアして行くかが起業家精神なんだよ。

Brandon: なるほど。一言で言って優れた起業家とはどんな人たちなのでしょうか?
Reid: 一言で表現するのは非常に難しいな…。そうだな。例えばここ(カフェ)でとんでもなく良いアイディアが思いついたとする。恐らく皆、忘れる前に慌ててナプキンにそれを書き留める。文字だったり、図表だったり。皆そこからビジネスをスタートするよね。でも、最終的にそれを元に世界を変えるような商品やサービスに作り上げ、大勢の人を雇い、大きなお金を動かす事が出来る人たちは極わずかだろうね。それを達成する為には幾つか重要な心構えがあると思うよ。

Brandon: それはどんな心構えでしょうか?
Reid: まずは常に新しい機会を探す事。いわゆるマーケットオポチュニティだよね。新しいテクノロジーや市場の変化を糧に何か世の中に大きなインパクトが与えられないかを模索する。既存の環境で誰もやってなかったようなビジネスモデルはあくまでもニッチ市場であり、大きなリターンは望めないよね。ビッグな成功が欲しければ自ずと最新のテクノロジーや市場の変化を活用する必要がある。

次に、やるからには大きな目標を掲げる事。たとえ現実的に小さな成功からスタートしたとしても、最終的に大きな目標が無いのであれば、大きな成功はありえない。偶然にビッグになる事は極稀だね。起業家というかなりしんどい役割を請け負うのであれば、グローバル規模でインパクトが与えられるようなビジネスモデルで、ビッグなリターンを望んだ方が良い。

そして、優れたチームを作る事。スタートアップの場合、とにかくファウンダーやCEOが注目され、その人自身の延長線上に会社がある様に思われるよね。しかしながら、会社の周りには大きなネットワークが存在している。例えば、COOやCTOだけではなく、立ち上げ時のスタッフ、投資家、株主、そして顧客までが成功への重要な要素となる。自分1人の能力で全てを成し遂げようと思っているとしたら、起業家としては評価出来ない。

もう一つの要素としては、ラッキーな時とそうでない時の両方を想定してプランニングを立てる事。例えば、ビジネスを展開していると意外な所で商品やサービスが響く時があるよね。当初想定していたプラン上には考えられなかった所にユーザーがいたり、プロダクトが想定してなかった使われ方をされたりとか。そのような事態になった時に、即座に対応し、いつでも方向転換 (Pivot) 出来る様にしておく必要がある。そうしないとチャンスをつかみ損ねるからね。少しでもチャンスの糸口が見えたのであれば、そこに対して全力で方向転換をする柔軟性が必要なんだ。

その一方で、アンラッキーな事も起るだろう。思ってたやり方でうまく行かなかった際の代替え案、いわゆるプランBだね。LinkedInだってユーザー増加率が、当初の予定を大幅に下回っていたので、アドレス帳の追加施策を行って急激にユーザーが増えた。実は、僕はそれに加えプランZも必要だと考えている。プランZとは、何をやっても響かないのであれば、根底からプランを変えてしまう内容だ。結果も出ないのに、ただ頑固にやりたい事に固執するのは良く無い。

最後に、粘り強さ (Persistent)と柔軟さ (Flexible)の両方を兼ね備えている事。当初のヴィジョンをしっかりと持ち続けながら、場合によっては、その時々の状況に合わせて柔軟な対応が出来る。一見相反する二つの素質だけど、起業家にとってはどっちも重要だね。こればっかりは、勉強では身に付かない。身をもって経験するしか無いだろうね。

Brandon: Webやモバイルサービスにおいて、ご自身が投資対象として注目するポイントはありますか?
Reid: 昨日のスピーチでも若干ふれたけど、僕的には人間が持つ “7つの大罪 (Seven deadly sins)” をくすぐるサービスが良いよね。これらは人間が本能的に感じる欲求であり、ビジネス的にもユーザー心理に訴え易い。ちなみに、7つの大罪とは:

  1. 憤怒 (Wrath)
  2. 強欲 (Greed)
  3. 傲慢 (Pride/Ego)
  4. 色欲 (Lust)
  5. 嫉妬 (Envy)
  6. 怠惰 (Sloth/Laughter)
  7. 暴食 (Gluttony)

 

これら人間が持つ本質的な欲求を満たすといった側面から考えるとソーシャルメディアは非常に有利だね。 投資している企業でいうと、Facebookは人間の自己顕示欲、すなわちエゴを満たす。Zyngaは楽しみたい欲求(怠情)を、LinkedInは人間の強欲な側面を抑えていると言えるだろう。

Brandon: なるほど。そろそろ時間なので、日本の起業家に向けて何かメッセージはありますか?
Reid: さっきも言ったけど、今の時代は物事が急激なスピードで加速し、全てがグローバル規模で展開されている。一方でビジネスは通常ローカルレベルでスタートするのが一般的だと思う。ローカルでスタートしながらも、最終的にはグローバルな展開が出来るのが良いと思うよ。

 

筆者: Brandon K. Hill @BrandonKHill